BanG Dream!ーMy Soul Shouts Loud!!   作:パン粉

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おまたせしました。
今回は少し短いです。


4

 

 

「へぇ、オーナー帰ってきたんだ?」

「うん。代行だっただけなの、私は。前のヒビキくんと同じ感じでね」

「ガルパの話は立ち消えになったりしないよね?」

「しないしない、寧ろやってだって」

 

 CiRClEでの仕事中にまりなと話をしていれば、そんなこんなでオーナーの話題が少しだけ出て来る。若い世代のやる革新的な事、として認めてくれるのは嬉しい事でもあるし、自分と同じ経営者という立場になったヒビキにもまりなと同じく期待を抱いていた。

 

 白髪を振り返し、今度のCiRClEのライブイベントにヒビキは自分のバンドの出演登録をした。高濃度のリハスタ練習は誰もが自信を抱けるようなクオリティで、"真聖飢"として出演する予定であった。紗夜のノリの良さは特筆すべき所であり、顔に白粉を塗るのも躊躇わないのがまたメタラーとしての彼女を強く認識させる。

 

 果たして誰が乱入してくるのか、と期待に胸を踊らせながらシフトを上がると、待ち合わせしていた香澄とそのまま電車に乗り込んだ。山手線で新大久保に足を運んでみれば、ずらりと香澄の目を惹くモノが勢揃い。広くて迷いそうな人混みの中、香澄は逸れないようにヒビキの手を掴んだ。繁華街としてもなかなかの賑わいではあるが、新宿に比べれば大したことはない。

 

「こうやって手を繋ぐと、本当にカップルみたいですね!」

「意識するんだ。俺、香澄ちゃんはそういうことには無頓着だと思ってた」

「私も女の子ですから、恋愛には人並みに興味はあるし意識もしますよ?それに、私はヒビキさん大好きですから!」

 

 本心から言っているのだとしても、なぜか子供と歩いているような意識しか持てない。香澄は指を絡ませて繋いできて、別に拒む理由が見当たらないヒビキはそのまま楽器屋へと連れ込んだ。足を踏み入れて見た光景は、江戸川楽器店よりも遥かに規模は大きく、ギターの本数も比べ物にならなかった。

 

 導かれるように香澄が進んでいったのはKiller Guitarsのコーナー。特にKG-PRIMEという、ランダムスターの発展モデルに目を奪われている。RASTAペイントのカラフルなボディ、リセス加工されたアームユニットは彼女の心をぐっとつかむ。中古のものでも気にしないのはヒビキも同じだが、これは生産完了品、かなり価値が高くなってくると思われる。寧ろヒビキがほしいくらいである。

 

 その隣のBlue Flameのプライムにも目を奪われていたり、FACISTモデルの爪痕が残っているフィニッシュのモノにも香澄は夢中になった。どれも心にグイグイと訴えてくるものの値段を見たら躊躇う金額。しかし、買うと決めたものは買う、そんな意識をちゃんと保っていた。たとえローンを組んででも。

 

「ESPの……レインディア?」

「JacksonのRRVってのもかっこいいですね!」

「蘭と同じく、キミも変形好きか?」

「そういうわけじゃないですけど、面白いものは好きです。あの3ハムのレスポールとか!って高っ!?」

「そりゃそうだよ」

 

 70万ほどするレスポールカスタムはサンバーストカラーで、エース・フレイリーモデルだと一瞬でわかる。うろうろと香澄が徘徊している間にヒビキはラスタカラーのKG-PRIMEを試奏しだす。パワフルで抜けのいい音は、この前のモカのスナッパーに載せたピックアップと同じだからだろう。Like Hellのリフを弾けば、眼をらんらんと輝かせたメタラー達が寄ってきて、大合唱を始める。そのまま調子に乗ってS.D.Iを弾き倒せば、LOUDNESSファンはもうイチコロだ。

 

 そのギターは購入候補として香澄を探しに行くと、SCHECTERのコーナーにいた。周りはメタルギターで有名なメーカーばかり。そんな中でランダムスターシェイプのギターを香澄は見つめた。どこまで星が好きなのだろうか、と思いながら、"Crying Star"をヒビキは指差した。

 

「あのベテルギウスのやつが好きなの?」

「黒のやつです?それもいいけど、あのフェニックスってやつとか、クラシックもいいですね〜」

「赤系統好きやな?」

 

 色のこだわりはヒビキにはない。それとは逆なのであろうか、しかし先程のラスタペイントは赤もあれどカラフルな配色となっている。そんなこんなを少し自己考察している中で香澄は一本のギターを取った。

 

 赤いキルトメイプルをあしらった、小ぶりのダブルカッタウェイ。バーズアイメイプル指板の杢目とアヴァロン貝はやけに映え、改造品なのだろうか、アームアップリセスが入ったおかげで値段も中々下がっていた。勿論フロイドローズアームユニットが付いて、2つともDiMarzioのピックアップがマウントされていた。

 

「これ買う!」

Wolfgang(ウルフガング)か……。いいセンスだ」

 

 12万程度のギター、それを香澄は貯めたバイト代で買う……かと思いきやヒビキが先程のPRIMEと合わせて支払った。これはウチのバイト契約だ、と言って。

 

 その言葉を香澄はしっかりと頭に叩き込んだ。ハードケースを宅配にしてもらって、キャンペーンで貰ったソフトケースを背負っては、帰り道でヒビキに抱きつく。乱入してやる、と言った有咲がいるのも気にせずに。

 

 

「妬かないでよ有咲ぁ」

「お前に妬いてない!」

「俺なの?」

 

 カフェで一息入れようの二人に甘いキャラメルマキアートを奢るヒビキは、ブラックコーヒーを口にしてふぅと息を吐く。きゃっきゃとはしゃぐ二人はまるで姉妹のようで、ヒビキはその保護者になっていると周りから見られている。仲のいい姉妹ですね、と席を立つ人に言われては違うんですよと彼が返した。

 

 ぎゅっとヒビキにひっつく有咲を見ては、香澄はスマホで写真を取ってポピパのグループジャインに送った。一斉に返ってくる返信は『原宿のカフェでしょ』。特定班も真っ青な情報にヒビキは恐れをなし、5分ほどすれば皆がここに集まった。

 

「あー!またギター買ってる!」

「香澄、何買ったの?」

「ウルフガングってやつ!」

「おたえちゃんが変態っていうのは間違ってないねぇ」

 

 エドワード・ヴァン・ヘイレンをいつリスペクトしたのか。彼女がタッピングで攻めていくスタイルをヒビキは見た事がない。どちらかと言うとヒビキの影響を受けてピッキングで押していくイメージが強い。速弾きはあまり顔を見せずともその丁寧でクリーンなピッキングを褒める人は大多数居て、観客からも綺麗な出音だとレビューされる。抜けのいい音こそEVHのハミングバードに瓜二つなのかもしれないが、彼女が試奏をしていてはやはりキャラクターはヒビキ寄りであるということは認識した。

 

 御茶ノ水まで行って何か見たいな、とはたえの意見。逆に沙綾は柏でヒビキの祖父にスネアを見繕ってほしい、りみは5弦ベースを調達したい、そして有咲はそんなことどうでもいいからヒビキとデートしたい、と十人十色の意見が出てきた。取り敢えず、だ。ヒビキはわちゃわちゃしている5人に落ち着くように言って、どこにでも付き合ってやるとプレゼントのような言葉をかけてやる。

 

「え?ってことは、私がヒビキさんとメイクラブしたいっていったら」

「内容によるんだよなぁ。何邪なこと考えてんの有咲ちゃん」

「いやぁ……。五人いっぺんでもいいんですよ?」

「身体が保たなさそう」

「いやぁ、ヒビキさんならいけますって」

 

 わかっていても慣れない暴走特急。自分を慕ってくれるのは嬉しいが、その慕い方にもよるなとヒビキは改めて実感した。




マニア、ギターオタク向けに香澄ちゃんの今回のWolfgangの詳細を……

メーカー:EVH
ギターネーム:Wolfgang Kasumi Custom
ネック材:バーズアイメイプル
指板:バーズアイメイプル22F(コンパウンドラジアス,15Fからハーフスキャロップ)
ペグ:シャーラー
接合方式:セミセットネック(ボルトオンの個体に無理矢理タイトボンドで引っ付けているのでジャンク品として扱われた)
ボディ材:キルトメイプルトップ・マホガニーバック
ブリッジ:純正フロイドローズ(アームアップリセスあり、落とし込み加工にアンカーボルト打ち直しまで)
カラー:レッドバースト(リフィニッシュされたもの)
コントロール:マスターボリューム(キルスイッチ)、マスタートーン(タップスイッチ)、ピックアップセレクター
ピックアップ:DiMarzio
→フロント:DP193 Air Norton(白)
→リア:DP102 X2N(白)
備考:ストラップロックピンがダンロップの埋め込み式のもの

リアで弾こうものなら確実に歪みます。フロントが優秀なのですがバランスは崩壊している。

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