やはり材木座が書くラノベは間違っている   作:ターナ

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第37話

今日は、何時ものラノベとは違うため、奉仕部以外の人には来ないようにお願いしていたわ。もしかしたら彼女は怒って私たちと会ってくれなくなってしまうかもしれない。

でも私は厳しい現実を突きつけて、彼女が真面目に取り込んでくれると信じているわ。

そう考えていると、材木座君、遅れて八幡が来てくれたわね。

 

「二人とも今日は帰ってもらっても良いわよ」

「雪乃、俺も雪乃と一緒の意見なんだ、俺も最後まで居させてくれ」

「我も自分のラノベで人の心を動かせるのか、確認させてほしいです」

 

二人がそう答えてくれて、私は嬉しかったわ。そう考えていると由比ヶ浜さんが来たようね。材木座君はラノベを私たち三人に渡してきたわ。

 

「今日は確認は良いの?」

「ええ、大丈夫よ。では皆で読んでみましょ」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

奉仕部で受験勉強をやりだしたんだけど、全然やる気出ないな。みんなどうしてあんなに頑張れるんだろう。

サキサキも勉強会に誘われて、一緒になってやっているし。姫菜とサキサキって総武で50位以内に入っているんだ。このまま行けば、千葉大は余裕らしいけど、それでも凄く頑張っている。

あたしは何かやる気でないんだよね。総武の受験も秋に入ってから勉強しだして受かったんで、大学も余裕と思うんだけどな。ヒッキーは陽乃さんに家庭教師してもらって理数系も頑張ってるようだけど。

隣では中二が優美子とさがみんに日本史と世界史を教えている。中二って両方共凄く得意らしくって、ゆきのんに呼ばれて一緒に苦手な教科を教えてもらう代わりに、得意な教科を教えるようにしていた。

サキサキと姫菜は全教科良いみたいだし、優美子は英語得意だし。さがみんはあたしよりちょっと良いだけらしいけど、頑張って教えて貰っている。

あたしはゆきのんが教えてくれているけど、どうしても頭に入らない。ゆきのんはたまに怒るんだけど、今からやっても1年後の受験まで頭に入ってる訳ないじゃん。

 

「由比ヶ浜さん。もうちょっと気を引き締めて勉強できないかしら」

「ゆきのんさあ、部活の時間までやる必要ないじゃん」

「それだと間に合わないでしょ。由比ヶ浜さんも八幡と一緒に千葉大を目指すのよね」

「うん、でも今からやる必要有るのかな」

「..由比ヶ浜さんの成績ではとても行けないわよ」

「そんなことないよ、総武にも入れたんだし」

 

そうだよ。千葉でも有数の総武に入れたんだから、千葉大も大丈夫なはずだよ。

 

「結衣、大学受験はそんなに甘い考えで受かるもんじゃないぞ」

「あーしもそろそろ勉強始めようと思ってたんで、雪ノ下さんが勉強会開いてくれたの凄い助かってるし」

「うちもこういう場を作ってくれて凄く助かってるよ」

「二人共ありがとう。由比ヶ浜さんも、もうちょっと頑張りましょうよ」

「...あ、あたし今日はそろそろ帰らせてもらうね」

 

あたしは勉強したくなくて挨拶もせず、部室を出てきていた。どうしてみんなあんなに頑張れるんだろう。ヒッキーと一緒の大学行きたいけど、今からやる必要ないじゃん。

 

その日からあたしは奉仕部に行く回数が減っていった。ゆきのんが寂しそうにしているって、ヒッキーが教えてくれたけど、あたしは勉強なんてしたくないし。

優美子も姫菜も放課後、奉仕部に勉強しに行ってるんで、遊ぶ人もいなくなっちゃった。二人共放課後、勉強会に誘ってくれるんだけど、あたしは行きたくなかったんで、断っていた。

 

そのまま、奉仕部に行くことがなくなって夏休みに入っていった。もうゆきのんも優美子も姫菜も勉強会に誘ってくれなくなったけど、みんな夏休みも勉強会をしているって聞いた。

凄いな、みんな。夏休みぐらい遊べば良いのに。

 

あたしは夏休み、中学の友達と楽しく遊んでいた。パパやママに勉強しなさいって言われて、あんまり煩いから机に向かうふりして、スマホで遊んでいた。

 

夏休みが終了すると、クラスの雰囲気がガラって変わっていた。休み時間も勉強している人もいるし、授業も自習が多くなって受験勉強の時間に当てられたりしていた。

そろそろ、あたしもやらないといけないな。でも全然分からないや。

 

「優美子、ここ教えて貰えないかな」

「ごめん、結衣。あーし自分のことでいっぱいだから」

「ううん、ごめんね」

 

駄目だ。クラスの雰囲気から誰も教えてくれそうにない。みんな自分の勉強で一杯みたいだし。

ゆきのんに聞いてみようかな、ちょっと今日、部室に顔出してみよ。

 

「あら、由比ヶ浜さん。久しぶりね」

「ゆきのん、ひさしぶり。入って良いかな」

「ええ良いわよ。でも勉強会をしているので、私も遊べないわよ」

「ううん、あたしも勉強したいんだけど」

「ええ、ではそちらでやってもらえるかしら」

 

ゆきのんはあたしが部活のときに座っていたところを指差していたので、そこに座って教科書やノートを広げて勉強しだしたけど、まったく分からないや。みんな凄い勉強しているし聞き辛いな、ゆきのんは教える立場でみんなの机を回っているんで、あたしもゆきのんに教えてもらお。

 

「ゆきのん、ここ教えてもらえないかな」

「....由比ヶ浜さん。そこは皆とっくに終わっているところよ。教科書のここをみて頂戴、これが分かれば解けるでしょ」

 

ゆきのんは皆の机を回って勉強を教えていたんで、あたしの机のところには中々来てもらえなかった。

一人でやってみたけど、全然分からないや。ゆきのんも他の人に教えるのが大変であたしに時間取れなさそうだし。

ヒッキーや中二に聞いて迷惑そうな顔をされるのも嫌だしな。いいや、中学の時みたいにパパに教えてもらお。

 

「パパ、勉強教えて」

「大学受験は難しくて教えれないぞ。..今からでも塾に行くか?」

「え!?良いよ、お金もったいないし」

「..結衣、お金の事は気にするな。今からでも塾に行こう」

「う、うん。ありがとう」

 

あたしは塾に通いだしたんだけど、基礎のところは既に終わっているらしくって、応用問題とかテストに向けての対策ばっかりしていた。講師の先生に聞くのも恥ずかしかったけど、そんなこと言ってられないんで、聞いて教えてもらっていた。でもあたしばっかりに時間取れないみたいだし、中々勉強は進まなかった。

 

「雪乃!!あーし模試でB判定貰えたし!!」

「うちもEからCまで上がっていたよ!!本当にありがとう!!雪乃!!」

「二人共頑張っていたもの、当たり前よ。でも気を抜いては駄目よ、これからが本番なのだから」

「「うん!!」」

 

優美子もさがみんも凄いな、二人共ゆきのんに抱きついて喜んでいる。ゆきのんも暑苦しいとか言いながらも嬉しそうだし。あたしはE判定だった、滅茶苦茶差がついちゃったな。

皆は夏休み、ゆきのんちの別荘で合宿をしていたみたい。陽乃さんや陽乃さんの友達にも来てもらって勉強教えて貰ってたみたいだし、息抜きでバーベや花火したり夏祭りやプールにも行ったって優美子と姫菜に聞いて凄く羨ましかった。

いつの間にかみんな凄く仲良くなっていて、あたしは除け者にされているわけじゃないけど、どうしても受験や夏休みのことに話がなると、会話に入って行く事は出来なかった。

 

ついにセンター試験が始まった。ゆきのんは推薦貰えたのに断ったみたい。みんなと一緒に勉強して受かりたいからって、正月明けからゆきのんの実家で優美子と姫菜、サキサキ、さがみんに付きっきりで教えてたみたいだし。

多分、陽乃さんも手伝っていたんだろうな。あたしも誘われたけど、とても顔を出していいとは思わなかったんで、断っていた。

 

卒業式も終わって、最後に部室に集まって最後に三人で紅茶を飲んでいるとき、ヒッキーがあたしに話しかけてきた。

 

「結衣、千葉に帰ってきたら連絡くれよな」

「由比ヶ浜さん。私にも連絡してよね」

「うん、あたしだけ東京なんだよね。でも帰ってきたら遊んでよね」

「ああ....後、もう一つ報告があるんだ」

「なに?」

「俺と雪乃なんだが、合格発表の日から付き合っているんだ//」

「..え!?」

「皆に急かされてな、「待たせてばかりいるな」って優美子に怒られて、南や姫菜、沙希にも「私たちのために頑張ってくれた雪乃にご褒美をあげろ」って言われて、決心が付いたんだ」

「..その、ヒッキーはゆきのんの事、いつから好きだったの?」

「意識しだしたのは、結衣が奉仕部に来なくなった時からだ」

「..ど、どうして」

「雪乃が凄く寂しそうにしていてな。でも皆に勉強教えるため、自分の感情を押し殺して振舞っていたのを見て、俺が守ってあげたい。俺が雪乃の笑顔を取り戻したい。って思うようになっていたんだ」

「..そ、そうなんだ。ヒッキー、ゆきのん。お、おめでとぅ..うぅ」

 

泣いているあたしに気を使ってくれたんだろう。ヒッキーは先に帰ると言って、湯のみを持って部室を出て行った。

 

「ごめんなさい、由比ヶ浜さん。あなたの気持ちは知っていたのだけれど、私も八幡のことが好きだったの。だから彼から告白されたとき、嬉しくて自分のことしか考えられなかったわ」

「ううん、ゆきのん。おめでとう...でもこれからも友達でいてよね」

「由比ヶ浜さん、私からもお願いするわ。私と友達でいてください」

「うん。ゆきのん、あたしのことも名前で呼んで」

「結衣、何時までも親友でいてね」

 

あたしとゆきのんは抱き合って泣いていた。ゆきのんからあたしに抱きついてくることって、ほとんどなかったんだけど、奉仕部での最後の時間をゆきのんと過ごせて良い思い出が作れたな。

 

あたしは家に帰ってベッドに倒れ込むと、今まで抑えていた感情が溢れ大声をあげて泣いていた。どうして最初から勉強を一緒にしなかったんだろう、ヒッキーに気持ちも伝えられなかった。後悔の念が後から押し寄せてきて、その日は朝まで泣き続けていた。

 

その後に聞いた話だと、優美子たちもヒッキーに気持ちの後押しをするため、全員告白して振られたってことだった。でも今は優美子たちが羨ましい。振られても自分の気持ちを伝えることが出来たんだから。あたしは今更そんなことは出来ない。大事な親友にこれ以上、迷惑を掛けたくないから....

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「うぅ、ひどいよ。中二..」

「..すまない」

「由比ヶ浜さん、ごめんなさい。今回のラノベは私が書かせたのよ」

「..ゆきのん、どうして」

「あなたに後悔してほしくなかったの。今、由比ヶ浜さんは勉強会の時も上の空でしょ、だから発破をかけたかったのよ」

「で、でも酷いよ。ヒッキーも知っていたの?」

「ああ、俺も賛同したからな」

「みんな、酷いよ!!」

 

由比ヶ浜さんは立ち上がると、部室を出てどこかに走って行ったわ。鞄を置いていったので、私たちはとりあえず彼女の帰りを待つことにしたのだけれど、ほとんど会話することはなかったわ。

 

一時間ほどたったのかしら。由比ヶ浜さんが戻ってきたのだけれど、表情からすると怒っているわね。でも、何だか先ほどと雰囲気が違うようだわ。

 

「結衣、すまなかった」

「我からも謝罪させてほしい、本当にすみませんでした」

「由比ヶ浜さん、もう一度謝らせて頂戴。本当にごめんなさい。でも後で後悔するかもしれないから、一年間私たちとがんばって欲しいの」

「..ヒッキー。ラノベの件は今からの質問に正直に答えてくれたら許すから」

 

由比ヶ浜さんは私と材木座君には目もくれず、八幡に詰め寄って彼の足を跨いで仁王立ちしているわ。あれでは八幡は逃げれないわね、でもどうして八幡だけを拘束しているのかしら。

 

「..さっきね、ヒッキー。かおりんと千佳ちんの友達から連絡が来てね、かおりんが席を外した時、携帯が置いてあったんだけど、待ち受けに眼鏡イケメンにお姫様抱っこされて、ほっぺにキスしている写真が表示されたんだって..」

「..へ、へぇ。し、知らないでしゅよ..」

「..ふーん、ヒッキーじゃないんだね。かおりんに聞いても総武ってことしか教えてもらえなくて、あたしに知らないかって連絡がきたの。でもかおりんは撮影の時、着ていたベアトップのワンピースで写っていたらしいんだけどね...」

「..八幡。あなた撮影の時、何をしていたのかしら」

 

私は八幡と由比ヶ浜さんに近寄り、八幡の肩に手を置いたわ。八幡はやましい事があるのか、凄くビクついていたのだけれど。

 

「ヒッキー。正直に答えてって言ったよね...」

 

八幡は観念して撮影会でのことを話し出したわ。私と由比ヶ浜さんは何も言わずに聞いていたのだけれど、由比ヶ浜さんの感情豊かな表情が段々薄れている様に見えるわ。

 

「ふーん、千佳ちんが最初でかおりんにも反対側にされたんだね」

「ああ、でも千佳の時はいきなりだったんで、どうしようもなかったんだぞ」

「じゃあ、今からあたしにもしてよ」

「カメラもないから撮れないだろ」

「カメラならあるよ」

 

そういうと、由比ヶ浜さんは材木座君にスマホを渡して撮影するように指示していたわ。

 

「じゃあ、ヒッキー。よろしくね」

「ほ、本当にするのか」

「うん、あすなろ抱きでほっぺを合わせるのと、お姫様抱っこでおでこ合わせるのと、あたしがほっぺにキスするの。後、膝枕ね...してくれたら、ラノベの件はもう良いよ。あたしのことを思って書いてくれたんだし。...でも、ゆきのん。今日の撮影はあたしだけだからね」

「ええ!?ゆ、由比ヶ浜さん。私も撮ってほしいわ」

「ゆきのん。ラノベであたし、傷ついたなぁ。癒しがほしいんだけどなぁ...」

「くっ、..分かったわ」

 

由比ヶ浜さんは窓際に移動して、あすなろ抱きをして貰っているわ。八幡は眼鏡を持ってきていないので、掛けていないのだけれど、二人共制服で部室の中ってことで、中々撮れる事のない羨ましい構図になっているわね。

八幡がほっぺを合わせると、二人共顔を真っ赤にしだしたわ。材木座君は「爆発しろ」って言いながらもスマホを操作しているわね。本当に爆発してしまえば良いのにと思ってしまったわ。

次にお姫様抱っこして、おでこを合わせているのだけれど、私の時より顔が近いわ。鼻もくっついていて、顔をずらせばキスしてしまうのではないかしら。これが嫉妬心なのね、今すぐ止めさせたい。でもここは抑えないと駄目よ。

つ、ついに頬にキスするのね。八幡はもう顔が強張っているのだけれど、由比ヶ浜さんは赤面しながらも口元が緩んでいるし。

 

「ゆ、由比ヶ浜さん。長いわよ!!」

 

八幡の頬にキスして離れないので、思わず声を出してしまったわ。でもそれで由比ヶ浜さんが離れてくれたわね。最後に椅子を並べて膝枕しだしたわ。うぅ、羨ましい。でもこれで終わりね。

膝枕の撮影が終わって八幡は椅子に腰かけると、由比ヶ浜さんは八幡の後ろに回り込んでいたわ。

 

「中二、撮ってよね」

 

由比ヶ浜さんはそういうと、後ろから抱きついて先ほどとは逆の頬にキスして撮影して貰っていたわ。

 

「ゆ、由比ヶ浜さん!!」

「だって両方の頬にキスされたんだよね、塗り替えないと」

「ずるいわよ。私も撮ってもらっても良いわよね!!」

「ふーん、今日の撮影は私だけだよね。ゆきのん、約束破るの?」

「い、言うようになったわね。由比ヶ浜さん」

「じゃあ、これでおしまい。ヒッキー、中二ありがとう。ラノベの件も良いよ、でも勉強の方はゆきのん、ヒッキー、中二、お願いします」

「..ええ、分かったわ。厳しく教えてあげるわ」

 

今日、由比ヶ浜さんの勉強に対する気持ちを向上させるつもりで、ラノベを書いてきて貰ったのだけれど、途中からは、由比ヶ浜さんにしてやられたわね。

でも、まさか撮影会で私以上に抜けがけしている人がいるとは思わなかったわ。明日も川崎さん達の撮影をするらしいけど、これは全部の写真を見せてもらう必要があるわね。

 


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