やはり材木座が書くラノベは間違っている   作:ターナ

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第30話

俺のクラス内での立場がおかしくなってきた。

今日、沙希が弁当を持ってきてくれたんだが、何時もの屋上ではなく教室で食べると言い出した。俺の抗議も虚しく、沙希は弁当を広げ出したし。

回りの目が厳しい。結衣と南が弁当を持ってきてくれた時、教室で食べているんだが、沙希とも食べ出すと、俺が誑し見たいじゃないか。違うからね、弁当の練習に付き合っているだけだからね。

ただ、沙希だけだったら良かったのだが、なぜか今日は優美子も一緒に食べたいと言いだし、結衣と海老名さんを引き連れ、そこから南も来て、総勢6人で俺を取り囲むように食べ出したのだ。

 

「はぁーーー」

「どうしたの、八幡。かなり疲れているわね。また姉さん?」

「いやーーー、あはは。ヒッキーごめんね」

「何か教室で有ったのかしら?由比ヶ浜さん」

「今日のお昼ね、沙希がお弁当を持ってきたんだけど、ヒッキーと教室で食べ出したんだ。そしたら優美子が一緒に食べるって言い出して私と姫菜を連れてったの。そしたら、さがみんも一緒にって言い出してね、クラスメイトからの視線が痛かったよね。ヒッキー」

「ボッチには厳しかった、あの妬みの視線に俺は耐えきれないぞ」

 

優美子は葉山と色々あってから、普段どおりにしているつもりなんだろうが、俺への接触が多くなってきている。朝、横を通りすぎるとき挨拶してきたり、休憩時間に話しかけてきたり。葉山とも喋っているのだが、誰かが振った話題に乗っかっているだけで、二人での会話は見たことがない。

 

「へー、先輩ってクラスの女性5人を侍らかしているんですね」

「いろは。冗談でも止めてくれ、俺は静かに過ごしたいんだよ」

「でも、明日は私が弁当を持ってくる日ですからね。先輩、私も教室に行くので楽しみにしててください」

「では私も行かせてもらうわ。一色さん川崎さん相模さんの弁当を見せてもらう良い機会のようだから」

「やめてくれ。あの視線だけで俺、死んじゃうから。ぼっちには耐えきれないぞ。せめて部室に集まるって事に出来ないか、ここなら他の生徒は来ないし」

「確かにその方が良いかも。毎回みんなで集まっていると優美子はグループとヒッキーの間を行ったり来たりするだろうし、それで変な噂を立てられるかも知れないし」

「川崎さん、相模さんはどうなのかしら」

「サキサキは何時もどこかに食べに行っているから問題ないと思うよ。でもさがみんは一緒にいる友達から離れて、ヒッキーと食べるからね。友達にしたら気分よくないかも。今は一週間に一回だから問題なかったけど、毎日になるとね」

「ではこの部室を使うしかなさそうね。由比ヶ浜さん、川崎さんと相模さんに言っておいてもらえるかしら」

「うん、いいよ。明日からって事で言っておくから」

「今更だが、弁当を止めるって事には出来ないのか」

「先輩、何を言っているんですか。そんなの無理に決まっているじゃないですか」

「そうだよ、ヒッキー。私ももっと練習しないといけないし」

「本当に今更ね、八幡。あなたが一人のお弁当を選べば良いだけなのよ、何だったら今からでも一人選んで貰えれば良いのだけれど」

「...スマン、明日からもお願いします..」

「「「ヘタレ(ね)(だね)(ですね)」」」

 

選べるわけないだろ、誰の弁当が一番か何て。それぞれおいしいし、結衣も段々美味くなっていっているのが分かるし。それぞれの個性が弁当に出ていて、皆には言えないが俺も色々食べれて嬉しいからな。

 

「そういえば由比ヶ浜さん。三浦さんはお弁当については何も言わないのかしら。私たち五人が日替わりで作っているのは知っているのでしょ?」

「優美子は私以上に料理とかしないよ、だから何時もお母さんが作ってくれている弁当だし」

「へえ、三浦先輩って葉山先輩のために色々してそうだったんですけどね」

「葉山くんは受け取らないでしょ。バレンタインの時もそうだったけれど」

「まあ、優美子は私たちがヒッキーに作っていること知っていても、何も言わないから問題ないよ」

 

あーしさんが弁当作ってくるって言ったら、また一悶着ありそうだな。でも結衣の話だと興味なさそうだし問題ないのか。

その後、俺たちはいつも通り部活を終わった。

 

「ただいま」

「...」

 

返事が無い、小町はいないのか。俺はリビングに入らず、部屋着に着替えるとコーヒーを入れるため、リビングへと向かった。

リビングに入ると小町が仁王立ちして、俺をジト目で見ていた。

 

「おにいちゃん、こっちに座って」

 

小町が指差す所はソファーではなく、カーペットも引いていないフローリングだった。何かやったか。最近は奉仕部での依頼もなく何も気に障るようなことは無いはずだが。俺がどうすれば良いか悩んでいるとまた小町がフローリングを指差してきた。

 

「おにいちゃん、正座」

「小町、どうして正座しないといけないんだ。せめて理由を言ってからにしてくれ」

「じゃあ、ソファーでいいから。おにいちゃん、小町に何か隠し事してない?」

「今は何もないぞ、どうしてそう思うんだ?」

「一ヶ月前ぐらいから、何か様子がおかしいよね。土日もどこかに出かけているし」

「....あ」

「小町の受験があったんで相談してくれなかったのは分かるんだけど、ちょっと寂しかったんだよ。今は受験終わったんで聞いてあげるから言ってみ」

「..困っているとかではなくてだな、そのちょっと新たな黒歴史が作成されただけだ」

「告白でもしたの?おにいちゃん」

「...念の為、関係者に確認して良いか。俺一人の事ではないんだ」

「うん、いいよ。皆って奉仕部の人たち?」

「その他にも何人も居る」

 

俺はLINEで以前登録されたラノベグループを立ち上げると、小町に喋って良いか確認した。雪乃、結衣、沙希、優美子からすぐに返信があり、良いと言うことだった。

 

「小町。最初に言っておくが別に悩みがあるとか何かやらかしたとか、そういうことではないからな」

 

俺はそう前置きをし、材木座と雪乃から始まったラノベの依頼について、小町に伝えた。小町は何も言わず俺の話を聞いてくれている。俺が話終わると小町は大きなため息をついていたが。

 

「おにいちゃん、誑かしすぎ。あと、突っ込まずに聞いていたけど、皆のこと名前で呼んでいるんだよね。小町的にはポイント高いんだけど、さすがにお義姉ちゃん候補が多すぎだよ」

「あくまでもラノベの中の話だからな」

「ふーん、まあいいや。でも安心した。また厄介な依頼とかに巻き込まれてるんじゃないかと思っていたから」

「心配をかけてすまんな。でも小町が知ったら読みたいとか言い出すだろ、受験期間中そんな事やっていられないからな、だから黙っていた」

「うん、気を使ってもらって、ありがと。でも小町も読んでみたい。誰かの読ませて」

「奉仕部でもよく言われるんだが、プライベートな事も書いてあるからな。駄目だ」

「えー、小町も読んでみたい」

「...一つなら問題ないか、ちょっと材木座にファイルを送ってもらうようお願いしてみる」

 

俺は材木座にメールでオリキャラメインのラノベを送ってもらうようお願いした。しばらくすると材木座からメールが送られて来たので、添付ファイルを小町に見せてあげた。

 

「へえ、小町も出ているんだ」

「へんな扱いはされていないはずだぞ、ただ材木座に言っておく。これからは小町は出さないようにな」

「出しても良いよ、おにいちゃん。小町も書いてほしいもん」

「相手は誰だ!!大志か大志なのか!!」

「おにいちゃんだよ。何でそこで大志君が出てくるの、小町的にポイント低いよ」

「なんで、俺が相手なんだよ。一応、ラブコメのラノベだぞ」

「いいじゃん、おにいちゃん。お願いしてよ」

「いや、材木座も困るだろ。内容については今まで材木座まかせだったけど、例えばどういう内容で書いてもらうんだよ」

「...うーん、近親相姦?」

「ば、ばか。そんなの書いてもらえるか」

「まあそれは冗談だけど、確かに難しいね。でも、思いついたらで良いんでお願いしてみて」

「..分かった、でも期待するなよ」

「うん」

 

大して文句を言われることもなく説明は終わったが、どうして小町まで書いてほしいとかいうんだ。俺には何を考えているかさっぱり分からん。まあ、小町がご機嫌にご飯を作ってくれているから、いいんだが。

 

翌日、部室で弁当を食べることになったのだが、逆に視線が厳しい。いろはの弁当を雪乃と結衣、沙希がジッと見て来るので食べにくくてしょうがない。

 

「どうですか、先輩。おいしいですか」

「ああ、この唐揚げ下味がしっかり付いているんで美味いな」

「昨日の夜、ちょっと頑張りましたからね」

「いろはちゃん、私も貰って良い?」

「私の弁当から取ってください、先輩のは駄目ですよ」

「一色さん、私のおかずとも交換してほしいのだけれど」

「私も交換して」

「いいですよ、でも何かくださいね」

「あの、俺も交換してほしいんだけど」

「先輩は駄目に決まっているじゃないですか、今日は私の弁当だけ食べてくださいね」

 

俺は交換してはいけないらしいな。日を待てば皆のが食べれるんだが、今食べてみたくなったりするんだよな。

 

「そういえば、優美子と南は来ないんだな」

「今日は教室で食べるって言っていたよ」

「良いじゃないですか。今日は私の弁当を堪能してください」

 

お昼、弁当を奉仕部で食べるようにして本当によかった。今日も4限目が終わった後の静寂と視線が痛かった。俺が教室から出ていくと、普通に騒ぎ出したから、あの静寂は俺が原因なんだろうな。ぼっちなのに何で注目を浴びないといけないんだよ。

 

放課後、部室で本を読んでいると、優美子と海老名さんが部室に入ってきた。

 

「お邪魔するし」

「ハロハロー」

「どうしたのかしら、どちらかの依頼?」

「雪ノ下さん。あーし、ヒキオに要があるから」

「ヒキオ。あーし料理出来ないからさ、姫菜に手伝って貰って始めて作ったし。これ受けとって」

「ヒキタニ君、食べてね」

 

そういうと優美子は袋を俺に渡してきた。あと、部室で食べてと言って結衣にもう一つ袋を渡していた。結衣が開けると、そこにはクッキーが入っていた。始めて作ったんだろうが、見た目は美味そうなクッキーだな。

 

「三浦さん、私も貰って良いかしら」

「うん、食べて感想聞かせて」

「おいしいわ、初めてとは思えないわね」

「うん、優美子おいしいよ」

「ありがと。じゃあ、ヒキオも食べてみて....あーん」

 

優美子は結衣が袋から出したクッキーを一つ取ると、俺の口に近づけてきた。あーんって何だよ、俺は雪乃と結衣に睨まれていた。

 

「優美子、自分で取るかr」フゴ

 

喋っている最中、優美子の手から俺の口にクッキーを入れられた。その際、優美子の指が唇に触れていたんだが。

段々顔が赤くなるのが分かる。優美子も想定外だったのか顔を赤くしだしたし。

 

「う、美味いな」

 

はっきり言って味なんて分からなかったが、返事だけはしておいたが。

 

「優美子、何やってるんだし!!」

「あ、あなたたちは何をやっているのかしら」

「良いじゃん。食べさせてあげるぐらい、普通っしょ。ヒキオ、あーし料理できないからさ、これから色々やってみるし。だからこれからも持ってくるから感想聞かせて」

「あ、ああ、分かった。でも今日みたいな事は止めてくれ、恥ずかしいから」

「わーたし。じゃあ、今日はこれで帰るから」

 

そういうと、二人は出て行った。台風みないな奴だな。でももう一枚クッキーを食べてみると、確かに初めてとは思えないぐらい美味い。

結衣がなにか唸っている。雪乃は何か考えているようだし。

 

「ヒッキー、優美子にデレデレしていたし」

「し、してないぞ。小町以外からあーんされたの初めてだったから、ビックリしただけだ」

「ま、まあ、良いのではないかしら。由比ヶ浜さん」

「..ゆきのん、どうして何時もみたいにヒッキーに言わないの」

「八幡もいきなりで対応しようが無かったようだし、さっきので責めるのは違うと思うのよ」

「...ふーん、ゆきのん。なにか企んでいるよね」

「わ、私は何も企んでいないわよ。ただ三浦さんのクッキーを食べて、私もお菓子を作ってみようと思っただけよ」

「ずるい、ゆきのん!!じゃあ、今日泊まりに行くから私も手伝わせて!!」

「結構よ。由比ヶ浜さんお菓子作りはあのクッキー以来やっていないのよね」

「うぅ、ヒッキー。ちょっとぐらい失敗しても食べてくれるよね!!」

「あ、ああ」

 

もしかしてまたダークマターを食べさせられるのか。俺は雪乃に助けを求めて目を合わせたが、雪乃から視線をそらされた。

 

「今度はゆきのんの言う通り、やるからさ。いいでしょ」

 

そういうと、結衣は雪乃に抱きついていた。ああ、こうなると雪乃は断ることが出来ないな。

 

「はぁ...分かったわ、由比ヶ浜さん。でも本当に絶対に言う通りやって余計な事はしないようにして頂戴」

「ゆきのん、たぶん大丈夫だよ」

「なぜ、そこで多分と言う言葉が出てくるのかしら」

 

明日、来たくないな。何のお菓子か分からないが、部室に持ってくるだろうし。

でも優美子はやらないだけで初めてのクッキーをここまで作れるなら、結構上達が早いのかも知れないな。ただ、弁当を作ってくるってなったらまた揉めそうなんだが。

こうして、その日の部活は終了していった。

 

 


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