やはり材木座が書くラノベは間違っている   作:ターナ

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この話の前に城廻めぐりで卒業前に書くつもりでしたが、思いつかなかったので一気に終業式まで話は飛んでます。
文字数が多くなってしまいましたが、良かったら読んでください。



逆襲の材木座

今日は材木座君に皆呼ばれて集まっていたわ。どうして終業式の日に集めたのかしら。

奉仕部の皆と一色さん、三浦さん、海老名さん、相模さんが材木座君の来るの待っていると、扉をノックして川崎さんが入ってきたわ。

 

「この封筒、さっき材木座に渡されたんだけど、アイツ来れないって言ってたよ」

 

そういって、川崎さんは私に封筒を渡してきたわ。中身を確認すると、ラノベが入っているようね。読んだわけではないのだけれど、同じものが10部ほどコピーされて入っているわ。

 

「材木座君が居なくて分らないのだけれど、このラノベのために集められたのかしら」

「そうだろうな。材木座のやつ、どうせゲーセンとかに遊びに行ったんだろ」

「では読んでみましょうか。ただいつもの確認はどうすれば良いのかしら」

「俺が読もうか、どうせ出てるだろうし」

「みんなで読んでみて、読むの早い人が不味いと思ったら、止めれば良いっしょ」

「そうね、今回ページが多いのでそうしてみましょうか」

 

私たちは全員で材木座君のラノベを読み始めたわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「小町、大丈夫か」

「うん、お兄ちゃん。小町のことは気にせず、学校行ってきて良いよ」

「わ、分かった」

 

小町はそう言ったが、見るからに衰弱しているのが分かった。それというのも春休みに入ってから、総武高が何者かに乗っ取られ、禍々しい物体をまき散らし体の弱いものを苦しめていた。みんなは魔女と呼んでいたが、誰もその正体を知らなかった。

小町には総武高がそのようになったことは言っていない。入学を楽しみにしていたので、とても今の状況を話すことが俺には出来なかった。だが先ほどの会話では小町も気づいているのだろう、俺は何も言えなかった。

 

俺が家の外に出ると、隣に住む幼馴染の沙希が玄関先で待っていた。

 

「あんたのことだから学校に行くんだろ。私も行くから」

「..いや、俺は散歩に行くだけだ。今の状況で学校に近寄れないだろ」

「ふーん、そういうことにしてあげるよ。小町のことは大志に任せな、家でけーちゃんたちの看病してるから」

 

けーちゃんたちも倒れたのか。体が小さいため抵抗力がないのだろう。大志に小町を任せるのは癪だが、背に腹は代えられない。

沙希は大志を呼んで、小町の面倒を見るように言っていた。

 

「お兄さん、何があっても小町ちゃんは俺が守ります」

「..誰がお兄さんだ。お前にそう言われる筋合いはないぞ」

「でも小町ちゃんのことは任せてください」

「...分かった。小町に何かあったら許さないからな。お前に小町とけーちゃんたちを任せる....だからよろしく頼む。大志」

「はい!!!!」

 

俺は大志の胸を拳で叩いて依頼した。大志からは今までで一番いい返事が返ってきて、沙希も大志に任せると行って、俺と一緒に歩き出した。

学校に歩き出すと、家の玄関を開け猫が飛び出してきた。猫と言ってもこの異変により、体長が俺の身長より大きくなったカマクラが横に並んでついてきた。

 

「は、八幡。これってカマクラか!?」

「ああ、この異変で動物にも影響が出ているようだ」

「そうなのか、飯代が大変そうだな。でも私の猫アレルギーが出ないんだけど」

「もしかしたら、沙希の体にも異変が起こっているのかもな」

 

俺たちはカマクラと一緒に学校に向かっていったが、道には誰もいない。皆、自宅待機や学校から少しでも離れるため、遠くに行っているのだろう。

学校に歩いていくと、途中総武高校の制服を着た女子生徒が路肩に立っていた。

 

「待ってましたよ。先輩」

「いろはか!?」

 

顔や容姿は俺の知っているいろはだったのだが、彼女の後ろには禍々しい翼が生えていた。コスプレをしているわけではない。その翼はコオモリのようなもので、時折バサバサ動いていた。

 

「ふふ、私の体からいきなり翼としっぽが生えてきたんですよ。だから制服とパンティ破いちゃったんですけど、似合っているでしょ」

「..いろは、なんで俺たちの前を遮るように立っているんだ」

「だって先輩たちを止めないと行けませんからね、学校には行かせませんよ」

 

そういうと、いろはは翼を羽ばたかせて、空中に飛翔しだした。

 

「は、八幡。なんだよあれ!?」

「分らん。だが俺たちの邪魔をするようなら戦うしかないだろうな」

「あんた、戦えるの!?一色だろ!!」

 

俺たちが話していると、いろはは空中でクリスタルのようなものを両手で挟み囁きだした。いろはの囁きが終わると遠くの方から呻き声が聞こえてきて、段々俺たちの方に近寄ってきているのだろう、声が大きくなってきて姿を現した。そいつらは総武の制服を着た男子生徒達だったが、目の焦点が合っておらず、ゾンビのようにゆっくり俺たちの方に近寄ってきた。

 

「先輩。その子たちは私の奴隷なんですよ、今から先輩を生け捕りにしますからね」

「八幡!!どうするのさ!?」

「戦うしかないだろ、今から魔法を詠唱する。沙希、すまんがそれまではアイツらを防いでくれ」

「戦えって私に何が出来るのさ!?空手しか出来ないんだから!!」

 

そう言いながらも、沙希は拳を前に出して空手の構えをしていた。沙希は近くまで近寄ってきた男子生徒に正拳突きを食らわすと、その生徒は10m以上吹き飛ばされていた。す、すさまじい威力だな。

 

「こ、これって!?でもこれなら戦える!!」

 

俺は目を閉じ詠唱を始めた。自分でもなぜこんなことが出来るのか分からないが、異変が起こってから頭の中に言葉が浮かんでくるようになり、それを集中しながら口に出すと、魔法が唱えられるようになっていた。

目を閉じていても沙希が戦っているのが、耳を通して伝わってくる。沙希も異変で身体に影響が出ているのだろう。

俺が詠唱を終わると、沙希の体が輝きだした。眩い光が収まると、沙希の体には肩当てやガントレットが装備されていた。

 

「凄い!!」

「体の動きは邪魔しないはずだ」

「サンキュー!!愛してるぜ八幡!!」

 

沙希は装備品の重さを感じさせない、逆に身体能力が大幅に向上しているような動きを見せていた。俺は沙希を見届けると、自分に対しても魔法を使った。

 

黒鳥嵐飛(レイ・ヴン)

 

俺の体は空中を飛翔し、いろはに迫っていった。

 

「...やっぱり先輩は邪魔ですね。生け捕りにはできそうもないですよ、魔女」

「いろは、魔女とは誰なんだ?俺の知っているやつか」

「そんなの、関係ないじゃないですかぁ。今は私が相手なんですから」

 

いろははそういうと、手に持っていたクリスタルを天にかざした。

 

「我が忠実なる僕に命ず 主の召喚に応えよ 巨像よ覚醒めよ。巨像覚醒(モータ・ルシー)

 

いろはが魔法を唱えると、近くのビルが崩れ石のゴーレムが現れた。大きさが10mは超えている。だが俺は今、空を飛んでいるんだ。どうやってこちらを攻撃するんだ?

ゴーレムは俺を見ていたが、いきなり方向を変え、沙希に向かっていた。

沙希は正面の生徒達を相手するのに必死で、ゴーレムの動きが見えていなかった。沙希は死角からゴーレムの蹴りを受け壁に激突していた。

 

ガハッ!!

 

「沙希!!」

「は、はちま ん。だ、だいじぃ」 ゴフッ

 

八幡。ごめん、私が足手纏いになって。でもまだ戦える!!私は、震える足で立ち上がると、男子生徒達を倒していった。突きや蹴りを繰り出すたびに体中が悲鳴を上げている。内臓がやられたのか口から止めどなく血が出てくる。

足にはヒビが入っているのだろう、左手が折れている。でも私は戦うのをやめなかった。少しでも八幡の役に立ちたい。私は何とか最後の生徒を倒したけど、そこで力尽きて倒れてしまった。

私はここまでだろうけど、少しでも八幡の役に立てたなら嬉しいな。何時も私のご飯を食べて、おいしいって言ってくれる八幡が大好きだった。こんなになってしまった今だから、私の素直な気持ちを言える。

 

「はちまん、すき.だ.よ」

 

沙希が何か呟いていたが、声が小さく俺の耳には聞こえてこなかった。ただ、かなり不味い状況ということだけはわかる。

 

「カマクラ!!」

 

俺がカマクラを呼ぶと、カマクラは沙希に駆け寄っていき、口に咥えてゴーレムから距離を取っていた。俺が沙希を見ていると、カマクラに声を掛けている女性がいた。

 

「カマクラちゃん!!こっちに来て!!」

「姫菜か!?どうしたんだ、その耳は!!」

「今はそんなことより、サキサキを治療しないと」

「頼めるのか」

「任せて、だからハチは一色ちゃんを」

 

俺は沙希を姫菜に任せて、いろはに向き直った。いろははゴーレムに守られるようにして、後ろに浮かんでいた。

 

「許さないぞ、いろは」

「どう許さないんですか、先輩。この子に勝てるんですか」

 

「ブー・レイ・ブー・レイ・ン・デー・ド 血の盟約に従いアバドンの地より来たれ  ゲヘナの火よ 爆炎となり 全てを焼き尽くせ」

「先輩。この子、石で出来てるんですよ。炎で倒せるわけないですよ」

炎魔焦熱地獄(エグ・ゾーダス)!!!!」

 

俺は魔法を唱え、ゴーレムに向かっていった。ゴーレムの腹に突っ込んでいくと、石が真っ赤になり溶岩のように溶けだしていった。

 

「え!?い、石を溶かしてる!?キャーーー!!」

 

俺はゴーレムを溶かしながら腹部を貫いて行き、いろはの持っていたクリスタルを叩き割っていた。

意識を失ったいろはを抱え地上に降りると、いろはを路肩に寝かせた。沙希と姫菜、カマクラが俺たちに駆け寄ってくる。

 

「ハチ、一色ちゃん大丈夫なの?」

「ああ、クリスタルを割ったら羽と尻尾がなくなっただろ。それより沙希は」

「うん。治療したけど、私の力だと完全に治せないんだ...」

「ありがとう、海老名。何とか体は動かせるよ」

「姫菜は僧侶なのか?エルフみたいな耳になってるな」

「うん、でも回復魔法とかまだちゃんと使えないみたい。...沙希、ごめん。もしかしたら内出血したところ、後が残るかも...」

「海老名、気にしないで。私は死にそうだったんだ。それを治して貰っただけで有難いよ。カマクラもありがとうね、私を助けてくれて」

「にゃーん」

 

俺たちが話していると、遠くの方で魔力が集まっていくのが、感じ取れた。

 

ゴゥ!!

 

俺たちに放たれた炎がすごい勢いで駆け抜けてくる、俺は沙希と姫菜を抱えて間一髪よけていた。

 

「ふーん、今の避けたんだ。当たってくれてたら楽だったし」

「優美子!?」

「ヒキオ、あーしと戦うし」

「お前も魔女の手下か」

「そんなこと、どうでもいいし。じゃあ、あーしから行くよ」

 

優美子はそういうと、魔法を詠唱しだした。

 

雷神召来(セカン・ヒード) 我は命ずる 暗き天より来たれ 雷の精 霊撃雷電襲(ギルバルド)

 

あの詠唱は!!俺も少し遅れたが、詠唱を始めた。

 

火炎召来(アー・ターブ・サン) 不滅なる燃焼よ 我が導きに従え 霊破火炎陣(ダ・フォーラ)

 

魔法を詠唱し終えると、優美子の周りを雷精が俺の周りをサラマンダーが飛び交っていた。

 

「ふ、ふたりとも凄い!!あれだけの精霊を召喚・制御できるなんて」

「でも魔法勝負なら八幡の方が上っぽいね。精霊の数が八幡の方が多いよ」

 

精霊たちはお互い戦う相手を見つけ攻撃していた。俺の残った精霊たちは優美子を攻撃していた。優美子の劣勢で進んでいると、雷精がサラマンダーの攻撃を逃れ、沙希と姫菜がいるほうに向かっていった。

 

「「きゃーーー!!」」

「沙希!!姫菜!!」

「「大丈夫!!」」

「...ヒキオ、あーし相手に手を抜いていると、あんたの大事なもの奪ってやるから」

「優美子!!」

 

ごめん。姫菜、川崎さん。精霊を制御しきれず攻撃してしまったし。でも、あーしにはこれしかないんだ。もう時間がない、今度で最後にしないと。やっぱり自分の気持ちに嘘を付けない。だからヒキオ、今度であーしを殺して。

 

「行くよ、ヒキオ。あーしの取って置きの魔法を見せてあげるし」

「分った、優美子」

「「カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク  灰燼と化せ 冥界の賢者 七つの鍵をもて開け 地獄の門」」

「ハチと優美子が二人同時に同じ魔法を詠唱しだした!!」

「「七鍵守護神!!(ハーロ・イーン)」」

 

あーしとヒキオの魔法がぶつかり合って、辺りを崩壊させていく。拮抗してるんだけど、段々あーしの方に近寄ってきてるし。でもその方がいい。このままあーしの身体を塵一つ残さず、焼き尽くしてほしいし。

ヒキオ、好きだよ。この気持ちをずっと伝えたかった。でも、もう良いし。今はヒキオにだけはあーしの醜くなる姿を見せたくない。だからヒキオの手であーしを消し去って。偶にはあーしが居たことを思い出してね。

 

「ヒキオ..ううん、八幡。愛してるよ」

 

(おにいちゃん!!優美子さんをちゃんと見て!!)

なんだ?小町が俺の中で何かを叫んでいる。優美子を見ろ?どういうことだ?

俺は魔法を放出しながら優美子をみると、涙を流して俺に微笑んでいた。そして右手の先から血を垂れ流しているのが見えた。あ、あの爪の色は青爪邪核呪詛(アキューズド)!!なんで優美子に呪いがかかっているんだ!?

あのままだと、カエルの姿になってしまうはず。そしてあれを解除できるのは俺の心臓!!

 

「優美子ォーーーー!!!!」

 

ヒキオが叫ぶと魔法が上空に方向を変え消し飛んでいく。ヒキオは何時の間にかあーしの前に立っていた。

 

「ヒキオ..」

「すまん、優美子。苦しかっただろう、ごめん。気づいてあげれなくて」

 

ヒキオはそういうと、自分の胸に手を当て、詠唱したと思うと、魔法を自分の心臓に放っていた。

いや、なんで...

 

「いやーーーーー!!!!」バシューーゥ

 

「い、今、優美子の身体から、なんか禍々しいものが飛んでったよ!!」

「は、八幡は!?」

 

優美子からなんか飛んでいくと、ハチの身体は優美子の方に倒れていった。私と沙希が優美子に駆け寄っていくと、ハチは胸から血を流していて優美子に抱えられていた。優美子は泣き叫んでいて、サキサキも泣き出してしまった。私も泣きたかったけど、今は治療が先決だ。

私が絶対ハチを生き返らせるから!!私が初めて好きになった男性を失いたくない。私の趣味を知っても受け入れてくれて、普通に接してくれるハチが好き。だから生き返って!!

私は何度も蘇生の魔法を繰り返し使っていた。頭の中で何か焼き切れているような感覚がする。でも今はハチを生き返らせることを優先したい。私はどうなってもいい、神様!!愛おしいハチを生き返らせて!!

 

「お願いハチ!!目を開けてよ!!私まだハチに何も言えてないんだよ!!お願いだから想いを伝えさせてよ....ウゥ」

 

私はハチに何度も魔法を使って傷は完全に治したけど、ハチが目を開けることはなかった。

....

...

..

.

「ごめん。ごめん。あーしのせいでヒキオが..」

「....私は学校にいくから」

「..川崎さん。どうして」

「八幡がやろうとしたことを私がやるだけだよ」

「うん、サキサキ。私も行く。...優美子は無理しないで」

「..あーしも行くよ。ヒキオに助けてもらった命、ヒキオの守りたい者の為に使う」

 

私と優美子、サキサキが学校に向けて歩き出したけど、はっきり言ってこの三人は満身創痍だった。私は魔法を使いすぎていたし、記憶が曖昧になってきている。サキサキは一色ちゃんとの戦いでやられた傷が回復していない。優美子もハチとの戦いで大きな魔法使ってたし、呪いで出来たのだろうか、肌が見えるところだけでも五分の一ほど変色して黒くなっている。私たちを心配してか、カマクラちゃんが私たちを守るように歩いてくれていた。

たまに魑魅魍魎が私達の方に向かってきたけど、優美子の魔法ですぐに消し飛んでいった。

 

「あーしにはこんなことしか出来ないし。だからあんたたちは極力、力を残していおいて」

 

優美子も大変なはずなのに、私達のために力を使ってくれていた。足が震えていて優美子もかなり無理をしているのが分かった。でも私には優美子の代わりなんてできないし、サキサキにもあんなこと出来ない。結局私は誰かに頼るしかないんだ。ごめん優美子、今は頼らせてね。

 

私たちは学校まで歩いて行った。学校の校門前に一人、見知った先生が立っているのが見えた。

 

「....平塚先生。あなたはどちら側ですか」

「海老名、変な質問だな。そんなのは決まっているだろ!!」

 

そういうと、平塚先生はいきなり私に殴りかかってきた。殴られる!!私は目を瞑って衝撃に備えていたけど、私が殴られることはなかった。恐る恐る目を開けると、そこには平塚先生の攻撃を防いでいる女子生徒がいた。

 

ガシッ!!

 

「海老名さん、下がって!!」

「さ、相模さん!?」

「相模か、...お前のそのブレード...」

「村雨、伝説の宝剣ですよ。相模家で隠し持っていたんです」

「相手にとって不足はないな」

 

相模さんと平塚先生が戦いだした。相模さんは侍?忍者だろうか、制服の上から甲冑を身に纏い平塚先生に切りかかっている。でも先生も凄い!!私には目で追えない相模さんの攻撃を全て躱している。

でもなんだろう、相模さんが押しているように見えるけれど、相模さんが後ろに段々下がっていっている。そう思っていると、平塚先生の蹴りが相模さんの腹部を捉えていた。

 

ドスッ!!

 

「ウグッ!!...さ、さすがですね、先生」

「ふん、お前になど遅れを取るものか」

「相模、加勢するから」

「あーしも」

「駄目!!二人とも立っているのもやっとでしょ。うちに任して今は体力を温存して」

「でも、相模がやられたら、あーしらもやられるし!!」

「...先生。最後まで付き合ってもらいますよ。....村雨よ、お前の本当の力を今、我が前に示せ!!」

 

相模さんがそう叫ぶと、刀の柄の部分が長くなっていた。真ん中で二つに分かれ、幾つもの角みたいなものが出てきている。

 

「燃やせ 灰となるまで 我が命よ! 白人と化して奴の喉笛を ぶっちぎれーーー!!」

 

「こ、これは!?..グワアーーー!!」

 

や、やった。相模さんが平塚先生を倒した!?でも相模さんも全身から血を噴き出して倒れてしまった。刀から生えている角みたいなのに何か吸われていたようだったけど、もしかして相模さんの精気を吸われてたんじゃ...

 

「..ふーーー、まだだ。終わらせんよ、こんなところで」

 

そ、そんな。相模さんの命を懸けた一撃でも倒せないなんて。私が見ていると、平塚先生も相模さんも立ち上がろうとしている。駄目!!もう立たなくていいから!!相模さんの白目は充血していて真っ赤になっていた。ああなってしまったら、私の魔法なんかでは治せない。なんで相模さんはそこまで出来るの?

 

「ゴフッ...せ、先生。まだですよ。うちにはまだやり残したことがあるんだから」

 

うちは八幡に助けられた。八幡のことだからうちを助けたとは言わないだろうけど。でも八幡がうちを助けてくれなかったらどうなっていたかなんて、少し考えれば分かる。

それにうちは八幡のことが大好きだから。八幡のためなら命を捨ててもいい、本当に人を愛するってことを教えてくれたから。

うちがそんなことを考えていると、強大な魔力がこちらに近づいてくるのが分かった。こ、この気って八幡!?でも先生も気づいているのだろう、八幡が来る前に皆を倒すため、呼吸を整え気を溜めだした。

 

村雨、もう一回、力を貸して。うちの命を使っていいから。だから八幡の大事な皆を守るため、うちに力を貸して。

 

「行きますよ、先生」

「受けきってやるさ、お前を倒せば死にぞこないばかりだからな」

 

村雨がまた精気を吸い出した。うちの残り少ない精気を吸っているのだろう、この攻撃でうちは死ぬんだね。最後に八幡に会いたかったな。

 

「八幡。お別れだね、大好きだよ」

 

うちが技を出そうとすると、村雨の刀身が光り輝きだした。

 

慶雲鬼忍剣(けいうんきにんけん)!!」

「な、なにーーー!?さ、先ほどとは威力が違う!!...グワーッ!!」

 

ドカーーーン!!

 

うちは技を出した後、放心していた。でも先生は倒れてるけど、うちは命尽きることなく、その場に立っていた。どうして?

そう考えていると、三浦さん、海老名さん、川崎さんがうちに駆け寄ってきて抱きつき褒め讃えてくれた。カマクラちゃんもうちの身体に付いている血を舐めとって綺麗にしてくれてた。

暫くすると、八幡が飛んできて、うち達みんなに抱きついてきた。

 

「南、大丈夫か!?」

「うん、八幡こそ大丈夫なの?」

「ヒキオ!!生きてたんだ!!ごめん、あーしのせいで!!」

「優美子、大丈夫だ。俺は生きてるから気にするな」

「八幡、よかった!!本当に良かった!!うぅ」

「ハチ、心配かけないでよ!!」

「よく分からないんだが、夢の中で俺に南の精気が流れてくるのを感じたんだ。そしたら目覚めていた」

 

うぅ..

 

うち達が話していると、先生の方から呻き声が聞こえてきた。うち達は注意しながら先生を確認すると、皆、呆然としてしまった。先生の顔はすごく年老いた老婆のようになっていたから。

もしかして、村雨が2回目精気を吸い出したのは、先生からなの?でもそう考えると、うちが生きているのが頷ける。慶雲鬼忍剣を放った時は村雨が力を貸してくれたように感じたし。

 

「すまない、南。俺に命を分け与えてくれたんだな」

「ううん、村雨がやったことだから。でもそう言ってくれてありがとう」

「南、その目...」

「うん、良いの。視界は真っ赤だけど、目は見えるし大事なものは守れたから」

「..無理をさせてすまなかった、皆を守ってくれてありがとう」

「八幡//..でも今はそんなことより、やることあるでしょ」

「そうだな」

 

俺たちが、校舎の方に目を向けると、一部の教室の周りに氷が張り付いてるのが見て取れた。氷の中心は奉仕部か。あそこに魔女が居るのか。俺は魔女が誰か確信した。ただ、なぜこんなことを。

俺たちは奉仕部に向かうため、校舎に入ったが、ここにも人が誰もいない。誰にも邪魔されることなく、奉仕部の部室まで辿り着いていた。

部室の扉を開けると想像していた通り、雪乃が優雅に紅茶を飲んでいた。ただ教室内には氷が張り巡らされ、俺たちは教室内に入れなかった。

 

「来たのね、八幡」

「..雪乃、お前が魔女なのか」

「それに答える必要はあるのかしら。貴方はここで私のものになるのだから」

 

雪乃がそういうと、彼女の周りの空気が冷えだした。空気中の水蒸気が結晶化しているのだろう。ダイヤモンドダストが出来、幻影的な光景が広がっていた。

 

「雪乃を倒してこの戦いを終わりにする!!」

「あなたに出来るのかしら」

「カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク  灰燼と化せ 冥界の賢者 七つの鍵をもて開け 地獄の門 七鍵守護神!!(ハーロ・イーン)

 

ハチが放った七鍵守護神が雪ノ下さんに当たると思ったとき、七鍵守護神は方向を曲げ、窓を突き破り外へと出て行った。雪ノ下さんは動くことなく、紅茶を飲んでいる。

 

「あ、あれは!?」

「川崎さん、貴女ならわかるかしら。そうよ、私の周りは絶対零度で保たれているの。そこに電流を流せば、強力な電磁波を発生させられるわ」

「ちょ、超電導!?」

「どうすれば良いんだ、沙希」

 

私たちが話していると、カマクラちゃんが私たちの身体を押しのけてきた。

 

「カ、カマクラ!?」

「あら、カマクラさん。貴方すごく大きくなったのね。私の相棒にしてあげるわ。こちらにいらっしゃい」

 

カマクラちゃんは私たち全員の顔を見て、何かを決心したように教室に入っていった。

雪ノ下さんはカマクラちゃんが歩くところだけ、氷の結晶を消し去りカマクラちゃんが歩きやすいようにしていた。

 

「ふふ、カマクラさん。可愛いわね。あなたが居れば猫に包まれて眠る夢を叶えられるわ」

 

雪ノ下さんはそう言ってカマクラちゃんに手を差し出した。カマクラちゃんは雪ノ下さんの手を舐めていき、雪ノ下さんの顔も舐めだした。

 

「カ、カマクラさん。それは後にして頂戴。みんな見てるでしょ//」

 

カマクラちゃんは雪ノ下さんの言うことを聞かず、顔を舐めていた。雪ノ下さんが目を閉じたとき、カマクラちゃんの表情は一転、獲物を狙う獣の顔になって、口を大きく開いていた。

私たちが見ていると、大きく開いた口で雪ノ下さんの頭を咥えこんでいた。あれでは魔法を詠唱できない。雪ノ下さんは手足をバタバタさせていたたけど、そのうち動かなくなって、周りの氷も無くなっていった。

カマクラちゃんが雪ノ下さんを吐き出すと、彼女は気絶していた。

 

「..八幡、もしかしてこれで終わり?」

「ねぇ、ヒキオ。そうなの?」

「終わったことは良いんだけど」

「うん。うちも最後だから...もうちょっと、ね」

「..ただ、辺りを漂っている禍々しい雰囲気は変わっていないんだが」

「じゃあ、雪ノ下さんが魔女じゃなかったってこと」

 

その時、校舎の下の方で爆発が起こった。私たちが走っていくと、家庭科室から紫色の煙が立ち上っている。

 

「あっちゃー、また失敗しちゃったし」

「「「結衣!?」」」「結衣ちゃん!?」「由比ヶ浜!?」

「小町ちゃんの入学祝いのためにケーキ作ってんだけどね、なんだかおかしいの。変なものばっかり出来ちゃうし。食べたサブレもほら」

 

そういって結衣の指さす方を見ると、校庭で遊んでいる犬の姿があった。ただ車より大きく5mは超えてるだろう、顔が三つあるケルベロスが車を転がして遊んでいた。

 

「..ダークマター」

「みんなでケーキ作ってたんだけどね。ゆきのんもいろはちゃんも先生も食べた後、どこか行っちゃって誰も教えてくれないんだ」

「思い出した。あーしも結衣の机の上にあった変なの触ってからだったし。呪われたの」

「....ねえ、結衣。どうしてそんな格好してるの」

 

結衣はほとんど紐の黒い水着を付けており、白いガーターベルト、黒の網タイツを履いていた。

 

「ヒッキー。どう、あたしに欲情した?この爆乳元帥結衣ちゃんに」

「「「結衣!?」」」「結衣ちゃん!?」「由比ヶ浜!?」

「ヒッキー。このケーキ食べて、あたしのものになって。そしたらみんな助けてあげるよ」

 

そういうと、結衣は手の平を私達に向け、魔法を詠唱しだした。早くて何も聞き取れない。ただ私たちは何かに体を縛られたように動けなくなっていた。

 

「止めるんだ、結衣!!」

「ヒッキー、あたしのものになってくれるんだよね」

「嫌だ。俺は沙希、姫菜、優美子、南が好きだ。俺の為、皆の為に自分の命を擦り減らして守ろうとしてくれた皆が好きだ!!」

「ヒキオ//」「ハチ//」「「八幡//」」

「ふーん、じゃあみんな死んじゃってもいいんだ。サブレ!!食べちゃって!!」

 

結衣が叫ぶとケルベロスのサブレが窓を突き破って入ってきた。私たちを食べるために三つの大きい口を開け迫ってきた。

 

「サブレ、お座り」

 

ハチが落ち着いた口調で言うとサブレは動きを止め、ハチのことを見ていた。

 

「サブレ、お座り」

 

また一緒の口調で言うと、サブレはハチの横に移動してお座りをし、頭を下げていた。三つの頭をハチは順番に撫でていった。

 

「ど、どうして?サブレ!!あたしがご主人だよ!!」

「俺とサブレはそんなご主人とか関係ないんだよ。な、サブレ」

「「「くぅーん」」」

「あったま来た!!皆殺してあげるから!!」

 

そういうと、結衣は私達の締め付けを強くしてきた。ハチは魔法を詠唱しだしたため、目を閉じている。

か、体が引き裂かれそう。でも、私達は誰も呻き声も上げなかった。私はハチの邪魔をしたくないから、皆も一緒の気持ちなんだろう。

 

「ヘド バン ギア 汝ら 我が頭で奏でし女神 唱える者 スゥメタル ユイメタル モアメタルの召喚に応じよ 狐神憑依少女!!(ベビーメタル)

 

ハチが魔法を唱え終わると、結衣に三匹の狐が襲い掛かっていた。狐たちは結衣の身体を攻撃するわけではなく、結衣の体内に入り込んで行くと、歌声が聞こえだし結衣は頭を前後に大きく振り出していた。

暫くすると結衣の頭のお団子が動きに付いていけないのか、いきなり転げ落ちてきて結衣は気を失いその場に崩れ、私たちを締め付けていた力も消えていった。

落ちた髪の毛のお団子を見ていると、モゾモゾ動き出し紫色の蟲だろうか蠢いている得体の知れないものに変化していった。

 

キシャーー!!キシャーー!!

 

ハチはその蟲を魔法で消し去っていた。

 

「結衣もこいつに操られていたのさ。これで元に戻るだろう」

「これで終わったんだよね、ハチ」

「よかった。これでけーちゃんたちも小町も救われる」

「うん、大変だったけど、終わったんだよね」

「結衣も良かった。これで元に戻れるし」

 

良かった、これでやっと普通に暮らせる。でも私は今、家のことを思い出そうとしてたけど、記憶があやふやで両親の名前も顔も思い出せない。家ってどこだったんだろう、家族は?今、周りにいる人たちのことしか分からなくて、他のことが思い出せなくなっていた。

 

「..いや、終わりじゃない。俺の力は異常だ、この世界ではもう過ごせない。...だから俺は異世界に行く」

 

ハチはそういうと、隣にいるカマクラ、サブレの頭を撫でていた。二匹も連れて行くんだろう。

 

「八幡、私も行くよ。弟妹は大志と小町が入れば問題ないだろうし。私はあんたに付いて行くって決めてたから。..八幡。私はあんたのことが好き//だから付いていく//」

「沙希、俺も沙希のことが好きだ。だから一緒に来てくれ」

 

「そうだね、あーしもこんな力持ってたら、世界を滅茶苦茶にしちゃうかも知んないし。こんな身体見られたくないしね。ヒキオ、一緒に行っていい?」

「優美子。お前の体は綺麗だぞ。一緒に行こう、俺は優美子のことが好きだ」

「うん。あーしも八幡のこと、大好き//」

 

「うちも行くよ。うちもこっちでまともに暮らせるとは思っていないし、皆といた方が楽しく過ごせそうだしね。八幡、うちもあんたのことが好き//だから一緒に連れてって」

「南、お前が俺を救ってくれたんだ。また異世界でも救ってほしい。俺も南が好きだ。一緒に来てくれ」

 

「私も行くよ。記憶が壊れちゃったみたいで、何も思い出せないの。ここにいる人たちしか分からない。だからハチ、ううん。八幡、好きです。私のことも愛して//」

「いくらでも愛してやる。俺も姫菜のことが好きだ。そして姫菜の力が俺には必要なんだ。力を貸してくれ」

 

八幡は魔法を詠唱しだした。唱え終わると異世界への通路が出来上がっていた。

 

「これを通ると、もう戻れないからな。覚悟を決めておいてくれ」

 

(お兄ちゃん、聞こえる?)

(小町か!?体は大丈夫なのか?)

(体の不調はなくなったよ、けーちゃんたちも大丈夫。お兄ちゃん、ずっと見ていたから、何があったのか分かっているよ。後のことは心配しないで。皆と仲良く過ごしてね)

(ああ、悪いが後始末をお願いするぞ)

(うん、お義姉ちゃんたちを泣かしたら駄目だからね。後、カー君とサブレも面倒見てあげてね)

(すまん。みんな連れてくから)

(最後にちゃんとお礼を言わせて。..ありがとう、お兄ちゃん。大好きだよ)

(こちらこそ今までありがとうな、小町。俺も大好きだぞ)

 

「じゃあ、行こうか」

「「「「うん!!」」」」

「「「わん!!」」」

「にゃん!!」

 

私たちはこうして、この世界を離れていった。異世界は中世ぐらいの時代みたいで、その世界でみんな仲良く過ごしている。こっちでも八幡や優美子の魔法は別格だったし、沙希と南に敵う相手なんていなかった。私も完全治癒魔法を覚え、皆の体の傷を綺麗に治した。私の記憶までは戻すことは出来なかったけど、今の暮らしが楽しくて思い出せなくても悲しくなかった。

 

私達は普通の生活を送りたくて、森の中にあった家を買ってみんなで過ごしている。たまに町に降りては討伐とかのクエストをして生計を立てていたんだけど、私達にしてみたら簡単な仕事ばかりだった。

カマクラちゃんは馬のように人を乗せてくれる。サブレは番犬として私達の住む森を守ってくれてたし、皆で移動するときはカマクラちゃんも含めて背中に乗せてもらってた。

 

「「「「「ただいま!!」」」」」

「久しぶりの我が家だな」

「うん、今回の討伐は時間かかったね。怪物が洞窟を逃げまわっていたから」

「でも、うちは楽しかったな。鬼ごっこしてるみたいで」

「あーしはやだ。あんな暗くてジメジメしたところ」

「私もイヤ、もう行きたくない。何でお化けみたいなのが居るんだ」

「優美子も沙希も怖がりだからな」

「..うん、だからご飯食べたら八幡に慰めてもらうから//」

「は!?」

「あーしも忘れるぐらい八幡に慰めてもらわないと//」

「へ!?」

「う、うん。うちも実は怖かったんだ。だから八幡、慰めてね//」

「..」

「わ、私も怖かったよぉ。だから八幡に慰めてもらわないと震えが止まらなくて//」

「....」

「皆でご飯を食べたら、八幡に慰めてもらうし//」

「あ、あのう皆さん。まだお昼前ですよ。今日は体を休めて明日からってことで」

「「「「だめ!!」」」」

 

私達4人でご飯を用意し、昼食を食べ終わると八幡を寝室まで引き摺っていった。でも八幡も本当は慰めたかったみたいで、既に臨戦態勢に入っているんだけど//

 

(サブレ君、いるかニャー)

(((カマっち、また始まったのかワン)))

(うん、またこんな昼間からパコパコしだしたニャー)

(((帰ってきたばかりでよくやるワン。僕の寝床で良いならゆっくりしてって良いワン)))

(ありがとニャン)

 

八幡はベッドで私達四人を代わる代わる慰めてくれた。

私たちは毎日、八幡に愛され満たされながら、この世界でずっと仲良く暮らしていった。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「「「「「....//」」」」」

「「「..........」」」

 

「...ヒッキー、中二の電話番号知ってるよね。スマホ貸して」

「い、いや、電話するのは迷惑だろ」

「良いから」ニコッ

「..はぃ」

「由比ヶ浜さん。スピーカーにして貰えるかしら」

 

Purururururu、Purururururu ガチャ

 

『どうした、八幡。我は剣豪将軍なるぞ』

「中二、今すぐ部室来て」

『ゆ、由比ヶ浜殿か。我は明日、旅立つので今日は忙しいのだ』

「木材先輩、早く来てください。いくらでも待ちますから」

『わ、我は行けぬぞ』

「材木座君、どうして私達があのような扱いを受けているのか、教えてほしいのだけれど」

『..あれは、気の迷いというか、何時も指導して頂いているのでそのお礼でしゅ』

「へぇ、お礼なんだ。じゃあ、あたし達もお礼しないとね」

『..由比ヶ浜殿、我も魔術を扱えるのだぞ』

「ふーん、じゃあ、今すぐ使ってみてよ」

『良いのか、由比ヶ浜殿が大変なことになるぞ』

「材木座君、そんなこと言って誤魔化そうとしても無駄よ、早く来なさい」

「木材先輩に色々聞かないと行けないので、一刻も早く来てください」

「そうだよ、中二。電話じゃ何もできないでしょ。早く来て」

『ほーん。どうなっても知らぬからな、では行くぞ。..スッーーー』

 

スマホの向こうから材木座君が息を大きく吸い込む音が聞こえてくるわね。なぜ彼はこれほど自信満々なのかしら、なんだか不味い気がしてきたわ。

 

「由比ヶ浜さん!!通話を切って!!」

『由比ヶ浜殿のスマホに八幡とイチャイチャチュッチュしてる写真が入っておるぞ!!』ブチッ..プープープー

「「「「「....」」」」」

 

ざ、材木座君はなんてことを言うのかしら。不味いわね、由比ヶ浜さんが彼に撮影してもらってたのを言っているのね。

 

「で、ではこれで今日は終わりにしましょうか」

「う、うん。あたし帰るね」

「あ、ああ、俺も帰ろうかな」

「雪ノ下、由比ヶ浜、八幡。座ってな」

「「「はぃ」」」

「結衣、スマホ見せるし」

「い、いやぁ。プライベートな写真もあるから、人にスマホを渡すのはよくないよねぇ。あはは.は..」

「結衣先輩。私と川崎先輩、相模先輩のスマホ見ましたよね」

「結衣ちゃん、スマホ」

 

由比ヶ浜さんは涙目になりながら、スマホを渡しているわ。

 

「由比ヶ浜は部室で撮ったんだ。頬を合わせてるんだね」

「ふーん、結衣。雪ノ下さんにずるいって言ってたけど、自分もいつの間にか撮ってたんだ。あーし達と一緒に撮るって言ってたのに」

「こっちはおでこと鼻を合わせてますね。もうちょっとで先輩とキスしそうですけど」

「「「「「...え!?」」」」」

「..結衣がほっぺたにチューしてるんだけど。ハチ、どういうこと」

「..されたんだよ」

「..ふーん。後、膝枕ね。雪ノ下さんやうち達がやったからかな」

「「「「「....//」」」」」

「....後ろから結衣先輩が覆いかぶさってキスしてますね。部室でこんなことしてたなんて」

「..ご、ごめんなさい。上書きしたくて」

「なんだし、上書きって」

「..あたし達の撮影会の時、かおりんと千佳ちんにヒッキーがキスされてたの。あたしが受験失敗するラノベを読んだ直後で、どうしても私もして欲しくって我儘言って撮ってもらったの。ゆきのんには撮影駄目って言って」

「「「「「ふーん」」」」」

 

由比ヶ浜さんがキスしたときは落ち込んでいた時だから、仕方ないと思ったのだけれど、皆には言い訳にしか聞こえないわね。

 

「ヒキオ、撮影で他に抜け駆けした人いない?」

 

八幡は私の方を見てきたのだけれど、諦めたのか呟きだしたわ。

 

「..俺が陽乃と雪乃の頬にキスした...」

「「「「「「はぁ!?」」」」」」

「ゆきのん、どういうことだし!!また抜け駆けして!!」

「結衣は黙ってな。あんたも一緒だし」

「うっ..」

「雪ノ下さん。写真は」

「..今はスマホに入れていないの。家のパソコンに入っているわ」

「ハチは持ってないの?」

「..俺も家のパソコンに入れてある」

 

以前はスマホに入れていたのだけれど、私が見ているとき覗かれると不味いので消しておいて良かったわ。

八幡の家で見ないわよね。私の表情を見られるのは恥ずかしいわ。でも八幡は見てくれてるのかしら。それなら、写真でなく私を見てくれればいいのに。

 

「この中で、自分が抜け駆けしたって思ってる人いる?いるなら正直に言いな」

 

川崎さんにそう言われ、私は恐る恐る手を挙げたわ。もう隠し事はしない方が良いわね。

 

「雪ノ下さん、ヒキオにキスして貰ったこと?」

「..いいえ、私も意図せず撮ってもらったの」

「雪乃、俺も分からないんだが」

「....八幡が寝ているとき布団に入っていたら、八幡が私の胸に顔を埋めてきたの//それを小町さんが撮っていたのよ//」

「「「「「「「「....//」」」」」」」」

「..ゆきのん、また抜け駆け」

「知らなかった//それって陽乃と雪乃が家庭教師で来てくれたときか、沙希達の撮影会の次の日だな」

 

私は頭を下げて肯定したのだけれど、恥ずかしくて言葉が出せないわ。

 

「そ、それも撮ってもらえばいいし//」

「まて優美子。それはいくら何でも恥ずかしいから撮れないぞ//」

「ハチは寝てたんだから無意識だろうし、私達も恥ずかしいよ//」

「うん、うちも恥ずかしい//」

「じゃあ、それ以外を今からここで撮ってもらいましょうよ」

「一色。それはいくら何でも不味いだろ、ここで誰かに見られたら問題になるだろうし。あんた生徒会長だよ」

「じゃあ、うち達は今から八幡の家に行って、一緒の写真撮ってもらおうよ。雪ノ下さんの写真も確認できるし」

「うん、それが良いね。結衣と雪ノ下さんは撮影係で今日の撮影無しってことで」

「ええ!?あたし、ヒッキーにキスして貰ってないし!!」

「姫菜、結衣も撮ってあげようよ。全員一緒の方が良いっしょ」

「なあ、せめて今からじゃなくて、明日以降にしないか。この間、結衣が言っていたけど、南といろはみたいな写真も撮るんだろ//」

「そっか、じゃあ明日で良いっしょ。駄目な人いる?....いないから明日、水着持ってくし」

 

「いろは、明日サッカー部は良いのか」

「良いんですよ」ニコッ

「休みじゃないだろ」

「良いんですよ」ニコッ

 

一色さんはサッカー部を休むつもりね、でも今日は私からは何も言えないわ。撮影って私も撮ってもらえるのかしら、確認しておかないと。

 

「あ、あの私も水着持って行って良いのかしら。写真撮影して貰ってもぃぃ?」

 

私は後ろめたいので、最後小声になってしまったわ。許してもらえると良いのだけれど。

 

「雪ノ下も撮ってもらえばいいでしょ。水着は相模と一色が抜け駆けしてるんだから」ギロッ

「「うっ..」」

「でもそれを言ったらサキサキも水着を着てたとはいえ、裸のハチと抱き合ったんだよね」

「っ..」

 

良かったわ。もし撮影係で撮ってもらえないと、材木座君のように「爆発しろ!!」って言ってしまうかもしれないし。でも明日、私の写真を皆に見られると思うと恥ずかしいわね、恍惚とした表情を見られるなんて//

 

ラノベについては誰も何も言わないのだけれど良いのかしら。確かに材木座君が放った言葉は由比ヶ浜さんに被弾して、私にも絶大なダメージを与えてきたわね。

 

材木座君、今は旅行を楽しんできなさい。新学期が始まったら徹底的に指導してあげるわ。私をこのような扱いにしたこと後悔させてあげないと。

 

やはり材木座君が書くラノベは間違っているわね。

 

 

 




気づかれた方もいると思いますが、魔法や戦闘シーン等は漫画のバスタードからパクッてます。
本当はこの話で終わりにするつもりだったので、文字数がかなり多くなってしまいました。
今後、忙しくなるため、更新ペースが下がると思いますが、良かったら今後も読んでください。

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