「どうしたのかしら、八幡。そんなに疲れて」
八幡が部室に入って来たのだけれど、いつもより疲れて目が淀んでいるように見えるわ。私は極力罵倒をしないようにしないといけないわね。言葉に気を付けて喋らないと。それで素直に接するのよ。
「ああ昨日の日曜日、陽乃に呼び出されて色々連れ回された。めぐりが連絡したらしくて、めぐりって呼んだことや、優美子にやったことを全て報告されてな」
「それで姉さんの事も陽乃って呼べと言われたわけね」
「ああ、後で雪乃に確認して「さん」付けしてたら、分かるわよねって、言われてな」
「でも、三浦さんにやったことは私たちも怒っているのよ」
「なんで俺が怒られるんだ?優美子から言われるんなら分かるんだが」
「八幡。私は「やっはろー!!」..チッ」
「え!?今、舌打ちされた!?」
「何を言っているのかしら、由比ヶ浜さん。三浦さん、海老名さん、こんにちは」
「おじゃまするし」
「ハロハロー」
どうしてこうタイミングが悪いのかしら。もうちょっと時間があれば、あの時感じた感情を言うつもりだったのに。でも八幡の前で、自分の気持ちを素直に言えたかしら、分からないわね。
由比ヶ浜さんが三浦さんと海老名さんを連れてきたわね。
今日は材木座君が三浦さんのラノベを持ってきてくれるはずだけれど。そう考えていると、材木座君がきたわ。
挨拶を済ませると私と由比ヶ浜さんにラノベを渡してくれたわ。今回は三浦さんのラノベなので注意して確認しないといけないわね。この間、泣いていたこととか書いているとまずいでしょうし。
「今日はこの間依頼された、じょ..三浦殿のラノベです」
「へー、本当に書いてもらえるんだ、ヒキタニ君が男優なんだよね」
「海老名さん、止めてくれ。海老名さんが言うと特定の職業の人たちに聞こえる」
「えー、でもヒキタニ君と優美子がイチャコラするんでしょ、合ってるよね?」
「ひ、姫菜!!あーしのラノベ読む前にそんなこと言うなし//」
「そ、そうね。では確認させてもらってから、皆で読みましょう」
**************************
(ここから材木座の小説)
「ヒキオ、今度の土曜日、買い物に行くし」
「ああ、行ってら」
「はぁ!?」
「ごめんなさい、一緒に行かせていただきます」
「最初からそう言えし」
俺と優美子は教室でよく喋るようになっていた。なぜか休日のたびに荷物持ちをさせられているが。まあ俺だったら気を使わなくていいし、気楽なんだろうな。
「ああ、そう言えば床屋に行きたいって言っていたけど、あーしの行きつけの美容院にヒキオで予約してっから」
「は?どういうこと?」
「カットをして貰うし。割引券あるから安くなるし良いっしょ」
「..ああ、分かったよ」
今回は荷物持ちじゃないのか?でも安くなるって、そもそも美容院の価格を知らないんだが。美容院って床屋と一緒ぐらいなのか。
俺と優美子は土曜日の10時に駅前で待ち合わせをしていた。俺は9時半には来ていたが、10時を過ぎても優美子は来ない。まあ、こうやって待たされるのもいつもの事だな。
10分ぐらい遅れて優美子は慌てる風もなく、俺の方に近寄ってきた。
「ごめん、まった?」
「ああ、かなり待たされたな」
「そこは、「今来た所だ」って、いつも言えって言ってるし!!」
「いや、待たされたのは事実だろ。でも、...今日の服、優美子に似合ってて綺麗だな//」
「...い、いきなしそんな事、言うなし//..うぅ、でもありがと//」
いつもなら綺麗とか言わないんだが、優美子の照れる顔が見たくて、言ってみたんだが俺も照れてしまった。言い慣れてないと、難しいものだな。俺が言い慣れるなんてないだろうが。
俺たちは手を繋いで、美容院に向かった。なぜか優美子の買い物に付き合わされるとき、いつも手を繋がされる。でも俺は優美子と手を繋げるのが嬉しかった。最初は照れてしまったが、今では学校で隣にいるとき、手を繋げないのが寂しく感じるぐらいになっていた。
美容院は11時からの予約だったらしいが、かなり早く着いたようだな。どうも優美子は雑誌から髪型を選びたかったらしい。二人で雑誌を見ていると店員が話しかけてきた。
「優美子ちゃん、いらっしゃい。そっちは彼氏?いつも喋っているヒキオって子でしょ?比企谷って名字だし」
「ま、まだそんなんじゃないし//」
「まだ、ね..じゃあ、比企谷君。席が空いたんでこっち来てくれる?優美子ちゃんも一緒に来てどういう髪型にするか教えて」
優美子は顔を真っ赤にして睨んでいたが、店員は受け流していた。あの俺も恥ずかしいだけど。何で優美子は美容院で俺の事、喋っているの。文句ばかり言っているんだろうな、授業中寝ているとか、ボッチだとか。いや、それは本当のことか。
「比企谷君はどう言った髪型がいいの?」
「軽くしてくれれば良いです」
「ヒキオの言うことは聞かなくて良いし」
「このアホ毛、言うこと聞かないわね」
「ヒキオの性格が出ているからね、それを活かしてカットして欲しいんだけど」
「うん、その辺は任せて。優美子ちゃん、どういった髪型にするの?」
「ショートにしたほうが良いと思うんだけど、どう?」
「うん、似合うと思うよ。アホ毛を残すんだからトップは多めにするけどね」
俺のアホ毛をぴょんぴょん弄りながら、優美子と店員は喋っていた。俺は恥ずかしくて話に入れないけど。どうして大通り沿いのガラス張りの店舗なんだ。しかも俺の座っている位置は一番大通りに近い位置だし。
髪型が決まったようで髪の毛を洗った後、店員はカットしだした。優美子は後ろの席に行って雑誌を読んでいるようだな。
「ねえ、比企谷君。優美子ちゃんとはどうなの」
「俺は単なる荷物持ちですよ、買い物に付き合わされるだけですし」
「そんなこと言っていると、優美子ちゃんに怒られるぞ」
「優美子は学校で一番有名人って言って良いぐらいですけど、俺は最低辺で誰にも認識されていませんからね」
「ふーん、でも優美子ちゃんはそれでも、比企谷君の近くにいるんでしょ」
「ええ、からかうのが楽しいんでしょうね」
「..ちょっとは正直になった方がいいと思うよ」
「....」
俺は答えられなかった。自分の気持ちに正直になりたい、でも俺は自分の気持ちを欺いて優美子との時間を過ごしていた。
それ以降、店員は優美子のことで俺に話題を振ってくることはなかった。
「優美子ちゃん、こんな感じでどう?」
「良いじゃんヒキオ!!自分ではどう?」
「ああ、なんか全然違うな、今まで短くしたこと無かったんで。結構いいんじゃないか」
「これだと、セットも楽だしね、今までワックスとか着けていないでしょ」
「ええ、この髪型はワックスやった方が良いんですかね」
「うん、でも簡単だよ。もうちょっと調整して流したら教えるから」
「お願いします」
かなり頭が軽くなった気がする。まあ今まではボサボサだったからな。髪の毛を洗ってもらい、乾かした後、ワックスの付け方を教えて貰った。なぜか優美子も聞いていたけど。
ただ、大通りからの視線が痛い。最初の時は見向きもしなかったのに、カットが進むにつれ、女性の視線を感じていた。さすがにそちらには顔を向けることは出来なかったけど。
「いいじゃん、ヒキオ。あと姿勢をよくしな」
「ええ、辛いんだけど」
「そのうち慣れるからやるし」
「分かったよ」
「う、うん、良い感じ//」
俺たちは美容院を出た後、手を繋ぎ歩いていたが、ちょうど昼だったので食事を済ませ、今度は眼鏡屋に入って行った。
「ヒキオ、これ掛けてみて」
「俺、別に目は悪くないんだけど?」
「ファッション眼鏡だし、良いから掛けるし」
「ああ....どうだ?」
「う、うん//すごく似合っている//じゃあそれ買うから」
「ええ、要らないぞ」
「あーし、何時も買い物に付き合って貰っているからお礼がしたいし、受け取って貰えない?」
「買ってくれるのか。でもお礼は要らない。だから優美子からのプレゼントって事にしてほしい」
「わーたし。でも何のプレゼント?」
「荷物持ち以外でのお出掛け記念」
「何言ってるんだし!!..じゃあ買ってくるから」
なんだか照れくさいな、自分からプレゼントを欲しがるなんて。でも俺は優美子との繋がりが欲しかった。お礼だと過去のことに対しての贈り物だから。プレゼントであれば今日、一緒に出掛けた思い出の品として残せる。こんな考えがキモイんだろうな。でも優美子が俺のために、美容院に連れて行ってくれたことや眼鏡を買ってくれたことが、凄く嬉しかったから俺はお願いしていた。
「はいヒキオ。初美容院記念。じゃあ掛けてみて」
そういうと優美子は眼鏡ケースから眼鏡を出し俺に掛けてくれた。掛けてくれるとき、お互い見つめ合う形になったので、俺の顔は赤くなってしまった。優美子も赤くなっているようだ。
「ヒキオ//かっこいいよ//」
「あ、ありがとうな//」
その後、手を繋いで二人でウィンドウショッピングをしていたが、なぜか他の女性からの視線を感じる。俺の顔をチラチラ見てくる人も居るし。
「優美子、なんか視線を感じるんだが俺、何か可笑しいか」
「そんなこと無いって、気にするなし」
俺たちはウィンドウショッピングをしていたが、雑貨屋で優美子が一つのネックレスを気にいったようで、付けたりしていた。でも買わなかったようだ。優美子は言わなかったが予算が足りないのだろうか。俺に眼鏡を買ってくれたしな。
「じゃあ、そろそろ帰ろっか」
「ああ、送ってくよ」
「うん、ありがと」
俺はウィンドウショッピングの途中、トイレに行ってくると言って、優美子が見ていたネックレスを買っていた。ただ渡して断られるのが怖くて渡せないでいた。
何時も最寄り駅まで送っていくので、その時に渡そうと思っていたが結局、俺は渡せなかった。断られるのが怖い、今の関係が崩れてしまうかもしれない。
俺は渡せなかったことを悔やみながらも、今の関係が続けられる事に安堵していた。
月曜日、俺は髪型をセットし優美子に貰った眼鏡を掛け、学校に向かった。
「ヒキオ、おはよう」
「うす...その可笑しくないか?」
「大丈夫、似合っているし、自信持ちな」
「ありがとうな」
女子生徒からの視線を感じる。優美子の言うとおり可笑しくは無いんだろうが、なんだかむず痒い。ただ髪型や眼鏡を掛けたぐらいでチラチラ見られるのは、はっきり言えば不愉快だった。
ただ、優美子が俺のために髪型を決めてくれ、眼鏡もプレゼントしてくれたので止めるつもりは無いが。
次の日、俺の下駄箱に手紙が入っていた。何?不幸の手紙?俺が下駄箱で唖然としていると、優美子が登校してきた。
「ヒキオ、おはよう」
「お、おう、お、おはよう」
「どうしたん?あ、...それって」
「ああ、下駄箱に入っててな」
「...ヒキオ、そういうのはどっちにしても、ちゃんと答えてあげて」
「..ああ、分かった」
休み時間は優美子が俺の席に話し掛けて来ていたのだが、今日は一度も来ることが無かった。なんだか寂しいな、でも俺から話しかけるのは回りの目が気になるので、出来なかった。
俺は放課後、手紙に書いてあった場所に向かっていた。
「比企谷君、来てくれてありがとう。それで返事を聞かせて欲しいんだけど」
「ああ、すまない。俺には好きな人がいる。だから付き合えない」
「そうか、ありがとうね」
そういうとその女子生徒は走っていった。後姿を見送った後、俺は鞄を取りに教室に向かった。
俺の容姿が変わっただけで見られたりするのが不愉快だとか、俺が人のことを言える立場だろうか。自分の気持ちに嘘をついて、今の関係が続けば良いとか綺麗ごとを並べて、自分を欺いて。先ほどの女子生徒の方が、よほど自分に正直なのだろう。
俺は優美子に対しても失礼な考え方をしているのではないのか。優美子が俺のことをどう思っているかは分からない。でも俺の気持ちを伝えても優美子はちゃんと考えて、返事をくれるだろう。
俺が教室に着くと、優美子が自分の席に1人俯いて座っていた。俺は教室に入り優美子の席に近づいて行った。
「優美子」
「..ヒキオ、返事したの?」
「ああ、断った。俺には好きな人がいるって言ってきた」
「..そうなんだ」
優美子は俺と目を合わせてくれない。もしかした断られるかも知れないが、今言わなければ後悔するのは分かっている。これ以上、幾ら言い訳を考えても自分の気持ちには、嘘をつけなかったから。
「....優美子、俺から話したいことがあるんだが、俺を見てくれないか」
「..なんだし」
そういうと優美子は立ち上がり俺のほうを向いてくれたので、俺は真正面に立った。優美子は憂いを帯びた表情を浮かべていた。
「俺には好きな人がいるんだ。休日は潰されるし、待ち合わせには何時も遅刻してくるし、わがままも言うけど、その人は俺の近くに居てくれるんだ、俺はその人と一緒に居たい。...俺は優美子が好きです。付き合ってください」
「あ、ありがと//あーしもヒキオの事が好き!!ずっと待ってたし、ヒキオが告白してくれるの//」
「え!?じゃあ、言ってくれればよかっただろ」
「女から言わせる気!?あーしは言って欲しかったの!!」
「優美子って乙女なんだな」
「..こんなあーしは嫌?」
「いや、そんな優美子も俺は好きだ」
俺はポケットに入れていた包みを出して、優美子に見せた。
「本当は土曜日に眼鏡のお返しで渡そうと思って買ったんだが、勇気が出なくて渡せなかった。優美子に受け取って欲しい」
「それって..やっぱりヒキオはヘタレだし、..あ、あーしが居てあげないと駄目だし...ウゥ」
「泣きながら言われても、説得力無いな」
「う、うっさい!!ヒキオのくせに生意気だし!!早くあーしに着けるし!!」
そういうと優美子は後ろを向いた。表情は見えないが、鼻をすする音がしているので泣いているのだろう。
俺は箱からペンダントを取り出し、優美子の首にペンダントをつけた後、後ろから優美子を抱きしめた。
「待たせて悪かった。大好きだ、優美子//」
「ううん、ちゃんと言ってくれてありがと。あーしもヒキオのことが大好き//」
俺達はお互い向かいあい、夕日が差し込む教室で唇を重ねた。
(ここまで材木座の小説)
**************************
「....//」
「ゆきのん、憂いを帯びた表情ってどういうこと?」
「切なさとか悲しさが表れた表情のことよ」
「ふーん」
「結衣、本当に勉強した方が良いぞ、いくら何でも不味いぞ」
「ちょっと、ど忘れしていただけだし!!ヒッキーうっさい!!」
由比ヶ浜さんは本当に分かっているのかしら。そろそろ奉仕部内でも受験勉強をしていった方がいいかも知れないわね。特に由比ヶ浜さんにたいして。
「..け、結構恥ずかしいし//結衣も自分のを読んだとき、どうだった?」
「自分のラノベの時、感情移入しちゃうんだよね。だから人のを読んでいるときと比較にならないの」
「でもよく書けたね、材木座君。優美子の特徴とか出てたんじゃない?」
「うん、優美子って結構乙女だからね」
「奉仕部で取材したから書けただけで、口調とかいまいち分からなかったのだ」
「たしかに、三浦さんの口癖で語尾が「し」で終わる事が多いけど、ラノベの中では書いてあったり、書いてなかったりするわね」
「なかなか難しくないか、人の口癖を聞いたまま書くのであれば問題ないが、創作する際は、本人から聞いた言葉以外も書かないといけないからな。特に今回は材木座と優美子は喋ったことないだろ」
「材木座君。以前オリキャラの特徴の話をしたことがあるけれど、例えば今回なら三浦さんの口調を自分なりに色々な台詞で考えてみてはどうかしら。そうすれば本人とは異なっていても、ラノベの中では口調が統一されると思うのよ。オリキャラを考える時も参考になると思うわね」
「オリキャラの口癖や口調...確かに今まで考えたことなかったです」
「ヒッキーって眼鏡掛けると、どうなるんだろ」
「ヒキタニ君、私の眼鏡掛けてみてよ」
「そうね、材木座君もちょっと貸して貰えないかしら。黒ぶち眼鏡と私が貰った下にフレームがあるものと、海老名さんの上にフレームがあるもので検証できるわよ」
「やだよ、目が悪いわけでもないのに」
「いいじゃん、ヒキオ。掛けてみるし」
「いやだ」
「..あーしを抱いたのに」
「優美子!!どういうこと!?ヒキタニ君に犯られちゃったの!?」
「は、八幡!?お主、どういうことだ!!」
「優美子、誤解を生むようなことは頼むから言わないでくれ。後、海老名さん。犯るとか女の子が言うんじゃありません!!」
「あーし、男に抱かれたの初めてだったし...」
「..わ、分かった。掛ければ良いんだろ。後海老名さん、材木座。誤解が無いように言っておくが、ハグしただけだぞ」
「いや、ハグもレベル高いだろ、八幡」
「...ソレ イガイモ シテクレタシ」
三浦さんは何か言っていたけど、聞こえなかったわ。八幡は不貞腐れながらも、眼鏡を掛けてくれたわ。3種類掛けてくれたのだけれど、どれも結構似合っているわね//
「け、結構にあうじゃん//」
「ヒッキー、良いと思うよ//」
「八幡。目の淀みが分かりにくくなって、良いと思うわよ//」
「ヒキタニ君、これから眼鏡掛けようよ//」
「眼鏡とか面倒だから嫌だよ」
「ええ、もったいないなあ。ヒキタニ君が眼鏡を掛ければ、色々な男がよってくると思うよ」
「それこそ嫌だわ、どうして男に寄られないといけないんだよ」
「う、ううん。では今日はここまでにしましょうか」
「八幡、材木座君。帰ってもらって結構よ。他の人はちょっと待ってもらえるかしら」
「ああ、じゃあな」
「我も帰還するとするか」
「雪ノ下さん、どうしてヒキオを帰らせたの?あーし、一緒に眼鏡見に行こうと思ったんだけど」
「三浦さん、私も八幡にプレゼントする事を考えたのだけれど、普段から眼鏡を掛けさせると、今回のラノベと一緒のことになってしまうわ」
「ヒッキーに告白する人が出てくるってこと?」
「ええ、眼鏡一つであそこまで変わるとは思わなかったわ。タダでさえ彼の回りには女性が多いのに、これ以上増えるのはお互いのため良くはないと思うの」
「男が寄ってくれば面白いと思うよ、雪ノ下さんもこっちの世界に来なよ」
「そ、それは結構よ。海老名さん」
「そっか、ヒキオに絡んでくるのを防ぐためだね」
「ええ、私たちだけが知っていれば、この部室内や遊びに行ったとき、掛けて貰うことが出来るでしょ。そちらの方が良いと思うの」
「じゃあ、ヒキオが眼鏡でイケメンになるのは、ここに居る人だけの秘密ってことで良いじゃん」
「でも一色さんやラノベを書いて貰っている人達はここによく来るので、もし掛けていたら気づくでしょうね」
「ヒキオの回りに居る人は良いでしょ。他の女避けってことで」
「残念だけど、私は良いよ」
「そうだね、口外するようなことじゃないしね」
「分かったわ」
由比ヶ浜さんが口外という言葉を知っているとは思わなかったわ。八幡がいれば言っていたのでしょうけど。
でも、まさか眼鏡であそこまで印象が変わるとは思わなかったわね。今度遊びに行くことがあれば掛けて貰いましょう。八幡から買い物のお誘いとかしてくれないかしら。