『Life goes on ~人生は続く~』を遊びました   作:青梅スレイヤー

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『Life goes on ~人生は続く~』を遊びました

 クトゥルフ神話TRPG『Life goes on ~人生は続く~』を、先日2回ほど回した。
 このシナリオは、サークル『無有平和堂』が出版したシナリオ集、『異界の風が、その髪を撫でる』に収録されている。人気実況者たちがサークルを作って販売したもので、2016年冬のゲームマーケットで速攻完売となった。ちなみに僕はゲムマで当日買った!

 LGOは、掲載されているシナリオの中でも非常に評価が高い。
 シナリオギミックが凝っているとか、謎が巧妙であるとか、そういった点ではなく、このシナリオに人気がある理由はただひとつ、『探索者に選択を問う』というポイントだ。
 まぁ、執筆者が直にKPをやっているリプレイ動画を見ると、NPCの個性的なロールプレイとか、シーンごとにBGMを流して視聴者の涙腺を刺激してくるとか、他にも理由はあるのだけど。シナリオの特徴はやはり『探索者に選択を問う』ところだ。


 以下はプレイレポートと、KPをやって初めてわかった発見などを。公開されている動画のもの含め、内容を思いきりネタバレするのであしからず。

 LGOのKPをやったのは2回。いずれも探索者は2人ずつだった。動画だと参加者はいずれも3人以上だが、2人でもシナリオはきちんと機能する。クライマックスの選択がある都合上、探索者は多い方がドラマチックになるのも確かだな、とは思ったが、2人だと探索者同士が互いに絆を育むので、それゆえに生まれたドラマもあった。
 KPをしていてまず感じたのは、ヒロインである橘ゆずかに対する、探索者たちの想像以上の思い入れだ。どちらの探索者も、ゆずかの唐突な死にガチ凹みしてしまい、2回目のときはシナリオの進行に影響が出かねないほどだった。『この雰囲気で真矢文明なんか出せるわけねぇだろ!』とか思った。マジで。

 僕は、LGOは良いシナリオでゆずかは素晴らしいヒロインだと思っているが、ここまで凹まれるとは正直思っていなかった。おそらく、ゆずかとのファーストコンタクトの際、僕は当事者ではなかったからだ。YouTubeにアップロードされている動画で初めて見たし、僕にとっての感情移入の対象は探索者の1人である波岡や蒜暮だった。
 だから、クライマックスでの波岡と狛虎の対立に感動したし、そのあとの、『腕なんかいくらでも作ってやる!』も非常に印象深く残った。
 しかし、実際にKPとしてシナリオを回すと、探索者たちは予想だにしないゆずかの死に動揺し、混乱し、時には悪態をつく。そして心に深い傷を遺す。正直、動画を初めて見た時は、狛虎の気持ちをあまり理解できなかったのだが、シナリオを回して、探索者のリアルな感情をぶつけられた後だと、見方もまるで変わってくる。

 さて、プレイレポに戻る。
 2回とも期せずして、『くたびれたツッコミ役とややKY気味のボケ役』という組み合わせになり、ここに世間知らずのゆずかが加わることで、コメディパートは極めて順調に進んだ。ボケ役のボケにゆずかが乗っかり、それにツッコミ役が頭を抱えるというものだ。どちらのプレイでも、ゆずかを見事にお姫様扱いし、エスコートしてくれた。そして、爆発のシーンではめっちゃ凹んだ。

 印象的だったのは、2回ともゆずかの死を知った探索者が、すぐに遺族への連絡を取ったことだ。シナリオでは遺族は電話に出ないと書かれていたが、これ以上突き放すのも危険だと考え、遺族と直接話をさせた。2回目は病院を出て直接会いに行った(ワタリが出て行った後、窓から降りた)ので、これもシナリオでは死ぬと書かれているところを、『足が一部溶け、STRとHPが1d6下がる』という処置で済ませた。当然、SANチェックも発生した。
 遺族、具体的には名前だけ設定がある祖父の八朔になるが、この対応は探索者に対して親身なものにした。理由は幾つかある。が、一番の理由としては、探索者を恨んだり、冷たい対応を取ったりした場合、シナリオ終了時にモヤモヤが残ってしまうからだ。また、遺族がゆずかの死を受け入れていると描写することで、探索者に『ゆずかの死に対してこれ以上できることはない』と印象付けるためでもある。
 また、ゆずかのあのような性格は八朔も理解していただろうから、『孫が最期に遺した言葉があったら、それに従って欲しい』と言わせることで探索者に、『自分の命はゆずかに救われたもの』だと改めて認識させた。

 1回目のプレイでは、探索者の1人が警察であったが、これは特にシナリオを乱すような展開にはならなかった。むしろ、同僚との電話で事件の顛末を知り、『この件に関してこれ以上できることはない』という認識を強調することができた。自然、自分自身とワタリの謎に興味が向いて行った。

 次に真矢文明の登場。2回目のプレイでは、ツッコミ役の探索者がとにかくシリアスなロールプレイをし、自分自身を責めまくったり、他人に対してキツめに当たってしまったりしており、とても真矢を出せる空気ではなくなってしまった。この時は、ボケ役の探索者(すべてをプロレス的に認識するプロレスラー)が、勝手に腹筋を始めたりワタリにリングドクターになってもらおうと提案しにいったりというルーニープレイを繰り返すことで、空気をある程度緩和してくれた。
 結果、真矢を出しやすい空気になり、真矢を出せたものの、すべてをプロレス的に認識する探索者と『あの』真矢では意思疎通がロクに成立するはずもなく、その後、もう1人の探索者が『ツッコミ兼進行役』として登場することができた。空気も和らいでいたので、探索者も徐々にコメディな掛け合いをやりやすくなった。

 この、『探索者(というよりはプレイヤー)がガチ凹みしてシリアス一辺倒になる』のは、シナリオを回す上で非常に危険かもと感じた。今回は、もう1人のプレイヤーがうまく機転を働かせて、意図的なルーニープレイを繰り返すことで緩和できたし、アップロードされている動画は参加者がみんな実況者であるため、プレイを見られているというエンターテイナー意識によって持ち直すこともできたのだろうが、カジュアルなプレイ環境によっては、真矢を出しにくかったり、シナリオの進行に支障が出たりする可能性はあるかもしれない。

 1回目のプレイにおいては、真矢は散々情報を引きだされたあげく、『院長室に忍び込みましょう!』という言葉尻を取られ、警察探索者に追い払われてしまった。
 2回目のプレイでは、『霊安室から入る』という手段には出ず、『夜中は窓を開けておく』と伝えて、夜に忍び込ませようとしたが、夜になるころにはすべての探索が済んでいたので、クライマックスの空気を阻害しないようにするためにも、忍び込もうとするところを警察にしょっ引かれるというオチにした。
 どちらも動画に比べればかなり酷い扱いになっていた。ごめん真矢文明……。

 探索はいずれも滞りなく進んだ。1回目のプレイでは、図書館ロールに失敗して、魔導書を発見することはできなかったものの、シナリオに進行にはほぼ問題がなかった。
 また、手を加えたオリジナル要素としては、院長室に入って右手側に大きな絵を飾ってあることにした。これは、動画1回目のエンディングに使われた、『どこまでも続く道』の1枚写真である。奥さんがかつて描いたものということになっているが、これの存在意義はもちろん、シナリオのラスト、『探索者の選択後に、最初に目にするもの』として想定しているものだ。1セッションに1人くらいは、院長室のエレベーターから洞窟を出る探索者がいてくれるだろうという甘い考えもあってのことだが。これに合わせてBGMを流す演出は、かなり効いたし、すべてのプレイヤーに好評だった。

 2回とも、霊安室の奥の通路を通って地下へ行き、ワタリと接触した。

 1回目のプレイでは、ワタリの気持ちを尊重しつつも、精霊を殺すという決断に至った。ただし、最後に死のうとしているワタリに対しては、『あなたは医者なんだから、これからも医者として人々を救ってほしい』と言いつつも、『精霊を殺すのは、自分たちの選択』『残るか生きるかは、ワタリの選択だ』として、ワタリの考えを尊重する形を取った。
 1回目のプレイで、探索者たちは特に深く悩んだりはしなかった。ただし、2人のロールプレイはかなり良かった。ツッコミ役の探索者は、『救いたくても救えない命がある』というワタリの悩みを、違う観点から理解してやるせない気持ちを表現していたし、ボケ役の探索者(カメラマンと名乗る盗撮魔)は、ショッピングモールでたくさん撮ったゆずかとの写真を取り出して、『あの子はね、ワタリさん。最高に可愛い顔で笑うんですよ。そんなあの子が苦しそうな顔をし続けている。カメラマンの僕が死ぬかもしれない選択をするのに、それ以上の理由は必要ないんだ』という名セリフを残した。

 2回目のプレイでは、ツッコミ役の探索者の方が、大いに悩むことになった。ボケ役の探索者は早い段階で結論を出し、『あの子が生きるって言ったので、生きるべきだと思う』と、ゆずかを尊重するがゆえに精霊を殺さないという選択を口にした。その後、ツッコミ役の方は隠し部屋の日記を読み、プレイヤーはトイレ退席の間に結論を出すといって休憩に入った。
 ボケ役のプロレスラーは、ワタリと2人きりになったとき、会話をした。プレイヤー発言として、『もし精霊を生かす方向に話が進むなら、自分が死ぬ時には精霊の餌にしてもらおうと思っている』と口にし、『それ、ワタリに直接言ってくれないかなぁー』とも思った。
 最終的に、ツッコミ役の探索者は精霊を殺す選択をし、ボケ役の方に謝るが、ボケ役は友人であるもう1人の選択を尊重し、ワタリと共に2人は地上に出た。最後にボケ役は、『あの子がくれたこの足にもお別れするかもしれないから』という理由でスクワットを始めるなど、脳筋ボケの癖に泣かせにくるロールプレイを連発した。
 この時のプレイでは、最終的に足も残ったことに対して『あの子が生きろって言ってるのかな』『わかんねぇけど、前を向いて生きるしかないんじゃね?』という会話があり、そこから自然に『どこまでも続く道の絵』に繋げることができたので、サイコーに気持ちよかった。

 選択後の処理にもオリジナル要素があり、『精霊を殺した場合はSTRが1d6減少』『活かした場合は、1ラウンドにHPが1回復するようになる』という展開にすると決めていた。リジェネ能力を獲得した探索者はちょっと見てみたかった気もする。

 以上が、ざっとLGOを回した感想とプレイレポートである。

 無有平和堂のみなさん、シナリオ執筆者のぱぱ☆vipさん、素晴らしいものを仕上げてくださって、ありがとうございました。






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