クロックオーバー・プラネット   作:LW

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人生は準備不足の連続だ。
と言う言葉が在る。私はこの言葉が結構好きだ。

と言う訳で?ちょっと何気に街に下りたら、
2巻のラストバトルが発生しても、イイよね☆


08 CZ2128Δ(後編)

「やっぱり、リューズの言う通りだった。

 シズの名前。付けて良かった」

 

 

「名前を付けてからだ。

 シズの胸の鼓動。どんどん強くなってる」

 

 

「起きたい。

 起きたいって、思ってくれている気がするんだ」

 

 

「シズは、きっともう直ぐ起きるよ。

 オレにはソレが解るんだ」

 

 

「だって、

 シズの鼓動は、こんなにも綺麗だから」

 

 

街に出る前、

 

準備に手間取っているのでしょうか?

 

ナオト様が、いらっしゃいません。

 

少し心配になって、部屋まで戻ると?

 

ソコには、シズをケースに納めるナオト様の姿が?

 

どうやら買い出しにもシズを連れて行くつもりのようです。

 

部屋まで迎えに来た私に気付くと、

 

ナオト様は優しい笑顔で、シズの事を教えて下さいます。

 

あぁ、本当にシズは愛されている。

 

 

歯車が震えます。

 

ですが、コレは嫉妬の感情では在りません。

 

ただ、思い出しただけです。

 

崩れ落ちようとする危険な状況の中、

 

ナオト様が、ただ私を起こそうとして下さった事。

 

確かにあの時、私に意識は在りました。

 

ですが眠り続ける私に、そんなナオト様を窺うすべは在りませんでした。

 

だから思うのです。

 

私を起こそうとして下さったあの時も、

 

ナオト様は、あんな優しい笑顔を浮かべていたのでしょうか?と。

 

 

「と言う訳でさ、シズも連れて行くよ?

 傍に居たいんだ。

 ソレでシズが目を覚ましたら、最初に声を掛けるんだ」

 

 

「はい、それがよろしいかと」

 

 

私もナオト様を愛する女です。

 

シズに向けられる笑顔に、思う処が無い訳では無いのですが?

 

私は堪らなく、そんなナオト様の笑顔が好きなのです。

 

 

「死んでる。

 コアタワーは勿論、街に必ず在る筈の歯車の音が無い」

 

 

灯台を下りると?駅前より先に、工業地帯に出る。

 

工業地帯は静かだった。

 

普段からウルサイ歯車の音がしない。

 

操業が止まっている。と言うLvじゃない。

 

人の喧騒がしない。ゴーストタウンか、廃墟のような静けさだった。

 

 

「オレが異常なのは耳ダケの筈何だケドな?

 ………鼻もおかしくなったかな?」

 

 

血の臭いがする。

 

工業地帯に入って、

 

必ず目に留まる一番巨大な工場の近くを通りかかってからだ。

 

オレの鼻は?耳と違ってノーマルな代物の筈!

 

ソレがこの現状!

 

 

「ナオト様が異常な訳では無いようです。

 コレは間違い無く血の臭い、死臭です。

 ………ですが問題はソコでは在りません。コチラを御覧になって下さい」

 

 

リューズが指定したヶ所は、

 

巨大な工場の入り口と、隣接された検問所。

 

何らかの認証キーが在ったと思われる場所が、丸く抉り取られている。

 

検問所の方は死臭が酷く、お察しの展開だ。

 

どうやら丸い何かで認証キーを無効化して、中に侵入したらしい。

 

 

「私はコレに心当たりが在ります。

 ですが、アンクルは………」

 

 

「!

 リューズ!工場から誰か来る!!

 子供くらいの歩幅のオートマタと、多分背の高い男が一人。

 真っ直ぐコッチに来てる。もう気付かれたな?」

 

 

オレでも視認デキる距離まで、二人が近づいて来た。

 

一人はやはり背の低い、小柄なオートマタ。

 

可愛らしい顔つきだが?コチラを険しい目で見ている。

 

もう一人も、予想通り背の高い男だ。

 

何処か酷薄な目で、オレ達を見下ろしている。

 

 

オレは即座に悟った。

 

この男はマズイ。他人の命を刈り取る事に躊躇が無い。

 

先程からオレ達を見ていた目が、オレに向けられている。

 

この酷い死臭も、コイツが原因だ!

 

 

「この人が私のマスターです。

 私は、マスターに着いて行くと決めました」

 

 

「アンクル。

 貴方は………」

 

 

オレがヤヴァそうな男に目を向けている間に?

 

リューズと、アンクルちゃんらしき二人の方も、話しが進んでいた。

 

敵対必至かな、コレは?

 

 

「アンクル。

 銀髪を抑えろ、ガキは俺が仕留める」

 

 

「肯定。

 敵性存在を認識。戦闘モードへ移行」

 

 

戦闘が始る。

 

まず黒猫のようなボディアーマー姿になったアンクルちゃんが、

 

紅く長い髪を靡かせ、本当に猫のように獣的な動作で襲い掛って来る。

 

リューズはソレを回避するが、

 

向こうの方が運動性が高い事を、オレは初撃で悟った。長くは持たない。

 

 

「くたばれ!俺の贄になれっっ!!」

 

 

「喪服のリューズも行けそうだケド?無しだな!」

 

 

男が手にした血塗られたナイフで襲い掛って来る訳だが?温い!

 

オレの耳でいろいろ察すると、余裕で対処デキる☆

 

ちょ~~っと、感染症が気になる程濡れてるケドな!

 

普段は別の武器を使っているのかもしれない。

 

リューズは長く持たないだろうし?

 

アンクルちゃんには悪いケド?コイツは即殺!

 

 

「………俺は、こんな処では死ねない。

 殺してやる。殺してやる。殺してやるぅぅぅっっっ!!!!!」

 

 

………うん、煙幕で距離を取って、

 

地雷を撒いたらアッサリ掛かった。ソコまでは良い。

 

だがその瞬間!男の服が破れ、膨れ上がった。

 

身体が一つか二回り、大きくなったように見える。

 

 

「此処はファンタジー世界じゃ無いんだが?

 三角州の離宮とかでも無いよ?」

 

 

オレにはソレが?

 

ファンタジーに出て来るミノタウロスのように見えた。

 

そして錯乱したのか?素手で辺りを破壊しながら、近づいて来る!

 

何だ素手って?素手で壊せる強度じゃないだろ!?

 

 

「殺す!俺はあのバケモノを、

 ヨグ=ソトースを殺すぅぅぅっっっ!!!!!」

 

 

私は、私を認識する。

 

どうして?ソレが最初の思考。

 

私は全てを失くした。ソレを望まれた。

 

私はソレを受け入れた。私は歯車の一つまで、あの御方のモノだから。

 

あの御方では無い。あの御方なら、直ぐに解る。

 

他の誰かが、私を再構築しようとしている。

 

 

私には解る。

 

懸命に私を構築しようとする意志。

 

全てを失くした私に全てを、歯車の一つ一つを与えようとする意志。

 

あの御方には程遠い、

 

だけど与えられる歯車は、一つ一つが馴染んで行く。

 

私の為ダケの新しい身体。歯車がまた廻る。

 

 

「良し!なら、今日からシズだ。

 シズ?オレはナオト。こっちはリューズ。よろしくな?」

 

 

シズ。私の名前。もう失くした私の名前。

 

私をシズと、もう一度シズと呼ぶヒトが居る。

 

逢いたい、私の歯車が疼く。

 

 

でもソレは出来ない。

 

私はあの御方の勅命を受けた。

 

二度とあの御方の前に立てない。起きてはイケナイ。

 

私は眠り続ける。あの御方の勅命だから。

 

ソレが辛い。そう思う事が不思議だった。

 

 

「殺す!俺はあのバケモノを、

 ヨグ=ソトースを殺すぅぅぅっっっ!!!!!」

 

 

………申し訳ございません、ヨグ=ソトース様。

 

私はCZ2128Δは、貴方の勅命に叛きます。

 

 

「!

 この歯車の音色は!?」

 

 

突然その歯車の音色が聴こえた。

 

聴き慣れた、それでいて初めて聴く音色。

 

背中の柩が軽くなっていた事に気付いた頃、彼女に気付いた。

 

風に靡く、ピンクブロンドの長く美しい髪。

 

片方の目を覆う眼帯。

 

だがもう片方の目は開き、

 

綺麗な碧の瞳に、間違い無くその意思を宿していた。

 

 

「貴方は、ヨグ=ソトース様を殺すと言った。

 ソレは許されない。許してはいけない。

 貴方を、処刑する」

 

 

「キサマァァァッッッ!!!!!

 あのバケモノの!ヨグ=ソトースのシモベだな!?

 コロスコロスコロスコロスコロスッッッ!!!!!」

 

 

オレには聞こえた。

 

シズが軍隊の指揮官のように手を挙げると、

 

何も無かった空間が黒く染まり、撃鉄が上がる音がした。

 

すると天に星が煌めくように、数多のバレルが姿を現す。

 

兵士のようにシズに従うバレルの群が、一斉に男が変じた怪物を補足する。

 

 

「処刑執行――Initial―Yシリーズ番外機

 CZ2128Δが命じる。

 支配者の宝物殿/ゲート・オブ・ナザリック

 その偉大なる宝を以て、ナザリックの威を示せ」




ツッコミ処満載だと思いますので、設定説明!

まず、このシズの起動条件は?
1/もう一度シズと言う名前を付ける。
2/ヨグ=ソトースの名前を出し、害意を告げる。
となります。
オバロファンの方なら?NPCにとって、
ギルメンの命令に叛くのが、どれだけ重いか解る筈です。
今回、このシズはソレを実行しました。
このシズの詳しいキャラ設定は、また後日☆

支配者の宝物殿/ゲート・オブ・ナザリック
皆大好き!あの王様のパクリ的ネタ技です。
シズに預けられたアイテムボックスを解放して、
納められた銃を、一斉に取り出して放ちます。
作中でバレルしか出ないのは、アイテムボックスに手を入れて、
引金を引く為です。
アイテムボックスの正式名称は、無限の背負い袋(課金で外装変更済)です。
また?オバロ準拠で再現可能と判断して、
Fate/タグは加えません。ご了承下さい。

後?念願のアンクルと遭遇しても、
ナオトがハイテンション化しないのは、
流石にこの事態のさなかだからです。

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