この素晴らしい世界に殺人貴を!   作:朎〜Rea〜

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 すみません。ベルティアさん一回目を完璧に忘れていました(´・ω・`)

 この話は前話の前の話となります。次の話書いたら、移動させますのでご了承を…※修正済み


デュラハン来る

「俺はつい先日この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが……」

 

 この世界に来てから、二度目の緊急クエストである。ギルドでお茶をしていたところ、正門に徴集がかかったので行ってみると、そこにはデュラハンがいた。

 

「毎日毎日毎日毎日、お、お、俺の城に爆裂魔法を撃ち込んでく頭のおかしい大馬鹿は誰だああああああ」

 

 爆裂魔法……?

 

 街のみんなは、めぐみんを見た。

 

 俺達も少なからず思い当たることはある。古城に爆裂魔法を撃っていたことだ。

 

 今になって思ってみたら、あんな爆発だ。古城なんて、木っ端微塵になってしまうであろうに、ほとんど傷を負っていなかったのだ。

 

 もう少し早く気づいていれば、こうなることを事前に防げたのかもしれないのに……

 

 観念したのか、めぐみんは前へ出た。

 

「お前が……! 俺が幹部だと知っていて喧嘩を売っているなら堂々と城に攻めてくるがいい!その気が無いないなら街で震えてるがいい! ねぇ、何でこんな陰湿な嫌がらせするのぉ!? どうせ雑魚しかいない街だと放置しておれば調子にのって毎日ポンポンポンポン撃ち込みに来おって!」

 

 当事者になってみれば、相当迷惑な話である。毎日、あんなものを撃たれたら溜まったものじゃない。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードにして爆裂魔法を操る者!」

「……めぐみんって何だ。バカにしてんのか?」

 

 やっぱり、そうなるよな……俺だってそうなった。そうならない奴はなかなかいないだろう。

 

「ち、違わいっ!! 我は紅魔族の者にしてこの街随一の魔法使い。爆裂魔法を放ち続けていたのは貴方をおびき出すための作戦。こうしてまんまと一人で出てきたのが運の尽きです」

 

 めぐみんは自信満々に言っているが──

 

「いつの間に作戦になったんだ?」

「しかもさらっと、この街随一とか言い張ってるな」

「しーっ! 後ろにたくさんの冒険者が控えてるから強気なのよ。今良い所なんだからこのまま見守るのよ!」

 

 アクアはどこか楽しんでいるように見える。これでいいのか女神様。

 

「まぁいい。俺はお前ら雑魚にちょっかいかけにこの地に来た訳ではない。しばらくはあの城に滞在する事になるだろうが、これからは爆裂魔法は使うな。いいな?」

 

 どうやら、このデュラハンは話が通じる相手らしい。こちらが、何もしなければ、何もしてこないし、時が経てば去るという事だ。それなら、いつでも殺るチャンスは出てくる。

 

「無理です。紅魔族は日に一度爆裂魔法を撃たないと死ぬんです」

 

 期待した俺が馬鹿だった。

 

「聞いた事がないぞ! 適当な嘘をつくなよ!」

 

 デュラハンにもわかる嘘をつくのはやめてほしいところだ……

 

「魔に身を落とした者ではあるが元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味はない。だが……」

 

 デュラハンはめぐみんを睨む。そりゃ怒るだろう。誰だって、怒るに違いない。

 

「ふっ……余裕ぶっていられるのも今の内です。先生、お願いします!」

 

 めぐみんのご指名。

 

「しょうがないわね!! この私がいる時にくるとは運が悪かったわね。あんたのせいでまともなクエストが請けられないのよ! さあ覚悟はいいかしら!?」

 

 女神様もノリノリである。

 

「こんな街にいる低レベルのアークプリストに浄化されるほど落ちぶれてはいない。ここは一つ、紅魔の娘を苦しませてやろうか。汝に死の宣告を! お前は1週間後に死ぬだろう!」

 

 何かまずい。そう思った時には既に遅かった。

 

「うっ……わあああああああああああ!」

 

 だが、その呪いはダクネスによって阻まれた。その身を呈して……

 

「紅魔族の娘よ。そのクルセイダーは1週間後に死ぬ。フフ……お前の大切な仲間はそれはで死の恐怖に怯え苦しむ事になるのだ。そう、貴様のせいでな! 仲間の苦しむ様を見て自らの行いを悔いるがいい。クハハハハハ!」

 

 デュラハンは高らかに笑う。しかし、そんな呪いはダクネスにはむしろ御褒美だったらしく──

 

「つまり貴様はこの私に死の呪いを掛け、呪いを解いて欲しくば俺の言う事を聞けと……つまりはそういう事なのか!」

「ファッ!?」

 

 デュラハンの声が裏返る。

 

「くっ……呪いごときで屈したりはしないが……どうしよう、カズマ!! 見るがいい、あのデュラハンの兜の下のイヤラシイ目を! あれは私をこのまま城へと連れて帰り、呪いを解いて欲しくば黙って言う事を聞けと凄まじいハードコア変態王令を要求する変質者の目だ! この私の体は好きにできても心までは自由にできるとは思うなよ! 城に囚われ魔王の手先に理不尽な要求をされる女騎士とか…あぁどうしようカズマ! 予想外に燃えるシチュエーションだ! 行きたくはない、行きたくはないが仕方がない!ぎりぎりまで抵抗してみるから邪魔はしないでくれ。では、行ってくりゅっ!!」

 

 大丈夫なのか、うちのメンバーは……心底心配になってきた……

 

「やめろ、行くな! デュラハンの人が困っているだろ!!」

「放せぇ! 止めてくれるな!」

 

 カズマはダクネスを引き止めるが、ダクネスがそれで止まることは無かった。

 

「と、とにかく爆裂魔法を放つのは止めろ!そして紅魔族の娘よ! そこのクルセイダーの呪いを解いて欲しくば俺の城に来るがいい。果たして辿り着くことができるかな? ククク…フハハハハハハハ!」

「いや、その必要はない」

 

 呪いを解くのに、敵城まで赴く必要は無い。ここでやればいい。

 

 俺は背後からデュラハンに斬り掛かる。

 

「なにっ!?」

「ちっ、今のを避けるか……四の五の言わずに、殺っておくべきだったか……」

 

 俺もまだまだということだ。やはり、まだ下手だということなのだろう。

 

「貴様、何者だ? いつの間に回り込んだ?」

「別にアンタに名乗る名はない。ほら、死にゆくヤツに教えても意味が無いだろう?」

「クハハハハ! 気に入ったぞ小僧。この俺が相手をしてやろう」

 

 しかし不味いな。相手はどう見ても歴戦の剣士だ。俺が正面から戦ったところで、線を斬らせてくれるとは思えない。

 

 七夜の技は暗殺に特化したものが多い。故に、正面対決というのがそれほど得意ではないのだ。

 

 しかも、相手はゴツイ鎧にアンデッドときた。打撃は通用すると思わない方がいいだろう。

 

 とはいえ、今はやるしかないというのが現状だ……

 

「いざ、参る」

 

 デュラハンは剣を構え、間合いを詰めてくる。が、そうはさせない。間合いを詰められたら、こちらの詰みだ。

 

『閃鞘・八点衝』

 

 前方に高速な斬撃を乱れ打ち、敵を切り刻むと同時に接近及び反撃を防ぐこの技。ついでに砂埃もまいあげる。

 

「ぐ……小癪なっ!」

 

『閃鞘・伏竜』

 

 音も気配すらも断ち切り、敵の足元に忍び寄り下から上に切り上げる技。しかし──

 

「いい攻撃だが、残念だったな。来るとわかっていれば避けることは可能だ。しかし、貴様の攻撃は少し嫌な予感がしてな。回避に徹底させてもらうぞ」

 

「勘がいいな」

「これでも、様々なやつと戦ってきたからな。これは俺の感だが、お前は毒だ。何であれ、殺してしまう猛毒。それを受ける気にはならんよ」

 

 なるほど。相手の能力を把握するのには長けているのか。しかし、能力自体はバレていないようだ。

 

「なるほどね。騎士様は、剣を交えるのを諦めたと?」

「クハハハ、残念ながら俺はもうデュラハンなのでな。そんな挑発にはのらんぞ?」

 

 これは困った。なれば、こちらから行くしかない。

 

「それなら、斬り伏せるまでだ」

 

 腰を低くかがめ、水月で後ろに回り込む。

 

『閃鞘・迷獄沙門』

 

 閃鞘にして、七技に数えられない異端の技。すれ違いざまに、上・中・下段の全てを斬る技。

 

 しかし、殺せたのは剣だけだった。

 

「即座に反応とか、チートかよ……」

「見事。剣をもっていかれるとは思わなかったぞ。その太刀、本物と認めよう」

「なら、ダクネスの呪いを今すぐに解け」

「それとこれとは話が別だ。それは、あそこにいる頭のおかしいアークウィザードへの戒めだ」

「なら、アンタをやるしかない、ということか」

「残念だが、俺を殺しても呪いは消えんぞ? 消したくば、俺の城まで来ることだ。クハハハハ」

 

 それを最後に、デュラハンは消えていった。転移魔法かなにかだろう。

 

「めぐみん、どこに行くつもりだ?」

「ちょっと城まで行ってあのデュラハンに直接爆裂魔法をぶち込んで呪いを解かせてきます」

「俺も一緒に行くに決まってるだろうが。お前一人じゃ雑魚相手に使ってそれで終わっちゃうだろ。そもそも俺も毎回一緒に行きながら幹部の城だって気付かなかったマヌケだしな」

 

 めぐみんとカズマはダクネスを助けるため、古城の方に歩いていこうとする。

 

「いや、呪いについては心配いらない。ダクネス、じっとしていろ……」

 

 呪いはダクネスに取り付いている。外見は何も無いから、体内を毒のように回っているのだろう。

 

 呪いも概念の一つだ。それならば、殺せない道理はない。

 

「な、何をする気だ! 私に……仲間にナイフを向けるだと……? 私の所望するシチュエーションだが、やめろぉー!」

「少し黙っていてくれないか……」

 

 やる気が削がれてしまう。だけど、やるしかない。

 

 ダクネスを視るのではない、それに憑いてる呪いを視ろ。ダクネスのではない、点を視るんだ……

 

 目を凝らす。

 

 ここでしくじれば、ダクネスは1週間後に死んでしまう。そんなことはさせない。

 

「ここだ……」

 

 俺は呪いの点を穿った。

 

「志貴、今何をしたのですか?」

「呪いを殺した。アクア、確認をしてくれ」

「ちょっと、ほんとに消えるじゃない……志貴、なによそれ! そんなことされたら、私の出番がないんですけどっ!?」

 

 出番? もしかして、俺が何もしなくても、アクアがどうにかしてくれたのだろうか?

 

「志貴さん、確かに今ダクネスを刺したよな? 何で傷がないんだ?」

「よくわからない……俺も無我夢中だったからな……ともあれ、クエストは終了だろ?」

 

 正門の方から歓声が上がった。

 

 それは、クエスト完了の合図であった。




閃鞘迷獄沙門は七夜志貴のメルブラにおけるアークドライブですね。説明雑ですみません(´・ω・`)

こうやってやると、ベルティアさん強い……

カズマ&アクアペアって相当たちの悪い組み合わせだったんですね(今更)

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