「ようやくオオトリの出番だな、材木座頼むぞ」
「ここで切り上げて、もう帰りませんか。俺、かなりやばいんですけど」
「もう最後じゃない。週末なんだから少しぐらい遅くてもいいでしょ?」
「いや、帰りの時間を気にしている訳じゃなくて、俺の心臓が持ちそうにないんですけど」
「大丈夫ですよ先輩、私が癒してあげますから」
「いろはちゃん、ヒッキーは私の匂いが好きなんだから、私が癒すんだよ!」
「いや、その匂いの設定ってラノベの中だからね!?」
「じゃあ、雪ノ下、一色よろしく頼む」
「ねえ、なんで毎回、俺の言うこと聞いてくれないの?」
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(ここから材木座の小説)
今日は久しぶりに膝丈のスカートを履き、気晴らしにららぽまで買い物に来ていた。最近学校で気になることがある。比企谷が私のことを避けているような気がするのだ。
何かあったわけではないと思う。奉仕部では特に依頼があったわけではないし、私には思い当たる節がなかった。
ただ、廊下ですれ違っても部活に顔を出しても目を合わせようとしないのだ。釈然としないままウィンドウショッピングし、ららぽの中をぶらぶらしていた。
本屋の前に差し掛かると、見覚えのあるアホ毛を揺らしながら本を物色している男性を見かけたので、声を掛けた。
「めずらしいな比企谷、1人か?」
「!?先生!?どうもっす。」
比企谷は私の姿を見ると動揺しているのがわかった。
「そ、そのスカート似あっていますね」
「学校ではスーツしか着ていないからな、どうだ?大人の女性の魅惑を感じるか?」
「ええ、とても綺麗です」
比企谷の口からは聞いたことがない言葉が発せられ、私は思わず動揺してしまった。
「な、何を言っているんだ!?女性をからかうんじゃない!」
「いや、正直に言ったつもりですけど」
「そ、そうか。そのありがとう」
私は照れてしまい顔を赤くしていたが、比企谷とこのような会話を出来たのが嬉しく思え、先ほどまで考えていた私を避けているのは誤りであったと認識したが、何故か違和感があったので、この後すこし話をしたいと考えていた。
「なあ比企谷、もしよかったらこの後ラーメンでも食べに行かないか?」
「ええ、いいですよ」
まただ、何時もなら「あれがあれなんで」と言い、すぐには賛同しないはずなのに、今日は変に素直なところがある。
ラーメンを食べるため、私の車でららぽを後にした。食べ終わり比企谷に話を聞くため、海が見える公園の駐車場に車を止めた。
「なあ比企谷、最近悩んでいることはないか?」
「何でそう思うんですか?」
「なんだか私を避けているような気がしてな」
「....それは、勘違いじゃないですよ」
「私が何かしのたか?気に障ることをしていたのなら、正直に言ってくれ」
私がそういうと、比企谷は助手席から体を乗り出し、私のほうに体を向けてきた。
「ど、どうしたんだ?」
「俺、先生のことが好きです」
「な、なにを言って キャ!?」
比企谷はリクライニングシートのレバーを操作し、私ごとシートを押し倒した。そして上半身を私の上に被せてきた。
「静さん、今からキスします。受け入れられないんだったら、俺を払いのけてください」
そういうと比企谷は顔を近づけてきた。教師と生徒、受け入れられるはずがない。でも私の体は言うことを聞かず、そのまま比企谷の唇を受け入れた。
「先生、いや静さん。これからお願いしますね」
「でも教師と生徒。世間が認めてくれるはずがない」
「後1年もすれば俺は卒業です。そすれば世間がどうとか考えなくていいんです」
「でも、比企谷の将来を潰す可能性も」
「じゃあ、静さんと付き合ったら必ず不幸になるんですか、付き合わなかったら必ず幸せになるんですか」
「....本当に私でいいのか」
「静さんじゃなきゃいやです!!」
また私は唇を奪われた。今度は長く舌と舌を絡めあうキスを味わった。
「....」
「そ、そろそろ帰らないと不味いな」
「俺、静さんとなら泊まりでもいいですよ」
「う、嬉しいんだが、それはまた今度にしてほしい」
「わかりました、じゃあ帰りましょうか」
帰宅するため車を走らせたが、信号で止まると比企谷は声を掛けてきた。
「静さん」
「どうした?」
私が比企谷のほうに顔を向けると彼はキスをしてきた。
「あ、危ないじゃないか!?」
「大丈夫ですよ、車が止まっている時にしますし」
比企谷は信号で止まるたび、キスを求めてきた。
「静さん、気づいています?今は自分から求めて来てますよ」
「....いじわる」
「いじわると言うのはこういう事を言うんですよ」
車が走り出すと、彼は肘掛に置いていた私の手を恋人繋ぎしてきた。これの何処が意地悪かと思っていると、もう片方の手で下着が見えるかどうかの際どい所までスカートを捲り上げられた。
「ひ、比企谷!恥ずかしい!!」
「駄目ですよ、ハンドル放したら。静さんエロイですね、黒いガーターベルトに黒のパンティですか。白い肌がより際立っていますね」
「お願い、許して」
「いやです俺のことを名前で呼んでくれないし」
「....は、八幡、許して」
「名前で呼んでくれましたね、でも直しませんよ。綺麗なものは何時までも見ていたいし」
信号で車が止まり、私はすかさずスカートを直した。そのとき八幡はキスをしてくれなかった。また車が動き出すと、またスカートを捲り上げられた。前回と違うのはもうパンティが丸見えになっていることだ、そして手で太ももを撫でてきた。
「この下着、横はシースルーになっているんですね」
「は、八幡。ごめんなさいぃ。もうゆるしてぇ」
「家に着くまではこのままですよ」
私は車の中で虐められ続けた。今まで自分がMだとは思っていなかったが、八幡に虐められるのが心地よく思ってしまっている自分がいることに気づいた。
ようやく八幡家に着くころには、私の身体はかなり火照っていたが、今日はおとなしく帰ったほうが良いだろう。付き合い始めて高校生が初日から外泊では私が誘っているようなものだし。
「それじゃあ、八幡。今度はその、あ、余り虐めないでね」
「それは静さんしだいですよ、でも少しは虐められたいんですよね?」
「....少しはね、それじゃまた」
「ええ、また」
最後に口づけをし、私は車を走らせた。
八幡が見送ってくれているなか、ブレーキランプを5回光らせるのを忘れずに。
(ここまでが材木座の小説)
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「....」
今回は比企谷君と先生だけでなく、読んでいた私や一色さん、聞いていた由比ヶ浜さんも含め全員、顔を真っ赤にしている。私はこのラノベを読んでいる時、途中で放り投げそうになったわ。
「中二、エロすぎ!!なんでこんなの書いてんだし!?」
「いやこれぐらいラッキースケベのあるラノベでは当たり前だぞ」
「結衣先輩、知り合いだから余計にエッチに感じるんですよ、多分」
「そうね、平塚先生で容易に想像できてしまうものね」
「や、やめて!!私で想像なんて!!」
「いや、先生を登場人物にしているんだから当然でしょ。黒歴史になるからやめようって言ったのに聞かないからですよ」
「うぅ、比企谷の言うとおりだったぁ」
先生は目を潤わせて
「大体、先生のキャラが途中で変わりすぎですぅ、段々言葉遣いが変わってってますよね?」
「それは八幡に段々染められていっているという設定で書いてるんで」
「でも最後なんて乙女みたいですよ」
「いや、先生が乙女だなんて」
そういうと比企谷君は身体を守るように手を前にかざしたが、平塚先生は手を出そうとせず、比企谷君のほうを潤んだ目で見ていた。
「なあ比企谷、私がラノベにあったような言葉遣いだと変かな?」
「い、いやおかしくないとは思いますが....」
「っていうか先生、すでに言葉遣い変わってるし!?」
「でも以外でした。木材先輩なら先生のラノベは絶対コメディにすると思っていましたし」
「あ、それ私も思った」
「先生のラノベを考えるのが一番つらかったのだ。どうしてもギャグに走るか18禁になるかになってしまっていたんだが、ギャグだと我に鉄拳が降り注ぎそうだし、18禁だとお主たちに声優を担当してもらうのが、どうしても申し訳なくてな」
「....たしかにそんなの声に出しては読めませんよね」
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「私としては、なぜ比企谷がそれぞれの女性を好きなのか、過去に何があって好きになったのか、もっと細かい心理描写を書いたほうがいいと思う」
「先生、それを聞くと俺が誑しみたいじゃいですか、せめて主人公とか男とかにしてもらえないですか」
「確かにそうね、私のときも比企谷君が「雪乃、好きだ」って言ってくれたんだけど、いきなりだったものね」
「私のときは「俺は何時も俺のそばに居てくれる、いろはが好きだ」でしたね、先輩!!」
「「由比ヶ浜結衣さん。好きです。俺と付き合ってください」ってヒッキーがちゃんと付き合ってくれるって言ってくれたもん!!」
「私のは「俺、先生のことが好きです」って言って最初は比企谷に名前で読んでもらえなかった....」
「何を争っているの!?ねえ、だから俺の名前出さないでくれる?」
「あと、私のラノベなら比企谷、雪ノ下たちのラノベなら女性陣の心理描写も書けると良いかもな」
「一人称ではなく、二人称にするということですか?」
「まあ、何処で切り替えるとか難しいがな、もっと長い話であればそれも可能だろう」
「材木座、今回の小説はそれぞれの特徴が出ていて面白かったぞ。自分なりにキャラクターを考えていけばもっと話が膨らむと思うので、これからもがんばってみたまえ。いつでも相談に乗るぞ、今回は時間のない中よく書いてくれた。ご苦労様」
「そうですね、木材先輩、ありがとうございました」
「うん、中二ありがとう」
「私からもお礼を言わせて、材木座君ありがとう」
こうして材木座君のラノベ騒動は一旦終わりを迎えた。
一旦?