どうして私はこんな格好で保育園児の前に立っているのかしら....
これというのも二週間前、先生といろはさんが部室に来たのが始まりね。
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「邪魔するぞ」
「先生、ノックをしてください」
「お邪魔しまーす」
私達が勉強会をしていると、先生がノックもせず入ってきたわ。
私と先生が何時ものやり取りをしていると、一色さんが先生に続いて部室に入ってきたのだけれど、いつもと違い何か依頼をしたいということだったので、私と結衣、八幡は勉強会から席を外して廊下に出たわ。
「実はですね、保育園の方から演劇部に公演依頼が来たんですよ」
「ええ、でもそれがどうかしたのかしら」
「あ、あのな。雪ノ下...奉仕部で演劇をしてみないか」
「...はい?」
先生は何を言っているのかしら。私達に演劇何て出来るわけないわ、大体演劇部への依頼なのだから私達は関係ないわよね。
「先生何言ってんすか」
「うん、ちゃんと説明してよ、いろはちゃんも」
「保育園から演劇部に公演依頼が来たんですよ。それは良いんですけど演劇部はその日、他の公演があるらしくて。...でも先生が確認もせずに受けちゃったんですよね。それで今日、生徒会の方に保育園から確認が来たんですが、私もその時初めて知りまして...」
「すまん、受けた後忙しくて忘れててな。今日一色に聞かれて思い出したんだ」
「理由は分かりました。でも奉仕部の理念から外れると思いますのでお断りします」
「うん、あたしたちに出来るわけないじゃん。お芝居なんて」
「そうだな、俺達で何が出来るんだってところだな」
「ゆ、ゆきのしたぁー、そう言わずに頼む!!ざ、材木座ならどうだ、アイツにラノベを書かせて皆で演じる!!材木座のレベルアップにも繋がるだろうし、奉仕部の学外活動にもなる!!」
「..はぁ、演劇と言うことは、三人ではとても無理です。...皆に相談してみます」
私達は部室に戻り、勉強会をしている皆に先ほどの話を伝えると、なぜか優美子さん達は乗り気になっているわね。
「面白そうじゃん、あーしらで演劇って」
「そうだね、私とハチのラブコメを演じるのが良いと思いまーす!!」ハイハーイ
姫菜さんはそういうと、手を大きく上げだしたわ。
「それなら、うちと八幡のイチャイチャチュッチュ物語が良いでーす!!」ハイハーイ
南さんも姫菜さんと同様、手を大きく上げだしたわね。
「ハァ...貴女達。保育園児に何を見せようとしているのかしら」
私は痛くなってきたこめかみを押さえていたわ。この二人は何を言っているのかしら。それであれば私と八幡の新婚物語を見せた方が子供たちの為にも良いわよ。
「その日って、京華の保育園でお遊戯会があるんだけど、もしかしてそれに出るんじゃないよな。〇〇保育園っていうんだけど」
「そこですよ、沙希先輩」
「どっちにしろ私は無理だね、保護者としていくから。でも何かするなら手伝いはさせてもらうよ」
「..保育園児相手であるか。ラブコメではなく童話になるのだな」
「私も裏方なら手伝うよ、雪ノ下さん」
「皆、頼む!!私を助けると思って」
「私からもお願いします。先生が誤って受けたとはいえ、今から断りに行くのは相手にとっても、ご迷惑になりますから」
「..分かりました。前向きに検討してみましょう。材木座君、お願いできるかしら」
「..配役等は我が自由に考えていいのですか」
「お任せするわ、私達もしたことがないのだから」
私はそう答えたのだけれど、それが誤りであったなんて、この時は思いもしなかったわ。
そして今、私達は保育園児の前で、コスプレをして演劇を始めていた...
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(ここから材木座の童話による演劇。ナレーション:真鶴 真奈)
昔、むかーし、ある森の山奥にそれはそれは可愛らしい女の子が動物たちと仲良く暮らしていました。
「けーちゃん、起きるニャ」
「起きるんだワン」
「早く起きないとご飯無くなるでチュ」
「...おはよう。ゆきニャン、ゆいワン、いろはチュ」
「「「おはよう(ニャ)(ワン)(でチュ)」」」
けーちゃんは元気よく挨拶すると猫のゆきニャン、犬のゆいワン、鼠のいろはチュも挨拶を返します。今日も元気に森の中で3匹と遊んでいると、けーちゃんは山を越えた遠くの方にお城を見つけました。
「ねえ、あのお城ってなあに?」
「あれは怖い人が住むって言われてるニャ」
「うん、あたし達が見つかると食べられちゃうんだワン」
「うん、怖い人って聞いてるでチュ」
「会った事あるの?」
「「「ない(ニャ)(ワン)(でチュ)」」」
「駄目だよ。知らないのにそんなこと言っちゃ」
けーちゃんは心優しく動物たちにお話ししてます。噂だけで悪く言うのは駄目ですね。
「行ってみたいな。あそこまで」
「けーちゃんは無理でチュ」
「うん、小さい子には難しいワン」
「そうだニャ、けーちゃんには遠いニャ」
「でも、行ってみたい...」
けーちゃんはあのお城まで行ってみたいと思っていました。でも遠くの方に見えてるけど道何てありません。お城に行くには山を越えて行くしかありません。
次の日、けーちゃんは3匹の動物たちより早く起きました。どうしてもお城に行ってみたかったからです。
「うん、お日様の方に歩いていけば良いんだよね」
けーちゃんは元気よく家を飛び出すと、お日様の方に歩いて行きました。しばらく歩いて行くと、けーちゃんは騎士様に出会いました。
「我は王国の騎士、ヨッシーなるぞ」
「わたしは、けーちゃん。あっちにあるお城に行くの」
「あちらにお城なんてあったか?我の知らぬ城が在るのだな...気を付けて行くのであるぞ」
「ありがとう、騎士様」
けーちゃんは騎士様と別れ、またお日様に向かって歩き出しました。
「あれ?あっちの山の方に向かっていたのに、お日様がこっちにある」
けーちゃんは気づいていません。お日様は時間が経つと動くってことを。そして時間ばかりが過ぎていき夕方になってしまいました。
森の中は既に暗くなっています。
「うぅ、ゆきニャーン、ゆいワーン、いろはチュー」
けーちゃんは森の中で迷子になってしまいました。けーちゃんが泣いていると、後ろの茂みから物音が聞こえてきました。
「だ、だれ!?」
「何で泣いてるクマー」
「女の子が泣いてるコン」
「可愛い女の子だきー」
「あなたたちはだあれ?私はけーちゃん」
「私は姫菜クマー」
「あーしは優美コン」
「うちは、みなっきー」
けーちゃんに話しかけてきたのは、熊の姫菜クマさん。狐の優美コンさん。お猿のみなっきーさんでした。
「家がどっちか分からないの」
「あーしたちもけーちゃんの家、知らないコン」
「家に来るといいクマー」
「そうだきー。今日は暗いから、うちらの家に来るっきー」
「良いの?」
「「「いい(っクマー)(コン)(っきー)」」」
けーちゃんは3匹の動物と仲良くなり着いて行きました。3匹のお家に着くころ、けーちゃんを呼ぶ声が聞こえてきました。
「「「けーちゃーん。どこにいる(ニャー)(ワーン)(でチュかー)」」」
「あ!?ゆきにゃん!!ゆいワン!!いろはチュ!!」
「「「いた(ニャ)(ワン)(でチュ)!!」」」
「うわーん!!」
「会えて良かったニャー」
「うん、良かったワン」
「けーちゃん、無事でよかったでチュ」
「けーちゃん、よかったクマー」
「でも今日は遅いから泊ってくコン」
「そうだきー」
夜遅いので、けーちゃん達は泊めてもらうことにしました。けーちゃんがどうして一人で森の中を歩いていたのか聞いた動物たちは、翌朝みんなでお城に向かうことにしました。
「こっちだニャ」
「ゆきにゃん、反対だワン」
「そうでチュ、ゆきニャンは前を歩いちゃ駄目でチュ」
ゆきニャンは方向音痴なので、案内出来ないのですが、ゆきニャンは自分が方向音痴と認めないので、何時もみんなを振り回していました。自分の苦手なことを認めるのも大事なことですね。
みんなで歩いて行き森を抜けると、大きなお城が目の前に有りました。でも人がいるようにはみえません。けーちゃんは大きな声で呼んでいました。
「だれかいませんかー!!」
暫くすると扉が開きました。そこには目の淀んだ男の人が立っていました。でも噂とは違いとても優しそうな人でした。
「はい。..誰?」
「わたしはけーちゃん!!」
「俺ははちだ」
「はち、..はーちゃん!!」
「私達は遠くに見えていたお城に誰が住んでいるのか見に来たニャ」
「ああ、そういうことか。おもてなししたいが俺一人なんだ」
「お城なのに一人で住んでいるのかワン?」
「俺の目は呪われていてな。皆出て行ったよ」
「このお城に一人で住んでるんでチュか」
「一人の方が良いからな」
「こんな大きなお城で一人って凄いクマー」
「でもお掃除とか大変だコン」
「うん、お庭も広くて大変きー」
「じゃあ、けーちゃんが一緒に住む!!」
「嬉しいけど駄目だよ。けーちゃんにも呪いが掛かっちゃうかもしれないから」
「でも、一人で寂しくないの?」
「..もう慣れたから」
「だめ!!はーちゃんと一緒に住むの!!」
はーちゃんも心の中では寂しいと思っていました。でも今まで聞いてくれる人がいませんでしたので、何時しか人を遠ざけるようになっていたのです。
けーちゃんが言ってくれた言葉に、はーちゃんは嬉しくて泣いてしまいました。
「寂しかったんだね、これからはけーちゃんがずっと一緒に居るよ」
「ありがとう、けーちゃん」
けーちゃんがはーちゃんの頭を撫でていると、どんよりした雲が城を覆いだし辺りは暗くなってしまいました。
「私の呪いに背くのは誰だ」
声の方を見ると、そこには魔女が立っていました。とても恐ろしい魔女です。
格好も似あってます。さすがに歳をとっているだけありますね。(真奈のアドリブ)
「..私の王子に手を出すとはな」マナヅル ユルサン
魔女は何かブツブツ言っていますが魔法でも唱えるのでしょうか。独り身で歳を重ねて魔法使いになっちゃったんですね。わ、私の方を睨んできました!!私は天の声です!!ここには居ないのです!!(真奈のアドリブ)
「..はーちゃん王子は私と結婚するのだ」
「駄目だよ、はーちゃんは私達と一緒に住むの」
「ほう、なら私の魔法を食らうが良い」
そう言って、魔法使いは手を天にかざすと、雷が落ちてきました。
「「「「「「「キャー!!」」」」」」」
雷はけーちゃんと動物たちの真ん中に落ち、皆は吹き飛ばされてしました。
「や、止めろ!!けーちゃん達は関係ないだろ」
「では私と結婚するのか」
「..分かった。だからけーちゃん達に手を出すな」
「駄目だよ、はーちゃん!!」
「いいんだ、ありがとうな。けーちゃん」
はーちゃんはけーちゃん達を守るため、魔女のいうことを聞くことにしました。
ズルいです、この魔女は。結婚できないからって脅すなんて。ま、また私の方を睨んできました。魔女には私の姿が見えてるんですね。や、ヤバいです、この後、皆さんで魔女から守ってください(真奈のアドリブ)
はーちゃんは魔女のほうに近寄っていきます。魔女ははーちゃんとけーちゃんが離れたことを確認すると、もう一度、魔法を唱えだしました。
「王子に手を出した罰だ。止めをさしてやろう」
「や、止めろー!!」
はーちゃんは叫んで止めようとしましたが、魔女の魔法は唱え終わっていて、けーちゃん達に向かって雷が落ちていきました。
「ああ..」
はーちゃんはその場に膝をついて呆然と見守っていました。雷がけーちゃん達に当たるかと思った時、突如騎士が現れ雷を剣で防いでくれました。
「フシュー、..中々の威力であるが我、石の剣には効かぬな」
あ、あれは王国の騎士、ヨッシー様です!!ヨッシー様が剣を構え直し魔女に向かっていきます。魔女が魔法を唱える前にものすごい速さで走っていき、魔女に剣を突き刺しました。
「あ、ああ、結婚したかった...」バサ
騎士ヨッシー様のおかげで魔女を倒すことが出来ました!!そしてみんなが立ち上がると、はーちゃんの顔にはいつの間にか眼鏡が掛けられていて、イケメン眼鏡王子に変身していました。
「我は王国の騎士ヨッシー。王子をお守りするため、王国より来ました」
「ありがとうヨッシー。けーちゃん達は無事か」
「大丈夫だよ。はーちゃん、これで一緒に住めるんだね」
「けーちゃん。俺と一緒に住んでください」
「はい!!」
「では私達もここに住むニャ」
「そうだワン、あたし達も仲良く過ごすんだワン」
「良いですね、皆一緒でチュ」
「私も住むクマー」
「あーしも一緒だコン」
「うちもここに住むっきー」
けーちゃん、はーちゃん、ヨッシー、そして動物達はこの日からお城で一緒に過ごしました。
けーちゃんは大きくなると、はーちゃんと結婚し何時までも皆と仲良く過ごしましたとさ。
(ここまでが材木座の童話による演技)
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パチパチパチパチ
私達の演劇が終わって最後、舞台に並んで挨拶をしていると、園児や保護者の方が私達に拍手をしてくれているのだけれど、私はある一点に釘付けになってしまったわ。
そこには姉さんと母さん、そして父さんまでもが私達に拍手をしているのだから。..姉さんについてはニヤニヤしながら拍手しているのだけれど。それに横には都築が大きなカメラを三脚に付けて撮影しているわ。
「皆さん、良かったですよ」
「ありがとう、小町さん。手伝ってもらって。貴女達もありがとうね」
「嬉しいです、雪ノ下先輩達のお手伝い出来て」
「私も楽しかったです。お疲れ様でした」
「良かったよ。雪ノ下さん、真鶴さん」
「雪ノ下さん、真奈、面白かった」
「ありがとう、手伝って貰って」
「ぷぷ、皆の格好ウケるし。でも良かったよ」
「お疲れさま。私も楽しかったよ」
「ありがとう折本さん、仲町さん」
小町さんと小町さんの友達、J組のクラスメイト達、そして折本さんと仲町さんも裏方を手伝ってくれて助かったわ。
演劇部から色々借りたのだけれど、どうしても人手が足りずに困っていたら、小町さん達が名乗り出てくれて、クラスメイトも真鶴さんがクラスで声を掛けてくれ、私も一緒にお願いしたら快く引き受けてくれたわ。折本さん達にも声をかけたら学校まで遠いのに来てくれて手伝ってくれたわ。
「真鶴。..後で話がある」
私達が控え室の教室に行くと、先生が怒っているわ。そういえば真鶴さんアドリブでよくあんな事が言えたわね。
「こ、今回は先生のせいでこうなってんですよ。ちょっとぐらい良いじゃないですか」
「そうね、私達もこんな格好で辱めを受けているのは先生のせいだわ」
「そうだね、あたしもこんなコスプレするなんて思わなかったし」
「私もこんな格好させられるなんて思いませんでしたよ」
「皆いいじゃん。あーしなんて狐じゃなくて巫女だし」
「うちは嬉しいな、コスプレしてみたかったんだ」
「私も楽しかったよ、こんな格好する機会、なかなかないからね」
「こ、コスプレは八..比企谷と材木座だろ」
今回、先生がお金を出してくれると言うことで八幡と材木座君が衣装を選んだのだけれど、完全に二人の趣味ね。
私達には内緒で沙希さんに相談して私達が持っている服を調べてから、ネットで服や小物を買って沙希さんが直していたのだから。
先生は黒のロングワンピースを着ていて、三角帽子をかぶって手には杖を持っているわ。先生に似合っているわね。
私は尻尾付きの膝上黒色ワンピース、赤いチョーカーに鈴を付けている。八幡にドラ〇もんって言われたのだけど。でも猫耳と猫グローブは良いわね。全て黒色で統一してるので黒猫のようだわ、この小道具は貰えるってことなので、また着てみようかしら。
結衣はスポーツブラのようなトップとショートパンツにモコモコした毛が付いていて、お尻には丸い毛玉、犬耳と犬グローブ、レッグウォーマーを着けている。全てピンクで統一しているけれど一番露出が多いわね。
いろはさんは、ミ○ーのコスプレね。赤に白色の水玉模様で耳以外とても鼠には見えないのだけれど。でもミニスカートが似合っているわ。頬には黒い髭を書いて貰っているわね。
優美子さんは巫女さんの格好だけど赤い袴がミニスカートなのね。白いハイニーソックスを履いていて八幡は絶対領域が大事とか言っていたわ。長さにこだわりがあったようね。後ろには白い尻尾が付いていて狐耳のカチューシャと頭の横に狐のお面をつけていているわ。化粧も赤色でアイラインと髭を描いているのね。
南さんはボディラインが強調される長袖のボディコン衣装にパーカーが付いていて被ると猿の目と耳が付いているわ。手にはバナナのおもちゃを持っていて、靴下も白に黄色のラインが入っていてバナナを表しているのね。顔には頬紅を丸く描いていて可愛いわ。
姫菜さんはチューブトップとマイクロミニのスカートに黒い毛が付いている。お腹が5cmぐらい空いているので、お臍が見えているわ。パーカーが熊の耳になっていてモコモコのレッグウォーマーと手袋を着けていて可愛いわね。
演劇の最中、園児の父親達が私達をカメラで撮って母親に怒られていたわね。男性は何歳になってもコスプレに興味があるのかしら。
八幡も私達の写真を部室で撮ってくれたのだけれど、かなり興奮していたわ。そのまま私を押し倒してくれれば良かったのに。
今度、撮影があるときは自分でコスプレ衣装を買ってみるのも良いかもしれないわね。
「けーちゃん、は、はーちゃんに抱っこしてもらいな」
「うん!!」
私達の横で京華ちゃんが八幡に抱っこして貰って沙希さんが撮影しているわ。良いわね、あんなに八幡にくっついて抱っこして貰えるなんて。私が羨ましく思っていると、京華ちゃんは八幡の頬にキスしているわ。引き離したいけれど幼児相手にみっともないわね。京華ちゃんが写真を撮り終わり、私に近寄ってきたわ。
「ゆきニャン、お写真とって」
「わ、私は雪乃っていうのよ」
「うぅ、ゆきニャンだもん!!」
「そうだよ、ゆきニャン。その子と撮った後、私達とも撮ってよね」
私はそう言われ振り返ると、両親と姉さん、カメラを持った都築がニコニコしながら立っていたわ。
「こ、これは演劇の為の衣装よ。撮影なんてしないわ」
「ゆきニャン、駄目なの...」グスッ
「け、京華ちゃん、貴女となら撮るわ。どうすれば良いかしら」
「..抱っこ」
京華ちゃんは手を広げて来たので、私は京華ちゃんを抱き上げたわ。私も京華ちゃんとなら写真撮影したいから良いのだけれど、沙希さんが撮ってくれている隣でなぜか都築も撮影しているわ...
京華ちゃんと撮り終え、私が降ろすと次に結衣の方に写真を撮りに行ったわね。でもいつの間にか私は両親に両腕を取られているのだけれど...
「ゆきニャン、父さんとツーショットを撮ってくれないか」
「父さん、その呼び方は止めて」
「私もゆきニャンと撮らないと。あなた早く撮って貰いなさい」
「..母さんも止めてよ」
「母さんの次は姉さんだよ、ゆきニャン」
「はぁ..分かったわよ、一緒に撮れば良いのでしょ」
私は三人に言われるがまま、写真を撮って貰っていたけれど、家族四人で撮ったのは何時以来かしら。
私の両隣には父さんと母さんが、後ろから姉さんが抱きついてきて肩に顔を乗せているわ。私だけ可笑しい格好だけれど、この写真も何時かは思い出になるのよね。
本当はここに八幡が入ってくれると嬉しいけれど、さすがにそれはお願いできないわね。
最後に私達は舞台を手伝ってくれた人達も含めて、全員での集合写真を撮っていた。
奉仕部の活動でこんなにも沢山の人達が協力してくれて嬉しかったわ。
解散の挨拶の時、私が締め括ることになったのだけれど、嬉しさと終わってしまう寂しさで挨拶の途中、涙ぐんでしまったわ。
でも隣にいた結衣といろはさんが手を繋いでくれ、先生と優美子さん、姫菜さん、南さん、沙希さん、かおりさん、千佳さん、そして真奈さんも私に寄り添ってくれ支えてくれている。私は彼女達に支えて貰いながら最後まで挨拶を言い終えることができたわ。
この友達と何時までも一緒にいたい。これからもずっと皆で笑いあっていたい。
でも八幡が誰かを選ぶことで私達の関係は壊れてしまうかもしれないのよね。八幡には私を選んでほしいけれど、それでも皆と離れたくないわ....