「八幡、今回は変身ものを書いてみたのだ」
「仮面ライダーでも書いたのか?何時ものようなラブコメではないのか。俺としてはそっちの方が助かるけど」
「いや、もちろんラブコメだぞ。内容については、いつも通り読んでもらってから、批評をお願いしたいし、そうでないと我がまた....モウ、セッキョウハ ヤダ」
材木座君は何か言いたそうだったのだけれど、声が小さくなっていき、最後の方は聞き取れなかったわね。
彼はラノベをカバンから取り出すと私と一色さんにラノベを渡してきたわ。と、言うことは今回は由比ヶ浜さんがヒロインということね。
「一色さん、内容については問題ないと思うのだけれど、どうかしら」
「はい、問題ないですよ」
「では皆で読みましょう。材木座君、配ってもらえるかしら」
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(ここから材木座の小説)
日曜日の昼前、俺は小町との賭けに負け、ある恰好をして買い物に来ていた。
何で俺が女装しないといけないんだよ、でも母ちゃんの服よく着れたな。まあ黒のストッキングに深緑のロングスカート、上は首元が横に大きく開いている白いTシャツとグレーの丈が長いカーディガンを羽織っているだけだが。さすがにパンティは拒否したが、胸にはブラを付けさせられパッドをしこまれた。
でもこのTシャツ、思いっきり鎖骨出るじゃないか、ちょっとずれるとブラの紐も出ちゃうし。
でも目にカラコンを付け、カツラで茶髪のボブカット、そして小町がノリノリで化粧をしてきたので、俺も楽しくなってきたのは内緒だ。自分で鏡を見たときもちょっとビックリしてしまったし、これならモテるんじゃね?でも男にモテたら腐女子が沸いちゃうだろ!!
ただ外に出かけるとは思っていなかったので今、どうすれば良いのか凄く迷っている。
それというのも俺の目線の先には、結衣がチャラチャラした二人組にナンパされているのだ。なんであの二人組は結衣にちょっかい掛けているんだ、ムカつくな。助けにいきたいが、さすがにこの格好だと...
そう思っていたら、小町が突っ込んで行きやがった。
「お。可愛い子が来たな、君たち知り合いなんだ。じゃあ、ちょうどいいな。俺たちも二人だからさ、これからカラオケいこうぜ!!」
「おに..おねえちゃん!!助けて!!」
なにやってんだ、あいつ。何も考えなしで突っ込んで行きやがって。結衣は涙目になっているし、小町も最初の勢いはどこに行ったのか、今では俺の方をジッと見ているだけだ。
はあ、やるか。アイツら二人共小さいな。身長は結衣よりちょっと高いぐらいか。俺は姿勢を良くし向かって行った。
「何をしているの、小町?」
「おねえちゃん、この子たちが絡んでくるの」
「あなたたち、こんなところでナンパ?もうちょっと場所をわきまえてもらえない?そんなに格好良くないし服もダサいのに、こんな可愛い子達を誘うなんて背伸びしすぎよ。先ほど警備員を呼んだから、もうすぐ来てくれるわ」
俺はムカついていたのもあり、二人組に詰めよって見下ろすように罵声を浴びせた。女性に見下ろされると大体萎縮しちゃうからな、ソースは俺。座っている時に雪乃に見下ろされると何も言えなくなっちゃうし。それは俺だけか、テへ。
「ああ!?何だお前?」
「お、おい行こうぜ、警備員が来るとまずいだろ」
「ああ、こんなデカ女を相手にしてられないしな」
そういうと二人組はどこかに去って行った。まあ、警備員何て呼んでないんだけどな。さてここからが問題だ。結衣は俺のことをジッと見てるし。
「こ、小町ちゃん。こちらのお姉さんは?」
「従姉妹の
「私は由比ヶ浜結衣っていいます。ヒッk..八幡君と同級生です」
「こんにちは、結衣さん。私は比企谷八重子、大学1年生よ。八幡と同級生なの?仲良くしてあげてね」
俺たちはお互い挨拶をしたのだが、結衣は俺のことをジッと見ている。もしかして気づかれたか?
「身長が高くてモデルさん見たいですね。凄い綺麗ですし」
「バレーをやっていたから身長が伸びただけよ」
「でも八幡君によく似てますね」
「ええ、よく言われるわ。身長が一緒ぐらいなので双子って言われるし。じゃあ、小町。行きましょうか」
「ええ、結衣さんと一緒に買い物しようよ、おねえちゃん」
こ、小町の奴、絶対ワザと言っているだろ。これ以上一緒にいたらバレるだろうが。
「小町、結衣さんにご迷惑がかかるから、止めなさい」
「や、八重子さん。私も一緒に買い物したいです!!」
「..小町がわがままを言って申し訳ないわ、結衣さん。良いのよ、小町に付き合わなくても」
「私もブラブラしに来ただけですから、一緒に買い物させてください」
ブラブラ一人で来るなよ。さっきみたいに、またナンパされるだけだぞ。雪乃と来ればいいのに。
「実は今日八幡くんを誘ったんですけど、断られたんですよね。今日、八幡くんは何しているんですか」
あ、そうだった。昨日、小町が罰ゲームとか言っていたんで、断ったんだった。俺のせいか、でも一人で来なくてもいいじゃん。
「おにいちゃんなら、家で寝ているんじゃないかな」
「小町。違うでしょ、お母さん達の買い物に荷物持ちで付き合わされているわよ」
「そうなんですね、八重子さん達は何を買いに来たんですか」
「私たちもウィンドウショッピングしにきただけよ」
「おねえちゃん、結衣さん。まだお昼前ですけど、そろそろご飯食べませんか。小町お腹空いちゃいました」
なんで、この妹は自由奔放なんだ。まあそこが可愛いんだけど。
「私はどこでも良いわよ」
「うん、私も良いよ小町ちゃん。行きたいところある?」
「フードコートで良いんじゃないですか、みんな自由に注文出来るし」
「では行きましょうか」
俺は極力喋らないようにしないといけないな。ちょっと声色を変えて喋っているけど、何時バレるか分からないし。バレたら学校にいけないだろ、これ。でも姿勢が辛いな、猫背になれないし、ガニ股にならないように注意しないといけないし。
フードコートで席をとり、お互い食べたいものをそれぞれ注文しに行った。俺はハンバーガーと照り焼きバーガー、自販機で買ったマッカンを持っていったが、よく考えたら女性でハンバーガー2個って多いか?まあ、朝食べてないって事にしとけばいいか。
「八重子さん、マッカン飲むんですね、何だかヒッk...八幡くん見たいですね」
「結衣さん。八幡の事、いつも通り呼んでもらって良いわよ」
「ヒッキーって呼んでいるんですけど、良いですか?」
「八幡にピッタリね、良いわよ。その方が呼びやすいでしょ」
「はい、ありがとうございます」
「でも小町は遅いわね」
そう言っていると、俺の携帯が振動しだした。確認すると小町から用事が出来たから一人で帰る。とメールが入っていた。
あのやろう絶対わざとだろ。はあ、ここで俺も帰るのはさすがに結衣に悪いしな。まあ、バレないように対応するしかないか。
「結衣さん、小町は用事が出来て帰ったようだわ」
「そうなんですね。八重子さんは大丈夫ですか」
「ええ、結衣さんが良ければ、お買い物一緒にしましょう」
「はい、お願いします」
俺たちは食事をしながらガールズトーク?をしていた。
「あの、...ヒッキーの好きな人って誰か知ってます?」
「え!?八幡の好きな人?ごめんなさい、あまり会わないからそういう話はしたことないわね」
さすがに目の前にいる結衣に「貴女よ」なんて言えないからな。
「そうなんですね。私ヒッキーの事が好きなんですけど、なかなか気づいてもらえないんですよね」
「え!?そうなの!?でも八幡は知らないのかしら」
「多分、気づいてないと思います」
って、言うかそんなの全然気づかないよ。ええ!?これからどうやって接すればいいの?顔が赤くなって行くのが分かる。化粧ってどれぐらい誤魔化せるんだ?ヤバい。何で結衣はそんなこと言い出したんだ。女性ってそういう話を初対面の人に喋るの?でも今、告白すれば付き合えるんじゃないか?いや、俺は女装しているんだった。逆に退かれて振られて、女装していたことをバラされるな。
「私からはがんばってね。ってしか言えないわ、でも伝える事も大事よ」
「はい、ありがとうございます」
「そろそろ買い物にでも行きましょうか」
「八重子さんは何か見たものあります?」
「特にないわね、結衣さんは?」
「じ、じゃあ、下着を見にいきたいです」
「え?ええ、では行きましょうか」
どうするんだよ。これ、まずいだろ。なんで結衣は下着売り場に俺を連れてくんだよ。本当にバレたら一巻の終わりじゃん。
俺たちは下着売り場まで歩いていく途中、結衣が気になった服を色々見ながらショッピングを楽しんでいた。途中、結衣がいきなり俺の手を握ってきたが、どうしたんだ?
「ゆ、結衣さん、どうして手を握っているの?」
「あ、ごめんなさい。私、何時も友達と手を繋いで買い物しているんです」
「そ、そうなのね。では良いわよ」
「はい!!」
なんだか結衣の顔も赤い気がする。でも俺もかなり赤くなっているんだろうな。手汗がヤバい!マジでどうしよう。
俺たちは手を繋いで、その後も雑貨屋に立ち寄ったりして下着売り場に向かった。
下着売り場に着いたが、目のやり場に困る。べ、別に下着ぐらい普通だろ、着けているわけじゃないんだし。そう考えて結衣の後をついていった。ここ、ちょっとエッチな下着だらけじゃないか。これが普通なのか、回りを見ると、Tバックや紐パンなんかが、飾られていて目のやり場に困る。
「八重子さん、ヒッキーってどういうのが好きなんですかね」
「え!?そ、それは私も知らないわよ」
「でも、ヒッキーの部屋とかで、そういう本とか見たことないですか」
「ないわよ。八幡はそういう本、買わないと思うわ」
そう、間違っていないな。俺はネットで漁っているから、本なんて買う必要ない。うん、嘘はいってない。
「へぇ、でも女の子が裸で出てくるラノベとかは持っていますよ、私の胸、ジッと見ている時もあるし」
「そ、そうなの。まあ、男だからしょうがないんじゃない?」
バレてるじゃん!!どうしよう、これからは気付かれないように見ないといけないじゃん。って、今までバレてないと思って見ていたから、どうやってこれから見れば良いんだ?
「そうですよね。八重子さんはどんな下着が好きですか」
「わ、私?うーんシンプルなやつかな」
俺は、そういって辺りを見渡すと、目を惹くコーナーがあった。そこはベビードールと書いてあり、凄くエロく感じる。可愛いのとか、シースルーなんかもあるな。
ヤバい、これを着た結衣を見てみたい!!
「ゆ、結衣さんはベビードールは持っているの?」
「え?持ってないですよ。どうなんですかね」
「結構、可愛いのもあるでしょ。この下がスカート見たいになっているのとか良くない?」
そういうと俺はいつの間にか手に取って結衣に勧めてしまっていた。
「あ、ご、ごめんなさい。自分の好きなの選んだ方が良いわよね」
「こういうのが好きなんですか、八重子さんって」
「ええ、お腹の所がシースルーで凄くエロかわいくない!?」
ヤバい!!俺の中でなんだか盛り上がってきて、つい勧めてしまった。これ試着してくれないかな、あれ、でも下着って試着とかあるのか?それにこれ「バスト:フリー」って書いてあるし。網タイツもついているから試着って出来ないのか?
「でもこれガーターベルトとニーハイのタイツが付いていて制服の時は着れないわね」
「その二つを付けなければ、制服でも着れますよ。でもこれって安いんですね。ショーツも付いて3千円いかないんだ」
「で、では私にプレゼントさせてもらえる?今日あった記念にね」
「ええ!?駄目ですよ、買ってもらうわけにはいきませんよ」
「いいのよ、いつか八幡に見せてあげて」
「...は、はい。ありがとうございます//」
「これってサイズは良いのかしら」
「大丈夫ですよ、バストフリーって書いてありますし、ウェストも問題ないです」
「そう、で、では買ってくるわ」
そういうと俺は結衣にプレゼントするため、下着を持ってレジに支払いに行った。よく考えたらこれだと俺、変態だろ。なんで好きな子の下着を選んでいるんだ。付き合ってもいないのに。しかもいつか八幡に見せてあげてってアホだろ。
でも買ってしまったものはしょうがない、今回は結衣にプレゼントしていつか見せてもらえるように頑張らないとな。そんなことを考えながら、買ってきた下着を待っている結衣に渡した。
「ありがとうございます!!」
「いいのよ、ではそろそろ帰りましょうか」
「はい、今日は本当にありがとうございました!!」
「いいえ、こちらこそありがとう。それでは結衣さん、さようなら」
「はい!!ではまた!!」
そういって結衣は走って帰って行った。なんとかバレずに済んだのか。でも「また」ってどういうことだ?まあ、いつか会ったらってことだろうな。そんなこと考えながら俺は家へと帰った。
次の日。
俺が教室に入り席に付くと、結衣が近づいてきた。
「ヒッキー、やっはろー!!」
「..ウス」
挨拶すると、結衣は俺の方に顔を寄せ、小声で喋りだした。
「八重子さん。今日、ベビードール着てきたよ」
「な!?...もしかしてバレてたのか?」
「うん、最初から気づいていたよ。だってスニーカーがヒッキーのだったし、スマホカバーもヒッキーのだったじゃん。多分、小町ちゃんにやらされたんだろうなって。だからヒッキーに下着を選んでほしくて、一緒に行ってもらったんだ。...でもお昼、私が言ったことは本心だから...だからヒッキーからの言葉、待っている...」
「わかった。俺からも結衣に伝えたいことがあるんだ。お昼ベストプレイスに来てくれないか」
「..うん、じゃあまた後で」
「ああ」
俺はそこからお昼まで、どのように告白しようか悩んでいた。半分以上は俺がプレゼントしたベビードールを着ている結衣を想像してしまったけど。
お昼になり俺は結衣の待つベストプレイスに高揚感を得ながら向かった。結衣が俺を見つけて微笑みかけてくれる。俺も自然と笑みが溢れた。こうやっていつまでも二人で笑いあえるようになりたいな。
(ここまで材木座の小説)
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「材木座、さすがに俺が女装したら一発でばれるだろ」
「八幡なら大丈夫だと思うぞ、顔立ちは整っておるのだから、似合うと思うのだがな」
「お前にそんなこと言われても嬉しくないぞ」
「八幡なら似合うと思うわよ、なんだったら今度、化粧をしてあげましょうか」
「ヒッキー、やってみようよ。服なら貸すよ」
「いいですね、私も協力しますよ。先輩」
「いや、いい。絶対後悔しそうだし」
「材木座君、女性用のかつらであれば、ウィッグと言った方が良いわね」
「ウィッグ?英語表記にするということですか」
「両方同じ意味だけれど、かつらと言うと薄毛隠しのイメージが強いでしょ。男性用で有れば良いのだけれど、女性用であればウィッグと言った方が良いわね」
「中二、最近ラノベに下着出してなかったのに、どうして今回は出してきたの?しかもベビードールって」
「『エロい下着』って検索していたらベビードールが出てきてな、アマゾンで見たら安くてエロくて、我の中で着て欲しい下着ナンバー1になったのだ!!」
「「「....」」」
「なあ材木座。お前、墓穴を掘り過ぎだ」
「でもさ、ヒッキーはこのベビードールってどうなの?」
そういうと、由比ヶ浜さんは自分で検索した写真を八幡に見せているわね。ショーツが紐になっててヒップが丸見えじゃない//
「...あ、ああ、かわいいんじゃないか//」
「判るだろ、八幡!!」
「やめてくれ、材木座」
「全部シースルーで、Tバック、ガーターベルト、網タイツもセットのやつがあるんだぞ!!」
「材木座君、貴女の性癖は良いわ。しばらく黙って貰えるわよね」ニコッ
「..はぃ」
「でも女性から見ても可愛いと思いますけど、私は持ってないですね」
「うん、私も持ってないけど、一つぐらいあっても良いのかな。ゆきのんはどう?持っている?」
「え!?私!?..そ、その先ほどの写真のようなものでは無いけど、ナイトウェアとして持っているわよ//」
「じゃあ今度泊まりに言ったとき、見せてね!!」
「私にも見せてください!!雪ノ下先輩!!」
「そ、その下着を見せびらかすようなこと、したくないわ」
「でもナイトウェアってパジャマってことですよね、良いじゃないですか」
「..判ったわ、機会があればね」
由比ヶ浜さんや一色さんに見せるのは恥ずかしいわね。八幡から見せて欲しいと言われれば、恥ずかしいけど幾らでも見せてあげるのに。もちろんその中も//
でも私が持っているのは、由比ヶ浜さんが見ていたシースルーのものではないわ、男性はシースルーの方が良いのかしら?でも余り透けていると恥ずかしいし。
機会があれば、八幡に選んで欲しいわね。このラノベのように、一緒に下着を見に行って選んで貰えないかしら。