魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい 作:ちあさ
僕のような絵に描いたような平凡な人間が生き残るには最大限の努力をしなければならない。
凡人でも岩にかじりつくような努力をすれば天才に勝つことができると言う人もいる。
だが考えてみて欲しい。
それならば天才が岩にかじりつくような努力をしだしたら凡人はどうすればいいのかと。
特に今のような命の掛かった戦いでは。
誰だって死にたくはないから最大限の努力をしてくるだろう。
綺羅星のような魔法を持った魔法少女たちの中で僕のような凡人一体どうしろというのだろう。
だが幾ら才能の差を感じても僕だって死にたくはないのであがくしかない。
天才と戦うなら同じ土俵で戦ってはダメだ。
例え卓袱台返しをしてでも、戦いの外で戦うしかないのだ。
幾ら卑怯だの、イカサマだの言われようが、それを恥じることができるのは生者だけ。
死んでしまっては後悔すら出来ないのだから。
そのような訳で凡人の僕は魔法少女になって、トップなんとかさんから他の魔法少女のことを聞いてから、ひたすら情報収集と事前準備に専念してきた。
今が平和でもいつまでもそれが続くわけなどありはしない。
"平和とは次の戦争への準備期間なのだから魔法少女殺るべし慈悲はない"と確か古事記にも書いてあった。
特に僕のような前科持ちなど不当に誤解されて排斥されるのが関の山だ。
なので何かが起きてしまう前に準備だけは十全にして起きたかった。
そしてこんな僕と付き合ってくれたトップなんとかさんは面倒見がよくて顔が広いので情報収集の手間が大幅に省けた。
もし今後トップなんとかさんに裏切られたら僕は人生すべてに絶望し単身渡米して核の発射ボタンを押してくることだろう。
その情報収集のひとつに魔法少女の観察がある。
大抵の魔法少女には一般人としての日常生活も存在する。
そして変身していないと魔法は使えないし、能力だって一般人と変わらなくなるのだ。
故に必勝を期すなら魔法少女のリアルを暴き、そこを突くのが一番簡単である。
もしそれができれば魔法の性能差などあっさりひっくり返る。
より多くの情報を集め、より多くの事前準備をする。
それで敵が土俵に上る前にその外で決着をつけるのが凡人の勝利の方程式だ。
もちろんすべての魔法少女の情報を集められたわけじゃない。
高速で空を飛ぶトップなんとかさのリアルは未だつかめていない。
鉄腕少女とだって初対面時に運良く捕獲できたが、そうじゃなければあの飛行速度とホームレス生活ではリアルを割るのは難しかっただろう。
他にも森の妖精さんは森に帰っていくぐらいしか情報が分からないし、白いのは時間が足りないのと、能力が不明すぎて迂闊に近寄れずにリアルを特定できていない。
そういえばナイト様がネカマならぬ女装魔法少女だったと知ったときには大いに笑わせてもらった。
あの年齢であの趣味はなかなかに業が深い、流石日本の男の子だと思った。
この前の様子だと期待薄だが無事に生き残ったらお祝いにドレスでも贈ってやろうか。
とにかく割れる範囲でリアルを割り、可能なら侵入して寝室などに隠しカメラを設置してある。
家人と同居でも一般人相手には魔法少女状態なら目撃されても認識されにくいので堂々と潜入して設置まで余裕であった。
常に施錠されていて潜入ができない場合は窓から部屋の中が見られる位置に隠しカメラを設置してある。
妖怪水着女の場合も家人と同居だったため、彼女が出かけているすきに部屋にカメラを設置させてもらった。
そしてまだ小学生だと知った時は多少安堵したものだ。
これなら女王様の教育で改善されるのを期待してもいいし、そうじゃなくても暴走を抑えてくれれば見逃すこともできるだろうと。
だが残念なことに彼女は生粋のサイコさんだった。
本当に魔法少女の選考基準について問い詰めたい。
僕以外にマトモな魔法少女が希少価値すぎる件について。
特にヤバイやつほど魔法が強力な気がする。
きっと人間から外れれば外れるほど魔法適性が高いのだろうな。
だから僕みたいな平々凡々な一般人の魔法はこんなにシンプルなのだろう。
誇って良いのかが悩ましい。
だとするとあの犬もきっと大きな闇を抱えているのかもしれない。注意しよう。
そのような事情であの妖怪水着女には早期退場してもらうべく、燃料満載のタンクローリーを用意してもらっている。
タンクローリーはどっかの魔法少女も切り札にしそうなぐらいの火力を叩き出せる便利アイテムだ。
これを3台ほどぶつけてやれば、いくらサイコな水着だとしても焼却可能だろう。
ただ、ここ最近N市を追い出されそうな勢いの懇意のヤクザ屋さんでは直ぐには用意するのが難しいらしい。
しょうがないので来週ぐらいまでに期限を伸ばす代わりに他の魔法少女にも打ち込めるよう予備も用意するように言いつけておいた。
もしかしたらキマシタワーや森やはたまた鉄塔に打ち込むことになるかもしれないからな。
弾数が多ければ多い日も安心だ。
そんな地道な活動をしていたらトップなんとかさんが組事務所に尋ねてきた。
彼女もすでにこのヤクザ屋さんでは周知されていて、なんだか僕より歓迎されている。
彼女がいると僕が大人しくなるから?
お前ら後で覚えておけよ。
どうやらキマシタワーが僕に会いたがっているらしい。
それこの前も断ったよね?
何が悲しくてボッチの僕がラブラブお花畑劇場を観覧しないといけないというのだ。
ただでさえ監視中に吐き気を耐えるのに苦労していると言うのに、肉眼でそれを見ろと。
その上、話し合いとか僕にできるわけ無いでしょ。
あんなリア充の前じゃ萎縮してしまい高いツボだって余裕で買わされる自信がある。
羽毛布団だってもう3セットもあるのだぜ、全部ヤクザ屋さんにローン押し付けたけど。
それにきっとお花畑さんのことだ、世界の平和がどうのこうのとかいいながら皆でお手々繋いで乗り切ろうとかそんなことを言い出すに決まっている。
そしてそれを否定するとぬりかべさんに敵対フラグが立つまでがテンプレという。
かといってその場限りの同盟を結んでもヤクザ屋さんとの関係や妖怪水着女暗殺計画などで大幅に足を引っ張られる可能性が高い。
まさに百害あって一利なし。
せめてもっと動向がつかめない白いのとか森の妖精とかに突っ込んで威力偵察がてら華々しく散って欲しい。
などと色々脳内で行けない理由をトップなんたらさんに懇々と説明しているあいだに強引に連れて行かれて、結果お花畑劇場を観覧していました。
話の内容も想像通り。
そしてキョドりまくっていた僕をトップなんとかさんがフォローしてくれて、対人恐怖症なので直接会うのは無理なのでせめて文通からはじめましょうと伝えてもらい、メアド交換だけはした。
フリーの捨てメアドだけど。
帰ってから寝る前に恐る恐る覗いてみたらもう30件ぐらいメールが入っていた。
後ろの20通ぐらいからはもう病んでいるとしか思えない内容。
どうして返信してくれないのですか返信待っています返信して返信しろ返信返信へんしん変死…
あれと付き合えるぬりかべさんをちょっと尊敬したそんな夜のことでした。
結構頑張っても3000文字にも届かず、1話で1万文字近く書ける人を尊敬します。
しかもメモ帳で書いてたら途中フリーズして消えて泣けたので、自動保存されるOfficeのワードで書くようにしました。
本当に凹む。