やはり材木座が書くラノベは間違っている   作:ターナ

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第36話

「続いて生徒会長殿で書いてきたのだが、お願いしていいですか」

 

そういうと、材木座君は私にラノベを渡してきたわ。

 

「え!?また書いてくれたんですか、木材先輩!!」

「うむ、この間の撮影のときに思いついたのでな」

「ありがとうございます!!」

 

私はラノベを読んだのだけれど、ちょっと悩むわね。問題ないと思うのだけれど、一色さんに読ませてもいいものかしら。

 

「由比ヶ浜さん、八幡。あなたたちにも読んでもらって問題ないか確認して貰えないかしら」

 

そういって、材木座君にラノベを渡してもらって読んでもらったわ。

 

「雪ノ下殿、まずい内容であったか」

「このラノベなのだけれど、最後まで読めば問題ないと思うのよ。ただ最初の方は一色さんに対する中傷とかが有って...」

「た、確かに少し書いたが、問題になるとは思っていなかったです」

 

二人が読み終わるまで、ちょっと重たい空気になってしまったわね。一色さんが不安な顔をしているし。私は問題ないとは思うのだけれど、念のために二人にお願いしたわ。

 

「雪乃、これぐらいなら問題ないだろ」

「私もいいと思うよ」

「いろは、俺は問題ないと思うが、読んでみるか」

「..はい。そういうこともたまにはありますよね」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

全校集会でいろはが全校生徒の前に立っていた。いろいろな所から、いろはに心ない誹謗中傷や野次が飛んでいた。先生達も収めようとしているが収拾付かなくなっている。

 

「生徒会長って捨てられたんだよね~」

「しょうがないよ~、相手が相手だし~」

「遊ばれたんじゃないの~」

プークスクス。

 

俺はこうなった原因、いろはと出かけた日のことを思い返していた。

 

*************

 

「先輩、おはようございます!!待ちましたか」

「ああ、三十分前に来ていたからな」

「ぶーーー、そこは今来たところって言うんですよ!!」

「..じゃあ、帰ろうか」

「えぇ!?私の言ったこと無視して、いきなりおうちデートですか。そ、それでも良いんですけど...ワタシ シタギ ノ ジュンビガ」

「いや、冗談だから」

「もう!!罰として今日は眼鏡を掛けててくださいね!!」

 

俺は以前、いろはに買わされた服を着ていたのだが、その時にプレゼントしてくれた眼鏡も持ってきており、それも身につけて買い物に付き合わされていた。俺たちがウィンドウショッピングしていると、スーツを来た女性が俺たちの方に近寄ってきて、俺に名刺を差し出してきた。

 

「私、モデル雑誌を編集している佐藤といいます。写真を撮らせて頂きたいのですが」

「いろは、撮ってもらうか」

「えぇ!?あの撮影って一人ですか」

「..あ、あの、そちらの男性の方を撮らせていただきたいのですが」

「お、俺ですか。いえ、結構です。遠慮しておきます」

「お願いします!!今日中に撮らないと、編集に間に合わなくなっちゃうんですよ!!」

「..じゃあ、二人でなら良いですよ」

「二人ですか、この際しょうがないですね」

 

こういっておけば、いろはが断ってくれるだろう。そしたら二人で逃げてしまえばいいんだ。

 

「じゃあ、先輩。二人で撮って貰いましょう!!」

「えぇ、そこは断ってくれるんじゃないの」

「先輩が二人なら良いって言ったんですから、諦めてください」

「はぁ、分かったよ」

 

俺たちは佐藤さんに言われるがまま、写真を撮って貰っていた。後で雑誌を送りたいと言うことで、連絡先を教えてその日は別れた。

一週間後、俺の手元に雑誌が送られてきたのだが、俺でも名前を知っている女性雑誌に、俺の腕に抱きついている、いろはとのツーショットが掲載されていた。

俺の所には千葉で見つけた眼鏡男子と書いてあり、モデル名は「はー君」となっていた。大体、眼鏡男子ってなんだよ。草食系男子とか歴女とか変な言葉ばかり作りやがって。

これって俺の事、知っている人にバレるんじゃないの?隣に写っているのは、学校で有名人のいろはだし。でもいろはのおかげで俺の存在感は無くなっているから、俺には問題ないな。いろはは大変だろうけど。

俺は雑誌のことはすっかり忘れて家でグダグダしていたが、いきなりスマホが鳴り出した。いや、電話はいきなり鳴るものだよな。知らない番号だったため放っておいたが、中々鳴り止まないため、俺は諦めて通話ボタンを押していた。

 

「やっと、繋がった。比企谷君の携帯で良かったですか」

「はい、あのどちらさまですか」

「ああ、ごめんなさい。私、雑誌編集者の佐藤です。覚えていらっしゃいますか」

「ええ、どうしたんですか、いきなり」

「あなたの写真への反響がすごいのよ!!なのでまた、写真を撮らせてね!!詳しいことはまた連絡するから。後この番号で鳴ったらすぐ電話に出なさい!!」

「は、はい」

 

俺は思わず返事をしてしまった。どうしてか年上から命令口調で言われると、断れなくなってしまう。仕方がないので俺は今掛かってきた携帯番号を登録しておいた。

 

学校に行くと、いろはは下駄箱で質問攻めにあっているようだ。まあ、俺が知っているぐらいの雑誌に出ていたからな。対照的に一緒に出ていた俺の回りはいつも通りで誰も居なかった。いつもの事なんだけど、さ、寂しくなんか無いんだからね!!

 

後日、俺は都内の撮影スタジオに呼ばれ、着せ替え人形のように服を取っ替え引っ替えされ、撮影されていた。しまったな、いろはを連れてくれば良かった。二人なら緊張もさほどしなかったのだが、どうしても一人で撮られると緊張してしまう。

俺が一人で撮って貰っていると、テレビで見たことがあるモデルの女性が何人もスタジオに入ってきた。ああ、次の撮影のため、控えているんだな。そう考えて言われるがままポーズを取り撮影してもらっていると、一人の年上モデルが俺の方に歩いてきた。

 

「はー君、初めまして。よろしくね」

「ひゃ、ひゃい、お願いしましゅ...」

「ふふ、かわいいわね」

 

え!?この綺麗なお姉さんと撮るの?聞いてないんだけど。俺は終始お姉さん達に振り回されながら写真を撮られ続けていた。計五人のお姉さんに翻弄されていたが、何とか撮影は終了した。

 

また、雑誌が送られてきたが、俺が一人で撮られている写真や、綺麗なお姉さん達に顔を赤くして写っている写真が何枚も掲載されていた。何だよこれ「はー君、綺麗なお姉さんたちにタジタジ」って当たり前だろ、俺の知り合いにはこのお姉さん達にも負けない綺麗な人が何人もいるが、こんな写真撮ったことないし。

やっぱりモデルだけあって俺なんかの隣でも、このお姉さん達は良い表情するよな。一人一人が見惚れてしまう笑顔を振りまいているし。

 

でも幸か不幸か学校で俺がはー君ということを知っているのは、いろはだけだった。俺は喋らないようにお願いしていたので彼女も約束を守ってくれていて、奉仕部の二人さえ知らなかった。

 

俺はその後も何度か撮影スタジオに呼ばれ撮影してもらっていたので、結構な雑誌に載り出しているようだ。どこに需要が有るのか分からないが、おいしいご飯を食べさせてもらったり、差し入れで貰ったお菓子をモデルの人たちは食べないので、いつも貰ってお土産として持って帰っていた。

小町は喜んでいたが、俺の行動を怪しんでいて、アルバイトと言っておいたが、怪訝な顔をしている。

俺は三年生に進級したが、撮影が減ることはなかったので、同じ事務所の大学生モデル、愛甲 愛(あいこう あい)さんが撮影の合間に勉強を教えてくれていた。

なぜかカフェで勉強を教えてもらっているときに、写真を撮られ週刊誌に載ったそうだが、愛甲さんには申し訳なかったな。俺なんかと一緒のところを撮られて、あんなに綺麗な人だから、彼氏も凄いイケメンだろうし。

 

「...先輩。..ちょっと良いですか」

 

いろはが話始めたのだが、携帯に佐藤さんから電話があったので、いろはに断りをいれ俺は通話を始めた。今週土曜日に仕事が入ったと言うことだったので、集合場所等教えてもらい、電話を切った。

 

「悪い、いろは。さっきは何だった?」

「いいえ、良いんです。お仕事頑張ってください」

 

いろはは寂しげな表情をしていたが、走って行ってしまった。何かあったのだろうか。気になったので、生徒会室に行ったが、いろはは見つからず、休日まで会うことはなかった。

 

俺は都内の撮影現場の学校に訪れていた。今日の撮影はCMを撮るらしい。相手は国民的アイドルの綾瀬 綾だったが、俺の一つ上だったよな。ああ、撮影の予算の関係で男の予算を下げるため、俺を使ったんだな。俺なんて今の所ノーギャラだし。佐藤さんに呼ばれて両親が喋っていたが、俺は交通費や諸経費とちょっとした小遣いしか貰ってない。なので小町にも喋っていなかった、撮影しているのにノーギャラなんて恥ずかしいし。

 

撮影は順調に進んで行った。俺の役はアイドル生徒会長に振り回される生徒会役員ってことだったが、いろはに何時も振り回されているため、綾瀬さんをいろはのつもりで演じていたら、即OKを貰えていた。

撮影後、打ち上げでご飯を食べに行ったのだが、成人している人たちはお酒を飲みだし、俺と綾瀬さんだけが、何だか取り残されたように二人で静かにご飯を食べていた。

 

「はー君って今日の撮影、何だか慣れてたよね」

「いや、いつも高校の生徒会長に振り回されていて、いつも通りにしてたら終わっちゃいましたよ」

「..ふーん、その生徒会長って女の子?」

「ええ、年下なんですけどね。俺は生徒会役員じゃないんですけど、なぜか何時も手伝いをさせられてるんですよ」

「へぇ、そうなんだ...」

 

打ち上げが終わり、店の前で解散を待っていると、綾瀬さんが近寄ってきて俺の手を握り紙を渡してきた。

 

「それ、私のプライベート携帯の番号だから連絡頂戴ね。あと私の事は綾って呼んで。本名だから」

 

後日、綾瀬さんと俺がスクープされていた。これって打ち上げ時の写真だな。回りにたくさん関係者がいたはずなのに上手く、ツーショットに見えるようになっていた。上手いもんだな、綾瀬さんこれから大変だろうに。

 

*************

 

俺がそんなことを思い返して前の方に目を向けると、いろはは生徒会長として気丈に振る舞っていた。未だに野次を飛ばしているバカもいる。ここまで言われても、いろはは俺のために秘密を守ってくれていた。俺はそんないろはが愛おしく、そして申し訳なく思っていた。

今、いろはは全校生徒の前で涙を堪えて、生徒会長の責務を果たし全校生徒に向かって一礼していた。

 

ここからは俺の番だ。俺は立ち上がり、いろはに向かって歩き出した。俺が前に向かっていくと、いろはは俺の行動に気づいたのだろう、口を手で抑えて俺のことを見つめていた。平塚先生が俺のことを呼んでいたり、色々言われている声が聞こえるが、俺は無視して歩いて行った。

 

「比企谷、席に戻れ!!」

「なにあれ、どうするつもりなんだろ」

「生徒会長に直接野次でも言いにいくんだろ、目立ちたいだけじゃないか」

 

「は、八幡。どうしたの」

「何をするつもりだ、八幡」

 

前に座っていた戸塚や隣のクラスの材木座が声を掛けてくれたが、俺は笑顔を返しただけで、何も答えなかった。そして歩きながら胸の内ポケットに手を入れていた。いろはから貰った眼鏡を取り出して着けるために。

 

「え!?あれって、はー君!?」

「どうしてこんなとこに!?っていうか、この学校の生徒なの!?」

「「「八幡!?」」」

「ええ!?はー君ってヒッキーだったの!!」

「ヒキオ!?」

「ハチ!?」

「お兄ちゃんなの!?」

キャーー!!

 

俺は野次など無視して、いろはの元に向かって行った。いろはは俺の行動を見守ってくれていたが、目からは大粒の涙が溢れているのが見えていた。今までどれほどの誹謗中傷に耐えていたのだろう、俺のせいでいろはには嫌な思いをさせてしまった。でも今は俺の行動を目を離さず見ていてくれている。

 

俺はいろはの前に立ってマイクを握っていた。

 

「いろは、今まで秘密にしてくれてありがとう。迷惑を掛けてすまなかった。でももう良いんだ。俺の好きないろはに、これ以上は迷惑を掛けれない」

「せ、先輩//」

 

俺は、マイクを降ろし息を吸い込むと、俺が今まで出したことがないぐらいの声で叫んでいた。

 

「いろはさん、あなたが好きです!!俺と付き合ってください!!」

「せ、先輩!!わ、私も先輩が大好きです!!うぁーーー!!」

 

キャーーー!!Σ(゚∀゚ノ)ノ

イヤーーー!!(((-д-´。)(。`-д-)))

 

いろはは抱きついてきて、告白に答えてくれ俺の胸で泣き続けた。その瞬間、静まり返っていた体育館から、叫び声や怒号のような声が飛び交っていた。

 

「比企谷!!一色!!今すぐ生徒指導室に来い!!」ピキピキ

 

いろはと抱き合っていると、平塚先生にいきなり襟首を掴まれ、引き摺られていた。

俺といろはは手を繋いだまま青筋を立てた平塚先生に連行されて行ったが、体育館を出るときには、背中に祝福を受けていた。

 

後日、よつべに誰が撮っていたのか俺の告白動画がアップされており、綾瀬さんのスクープはあっと言う間に忘れ去られていた。ただなぜかワイドショーでは俺の告白動画が流され、相手は美少女生徒会長と世間を賑わせていたが。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「先輩//私、傷つきました。慰めてください//」

 

一色さんは席から立ち上がり、八幡の方に歩いて行ったわ。も、もしかして先ほどの海老名さんのように抱きつくつもりかしら!?まずいわ、止めに行かないと。でも私の位置からでは遠いわ。

一色さんが八幡に抱きつこうと手を前に出した時、海老名さんが間に割り込んで阻止していたわ。

 

「ふふ、甘いね。いろはちゃん」

「チッ、..海老名先輩ばっかりずるいですよ」

「ふふん、こればっかりは譲れないよ」

「あ、あなた達、いい加減にしてもらえないかしら、今はラノベの批評をしないといけないのよ」

「「..はーい」」

「な、何やってんだよ//まったく」

 

海老名さんのおかげで、一色さんを止めることが出来たわ。でも元は海老名さんが最初にしたから一色さんも真似をしたのよね。そう考えると海老名さんだけ良い思いをしているわ。今度は私も抱きつかないと。

 

「雪ノ下先輩。最初、読ませるの迷ってましたけど、これぐらいなら大丈夫ですよ」

「念のためよ、読んでからだと遅いでしょ。でも、それなら先ほど「慰めてください」と言って、取った行動は何だったのかしら」

「い、いやー、あはは」

 

「材木座、ラノベでサブキャラが出てくる時って、綾瀬 綾(あやせ あや)愛甲 愛(あいこう あい)なんだな」

「キャ、キャラ名を考えるのが、面倒くさいとかではないぞ!!」

「良いのではないかしら、材木座君も億劫なんでしょ」

「..はい」

 

「このCMって何の宣伝かしら、そのことも書いた方が良いでしょうね。後、編集者と八幡が所属している事務所の担当者を分けるべきね。編集者が八幡にスケジュールを電話していたでしょ」

「..あーし、気づかなかった」

「うちも」

「私も。雪ノ下さんよく気づいたね」

「最初から気になっていたのよ。一色さんとの撮影の時、カメラマンのことを書いていなくて、編集の方が指示を出していたから」

 

「なあ、材木座。俺が眼鏡を掛けても大して変わらないだろ」

「そんなことないぞ、八幡。たしかに今回のラノベは大げさに書いたが、撮影の時、イケメンリア充爆発しろ!!だったぞ」

「..もしイケメンになれたとしても、俺は嫌だな、回りが煩くなるだけだろ」

「確かにそうね。八幡の回りの人だけ知っていれば良いでしょ」

「うん、ヒッキー。私たちの前だけ眼鏡掛けてね」

「でも本当に多げさに書いたわね。相手が国民的アイドルってことは、全国区のCMではないかしら」

「でもヒキオって眼鏡掛けると変わるし、案外雑誌とかには取り上げられるかもよ」

「やだよ、面倒くさい」

「うん、ハチ。みんなは知らなくてもいいよ、でも私たちの撮影の時はまた眼鏡してね」

「うちも一緒に撮りたいんで今週、よろしくね」

 

「先輩、このラノベみたいに全校生徒の前で告白してもらっても良いですよ」

「なんで俺が告白しないといけないんだよ。そもそも俺にこんなこと出来るわけないだろ、噛みまくって途中で逃げ出すだろうな」

「ヘタレですね」

「いや、こんなこと出来る奴いないだろ、いたら見せてほしいわ」

 

たしかに全校生徒の前で告白って中々ないわね。でも八幡にしてもらったら、私もこのラノベみたいに抱きついてしまうのでしょうね。私も八幡にやってもらいたいと思ってしまったわ。

 

 


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