「次は由比ヶ浜さんでいいかしら?」
「うん、いいよ」
比企谷君は『我関せず』って感じで本を広げだしたのだけど、耳は真っ赤で本の内容はまったく読めてないようね、先程からページをめくっていないし。言葉は発しないのだろうけど、聞き耳だけは立てているようね。
「じゃあ、由比ヶ浜さんを私が、比企谷君を先生がやってもらえますか」
「私も入れてもらえるのか、面白そうだしいいぞ」
「じゃあ、先生、ゆきのんお願いします」
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(ここから材木座の小説)
誰かが俺の肩を揺さぶって起こそうとしてるようだ。まどろみの中にいると気持ちよく俺は枕に顔を埋めるために引き寄せた。『ヒャゥっ』と聞こえた気がしたが、なんだか今日の枕はすごく良い匂いがする。また手触りがすごくいい。手をスリスリし手触りを楽しみ、匂いをもっと嗅ぐ為顔を擦り付けていると、突然声を掛けられた。
「ヒ、ヒッキー、起きてよ!!」
目を開けると家のベッドではなく、教室にいることが解った。おかしい。じゃあ、俺はさっきから何を抱いて匂いを嗅いでいるんだ?枕から少し顔を離し確認すると上のほうに由比ヶ浜が顔を真っ赤にして立っていた。え、どうなっているんだ。俺がさっきまで匂いを嗅いでいたところは、由比ヶ浜のお腹あたりに顔を擦り付けていたらしい。また手触りを楽しんでいた手はスカートの中に入り込んでいる。一気に覚醒した俺は手を引っ込めた。ただ気になったのはお尻の手触りは直接肌を触っていた気がする。もしかしてTバック?いやそんなことより謝るほうが先だろ、八幡。そう自分に言い聞かせ、由比ヶ浜に謝罪した。
「す、すまん!!」
「うーーー、恥ずかしいよ。」
「本当にすまん!!寝ぼけていて枕と思って抱きついてたんだ」
俺は謝罪しながらも周りを見渡すと教室には他の生徒はいないようだった。
「申し訳ない、由比ヶ浜。いくらでも謝罪する。ただ、こんなこと頼めた立場ではないが他の人には黙っててくれ」
「こんなこと言いふらさないよ、私だって恥ずかしいし」
「いくら謝っても謝りきれないんだが」
「....じゃあ、今からカラオケに行こうよ、それでチャラで良いよ」
「そんなのでいいのか、でも部活はどうするんだ」
「あ、そうだ。さっき、ゆきのんから体調不良なんで今日の部活お休みにしたいってメール着たんだ。それでヒッキーに伝えに起こしに来たらいきなり抱きつかれて....」
そこまで言うと由比ヶ浜はまた、顔を赤くしだした。
「ありがとう伝えに来てくれて、じ、じゃあ早く行こうぜ」
「うん」
照れ隠しのため、俺はすぐ返事をし早く行くよう促した。駅近くのカラオケ屋までお互いさっきのことは触れず、他愛ない会話をしながらカラオケルームに移動した。
「ねえ、ヒッキー。教室でのこと聞いていいかな」
「え、ぶり返すの?恥ずかしいんだけど」
「私も恥ずかしいよ。でも寝言で『良い匂い』とか言われたら気になるじゃん」
「....そんなこと言っていたか、その本当に良い匂いだった。落ち着くって言うのか休まるって言うのか。とにかく何時までも嗅いでいたいって思ったんだ」
「じゃあ、今からもう一回嗅いでみる?」
「それは不味いだろ、こんなところで」
「別に服を脱ぐわけじゃないんだしさ、防犯カメラでもイチャイチャしているだけに見えるって」
「良いのか?由比ヶ浜」
「うん、いいよ」
由比ヶ浜は太ももをぽんぽん叩いて俺に催促してきた。俺は由比ヶ浜のお腹のほうに顔を向くよう、ソファーに寝転がり膝枕をしてもらった。
「ねえ、ヒッキー。ちょっと離れていない?」
「いや、かなり恥ずかしいんだが」
「じゃあ、えい!!」
10cmぐらいは空いていたと思うが、由比ヶ浜が一声賭けると自分の手で俺の頭をお腹のほうに引き寄せた。
「どう、ヒッキー。良い匂いする?」
「お、おう。すごく落ち着くし気持ち良い」
「そうなんだ、じゃあ、このままでいいよね」
そういうとお互い無言のまま時間だけが過ぎていった。由比ヶ浜は俺の頭を撫でていたためか、俺は何時しかリラックスして由比ヶ浜に全身を預けていた。
「....」
「なあ、ちょっと頭の手をどけてくれないか」
「もういいの?」
「いや、ちょっと話したいことがあるんで」
「うん、どうぞ」
俺は一旦由比ヶ浜から離れ、ソファーに座りなおした。そして由比ヶ浜に正面に向き合った。彼女がこんなに恥ずかしいことを俺にしてくれたんだ。俺の素直な気持ちを受け入れてもらえても、もらえなくても今思っていることを伝えたくなった。
「....由比ヶ浜結衣さん。好きです。俺と付き合ってください」
「えっ、...ヒッキー。ううん、比企谷八幡さん。私も好きです。お付き合いしてください」
そういうと彼女のほほを一筋の涙が流れた。俺は手で彼女の涙を拭い、顎に手を掛けると由比ヶ浜は目を閉じたので口付けを交わした。
「へへ、しちゃったね」
「ああ、ありがとな」
「それはこっちの台詞だよ」
そういうと俺は彼女の首元に顔を埋めるように抱きしめた。
「ヒッキーくすぐったいよぅ」
首筋の匂いを嗅いだあと、ちょっと悪戯したくなり、キスマークが付くよう吸い付いた。
「ん、ヒッキーだめぇ」
「結衣、お前は俺のものだから」
「じゃあ、私も」
そういうと彼女は俺の首筋に吸い付き、キスマークを付けてきた。
「へへ、ヒッキーにマーキングしちゃった」
「ああ、これでお互いのものになったんだな」
「じゃあ、今度チョーカー買いにいこうよ、首輪の代わりに」
「えっ!?目立っちゃうからせめてネックレスにしない?」
「ううん、良いよお揃いにしようね」
「ああ」
そして俺たちはカラオケ屋を出て駅のほうに歩いていった。もちろん手は恋人つなぎで。
(ここまでが材木座の小説)
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「ごめん今日はTバックじゃないんだ、でもヒッキーが喜ぶなら明日履いてくるよ...。ヒッキーそんな胸の間にキスマーク付けたらめだっちゃうよぅ。ううんいいよ。でもこっちは今度....あぁ..」
由比ヶ浜さんは目を閉じ、自分の世界にトリップしているようだわ、かなり恥ずかしいことを言っているのだけれど多分無自覚ね。比企谷君も顔を真っ赤にして由比ヶ浜さんのほうをチラチラ見ているし。
「木材先輩、何でいきなりイチャイチャから始まるんですか?全部イチャラブじゃないですか!!」
「いや、特に決めて書いているわけではないので、こうなってしまったのだが」
一色さんはぶつぶつ文句を言っているが、内容についてはしょうがないわ。特にこちらからシチュエーションを指定しているわけではないし、全て材木座君任せなのだから。私から言わせたら一色さんのラノベも最初からイチャイチャしていたように思うのだけれど。
でも私も比企谷君にいろんな所をマーキングされたいわね.......って、何を考えているの!!そんなの出来るわけないじゃない。でも何時かしてもらえたら....。
「なあ材木座、幾ら寝ぼけていたといってもお尻と枕を間違えることはないだろ」
「お主は
「いや、ないけど幾らなんでもわかるだろ?」
「お尻はだめだよぅ、ヒッキィ....」
「由比ヶ浜、戻ってこい」
「....あ、あれ、ヒッキーは?」
先生が由比ヶ浜さんに声を掛け、現実世界に連れ戻した。確かにあれ以上の発言は不味かったのでこれでよかったのだろう。
比企谷君は恥ずかしさからか由比ヶ浜さんのほうを見ないようにしているのだけれど、由比ヶ浜さんは顔を赤くしがらずっと比企谷君のことを見つめいているわね、大丈夫かしら。
とりあえず、由比ヶ浜さんのラノベもこれで終了ね。