一言、現地妻とか志貴さんの思いぶち壊しじゃないですかっ!! めっちゃいいじゃないですかッ!!
あと、誤字指摘ありがとうございます。もう、翡翠ちゃんより悲惨……
誤字らないように、翡翠ちゃんやっていきます()
「いらっしゃいませ、お客様。今日はどのようなご要件で……っ!?」
奥からマントを羽織った大男が出てくる。何故か、マントの中に服を着ていない。
変態ばかりの異世界だ。こんなのはもう慣れた。
「特に探し物はないんですが……どうかしたんですか?」
店員は俺を睨みつけてきている。
俺、この人になにかしたか……? 冷やかしに来たのを怒っているのか……?
「遠野志貴……貴様、なぜお前がこちら側にいる?」
「えっと……どこか出会ったことがありましたか……?」
「忘れたとは言わせん。なんせ、この私を殺したのは貴様なのだからな」
店員から溢れ出ているのは殺気。これほどの殺気を感じるのは、こちらに来てから初めてだ。
俺は咄嗟に眼鏡を外し、ナイフを構える。
「どういうことだ……?」
俺は目の前のヒトを殺してはいない。殺したことがあるのは、自分自身。それと、俺のことを特別だと言ってくれたあの子だ……
「どうもこうもあるまい。日本で、真祖の姫君と共に戦ったのは貴様であろう?」
「真祖の姫君? 誰だそれ。それに、俺はお前と戦った記憶はないんだが……?」
全く記憶にない。あれか? 俺が記憶に無いだけで、実はいろんな戦いをしていたりするのか? 夜な夜な、本当に人を殺していたのか?
それはない。何故って、シエル先輩が教えてくれたじゃないか。俺は殺人鬼なんかじゃないって……
「なに……? 小僧、アルクェイド・ブリュンスタッドという名に心当たりはあるか?」
大男から目線を外さず、首を横に振る。
「ふむ、実に面白いではないか。まさか、このような現象が起きようとはな」
急に、店内に充満していた殺気が引いていくのがわかった。
「すまない。私の知っているのは遠野志貴であるが、小僧ではないようだ」
「俺であって俺でない?」
矛盾している。俺の中にいた……いや、過去の俺ならば、たしかに俺であって俺じゃない。だけど、それはこの直死の魔眼がこの目に宿る前のことだ。こんな化け物、どうにかなったなど、考えることすら馬鹿らしい。
「つまるところ、平行世界という事だ。貴様が記憶をなくしている、という可能性も考えられなくはないが、考えにくいだろう。平行世界とは、貴様が歩んだかもしれない可能性、その世界だ」
おかしなことを言う。
「そんな世界、ある訳……」
「そこを否定するか。それならば、この世界を貴様はどう説明する? 有り得ないことが起こっているのだ。そも、我らが使徒二十七祖には平行世界を行き来する化物もいる」
聞き慣れない単語はあるが、無視する。
しかし、平行世界を行き来できる人物がいるのか……俺の世界は一体どうなっているんだ……?
「ということは、その世界の俺はアンタを殺したと……?」
「そういう事だ」
「それじゃあ、アンタは俺を殺すのか?」
違う世界とはいえ、俺がこの人を殺したことには変わりない。俺自身に殺意があるのは変わらないだろう。
「ふむ、ふむふむ。これは面白い質問だ。確かに私は遠野志貴という人間に少なからずは恨みがある。しかし、小僧、貴様という人間には興味はあれど、殺意はない。貴様とアレは別の人間なのだからな」
「……難しいな」
まるで、どこかの学校の教授のような言い分だ。俺には理解しかねる。
向こうから完全に敵意が消えたことを確認すると、ナイフをしまい、眼鏡をかける。
「ともあれ、すまないな。貴様に殺意を向けたこと、詫びよう」
本人が納得しているなら、それでいいのだろう。俺がどうこういう権利なんてない。
「それで、あなたがここの店主なんですか?」
「それは否だ。店主は今、商品の買出しに赴いている。名はネロ・カオス。ここの雇われた店員だ。それにしても面白いな。私が敵でないことを知るやいなや、敬語か」
「そうりゃあ、そうでしょう。最低限の敬意は示します。それと、既に知っているかも知れないけど、遠野志貴です。宜しくお願いします」
「うむ。そして、本日の要件は?」
やっと本題である。
「ああ、ここにくれば魔王軍幹部の情報が貰えるって聞いたんですけど、なにか知りませんか?」
「私は知らない。恐らく、情報を持っているのは店主だろう。私はこちらに来てからまで日が浅いのでな」
やはりそうか。ここの店主は女だと聞いていたから、期待はしていなかった。
「そうなんですね……失礼かも知れませんが、ネロさん……」
「やはり気づくか。私は吸血鬼、死徒だ。向こうにいた頃は、真祖の姫君に食人鬼なんて言われていたがね」
「吸血鬼っ!?」
人間でないことはネロさんに対面した時からわかっていた。アクア達のように神聖なものでなく、邪悪なものだということも……
「まあ、安心するがいい。こちらの世界とあちらの世界では吸血鬼の概念自体が違うようでな。人の血は飲まん」
それを聞いて安心する。もし人の血を飲んでいたなら、この場で切り伏せるつもりだったが、その心配は無駄だったようだ。
「鼻が良すぎるというのも考えものだな、遠野志貴よ。確かに、私は悪であるが、誰にとってもそれが悪であるという保証はない。戦闘の準備をするのはいいが、敵意は抑えておけ」
「す、すみません……」
思惑はバレてしまっていたらしい。こんなことでは、まだまだだ……
「安心しろ。私とて、二度も殺されたくはない。ヌシと対峙することはないだろう」
「それは、良かったです。正直、ネロさんとは戦いたくない。勝てたとしても、半死でしょうしね」
俺は苦笑する。
「それじゃ、俺はこれで失礼します。今日はほんとにすみませんでした。店主さんが戻ってきた頃に日を改めて」
一礼して、店を出る。
「店主は一週間もすれば戻ってくるだろう。それと、気にするな。発端は私だ。詫びに一つだけ、耳よりな情報だ。この世界にもう一人だけ吸血鬼が来ているようだ」
「どうしてそれが?」
「なに、気配が私の旧友に似ているのでな……」
ネロさんは何かを思い出すかのように言っていた。
「あれ、志貴さん。奇遇ですね」
魔道具屋からの帰り、カズマとそれに負われためぐみんと遭遇した。
「二人とも、今帰りかい?」
「はい。今日はなかなかの爆裂でした……」
「そうだな。あの音圧はなかなかだった」
何を話しているんだこいつら……
「志貴さんは何をしていたんですか?」
「俺はウィンドウショッピングというやつだ」
答えとしては間違っていないと思う。
「ほう、何かいいものはありました?」
「欲しいものはこれといって無かったな。そういえば、めぐみんに似合いそうなペンダントがあったぞ」
値段はなかなかえげつなかったが……あの魔道具屋、値段設定を間違っているのではないだろうか? ここ、初心者が集まる街だよな……?
「プレゼントしてくれるんですか?」
「答えはノーだ。生憎、俺もお金がなくてね。慎ましく生活するしかないんだよ」
「確かにそうですね……ほんと魔王軍の幹部はタチが悪いです。いっそ私たちで狩りに行きましょうか」
グッ、と手を強く握り込むめぐみん。
「いや、お前本気で言ってんならここで降ろして帰るからなっ!?」
「ジョーダンです。ジョーダンですよ、カズマ!」
俺達には、冗談には聞こえなかった。この爆裂娘ならやりかねない。ていうか、目が半分以上本気だった。
「魔王に爆裂魔法とどちらが最強か、とか言ってたやつのことを信用しろと?」
「そ、そうだ、志貴! 明日はお暇ですか?」
めぐみんは俺に助けを乞うように、話題を変える。
「まあ、特にやることは決まっていないが……」
「それじゃあ、私たちに付き合ってください! 爆裂の素晴らしさを教えてあげましょう!!」
「考えておくよ」
それから、アクアとギルドで合流し、夕食を取った。アクアの夕食がキャベツ一色だったということは言うまでもないだろう。
ウィズが出てくると思ってましたね?
そんなことはしませんよっ!?
斜め上を行くのがこの私なのです(´・ω・`)
今回はオリジナルでした。
なぜネロがこちらの世界に来たのか、などの経緯は全く考えてません。ただ、なんか面白そうだったから呼びました()
いいのよ、月姫クロスなんだから!!
さて、もうひとりの吸血鬼というのは、あの人です。まあ、月姫やってる人なら分かるのではないかな?