やはり材木座が書くラノベは間違っている   作:ターナ

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第9話

「比企谷君、これが終わったら一緒にお茶でも飲みにいかない?内容について議論しようよ」

「いやです、お断りします」

「どうしてそんなこと言うかな、小説の内容を再現してみるのも面白いと思うよ」

「まだ読んでもいないのによく言えますね、後悔しますよ」

「そんなことないよね、材木座君?」

「いや、まあ、その....それは人によると言いますか...」

「..ふーん、まあいいや」

 

「..雪ノ下殿の姉上のラノベについては、八幡の台詞を先生にお願いしたいのでしゅが」

「どうして指定するのかしら?今まではそんなこと言わなかったのに」

「..今まで聞いた中で八幡の台詞は先生がうまいな。と、思っただけでしゅし...」

 

由比ヶ浜さんと一色さんは何か察したようね、私も以前材木座君が言っていた台詞から何となく察することは出きるのだけれど。

多分姉さんも分かっているようね。でもこれぐらいでこの人は動じないでしょうけど。比企谷君については、携帯を触って話に加わろうともしないわ。

 

「..ふーん、じゃあ静ちゃんお願いするね」

「ああ、じゃあ始めようか」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

私は公園のベンチで一人うなだれていた。今まで母親に逆らったことはない。でも今回お見合いの話が来たとき私は母親の意向に背いていた。自分でもどうしてか分からない。なぜその時、比企谷君の捻くれた顔が浮かんだのかも。いいえ、分かってはいるの。でも彼は雪乃ちゃんが好きなはずだから、私にはどうしようもない。そんなことを考え私は1人ベンチに座っていた。

 

***

 

「雪ノ下さん?」

「..比企谷君、どうしてこんなところに」

「いや、通りかかっただけなんですけどね、雪ノ下さんが見えたので声を掛けただけです」

「そうなんだ、ありがとうね」

 

俺が声を掛ける前、雪ノ下さんの顔はいつもと違い、仮面を付けていなかったように見えた。何時も俺と会っているときは仮面を被った表情しか見せない。そんな雪ノ下さんに俺は何時しか惹かれていたが、今日の雪ノ下さんは横顔しか見えていなかったが顔は儚く脆い印象を受けた。

 

「どうしたんですか、雪ノ下さん」

「ううん、なにもないよ。しばらく1人にしてほしいな」

「....そうですか、じゃあ帰りますが気をつけてください」

「ぁ....」

「本当にどうしたんですか?」

「本当になんでもないの、なんでも...」

「...雪ノ下さん、俺には雪ノ下家の陽乃ではなく、雪ノ下陽乃の素顔を見せてください」

「....なにを言っているの?比企谷君....あなたには雪乃ちゃんがいるでしょ」

「俺が好きなのは陽乃さんあなたですよ」

「....」

「俺には陽乃さんの本当の顔を見せてください」

 

私は今、かなり動揺してしまい俯いている。今彼の顔を見てしまうと私が作り上げてきたものが全て崩れさってしまうような錯覚に捕われてしまった。このまま彼の前に居るのは不味いと思い彼から逃げようと走り出したが、壁に押し付けられ両方の手首を押さえつけられていた。

 

「比企谷君、やめて」

「嫌です、この手は離しませんよ」

「...比企谷君」

 

比企谷君の顔を見た瞬間、私を被っていた仮面は外れてしまっていた。

 

「綺麗ですよ、陽乃さん」

 

俺は彼女の始めて見せる綺麗な表情に見惚れていた。涙を流していても美しいその表情を自分だけの物にしたいため、俺は彼女の唇を奪った。

 

***

 

私は比企谷君の胸の中で泣いてしまっていた。今まで人前で泣いたことはないのに、彼の前で私は仮面を外してしまい、大声をあげ泣いてしまっていた。そして彼に手を引かれ、ホテルに連れていかれた。

 

「陽乃さん、俺は今からあなたを抱きます」

「ッ、でも..」

「陽乃、なにも言わずに俺の言うこと聞け」

「はい....」

 

私は彼の前で下着姿にされていた。上下ピンクの下着だったのだけど、恥ずかしくて手で隠していた。

 

「陽乃、自分でブラを外して俺の前に立て」

「....はい」

 

私はどうしたのだろう、彼からの命令になぜか逆らえない。今まで私に命令した人なんていないけど、私は指示されたかったのだろうか。いやこれは比企谷君だからだろう。

 

「..脱ぎました」

「どうして手で隠しているんだ」

「は、恥ずかしいから」

「手をどけて俺に陽乃のすべてを見せてくれ」

「..はい」

 

私は手を横に下ろした、でもどうしても恥ずかしくて比企谷君から顔を逸らしてしまった。すると比企谷君は私の手を引きベッドに押し倒してきた。

 

「綺麗だぞ、陽乃」

「比企谷君、電気消して」

「だめだ、俺は陽乃のすべてが見たい」

 

彼はそう言うと私にキスしてきた、今度は公園でやったようなキスではない。お互い貪るようにして求めあった。そして彼の手が私の体中に触れ唇でも触れられ続け、絶頂を向かえようとしていた。

 

「あぁ、も、もう、だめぇ」

 

私がそう言うと彼は私から離れた。

 

「..ど、どうして、やめるのぉ?」

「駄目なんだろ」

「えぇ、いや止めないで」

「お願いの仕方が違うだろ」

「...比企谷君、私をそ、その、イカせてください!!」

「ああ、分かった」

 

私は彼に苛められ続けた。彼が私の体を求めてくれるたび幸福が訪れ、何度イカされたか分からない。そして私は何時の間にか意識を手放していた。

 

***

 

「...比企谷君、私を貰ってくれる?」

「当たり前じゃないですか、だからこれからは二人で雪ノ下家と戦うことになりますよ、なので陽乃さんも母親に真正面からぶつかってください」

「うん、私を支えてね、八幡」

 

私は彼にキスをし、また身体を求めた。

そこからの彼は凄かった。高校ではサボっていた数学の授業もまじめに受け解らない所は私が家庭教師をしてあげた。大学では経済学やその他の受講していない学科にも顔を出し、アルバイトを始めた小さな町工場を大学卒業するころには規模を数十倍にまで押し上げるまでに成長させていた。そんな人材であれば雪ノ下家が欲しがらないわけがない。彼は今や私の片腕として20代で役員の立場にいるわ。

高校までの彼を知っている人たちは彼のことを変わったと言う、でも私だけが知っている。彼の変わっていない点、それは....

 

「は、八幡、私をイカせてくださいぃ」

 

(ここまでが材木座の小説)

**************************

 

「う、うにゃーーーーーー!!」

 

姉さんがラノベを読み終わると同時に奇声をあげ走りだしてしまった。私たちも全員うつむいていて、言葉を発せられないでいるわ。

 

「材木座、幾らなんでもこんな内容の小説は部活動の一環としては認められないぞ」

「....いや、ちょっと書いてみたかっただけで、R15ぐらいなら雪ノ下殿の姉上であれば問題ないかなと」

「...まあいい、陽乃には後で私から言っておく」

 

「なあ材木座、平塚先生の時もだが何でエロい事があるのは俺がSなんだ?」

「年上の女性が年下に責められるのが良いのではないか!!」

「いやお前の性癖はどうでもいいんだけど..」

「私の時はそんなことなかったよ」

「元生徒会長殿だと本当に苛めているようなので、書けませんでした」

「...苛められてみたいな」

「「「....」」」

 

「んん、内容についてはともかく、こういう視点の切り替え方だと難しくないか、色々試してみるのは良いのだが」

「でも今回のラノベは、所々比企谷君や姉さんの考えが入れてあるので判り易かったわ」

「うん、他のもだけどヒッキーやみんながどうして相手の事を好きなのか判るし」

「気持ちが弱いと思ったところもありますけどね、でも私たちの時みたいに先輩がいきなり告白とかじゃなかったですから、こっちのほうが良いですよね」

「ねえ、いい加減俺の名前だすの止めてくれ..」

 

「...ねえ比企谷ぁ、この気持ちどうすればいいの?」

「知らん、俺は忠告したからな」

「比企谷君...これ卒業式のとき、絶対思い出しちゃうよぉ」

「...大丈夫ですよ、多分」

「いいかげんだなぁ」

 

相模さんの台詞を聞いていると告白しているみたいに感じるわ、彼女の言いたかったのはそういった感情ではないのでしょうけど。でもウカウカしていられないわね。

 

「ねえ中二、これからもこう言ったの書くの?」

「いや我は御主たちのラノベを書いている最中、思いついたネタがあるので、そっちに専念してみるつもりぞ」

 

「じゃあ、今日はお開きでいいのかしら」

「うん、材木座君ありがとうね、はるさんの分もお礼を言っておくね」

「うちもありがとう」

 

これでようやく材木座君のラノベ騒動も終るのかしら?

 

**************************

 

俺たち奉仕部の面々が部室の片付けをしていると、メールを知らせる音楽が流れた。

 

「材木座か、なんだ『にけ』って?」

 

材木座からよく分からんメールが来た。なんだ『にけ』って。nikeのことか?返信しても折り返しがないし、電話をしてみたが電波状態が悪いのか繋がらない。

まあ、何か用事があるのであればまたメールが来るだろう。対して気にせず俺たちは奉仕部を片付け学校を後にした。

 

***

 

「ひゃっはろー、比企谷君。ちょろっと付き合ってくれるかな、っていうか来い」

「ゆ、雪ノ下さんどうしたんですか、いきなり」

「お茶でもどう?って言ったよね。もちろん付き合ってくれるよね、材木座君と」

 

近くの公園を見ると材木座が公園のベンチで項垂れているのが見えた。さっきのメールもしかして『にげろ』と言いたかったのか?あまりメールの事を考えず放っておいたことを今更ながら後悔した。確かにそうだ、雪ノ下さんがただ逃げ出すだけなんてありえない。もしかしてアイツ喋ったのか?喋っていたとしても俺の狙いがバレているはずがない、誰にも喋っていないからな。ここは大人しく従っておいて穏便に済ました方がいいな。俺が了解すると雪ノ下さん材木座、そして俺の3人で近くの喫茶店に入った。

 

「...済まぬ、八幡...」

「いや、お前は何もやってないだろ」

「比企谷君、お姉さん材木座君に聞いちゃった。今日のあれって比企谷君が書かしたんだって?」

「...済みませんでした。雪ノ下さんにいつも遣られているので、やりかえせるかな。と思って材木座にエッチな内容でとお願いしました」

 

ここはとりあえず謝って置けば何とかなるだろう。俺はとりあえず謝っておいた。

 

「いいんだよ、内容については言わないよ。こっちからは特に希望とか要望を出さなかったからね。でもね比企谷君、....録音しているのはどうかと思うな」

「八幡?御主、録音しておったのか?」

「いや、そんなことしてないでしゅよ....」

 

ヤッベー!!思いっきりバレてるじゃん!!しかも大事なとこで何噛んじゃってるの?バカ?バカなの?これどうすれば良いんだ?何とかごまかすんだ!八幡!!

 

「しかも私の時だけ録音してたみたいだよね、携帯触り出したのが、私の小説を読む前だったからね」

「アレはアレですよ、アマゾンからメールが来ていたので見てただけですよ」

「見せて」

「いや、見られたくない物も入っていますし」

「見せて」

「個人情報が...」

「見せて」

「....」

 

これ、はいって答えないと抜け出せないの?永久ループなの?やっぱりこの人魔王だわ。村人の俺や吟遊詩人見習いの材木座では太刀打ちできない。俺は震える手で携帯を差し出した。雪ノ下さんはしばらく携帯をイジっていると、ファイルを再生しだした。

 

『ふーん、じゃあ静ちゃんお願いするね』

『ああ、じゃあ始めようか』

 

雪ノ下さんと平塚先生の声が俺の携帯から聞こえ出した。そこで雪ノ下さんは停止ボタンを押した。

 

「比企谷君、説明してくれるよね」

「八幡?」

「...すみませんでした」

「ふーん、まあ小説の内容についてはこっちから指示した訳じゃないし?でも比企谷君、ちょっとおいたが過ぎるよね、このファイルどうするつもりだったの?」

「....」

 

俺はなにも答えられず黙っていた。そんな様子をみて雪ノ下さんはしばらく考えていたが

 

「じゃあまずは材木座君、君は女の子から要望があったら小説を書くこと、断らずにね。後、本当に上達したいなら音読ではなく、最初はみんなに読んでもらいなさい。それから章、節、項何処でもいいので区切りのいいところで感想や考えを言い合ってもらうの、いろいろな意見を聞いて参考にするのよ」

「はい、わかりましゅた」

「はい材木座君、携帯を返すわ、番号は控えたから。あと今日はもう帰っても良いわ。ただし女の子から小説を書いてほしいって言われたら絶対書いてあげること。もし逃げたら....」

「わ、わかっているでごじゃるーーー!!」

 

結滞(けったい)な台詞を履いて材木座は一目散に逃げ出した。何でアイツ魔王から逃げれるの!?魔王からは逃げれないんじゃないの?チートなの?あ、俺を生贄したんだった。

 

「じゃあ、比企谷君」

「ひゃ、ひゃい」

「まずあなたの携帯に私の電話番号とアドレスを登録しておくので、私からのお誘いは断らないこと。後明日デートするからよろしく」

「い、いや、雪ノ下さん。明日はアレがアレなんで」

「...ふーん。じゃあ明日、比企谷君ちにお邪魔するから。親も居るよね?『比企谷君に辱められた』って報告させてもらうわ」

「..判りました、明日付き合います」

「後、私のことは陽乃って呼ぶこと」

「そ、それは雪乃し「陽乃」たさん...は、陽乃さん」

「本当は呼び捨てがいいんだけど、まあいいわ。でもみんなの前でもちゃんと呼ぶんだよ。一応、この音声ファイルは私のアドレスに送らせてもらうね、もちろん比企谷君の携帯からは消しておくけど良いよね?」

「はぃ....」

 

今思うとこの人は解っていて材木座のラノベを読んだのではないか。最後まで読みきってから逃げたのも俺が録音しているのに気づいたから、最後まで録音させるためではないか?

もし、そうなら俺が孫悟空でこの人はお釈迦様って訳だ。手のひらの上で踊らされてただけだな。まあ、実際は魔王なんだけど。どっちにしろ逃げれないなこれは。

 

「は、陽乃さん?お手柔らかにお願いします。一応、これでも受験生になるんで」

「うん、いいよ私が比企谷君ちで家庭教師してあげる」

「い、いやそういうことではなくて」

「でも比企谷君ちだと不味いかな、いきなり壁ドンされて唇奪われそうだし、そのままベッドに押し倒されそうだし」

「ごめんなさい」

「よろしい、では帰りましょうか。今日は駅までエスコートよろしく」

「はい」

 

****

 

駅まで陽乃さんを送っていく最中、会いたくない人物に遭遇した。何でいるの?仲町さんも困った顔しているじゃん!!

 

「比企谷!!久しぶり!!」

「...おう」

「折本ちゃんだったけ?ひゃっはろー」

「お久しぶりです、雪ノ下さん」

「..お久しぶりです」

「どうしたの比企谷?今日は雪ノ下さんとデートなの?」

「うん、そうだよ。私たちラブラブなんだ、明日もデートするしね、ね比企谷君」

「..そうっすね」

「まじで!!比企谷ウケる!!」

「いや、ウケねえから」

「じゃあ、デートの邪魔しちゃ不味いから私たち行くね」

「あ、折本ちゃん、来週の月曜日暇?」

「え、まあ空いてますけど」

「じゃあ、総武高校に来てくれない?前生徒会長に許可を出しておくように言っておくからさ」

「ちょっと、雪ノ下「陽乃」、陽乃さん!!」

「なんですか?何だか怖いんですけど」

「大丈夫!!ウケることだから」

「..分かりました、じゃあ放課後総武高校に行きますね」

「じゃあ、雪ノ下さん、比企谷また月曜日!!」

「じゃあね」

 

「どういうつもりですか、陽乃さん」

「うん?面白い事は共有しないとね」

「..小町には言わないで貰えます?アイツ今必死に受験勉強しているんで」

「そうか受験だもんね。本当は小町ちゃんに比企谷君の回りの女性に声を掛けて貰うつもりだったんだけどね、まあ比企谷君に恨まれてもイヤだし小町ちゃんには黙っておいてあげる」

「...ありがとうございます」

「じゃあ、駅まで送ってくれてありがとう、明日のデート忘れないようにね。夜に時間とか連絡するから、じゃあまた明日!!」

「...それじゃ、また」

 

明日もだが、陽乃さんが折本を誘ったのって、ラノベのことだよな。アイツの事だから「それウケる!!」とか言ってノリノリになりそうだし。どうするんだこれ、マジで。

 


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