DQ5 天空の花嫁と浪速の賢者   作:かいちゃんvb

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どうも、かいちゃんです!
「星のドラゴンクエスト」で天空の剣が当たったのですが、星の錬金粉が足りません。ドロップを狙ってクエストを周回する毎日です。
では、本編スタートです!


第22話 サンタローズのいちばん長い日 前篇

サンタローズは切り立った崖の下にあった丘を切り拓いて形成された街である。南西部に入り口があり、そこからコの字を描く様に村のメインストリートが奥へ向かうにつれて標高が高くなる様に走っている。入り口のすぐ北は丘陵地になっており、その上に宿屋が建っている。そして洞窟はメインストリートの終点に位置しており、その洞窟からは川が流れ出て村を東西に分断している。

この地形的に非常に恵まれたサンタローズ村を舞台に、村人たちは"伊達と酔狂によるサンタローズ村防衛戦"をおっ始めようとしていた。

 

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4月7日早朝にラインハット城を出発した何も知らないラインハット軍300名は昼下がりにサンタローズ村に入った。しかし、驚いたことに村人は誰も外へ出ておらず、入り口で前々日にラインハット軍をやり込めた少女が入り口の前に立っていた。その少女が軍に向かって高らかに宣言する。

 

「おお、また雁首揃えて来やがったか。今度は何の用や?」

 

先頭にた立っている先日カリンにやり込められた兵士が嘲笑する。

 

「小娘には何も知る権利はない。何故なら……この村は今から滅ぼされるのだからな!」

 

兵士はカリンに向けて槍を突き刺そうとするが、見事にカリンは体を反らして直撃を避け、逆にその柄を掴む。

 

「おにーさん、あんたらがどういった経緯でここにおるかぐらい分かっとんねん。ところでやけどさ、先そっちが手ぇ出してんからこっからは正当防衛やで。言質もとったしな。」

 

そう言うとカリンはポケットから黒い球を取り出して、そこから伸びている紐にメラで火をつけた。

 

「爆弾って、知ってる?」

 

そう言うとカリンは兵士の群れの中へ球を投げ入れた。そして村へ向かって全力で戻る。一瞬惚けていたラインハット軍であったが、カリンの言葉と投げたものの意味に気づいて慌てふためく。しかし、その反応は明らかに遅すぎた。

 

爆炎と爆風がラインハット軍先頭集団をなぎ倒した。

難を逃れた先頭の兵士が突撃を命令する。無事であった270名ほどの兵士がサンタローズに突撃した。しかし、宿屋のある丘の上に隠れていた村人が熱湯をふりかける。兵士たちは熱さでパニックに陥った。そこへ、槍を持ったスコットとマルティンとサンチョが猛然と飛び込んでゆく。彼らはラインハット兵士を殺さない様に脚や腕を突き刺し、戦闘能力を次々に剥奪していく。

 

日没と同時に戦闘は終結した。4時間あまりの戦闘でラインハット軍は村の入り口を突破出来なかったばかりか、サンタローズの犠牲者0に対してラインハット軍の戦闘不能者は80名に上った。

 

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「ふむ、まずいな。このままでは妾の面目が立たぬ。増援1000を派遣せよ。今夜中にだ。」

 

そう命じると摂政皇太后カタリナは冷酷な笑みを浮かべた。

 

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「なんて数だ。」

 

翌4月8日早朝、サンタローズ周辺にカタリナから命令を受けた増援部隊1000名を含む1220名の軍が集結していた。その壮観を丘の上から眺めた見たスコットの述懐が上記である。

 

「ま、増援に関してはこっちから蒔いた種ですからね。やるっきゃないっしょ。」

 

昨日は敵を油断させるために何も装備していなかったが、今日はガッチリとフル装備に身を固めたカリンが言う。そして、その言葉と同時にラインハット軍は進軍を開始した。

 

「団体様のお出ましですね。」

 

「この村の利点は守り口が1つしかないところだな。あとは火矢と投石にさえ気をつければ何も恐れるものはない。昨日は手加減してやったが、今日はそうはいかんぞ。」

 

「やりますか。」

 

「うむ。」

 

カリンとスコットは指定された配置についた。サンタローズの一番長い1日が幕を上げた。

 

昨日と同じ要領で丘の上から熱湯をぶちまけ、槍の使い手が襲いかかるという形で村の入り口付近で戦闘が始まる。しかし今日のラインハット軍は数の力で押し切り、1時間程度で村の入り口をようやく突破した。サンタローズ3名の槍使いは足元に注意しながら村の奥へと引く。それを追って一挙に兵士が村になだれ込むが………その兵士一団が消えた。

入り口を入って20メートルもしないところに仕掛けられた巨大な落とし穴が一瞬にして50名以上の兵士を飲み込んだのである。もがく兵士たちに上に熱湯が撒かれ、兵士たちはパニックに陥る。そその中に命綱をつけたサンチョとカリンが飛び込んで次々に足の骨を折ったり関節を外すなど戦闘能力を剥奪していった。事態を重く見た本隊は火矢による遠距離攻撃をかけるが、これをあらかじめ予想したカリンが村人に配った水をたっぷり染み込ませた皮の盾が防いでいく。

 

何とか落とし穴を回避した兵士たちが、コの字型のメインストリートの、川を渡って1つ目の角に立つカリンに突撃する。カリンは速連射で先頭10人の兵士の膝を射抜き、北へ向かって走る。

そこへ殺到する兵士たちは気づかなかった。コーナーに大量の料理用の透明な油が撒かれていたことを。油に足を取られた兵士たちはその場で大きく転ぶ。

すると、武器屋の影に隠れていた村の男たちが燃料用の油を足を取られた兵士たちに向かってふりかける。100人程度の兵士がそこで足掻いていた。そこへ、味方が放った火矢が足を取られた彼らを襲う。油に引火した火は一瞬にして燃え広がり、轟音を立てて大爆発を起こした。火だるまになった兵士たちが次々と川へ飛び込んでいく。それを無視して突撃してくるものには容赦なくカリンの矢が襲いかかった。

 

結局この第一コーナーでの騒ぎが収拾するまで1時間半を要し、ラインハット軍の10時に予定されていた再侵攻は正午まで延期となった。この時点で未だサンタローズの51名の村民に犠牲者は出ておらず、一方のラインハット側は死者55名、足を射抜かれたり腕を切られたりして戦闘不能になった者は387名に上った。

 

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11時、ラインハット軍増援部隊の総大将であるイワンは戦況を見て渋い顔をしていた。イワンは55歳の経験豊富な将帥で、その実直な人柄と堅実な用兵で兵からも前国王エドワードからも大きな信頼を勝ち取っていた名将である。

 

「なかなか敵はやりおるな。地の利と知恵を活かして大軍にここまで対等に戦うとは。たった5時間の戦闘でおよそ25倍の兵力の我々がその戦力の3割6分を失うなど誰が想像したかな。」

 

「如何なさいますか?」

 

部下が伺いを立てる。

 

「うむ、突撃しか考えぬ先行部隊にこれ以上任せてはおけぬ。午後からはこの私が指揮を執る。全隊を30人ほどの小集団に分割し、時間差で突入させる。正午までに間に合わせろ!もちろん敵には気づかれるな!」

 

(しかしこの村の者が反乱分子というのは本当なのか?そもそも実行犯が城で見たあの実直そうな男というのも納得がいかぬ。エドワード先王がパパス殿の身分を最後まで誰にも明かさなかったのも気になる話だ。今回の摂政皇太后陛下の命令、些か不可解なものに思えるが……。しかし、何よりも今は目の前の敵だ。この恐るべき相手を如何に屈服させるか、用兵家の血が騒ぐ!)

 

イワンは訝りながらも昼食の乾パンを口に放り込んだ。

 

 

「問題はここからや。」

 

「そうだな。ネタもだいぶ尽きてきた。」

 

カリンとマルティンが丘の上から敵の状況を観察しながら話している。

 

「ここで一番怖いのは少数部隊を時間差で突っ込まれることなんですけど、それやる雰囲気ですね。」

 

「そうだな。兵の動きが今までと違う。逆に今まで通りに見せようとしている感じだな。」

 

「ここからが勝負ですね。」

 

「うむ。洞窟の中の女子供の様子は?」

 

「シスタールカのおかげでとても落ち着いています。」

 

「こうしてみるとつくづく思うのだが、本当にお前は7歳なのか?大人の一流の軍略家と話しているように感じるのだが。」

 

「あら、ウチが7年前にここで生まれたの知ってるでしょ。何アホなこと言うてますの?」

 

「そ、そうだな。」

 

今回の防衛作戦は全てカリンとスコットの起草によるものだ。しかもその殆どがカリンの頭脳から生み出されていた。カリンは前世での映画や小説の記憶をフル活用してこの前代未聞のゲリラ戦を仕掛けていたのであった。

 

(さあて、ここからの敵さんはなかなか優秀な人物らしいな。これは気張ってやらな。)

 

 

サンタローズ防衛戦の最終局面に向けて、カリンとイワンの頭脳戦が音もなく始まっていた。




先日京都に行ったのですが、外国人めっちゃ多いですね。特に包丁屋の「有次」で欧米の方々が興味津々な様子で包丁に見入っていました。通行の邪魔になって迷惑な事もありますけど、これだけ来てくれるのも嬉しいです。
<次回予告>イワンの指揮するはカリンの恐れていた少人数による時間差突撃戦法によってサンタローズ村の奥へと侵入していく。徐々にジリ貧になるサンタローズ。そんな状況の中、サンタローズ側の重要人物に兇弾が放たれた。
次回 第23話「サンタローズのいちばん長い日 後編」
賢者の歴史が、また1ページ。

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