BanG Dream!ーMy Soul Shouts Loud!!   作:パン粉

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「痛い……!」

「あううううう……。脚が、痺れて……!」

 

 正座をさせてコテンパンに口で倒してしまえば、皆脚が言うことを聞かなくなっていた。つんつんとりみの脚をヒビキがつつくと、ひゃうっと可愛い声を上げる。流石華道の名家の娘、といわんばかりに蘭だけは平然としていたが、果たして説教を聞いていたのかどうかはわからない。

 

 ふうと息を吐いて、氷がじんわりと溶けたアイスティーを口にする。グラスを運んでいく仕草と飲むまでの過程がとても優雅で、ヒビキの淑女さを増している。ピンク髪の女の子が脚を組んで座っていると言われても疑わないくらいの画だ。グロッキーな女の子にも飲み物を出してやる辺り、優しさが伺える。何も入れてないからね、とシロップとミルクも添えてやれば、甘いものが好きな子は飛びついた。

 

「でも、そこまでして女の子を拒み続ける理由なんてあるんですか?」

「拒んではないよ。本気で好きになれる自信がないだけで。みんなはとっても魅力的な女の子だし、気にはなっている。だけれども、軽い男になりそうだから怖いんだよね」

「そうやっていつまでも奥手だから童貞なんじゃないの?」

「それも一理ある。でも別に気にしてないし。SEXの経験なんて人生のほんの小さな一部分しか占めてない。俺の中での人生のプライオリティは音楽とコスプレが一番なんだから」

 

 ヘタレ。そういって蘭は呆れる。なら、と業を煮やした自分が一肌脱いで見せよう。上着を脱いで、ヒビキからアイスティーを取ってテーブルに置いた。そのままヒビキをソファに押し倒す。皆が見ている前でヒビキの両手を抑え、顎を持ち上げては唇を重ねた。

 

 観衆は顔を真っ赤にする。そのまま指を胸へ、なぞるようにへそから股間へといかせ、そこを弄る。何を、と蘭に対し言葉を投げかけるが舌をねじ込まれて上手く話せない。棗のような顔を浮かべる有咲とりみを見ては彼女は片手で自分の胸を掴ませたが、ヒビキはそれを良いことに彼女の脇に滑り込ませる様に腕を動かし、そのままくるりと体を入れ替える。形勢逆転だ、と覆い被さるようにした後に、両手で蘭の手首を取り、彼女の側頭部近くでくいっと関節を決めた。

 

「痛だだだだだ‼」

「だからからかうなって言っただろ?」

「ギブ!悪かった!ごめんなさい!」

 

 "ここからどうする?"とアームロックを解かないヒビキの脇腹を平手で高速タップすると同時に皆の顔色が元に戻った。寝技も上手いじゃないか、と減らず口を叩く蘭の額めがけて、左の中差し指を親指で弾き出した。バチッと言う音は威力を保証し、頭を抱えて呻く蘭を他所目にアイスティーを一気に飲み干す。

 

「全く反応しないんだもん……」

「煩悩まみれのお前と違うんよ。精神コントロールの技術は負けへんで!」

「でもデカかった。あれで18くらいか……」

「やっぱり大口径じゃないですか!」

「だーかーらー!そういう話題が嫌だって言ってんの!」

 

 

 ヤマハのTHR10を持ってきて、本命のヒビキのシグネイチャーペダルを試奏しだしたギタリストを放っておき、有咲をバンドへ誘った経緯を聞き出した。どちらかというとヒビキの貞操よりはこちらのほうがメインだ。確かに技術力は認めている、として続けたのは音楽を愉しむ心が一番強いからだという。沙綾はそれを聞いて納得し、毎回後ろで有咲のキーボードを見ているりみも演奏中の彼女の表情がいつも華やかなのを鮮明に覚えていた。彼女がいるからPoppin'Partyは華開くのだとヒビキが褒めちぎれば、恥ずかしがる素振りを見せつつもいつものツンケンした態度を見せない。このあたりは完全にヒビキに心を握られていると見える。

 

 では、他のパートはどうするのか。ギターはもうヒビキと決まっているのだろう。ヴォーカルも恐らく友希那だ。では、ベースとドラムは?リサか千聖か、もしくはりみか?

 

「ガルパでもバンド組むんだけど。その時はキーはりんりんと、ベースはまりなちゃん。ツインギターで変わり種のりみりんに頼む。ドラムは麻弥ちゃんでね。んで、ボーカルはあのバカか、こころちゃん」

「え、私がギター弾くんですか?」

「やれないことはないっしょ?んで、俺のバンドはベーシストはリサちー。ドラムで迷ってて。ボーカルはユキちゃんと俺、ツインリードで日菜ちゃん」

「さり気なくバカ扱いしないでくんないかな」

 

 先程してくれた行動は何かな?と嫌味ったらしい聞き方をすると黙ってしまった。GoGから持って帰ってきたRSシェイプのオリジナルギター"ほしみちゃん"を握ってディストーションのテストをしながらバンドの構想を語りだす。ふむふむと周りが真剣に聞いていれば、蘭がリズムギターでいいからやらせろと言ってきたので二つ返事で了承した。先程のあの行動をしておきながら、二人共気にしていないのはさすが幼馴染というところか。

 

 ドラム問題は、花音でもいい。だが、BPMが速めでのバックビートのツーバス連打が出来る人間が限られている。もちろん、練習してくれればできるのだが、あるところまで来ると頭打ちになる。その人間の限界が来るのだ。そして、パワーを求めるならば、ある程度人選は限られる。しかしながら沙綾がやりたいという顔をしているのだ。

 

 やりたいやつにやらせてやりたい。5人ドラムでもいいし、そちらの方が面白いかもしれない。ほしみちゃんのネックをクラシックグリップで持ち、スケールで捉えたコードフォームをしながらそう語る。ビジネスやフェスに出るためではなく、自分がやりたいだけなのだろう。久々にサポートではないバンドを組むのだから、ワクワクしてしょうがないだろうな、と蘭は心境を察した。その気持ちが今のプレイに出ている。

 

「その選抜した女の子とイチャイチャするんですか?」

「しないよー。え、ひまりんもしかしてしたいの?」

「ひーちゃんだけじゃなくて、私もしたーい」

「そっかそっか。じゃあね、ヤらしいことしないならいいよ」

 

 ギターを置いて、両手を広げる。待ってましたと言わんばかりにヒビキに抱きつく女の子達。蘭はそれを見ては微笑ましく思った。一人っ子、長女、末っ子が入り乱れている。お兄ちゃんと捉えるか、理想の彼氏と捉えるかは別として、甘えられる存在になっているのに代わりはない。

 

 蘭はこないの、とひまりが問う。アタシはいい、というと、微笑みながらほしみちゃんを握ってディストーションの試奏を再開した。いつもヒビキが作るシルキーでハードな歪みであるものの、ピッキングの違いで蘭の場合は毛羽立つ音になる。良く出来ている、と星5つの評価を下したときに、空いている手で蘭も引き寄せるヒビキ。いいのに、と言いながらもそれに甘えて、ヒビキの手をさすった。

 

「ひとりぼっちにはさせないよ」

「一人になったことなんかない。アンタやひまりたちのおかげでね」

「それもそうか」

「そう。惚れてた事には私は気づいてなかったみたいだけどね」

「色恋を知る歳になったか、お前も」

「彼女いない歴が年齢と同値な人に言われなくないね」

 

 

「一段と張り切ってますね、千聖さんと彩さん」

「ですね。何かあったんでしょうか?」

「んー?ヒビキさんにらびゅらびゅしてもらったからでしょ」

 

 ロケ中の二人は昨日にも増して精度が上がっていた。完璧過ぎる演技は撮影陣を感嘆させ、素人の麻弥とイヴにもそれが伝わる。昨日の出来事を知っている日菜は、るんっと来てるね、と言いながら、今度は自分もヒビキに可愛がってもらおうと考えた。

 

 特にやましい事をしていたわけではない。彩と千聖が偶然にもヒビキを挟んで寝ていただけ。添い寝というわけでもないし、それをしたのは布団に潜り込んでいた自分とリサだ。ぐっすりと眠りについていたことには違いない、しかしヒビキの隣には快眠効果と催淫効果でもあるのだろうか、やらしい夢を見て身体が疼いていた。

 

 煩悩の塊。自分をそう反省するも、結局は自分たちを幻惑させるヒビキがいけない。あの白い箱(コンドーム)を使い切らせるくらいに絡みたい、そう淫靡なことしか頭に無くなりそうであった。いまは平然としていられるもののの、家に戻って変えた下着は既にぐっしょりとなっている。

 

「カーット!流石だね!Pastel*Palettes、最高だね!」

「彩さんも千聖さんも、いつもより内股気味ではないでしょうか?」

「あ、怪我でもしたんですかね?」

「考えてることは同じなのか……」


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