一話を呼んでから、読んでいただければと思います。
本編とは繋がりません。
先日追加された黒歴史により俺は土曜日、一日中悶絶していた。そんなに自分が主役のラブコメやりたいの?俺とのラブコメなんてあいつら恥ずかしくないの?もしかして俺のこと好きなの?それなら普段、俺の扱いは何であんなに雑なの?ベッドの上で悶えていると小町からごみを見るような目で見られていたが、そんなもの関係なく俺の思考は新たな黒歴史の反芻を繰り返していた。
このままでは明日の日曜日も同じように過ごすことが確定のため、俺は違うことを考えようと必死に何かないか探していたところ、材木座の書いた総武道高校の話を思い出した。
そういえば、俺の能力はステルスだったな。ただどうやってあの5人に対応するんだ?一色の能力は男子生徒を意のままに扱うだろ。それに対しては見えなければ一色に近づき倒すことが出来るかも知れない。
ただ
「材木座、悪いな休日に来てもらって」
「かまわぬ、主と我は幾重もの戦場を駆け抜けた仲ではないか」
「いや、今はそういうの良いんで。俺の聞きたかったのは総武道高校の方はあの後どういう展開で書くつもりだったんだ?」
「だ、駄目だ!八幡!アレを文章に起こすと
「ラノベを書けと言っているわけじゃないんだ。どうしてもあの話の続きが気になってな。お前の考えていたストーリーの流れを知りたい」
「そういうことか、あれは主と
「それはラブコメのほうじゃないのか?」
「確かに恋愛ものと言っていたな。だからこっちの話はハーレム物にする予定だったのだ」
「俺もすこし考えてみたが、どうしても三浦以上には勝つことが出来なくてな」
「一色殿にはどうやって勝つのだ?すまぬが実は何も考えていなかったのでな」
「....一色は他人を扱う能力なんだろ?でも自分より能力が優れているものには効かない。しかも自身は特に強いわけではないと考えたんだ。周囲にいる男たちは頭数が多いだけで強くはない。それでステルス能力を使用し一色に近づき倒すかな」
「確かにそれが一番良いのかもな、だがそれだけでは物足りないのでお主が一色殿と戦っていると服が段々破れていき、羞恥心で一色殿の意識が能力に影響を与え奴隷たちの制御が出来なくなり逆襲にあい、そこをお主が助けるのはどうだ?その後、一色殿はお主に惚れると」
「それ俺が発端で襲われ、そこを助けて惚れるってどんだけご都合主義なんだよ!」
「矛盾は幾らかはあるかも知れぬがそういう流れだろうな」
「では三浦殿はどのように対応するのだ?」
「そっちについては全然思いつかなくてな。半径10メートルの髪の毛を結界のように張られたらどうしようもないだろ」
「....確かにな」
「いや、なんか考えろよ!!お前が作った物語だろ!!」
「余り好きではないのだが、お主に実は第二の能力があるという設定はどうだ?」
「なにそのご都合主義!?」
「お主の第一の能力はステルス。その逆で第二の能力は『目立ちたい』と考えているっていうのはどうだ?」
「?それでどうなるんだ?」
「これはお主全体が目立つわけではない、子八幡が目立ちたいと覚醒しているのだ」
「子八幡ってもしかしてチン○のことか?」
「そうだ!それを見た三浦殿はお主に惚れてしまう。って流れだ!!」
「それおかしいよね?何でおれ股間を見せないといけないの?そもそも見ただけで惚れるって三浦に対して失礼だろ!三浦相手だと、もがれちゃうよ!?」
「では孫八幡にその能力があるのはどうだ?」
「孫八幡ってお前....」
「それであれば髪の結界だろうが、小さいので潜り抜けて行けるからな。で、孫八幡は体内に入ると宿主の身体を乗っ取れるのだ!」
「....もう一回考え直せ」
「では孫八幡ではなく、血液ではどうだ?血液だったら戦闘により三浦殿の髪の毛に付着しその後体内に侵入、そして身体の自由を奪う」
「自由を奪うってのはなんだか厭らしいが、まあ孫八幡よりはいいか」
「辱めをうけ、お主に惚れるのだ」
「....なんだかもう良いや」
「由比ヶ浜殿は難しいな、ダークマターを生成できるのでお主の血液自体が死滅するだろな。由比ヶ浜殿には弱点とかないのか?」
「....あほな子だな」
「それなら頭脳戦に持ち込むしかないな、ただ我の頭では書けぬぞ」
「いや俺も無理だし。もし体内に入ったとしても由比ヶ浜自身の体内にも、都合の良い様にダークマターが仕込まれていると考えたほうがいいしな」
「それなら由比ヶ浜殿は戦闘ではなく、お主に惚れさせれば良いではないか」
「どうやってだ?敵同士なんだろ」
「あくまでも学校内では授業が普通にあり授業中には戦闘行為は禁止されている。お主が壁ドンを行い惚れさせるのだ」
「また俺の黒歴史が追加されるだろ!!」
「....常にダークマターが展開されているわけではないので、彼女の知らぬ間にステルス能力で近づきダークマター物質を全て奪取するというのはどうだ?」
「あほな子だしな」
「奪われたことに気づかず戦闘に入るが、一方的に恥辱を受け負けてしまう」
「....俺、毎回エロいことしないといけないの?」
「雪乃下殿は簡単だな」
「どうしてだ?氷の壁だとステルスは効かないし血液は全て絶対零度で凍りつかせるぞ」
「いや、そこはお主の第二能力が物を言うのだ」
「?すまん、まったく検討が付かないんだが」
「お主の血液は身体を乗っ取れるのだ。乗っ取れるということは体内の血液の流れや栄養素の循環も制御できる」
「?ああ、それで?」
「お主が雪ノ下殿に提案するんだ「俺の血を飲めば『ちっぱい』から『おっぱい』にしてやれる」とな」
「....お前、変態だな」
「血液には寿命があるからな、1日一回摂取するとなれば、簡単に陥落するだろうぞ」
そのとき、一気に店内の温度が下がったような気がした。冬だし誰かドアを開けっぱなしにしているのか?
「あら恥辱谷君、変態座君二日ぶりね」
俺の肩に手を置き背後からその女性は声を掛けてきた。俺と材木座はギギギッと首から音が出るのではないかというぐらいゆっくり首を後ろに回した。そこには目のハイライトを消した雪ノ下が立っており、彼女は後ろの席にいたのだろうか。俺たちにカウンター席から移動するよう指示してきた。
※※※ここから雪ノ下視点※※※
材木座君にラノベを書いてもらい、そのときは満足していたのだけれど結局は偽りなのね。彼のいう『本物』とは正反対の行為で悦に浸っても何も得られるわけがないわ。土曜日はそのようなことばかり考えてしまったため、日曜日は気晴らしに休日の町に繰り出してみた。
少し休憩がてらお茶でも飲もうと思い、ドーナツ店に入ると見覚えのあるアホ毛と丸い体躯を見つけた。私が声を掛けようと思ったとき、由比ヶ浜という単語が聞こえ私はうろたえてしまったわ。でも話している内容は先日のラノベの話のようね。その点はよかったのだけれど、私の話になったので終ったところで声を掛けた。
「....あ、あの、雪ノ下。何時から居たんだ?」
「そうね、由比ヶ浜さんを「あほな子」っていっていた辺りかしら。声を掛けようと思ったのだけれど、とても楽しそうにお話ししていたので邪魔すると悪いと思って後ろの席に着いたの。そのお話に私も混ぜてもらっていいかしら」
「我はそろそろゲーセン仲間と待ち合わせしてましゅので「変態座君、黙りなさい」.....はい」
「由比ヶ浜さんの途中からしか聞こえなかったのだけれど、一色さん、三浦さんのことも話していたのかしら?」
「....はい」
「どうせ卑猥なことを話し合っていたのでしょ。聞きたくもないわ」
「....」
「何か言うことはないかしら」
「「ごめんなさい」」
「はぁ、謝罪を受けたところで私たちが侮辱されていたことには変わりないのだけれど。あなたたちには罰が必要ね、先日のことをもう忘れ、また私たちを侮辱して盛り上がっているのですもの」
「すまない雪ノ下。今回は俺が悪いんだ、材木座は最初渋っていたんだが俺がどうしても続きが気になったので、一緒に考えて貰っていたんだ」
「あなたのせい、と、そういうわけね?」
私が発した言葉、それを聴いたとき明らかに比企谷君の表情が変わったわ。そうクリスマスイベント前に比企谷君が奉仕部を訪れた際、私が彼を否定するために発した言葉なのだから。
「あぁ、否定は出来ない」
「そう....あなた1人の責任でそうなっているなら、あなた1人で解決するべき問題でしょ」
「....だな」
「では材木座君、帰って貰って結構よ」
「それでは失礼させてもらいましゅ」
「比企谷君は少し付き合って貰えるかしら?」
「ああ、いいぞ」
材木座君は私たちの台詞に困惑しながらも帰っていったわ。比企谷君はどうすればいいのか迷ってるようだけれど。私は自分のマンションに彼を伴って帰宅した。先ほどの台詞は比企谷君に向けて発したのだけれど、私に向けて言ったことでも有るわ。そう、あの後に続く彼から聞いた『本物』という言葉。未だにその本物というのが何かは判っていないわ。でも今の気持ちを比企谷君に聞いてほしい、そう思った。
「いいのか、雪ノ下。俺を家に上げても」
「ええ、結構よ。さあ上がって」
ソファーに彼を座らせ私は紅茶を入れた。少し手が震えているわね、ポットを両手で持たないと零しそうだわ。彼に紅茶を勧め、私は彼の隣に腰を下ろした。
「今回材木座君にあなたと私の偽りの恋愛を書かせて申し訳なかったわ、でも幾ら偽りの恋愛を重ねても本物には届かないのね。私があなたとの本物とは何か、私があなたの本物になるのはどうすれば良いか考えている時、あなたたちが偽りの物語で盛り上がっているのを聞いて、すごく悲しい気分になったの。すごく身勝手で独占的な考え方だとは判っているわ。言っても伝わらないかも知れない。でも私の考えていたことを比企谷君、あなたに言葉で伝えたかったの」
なぜだか私の瞳から涙が溢れ出した。でも彼から目をそらさないよう私は拭うこともしなかった。
「比企谷君、私はあなたが好きです」
「....雪ノ下、ありがとう」
短い言葉だった。でもなぜか彼に通じたようなそんな気がした。身勝手な解釈だと思う。でも私は嬉しくなり彼の胸に飛び込み、声を出して泣いてしまった。
彼は私が泣き止むまで頭を撫でてくれていた。何故だろう、すごく落ち着くわ。
「....」
「....じゃあ、比企谷君。あなたには罰を受けて貰いましょうか」
私が泣き止みそういうと彼は困惑していた。そうだろう、何故このタイミングでこんなことを言い出すのか、でも私は彼からの言葉を聞きたかった。
「あなたからの告白を聞いていないわ、自分で台詞を考えて本物の告白をしなさい」
「....それは罰ではないな」
「じゃあ、何なのかしら?」
「これは俺の気持ちを言葉にするだけだ」
「俺は雪ノ下、お前と解りあいたい。一緒に居たい。ずっと愛し合いたい。だからこれからも好きでいさせてくれ」
「はい」
私たちはお互いの唇を求め合った。
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おまけ(材木座の妄想)
あとは平塚女史をどうするかだが、彼女は三十路を越え魔法使いとなり能力を手に入れた。ではその源となっているものを取り除けばいいのだ。
彼女は男性経験がなく、男の裸にも免疫がないため、八幡がステルス能力を切り替えながら裸をチラつかせ戦闘を行い、子八幡の餌食にするしかないな。
いや、こんなストーリー考えていたら我に肉体言語が降り注ぐ。
これ以上は考えないほうがよかろう。