昨日新聞部の音無がサッカー部のマネージャーになった、のは良いんだが…思ってたよりも溌剌とした性格なのかな?
昨日情報を伝えていた時と打って変わってガンガン来たので皆も驚く…というよりは呆気にとられてたしな。
一人で練習をしていた染岡と合流、染岡の事は円堂に任せて俺は皆の練習を……どうしよ。
そういえば俺って必殺技の特訓ばかりで、サッカーの練習って普段どんな事してたっけ?
あれだ、普段は分かるけど、クイズとかになると全然浮かんでこないアレだよ、だからそんな目で見ないでくれぇ!
早く染岡を連れてこの空気を変えてくれ、円堂。さっきから皆のじっとりとした目線が辛いんだ…。
あれから少しして、いつもの調子を取り戻した染岡が戻って来た。
それは良いんだが…
「なぁ、天願。必殺技だけじゃなくてちゃんと普通の練習の内容を覚えような?」
「す、すまん。ちゃんと身を入れてやってるつもりなんだが、いざ始めようとすると何をやってたっけ?って思って「だから、ちゃんと、覚えような?」……気を付ける」
あ、これ駄目な奴だ。顔こそ笑ってるが目が全く笑ってねぇ。
俺が悪いのは重々承知だが、如何せん覚える事が多過ぎてちょっと追い付いてないし、仕方ないよね!
そう考えている事も読まれたのか、笑顔の裏の威圧が段々強まってる。
「わ、分かった。しっかり覚えるから!練習しようぜ!」
も、もう耐えられねぇ!逃げるんだよぉ~!
前世でもそうだったが、怒鳴られるより、こういう静かに威圧を受けるのが苦手なんだよ…。
端から練習を見てて染岡のシュートは段々と威力を増していってる。完成までもう一押しってところか?
ん?そう言う俺は何をやってるのかって?基礎練習だ。
もう一度言おう。
皆が実践練習をやっている中、コート外で一人基礎練習をしている。
円堂曰く、本気でオールラウンダーやるのを考えると今の技量じゃ中途半端にしかならない、との事らしい。
言いたい事も分かるし理解も出来る…が、疎外感が半端ねぇ、これ私怨入ってないよね?
そうこうしている内に、染岡のシュートが完成したみたいだ、気のせいかもしれんがドラゴンが見えた様な気がした。
ふと、誰かが近付くのを感じて視線を向けると、そこには豪炎寺が立っていた……もの凄く気不味そうな顔をしている。
具体的には「あんな技を持っていた奴が、1人離れて基礎練を延々と…」みたいな事を感じとれる。
…お互いに見なかった事にしよう、誰も(特に俺が)幸せにならない。そんな感じで皆の方へ送り出した。
染岡は必殺技を完成させ、豪炎寺も加わった、これで大体の問題は解決したな。
「これで豪炎寺は雷門中サッカー部の一員だ、皆仲良くやろうぜ」
「豪炎寺 修也だ」
こ、これは無口、クールキャラがやるイケメンにのみ許される自己紹介…!?
俺が転生してからは容姿が良く成った事で調子に乗り、ついやってしまったあの…!
「豪炎寺さんが俺達と一緒に」
「これで怖い物無しだね」
喜びの感情を浮かべる1年、それに反して
「待てよ、そいつに何の用がある?雷門中には俺の必殺シュートがあるじゃないか、それに天願だっている」
豪炎寺への確執が消えない染岡。
予想通り参加には不服そうだが、これは呑んで貰わないと困る。
「だが、逆に言うとそれだけだ。決め手が多いに越した方が良い、違うか?」
「何?」
「俺がFWじゃない以上、ゴールを狙う役割は染岡、お前だけになるが、お前が封じられたらどうする?
必殺技があるから勝てる訳じゃない。帝国との試合に於ける俺が良い例だ」
傷口を掘り返すみたいで、余り自分から言いたい事じゃねぇんだがな。
「それはっ…!そうだけどよ…」
「皆、居る?」 「これ、見て下さい!」
二人が持って来たのは尾刈斗中の試合映像だった。
だが、何だこれは。
「一時停止してる訳じゃ…ねぇな。」
「何でアイツら止まってんの?」
「多分、動けないんだと思うんです。
噂では尾刈斗中の呪いだとか!」
「「「呪い?」」」
呪い…か。俺の存在自体オカルトみてぇなモンだし、否定しずらい訳だが、映像を見てる限りじゃ誰かが必殺技を使ってるようにも見えねぇ。
本当に魔術師の仕業だったらどうしよう…レッド覚悟で詠唱止めれば良いかな?
~試合当日~
あれが尾刈斗中…どっかで見たホラー映画の影響に引き摺られ過ぎじゃないっすかね?
APP3の魚人面とか何かの紋章が付いたの奴はいないな…一先ず安心した。
「豪炎寺君も天願君というのは君たちですね?
帝国戦で撃ったシュート、見せてもらいましたよ。いやはや、全く以て素晴らしかった、今日は御手柔らかにお願いしますよ」
コイツ、良く見ると豪炎寺の方しか見てなくね?
「ちょっと待て、あんた達の相手はその二人だけじゃない、俺達全員だ」
「はぁ…?我々は豪炎寺君と戦ってみたいから、この練習試合を申し込んだのですよ?
弱小チームである雷門中など、興味はありません」
あれ、さらっと俺抜かれたんだけど。
「精々豪炎寺君の足を引っ張らない様にしてくださいね」
おいコラ、最初に態々言うんなら最後まで言い通せや、全く見られない方がマシだったぞ!
「言ってくれるじゃねぇか…!」
「見せてやろうぜ染岡、お前の必殺シュート」
誰かが俺の肩を叩く…影野?
「……漸くその領域に至ったか…」
え?コレ俺の存在感が薄かったとかそういうモン?
お前何ポジなんだよ…つーか普通慰める所じゃねぇの…?
すっと視線を逸らした先に居た豪炎寺と風丸の二人と目が合った、何とも言えない表情にいたたまれなくなった俺は逃げる様にその場を立ち去った。
試合が始まると…凄ぇなアレ、豪炎寺に3人マークとは。
さて、どう動いたものか。味方を上手く交わし此方に向かってくるFWに対し、技を使わずに取ろうとするが中々難しい。
俺を突破出来ず焦れったくなったのか、パスで避けられてしまった。
パスも取りにいける様になれば良いんだが、技を使わねぇとまだ難しいな…
パスを受け取った奴はそのままシュート、しかしゴッドハンドを物にした円堂は難なく受け止めた。
反撃開始か…相変わらず豪炎寺には複数人のマークが付いているが、その分染岡がフリーだ。
ボールを受け取り、新技『ドラゴンクラッシュ』でゴール……何と言うか、思ったよりも呆気ない。
そう思ったのは俺だけでは無いようで、皆も体の力みが無くなり、プレーが一段と良くなっている。試合再開して間もなく二点目が決まった。
にも関わらず、敵は全く動じていない。
例の動きを止める呪いとやらにそれだけ自信があるのか?なら何故使わない?
そんな事を考えていると、相手チームの監督が、誰?
雰囲気全然違ってんだけど、急に口汚くなって……オイ、本当に詠唱し始めたんだけど。
すると急に相手のメンバーが入れ替わる様に見え始めた。
何故か芦戸が俺にマークしたと思ったら、見間違えたらしい。どうなってやがる…!
「『ゴーストロック』」
そんな言葉が聞こえた途端、足が…!?
俺だけではない、全員が止まっているらしく、そのまま点を入れられてしまう。
此方のキックオフで試合再開だが、染岡!?人の事言えねぇけど一人で突っ込むな!
そして放たれた『ドラゴンクラッシュ』だが、相手KPの『ゆがむ空間』に止められる。
何故最初から使わなかったとか聞いちゃいけないのかね?
そして、先の繰り返しの如く『ゴースト ロック』で止められ同点へ…。
…落ち着け、冷静に考えろ。
何があってからこうなった?それは分かりきっている、相手監督が何らかの詠唱を始めてからだ。
あれは何と言っている?「ま~れ ま~れ ま~れ 止まれ」
……馬鹿らしくなってきた。いや、まさかね?
そんな簡単な言葉で動き止まるんなら誰でもサッカー勝てるわ、いや、でも…。
……試してみる位なら良いよね?
「ご~け ご~け ご~け 動け」
恥ずかしい、誰にも聞かれてないよな、こんなモンで動けるなんてそんな訳……あれ?
世界が停まったかの様に急に静かになった、俺の方へ視線が集中するのを感じる。
何だろう、この変身中の敵に攻撃した奴に向ける、空気読めみたいな空気は。
いかん、気不味いってレベルじゃねーぞこれ、周りに合わせておくか。
「う、動けねぇ…!」
次のキックオフから動けばいいや。
「「「嘘だッ!!!」」」
敵味方全員から全く同じ言葉を言われたでござる。
「動けるんだな?天願!頼む、何とかしてくれ!」
後ろからそんな声が聞こえてくる。
「任せろ、一点決めてくる。」
取り敢えずサムズアップして、そう言っておく。
一度動いてから態と動きを止めたからだろうか、円堂以外からの胡散臭い物を見る様な視線が突き刺さる。
まだショックから立ち直れていない敵からボールを奪いゴール目掛けてまっしぐら、最初に気付いた通りコイツらの練度自体はそれほどでもない為、技を使う事なく交わしていき、気付けばゴール前。
「『ゴーストロック』を破ったのには驚いた。
だが、どんなシュートだろうと『ゆがむ空間』の前には無力…!」
「気を付けろ!そいつの技は何かおかしい!」
豪炎寺が注意を促す、か。なら
「成る程、じゃあシュートしなければ良い訳だ。」
「「は?」」
目前のKP、後ろの豪炎寺の疑問には答えず
「『疾風突き・縮地』」
一瞬の溜めの後、青紫の光を纏い、ゴール枠内まで一気に突き進む。
ゴールと前半終了を告げる笛の鳴り響いた後、振り向いた俺を迎えたのは、選手観客全てを含めた「何やってんだアイツ?」みたいな瞳だった。
「ドリブルの件とか問い詰めたい事は沢山あるけど、先ず一つどうして天願だけ動けたんだ?」
当然聞かれるよな、だがあれが本当に正しかったのか、実際の所わからない。
もし、此で大丈夫とか言って、やっぱ無理、なんてのは…。
「動けない間色々試してみたんだが、それで突然動ける様になってな。
後半が始まってから、さっきやったと思う事を一通り試して、それで確信が持てたら話す。」
そうぼかしておく、実際の理由は後半で一度試してみたい事があるからだが。
「さっきのは何かのまぐれだろ?今度こそ決めてやる」
やはり開幕来るか、これが通るか分からんが試してみる価値はあるからな。
あの動きは何度も見た、それを思い出して
「「『ゴーストロック』」」
「何故貴様がその技を…!?」
「馬鹿な…動けん…!」
………いや、流石に通じるとは思わんかった。
俺の仮説はこうだ。
相手の監督が詠唱をして動きを止める切欠を作っておき、相手キャプテンの『ゴースト ロック』という言葉と動きでそれを表面化させる。
監督が催眠術に掛けて、選手が命令をするといった具合だろうか。
監督の声はコート全域に聞こえていた、なら利用してやれば良いのでは?と考えた訳だ。どうせ自分の技だから何か対策してるだろ、一瞬でも効けばラッキー位に考えてたんだが、監督が「な、何が起こっている!?」とか口走ってるしなぁ…
という訳でさっきと同じ方法を使って、俺以外誰も動かないコートでのんびりとゴールを決める。
「フフフ、ハーハッハッハ!
人の事忘れてガン無視して舐め腐ってやがるからこうなるんだよ!
笑えるよなぁ?自分達が使う技で何も出来ずに失点。
一方俺はその中でも自由に動ける、随分と差が付いたよなぁ?悔しいだろうねぇ」
試合開始前の事を忘れたとは言わせんぞ…!俺はやられたらきっちりやり返す
…序でにここ最近基礎練習ばかりで必殺技の練習が出来なかった憂さ晴らしも入ってるがな。
「アイツ、根に持ってたのか…」
「余り天願は怒らせない方が良いかもな」
豪炎寺と風丸の声の他に
「人がしていい顔じゃないっす…」
「と、とんでもない外道でやんすね」
「自分がされてる訳でも無いのに結構クるね、あんな煽りは初めて見るよ」
「あー、なんか豹変してるなぁ…」
そんなチームメイトの声に
「「「テメェ……!」」」
敵の選手と監督に至っては親の仇でも見る様な目付きだ、少しやり過ぎたか?
この試合は結局、8対2という結果に終わった。
唐突だって?あの後、尾刈斗中はもう『ゴースト ロック』を使わないで試合を挑んで来るが、それは前半の焼き直しにしかならなかった。
染岡と豪炎寺を全力でマーク、点を入れさせまいとしていたが、俺が前に出てシュートを決めるとそれも一変、もう俺にだけは何もさせたくなかったのだろう。
豪炎寺が『ゆがむ空間』のタネを見抜き、染岡との新必殺技『ドラゴントルネード』等で得点を入れられ続けても最後まで俺をマークし続けていた。
俺は俺でマークを外す為、ノンストップかつ全力疾走を終了時まで続けた事もあり、マークをローテで回していたにも関わらず尾刈斗中の選手全員が息を切らしていた。
正直やり過ぎたかな~とは思っている。元を正せば俺の怒りの対象は監督であり、選手に対しては何も無い。
完全に怒りの矛先を間違えたと気付いた時には試合終了していた、罪悪感で心が押し潰されそう…。
「天願 想叶!FFでは小細工無し、純粋にサッカーで貴様を倒す…それまで首を洗って待っていろ!」
最後にそんな事を言って帰って行った。雷門じゃなくて俺個人への戦線布告なんですが、それは。
視線で人を殺せるとはああいうのを言うんだろうな…本気で呪殺されないか不安になってきた。
『疾風突き・縮地』
引用「GOD EATER」
僅かな溜めの後、青紫に輝く光を纏いながら、一瞬で距離を詰めるドリブル技。
威力、消耗共に普通の為、使い易い。
主人公は今、円堂に全ポジションの練習を、木野にサッカーのあらゆる知識を教わっています。
気を入れ換えたにも関わらず、練習内容を思い出せ無かったのはこの為です。
Looks
主人公の容姿は普通に良いです。イメージは「蟲師」の「ギンコ」に所々黒髪が差している感じです。
背丈とかその辺は各自で補完して下さい。
私の脳内では一切補完出来て無い為、中学生に交じって大人がサッカーやってるので、絵面が酷い…。
最初は容姿に惹かれる人も居るのですが、たまに見せる尋常でない身体能力とかでドン引き、敬遠されています。
「カッコいいけど、人外はちょっと…。」みたいな。
character
主人公は転生してから周囲から浮かない、目立たない様に性格だけは気を付けてます。
ごく一般的な普通の子供を全力で演じていましたが、それを長い間続けてしまった事でどれが素の自分か、どれが演じていた自分かはもう自分自身ですら判別出来ません。
それ故、酷いキャラブレ、印象深いキャラクターの台詞や性格が出て来る事もしばしば。
円堂はたまにそういう所を見ているのでもう馴れています。
色々重たい事書いてますが、ぶっちゃけ此れから物語が進む上で、この設定が出て来る予定はありません。
Past
主人公の前世は全くの普通という訳ではなく、元探索者です。
故に幾つかの呪文、神話生物を知ってたりします。
この世界では使えませんし、この設定を物語に出すつもり一切なく、限りなく没案に近い裏設定みたいなものと捉えてください。