魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい 作:ちあさ
魔法少女の魔法というものは非常にあいまいなものであり、使用者の精神的なものに影響されるものなのだろう。
魔法名はあくまで、その魔法の特徴を端的に表したものであり、能力の全貌を示すものではない。
そして、魔法の効果は予め明確に定められている制約はあるものの、その制約以外の効力の限界はその使用者の精神力などに依存するのだろう。
つまり、使用者の常識や知識が能力の上限を決めてしまっていることが往々にして見受けられるように思われる。
例えば双子の片割れ。
好きな生命に変身できるのであれば、草木など植物にでも細菌にでもなれるだろう。
さすがに肉眼で見えないほど小さい細菌にでも変身されて体内に潜り込まれでもしたら対処のしようがなくなる。
なのに彼女は鳥だの他人だのに変身してばかりだ。
ただこれは知性の問題なのかもしれない。馬鹿っぽいし。
またトップなんとかさんの魔法もそうだ。
彼女の魔法の箒は、最高速度は現代の戦闘機を凌駕するらしいのでマッハは余裕でこえるし、その速度でぶつかっても壊れない頑丈性を持っている。
本来彼女の魔法は、その箒を自在に使うことができる魔法であり、その箒に乗って移動することではないはずだ。
なのに彼女の決め技は、その箒に乗って最高速度の体当たりだという。
僕から言わせるとどうしてそうなったと。
本来の正しい運用方法なら、その箒は乗らないで音速で敵にぶち当てる質量兵器だろう。
避けられてもソニックブームだけで十分なダメージを叩き出せるはずだ。
どうやら魔法少女の箒は乗るものだっていう彼女の中の常識が、能力の上限を決めてしまっているとしか思えない。
もし敵に回ったとしたら厄介なので指摘することはないだろうが、勿体ない使い方だろう。
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第1週目は予想通りエルム街さんがさよならバイバイしたようだ。
2週目はまだそこそこキャンディ集めをしないといけないだろうから、いつもニコニコ現金払いしてくれるヤクザ屋さんのケツを蹴り上げて「人助け案件」をもらってる。
どうやら他の組で絡みたいさんがケツ持ちやってるらしく、営業成績が芳しくないらしい。
なので他の市の方に縄張りを移したいらしいのだ。
ただ僕はコミュ障なのでやれることが少ない。
せいぜい魔法を使って、現地のヤクザ屋さんを物理的に潰して回るぐらいだ。
でも悪いヤクザ屋さんを掃除するのは正義の魔法少女としては正しい姿だろうから問題ない、キャンディ溜まるし。
そして今夜も包丁抱えてルンルン気分で隣の市に向かおうとしたところ、トップなんとかさんが血相変えて現れた。
彼女が持ってきた最新情報によると、どうやら脱落した魔法少女は死んでしまうらしい。
いろんな人から延々とコールが来てたのはその呼び出しだったのだろう、いつも通り無視したけど。
それにしてもどこまでテンプレなんだろう。
これはきっと、8人から更に減らすっていう展開も想定しておかないとダメかもしれない。
最悪1人しか生き残れないとかになると鉄腕少女の買い戻しに苦労しそうだ。
就活本を買って自己アピールについて勉強する必要が出てくるな。
延々と文句を言って気炎を上げているトップなんとかさんを横目にそんなことを考えつつ、暇つぶしにモバイルノートでいつもの鉄塔にいる白いのを監視していたら、唐突に事態が動き出した。
双子がナイト様を引き離していったと思ったら、一人になった白いのを女王様が魔法で動きを止めたのだ。
あっさり誘導に引っかかったナイト様の評価は下方修正、いくら馬鹿の双子でも何も考えずにお前に突貫するはずないだろうに。
動けない白いのを狙撃するチャンスだろうかと包丁を取り出したところで、水着が白いののマジカルフォンを操作しだした。
あれは先ほど追加された譲渡機能でもつかっているだろうか?
白いのが脱落してくれるならそれに越したことはないので傍観させてもらった。
これで不確定要素が一つ消えるとほくそ笑んでいたら、謎生物から二千近くのキャンディがいきなり届いた。
どうなってるんだ?
訳が分からなくて頭をひねっていたら、結果発表の時間になった。
今週のボッシュートは女王様らしい。あ、これ、クーデターだ。
この絵を描いたのは馬鹿の双子と気弱な犬ではないな。
やっぱりあの不気味な妖怪水着女がダークホースだったようだ。
早めにストーカーしてやつの家を探しておいてよかった。
きっと数日後の深夜にでも、彼女の家には不幸にも燃料満載のタンクローリーが数台突っ込んで大爆発でも起こすことだろう。
本当に悲しい事件だ。
原作はrestartまでしか読んでいません。
なので魔法の解釈は独自のものです。