やはり材木座が書くラノベは間違っている   作:ターナ

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はじめて投稿します。駄文です。


第1話

木枯らしが吹く季節、今日の部活は私1人しかいないわ。

 

由比ヶ浜さんは三浦さん達と遊びに行き、比企谷君は小町さんが風邪を引いたらしく、奉仕部を休んでいる。受験は大丈夫なのかしら、まだ一ヶ月ほどあるから今のうちに体調を整えれば問題ないと思うのだけれど。

 

不思議なものね。2年に上がる前までは私1人で本を読んで過ごすのが当たり前だったのだけれど、彼ら2人に出会ってから1人で部室にいるのが寂しく感じられるわ。

こんな日は早く部活を終らせて家に帰ればいいのだけれど、家に帰っても1人なので私は部室で読書をし時間をつぶしていた。

 

一色さんでも遊びに来ればいいのだけど、彼女も生徒会で忙しそうだし毎日は来れないのね。そんなことを考えていると、部室の扉をノックする音が聞こえたわ。

 

「どうぞ」と返事をすると、見覚えのある男子生徒が1人騒がしく入ってきたわね。

「八幡、我の最新作が出来上ったので読ませて進ぜようぞ。特と味わえい。....あっあれ、八幡は?今日八幡はいないのであるか」

「今日は由比ヶ浜さんと比企谷君はお休みなので私1人よ。今、最新作が出来上がったと言っていたけれど、また小説を持ってきたの?今日は奉仕部には私しかいないのだけれど私1人で十分よね。読ませていただけるかしら」

 

ちょうどいい暇つぶ…依頼が来たので先ほどまで読んでいた小説に栞を挟み机の上においたわ。

 

「あ、いや今回は八幡に読ませるために持ってきたので結構です。それでは失礼しましゅ」

「待ちなさい、私には読ませられないの?批評をしてあげるのだから、読者は誰でもいいのではなくて?」

「い、いや、その...」

「はっきりしなさい」

「わ、分かりました。で、ではよろしくお願いしましゅ」

「じゃあ、そこにかけて少し待っていて」

「えっ、結構なページがあるので、今日中には読めないと思うんですが」

「大丈夫よ、数ページ見させて貰って感想を言わせてもらうわ。もしあなたの本が店頭に並んだとして、読者は冒頭を読んでから購入するか検討すると思うの。だから数ページ確認して、それ以降も読みたいと思わせることが必要よ。まずは冒頭で読者を引き付けられるかの判断を行わさせてほしいの」

「....は、はい」

 

そういうと私は材木座君から小説を受け取り読みだしたわ。

 

**************************

 

「はあ」とため息を吐きながら私はこめかみに手を当て、どう指摘すればと検討していた。彼の小説を数ページ読んでみたが、何も頭に入ってこない。いや覚えることが多いため、どうしても面白いと思えなかった。これについては材木座君の頭の中で考えているのだから、彼にしてみれば予備知識もなくて問題ないのだろう。

 

ただ、初めて読む側にしてみれば、設定から判りづらいためこの小説を手にとってもレジに向かうことはないと、容易に想像がつくわ。

 

「冒頭しか呼んでいないから内容についてはともかく、情景や設定などの説明が多く、また人物像とか想像しにくくて、どうしても引き付けられなかったわ。あなたの中では判りきったことでも読者にしてみれば、初めて触れる小説なのだからもう少しそのあたりを考慮してはどうかしら。ただ最初から説明をくどくど行っていては、どうしても取っ付きにくくなってしまうのだけれど」

 

「で、でもこういうファンタジー系は冒頭のインパクトが必要と思いますし」

 

「今書いている小説は販売するわけではないのでしょ。小説を書きたいだけであれば、もっと身近な設定にしてはどうかしら。私たちに馴染みのあるもの...そうね、例えば学園物とか」

 

学園物といったとき、私の中で比企谷君と部室でお喋りしている情景が頭に浮かんだ。いえ私が比企谷君とどうこうなりたいわけではなのだけれど、学校で彼とイチャイチャしているのは簡単に想像がつくわ。毎日寝る前に考えて......

 

いえ、今はそういうことではないわね。

 

でも私が想像できない話を材木座君が考えてくれるかも知れないし.....

 

私が比企谷君とイチャイチャしたいわけではないの。あくまでも材木座君の文章力を上げるためよ。

 

「そうよ。学園物でよくある恋愛ものやラブコメなんかが良いのではないかしら」

「い、いや。我はラブコメとかは書いたことがないので、どう書けばいいのかわからないのだが」

「書いたことはなくても、読んだことぐらいはあるでしょ。身近な人をモデルにして書いていけば、私でも簡単に情景を頭に思い浮かべることができるわ。なんだったら私をモデルに使ってもらっても良いのだけれど」

「失礼なことを書くかもしれないので.....」

「あまり卑猥なことでなかったらいいわ。今回書くものを公表するわけではないのでしょ。私だけに見せてくれれば指摘等行えるのではなくて」

「......じゃあ、書いてみます」

「パソコンならこれを使ってもらってもいいわ。後、私とのやり取りにはメールを使いたいのだけれど、あまり人には教えていないの。どうすればいいかしら」

「それならフリーメールを使用すれば」

「それはすぐに用意できるの?」

「じゃあ、今から作るのでIDとパスワードを考えてください」

 

........

 

「ではパソコンで冒頭だけ書いてみるので、ちょっと借ります」

「どうぞ」

 

そういうと、彼はすごい速さでキーをたたき出したわ。さすがに小説をよく書いているだけのことはあるわね。キータッチに慣れているようだし。

 

私は材木座君の邪魔になってはいけないので紅茶を入れるためポットにお水を汲みにいったりし、極力彼の邪魔にならないようにしていたわ。

 

「冒頭だけ書いたのだが、チェックしてもらってもいいでしゅか...ただ内容については、矛盾しているとこや怒らせる内容があるかも知れないが」

「いいわよ、見させてもらうわ。紅茶を入れておいたから休憩してて」

 

そういうと材木座君からパソコンを受け取り私はワードで書かれた小説を読み始めたわ。

 

 

**************************

 

ここから材木座の小説。

 

日本全国の学校では能力を持った強い学生が学園を支配していた。ここ総武道高校でも四天王と言われる女性が支配しており、朝から校門前で喋っていた。

 

二色「今日、転校前の学校を潰した生徒が来るってことですけどぉ、どうゆう人なんですかぁ?」ぽよん

四浦「あーしと一緒で2年生らしいよ。詳しくはあんたのほうが知っているんじゃない?生徒会長でしょ」ぼよーん

二色「それがよくわかんないんですよねぇ。名前は比企谷八万。ただ以前の学校が潰れているので問い合わせようにも何処に確認すれば良いのか判らなくてぇ」ぽよん

四浦「まあ、あーしらの敵ではないでしょ。男だからあんたには敵わないでしょうし。また奴隷にしてしまうんでしょ」ぼよーん

二色「奴隷ではなくて、知り合いですぅ。みんな協力してくれているだけですしぃ」ぽよん

 

二色いろは....彼女は男を手玉に取り奴隷と化して召喚する。学園の男子生徒半数を占める300人以上が彼女の奴隷と化している。総武道高校ナンバー4であり1年生ながら生徒会長を務めている。別名「人形遣い(ドールマスター)」と恐れられている。

 

四浦優美子....総武道高校ナンバー3。彼女の綺麗な金髪ドリルは女王様を思わせるが、彼女が怒った際はドリルに纏められた髪がのび、半径10メートル内を血の海と化す。金髪に返り血を浴び、赤色と金色が乱れ動くため、彼女は「獄炎の女王」と呼ばれている。

 

結衣浜「優美子。どうも私たちと一緒のクラスらしいよ。ひき..ひきたに?..ヒッキーと」ぼよよーん

四浦「そうなん結衣。じゃあ、あーしらヒキオをクラスで待っていればいいじゃん。」ぼよーん

結衣浜「まあそうなんだけどね、でもいいじゃん。どんな人か早く見ておきたいし」ぼよよーん

雪ノ上「そうね、結衣浜さん。私はクラスが違うので、ぜひ見ておきたいわ。」ぺたん

塚塚「そうだな、私も以前の学校関係者に聞いてみたのだが、みな要領の得ない説明しかできないのだ。『学校には来ていたはずだが、思いだせないとか。そんな人いたっけ』とか。学校を潰せるほどの能力があるのにそう言われると気になるではないか」だらーん

 

結衣浜結衣....総武道高校ナンバー2。彼女が作り出す物質はこの世のものとは思えない臭気を誇り、また食べ物でも攻撃を行えたり様々な能力を付加できたりと彼女にとっては万能な物質を作成できる。ただし、それを食したものには混沌が訪れ精神が現世に帰ってこられないと言われている。別名「ダークマター」

 

雪ノ上雪乃....総武道高校ナンバー1。彼女の口撃は毒を浴びせながら氷つかせ、その眼差しからは絶対零度の氷結魔法を駆使する。別名「氷地獄(コキュートス)

 

塚塚静....総武道高校ナンバー0。先生を勤めているため、四天王にはカウントされていないが、総武道高校の実質最高支配者。もともと彼女の拳に抗えるものは居なかったのだが、三十路を超えてから彼女の体には変化が現れ「肉体言語」を駆使できるようになっていた。

 

八万「校門前に騒がしそうなのがたむろっているな。面倒なんでスルーさせてもらうか」ステルス能力発動

 

女性たちが校門前で喋っているなか、比企谷八万は独り言をつぶやき、他の者が彼女たちに目を付けられないよう目を合わせず挨拶していく中、悠々と校門をくぐり抜け職員室へと向かっていた。

 

 

ここまで材木座の小説。

**************************

 

「.............................」

「どうであるか、まだ冒頭部分しか書いていないのだが」

「....」

 

私は比企谷君に貰った眼鏡をはずした後、材木座君が机の上に伸ばしていた左手を取った。

 

「なn、何で我の手を掴むんです ぎゃ!!」

 

たぶん私の目は比企谷君以上に淀んでいると思う。材木座君の左手首の関節を極め、彼からの呻き声が聞こえていても私は何も考えられなくなっていたわ。

 

「ご、ごめんなさい!!て、手を離して!!」

 

彼は私の前で蠢いているのだけれど私にはなぜだか分からない。だた左手首を掴んでいるだけなのに。

 

....

 

「じゃあ批評を行いましょう。まずこれの何処が恋愛ものなの?地の文については、誰か一人称になるようにしたほうが読みやすいわ。あと、オノマトペ?って言うのかしら。由比ヶ浜さんの言葉後にある『ぼよよーん』とか『ぺたん』について説明をしていただけるかしら」

「....これからバトルが始まって戦っていくうちにラッキースケベが有る予定でそこからの恋愛ものを考えていたんです。あ、あのその前に左手を離してもらえないでしょうか」

「まだ、オノマトペについて説明してもらえてないのだけれど...」

「....い、いやどういう女性か分かりやすくするため、オノマトペを使ってみただけで、今後バトルになれば胸とか細かい描写でもっと って、い、痛い!!痛い!!」

 

....

 

ひとしきり合気道の関節技を極め私の頭も冷静になってきたのだけれど、もうすぐ下校時間のため、新しい小説を書かせるには時間がなくなってしまったわね。遠回りな言い方では彼には伝わらないと思ったので、私は彼に要望する内容を伝えたわ。

 

「材木座君、あなたに宿題を出します。今日の22時までに私と比企谷君だけが出演する恋愛小説を書きなさい。それであれば少しぐらいの失礼な内容は見過ごすわ。書いたら先ほどのメールアドレスに送りなさい。短くても良いので完結していること。分かったかしら?」

「今日はこの後、ゲーセンに行って22時まで遊ぶ予定だったのですが....」

私の目からハイライトが消え、材木座君を一瞥し手首を掴むため手を伸ばしていくと彼から「わ、分かりました」の回答が得られたので、今日の部活は終わりにしたわ。

 


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