魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい   作:ちあさ

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なんとか戦闘に入れました。

今回は特に決まった視点とかはないです。
コロコロコロコロ状況が変わります。

戦闘シーン難しい…。



女の子同士、仲がいいのは良いことだ

「誘導されているな」

逃走する魔法少女を追いながら魔王パムは結論づけた。

今までのパターンならそろそろまた魔女が沸く頃か。

そう思った直後、一行はまたもや魔女結界の中に囚われた。

 

 

+++++

 

 

カラオケルームから出発してB市中心部へ向かっていた魔王パム一行は道中で出現した魔女を危なげなく退けながら進んでいた。

幸いばら撒かれたグリーフシードの密度は高くなく、現れる魔女はそれぞれ単体。

強力な魔女も今のところ出現せず、魔王パムの羽だけで倒せているので羽菜とマナの消耗は少なくて済んでいた。

 

 

しかし魔王パムが上空を飛ぼうとするとたちまち遠距離から強力な銃撃が飛んでくる。

威力からするとアンチマテリアルライフルを魔力で強化しているのだろう。

油断したら羽を撃ち抜かれそうになって思わず感心してしまった。

だが魔王パムは黙って狙撃を許すほど甘くはない。

何度も狙撃手を撃退しようとした。

狙撃手も巧妙に隠れていたが3回目の狙撃で補足できた。

黒い服装で左腕に円形の盾を付けている魔法少女だ。

だが補足して羽を投げつけるとその姿はたちまち掻き消えてしまう。

そして次の瞬間には違う場所に現れて狙撃してくる。

それを今まで何度も繰り返していた。

恐らく転移系の魔法だろうと魔王パムは当たりをつける。

反応も早く狙撃ポイントや狙い、引き際の状況判断なども正確で彼女の実戦経験の豊富さが伺えた。

そして私を見るあの目。

忍耐強く、強い敵を前にしても常に冷静さを保ち、見極めようとするあの目。

あれはよほどの地獄をくぐり抜けてきた者の目だ。

一体あんな人材を何処で見つけてきたのやら。

 

 

「ゴメイサマ!」

他にも隙きを見つけては剣を連続して飛ばしてくる青い魔法少女。

彼女には赤い魔法少女が同行していてこちらの羽を槍で迎撃したり結界を張って止めたりしている。

青い方はまだまだ粗いが、赤い方との連携はなかなかのもの。

流石鉄腕組、”リップルの子供たち”と恐れられているだけはある。

もし私でなければとっくに全滅させられているだろう。

今度魔王塾に誘ってみるのも良いかもしれない。

 

 

そんな彼女たちの攻撃と頻繁に出撃する魔女への対応で、魔王パムも上空を一気に抜けるということはできずにいた。

いや、マナたちを見捨てればできなくはないが。

だが鉄腕組の層の厚さ、人数、そしてこの情報不足の中で単独行動するまずさはよく分かっている。

如何な魔王パムとはいえ、相性の悪い魔法少女というのは存在するし、あれらの練度を持つ魔法少女が連携して数で押してくると厳しいだろう。

なのでいざという時に背中を任せられる彼女たちを守るのは大事なことだ。

マナが相変わらず騒がしいのは多少閉口するが。

だが、この時点では魔王パムは未だ慢心していた。

 

 

地上では羽菜達が何度か散発的な襲撃を受けるようになっていた。

羽菜の魔法を把握されているのか、どいつも距離を取った攻撃での一撃離脱。

追撃しようとすると巧みにグリーフシードに引っ掛けられる。

その都度、上空の魔王パムが援護に入らなければならず、結局どんどんと市街地中心部へのルートから外れていく。

そして誘導されていると確信した頃には既に市街地からだいぶ引き離されていた。

 

 

+++++

 

 

しつこく湧いてくる魔女を倒し、魔女結界を抜けた先は田園地帯だった。

少し先には山が望める開けた場所。

ここが誘導先だったのだろう、魔王パムたちを囲むように現れる多数の魔法少女の姿。

そして…

 

 

「おいおい、やつら戦争でも始める気か?」

あまりにもありえない光景に唖然とするマナ。

 

「そういえば去年、装備品の大量消失で防衛大臣の首が飛んでましたよね。

まさかこんなところにあったなんて」

冷や汗をかきながらも視力を魔法で強化して敵の配置を確認する羽菜。

 

「現代兵器と魔法のコラボレーションか。

ここまで盛大なおもてなしとは初めてだ」

不敵に笑う魔王パム。

 

 

田園地帯に展開して砲塔をこちらへ向けている10式戦車の群れ。

操縦者もいないのに空を飛ぶ攻撃ヘリが多数。

山の斜面には多連装ロケットシステムを搭載した自走車両が何台も見える。

何故かそれぞれに人形をくくりつけられて、機体にスプレーで『これも人形の一部』と大きく書かれている。

他にも重機関銃やRPG、迫撃砲でこちらを狙っている魔法少女やヤクザたちの姿も見える。

 

 

そして、黒い魔法少女が前に出て

「最終警告です。

ここで投降するならば命の保証はします」

 

 

答える必要を認めないとばかりに魔王パムは4枚の羽を展開し飛び上がる。

黒い魔法少女がため息を付きながら手を振り下ろした。

 

 

そして農家の方達が丹精込めた田畑は鉄と爆薬の雨で豪快に掘り返されることになった。

 

 

+++++

 

 

絶えず飛んでくる銃撃と爆撃の中を命からがらといった状態で羽菜は逃げ出すことに成功した。

彼女の背には爆風でもみくちゃにされて気を失っているマナが背負われている。

大部分の狙いは魔王パムのようで、こちらには2人の魔法少女が追手に付いただけなのは救いだった。

だけどそう簡単に私達を逃がすつもりはないのだろう。

2人の魔法少女はなかなかしつこく追いかけ回してくる。

羽菜も建物の中や路地などを抜けたりしているが引き離せない。

このままだと援軍を呼ばれる可能性もある。

せめてどちらか1人でも何処かで撃退できれば…。

羽菜は聴覚を強化して2人が離れるタイミングを探っていた。

 

 

「──は先回り、」

「あのビルの──」

 

 

どうやら片方が先行して前後で挟み撃つつもりらしい。

ここはこちらから逆に奇襲をかけて各個撃破するチャンスだ。

未だに目覚めないマナをビルとビルの間の細い路地に隠して、ビルの中を抜け、青い魔法少女の横合いから一気に接近戦に持ち込んだ。

直前で気付いた青い魔法少女が両手に持った2本の剣を投げつけてくるが、視力を強化していた私には飛んでくる剣を掴み取ることも可能。

掴み取った2本の剣で逆に斬りつけることに成功する。

袈裟懸けで斬りつけ、血が飛沫を上げる。

これだけでも十分だろうが念には念を入れ、彼女の痛覚を最大まで引き上げる。

彼女は気を失っ…ってない!

まるで痛覚など感じていないとばかりに獰猛に笑いこちらへ殴りつけてきた。

その勢いでビルに叩きつけられ、飛んできた剣で手足を壁に縫い付けられ、何度も殴られる。

私は彼女の感覚を狂わせようと視覚聴覚触覚などを上げるが、一瞬ぐらつく程度ですぐに回復してしまう。

 

 

「いやぁ悪いねー。

あたしたち魔法少女にとって体なんて外付けのハードでしかないんだよ。

慣れちゃえば全ての感覚を自在に操ることが出来るのさ」

 

 

「おい、さやか。

こっちはもう処理終わったぜ」

 

 

そう言って赤い魔法少女がマナを担いで歩いてくる。

処理?終わった?

その言葉に目の前が真っ暗になった。

 

 

「安心しな、あんたもまた直ぐに彼女に会えるさ」

 

 

赤い魔法少女がそう言いつつ私の頭に手を伸ばしてきて…

そして私の意識は闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

+++++

 

 

高町家の朝は早い。

 

 

御神流を極めんとする恭也は妹の美由希と共に日が出る前から修練を積んでいる。

父・士郎は体を壊してからは修練をあまりしていなかった。

だが今年になって死んだと思っていた弟の雅次さんに会って試合で負けてからは、

 

「ヤクザものになった弟に敗けるなどありえん。それになんだあの非常識な打たれ強さは」

 

といって御神の剣士としてプライドを刺激されたのか、全盛期を取り戻さんとばかりに修練している。

確かに雅次さんは凄かった。

剣士としての技量は美由希よりも低かったが、とにかく頑丈なのだ。

奥義がモロに入ったのに平気な顔で反撃をしてくる。

使ったのは真剣でこそないが、木刀で奥義がまともに入ったら普通は骨が折れるだろう。

あの時は父もまさかまともに入るとは思っていなかっただけに動揺していた。

だけどその後も何度も打ち込んだが結局雅次さんが止まることはなかった。

 

 

雅次さんは

「毎日のように頭部がもげたり、体を上下に斬り分けられたりしていたら嫌でも痛みに慣れます」

なんて冗談を言っていたが。

武闘派の任侠一家らしいからきっと命がけの戦いが多いのだろう。

 

 

そして3人で朝の修練をしていたら朝食の時間になった。

高町家はとにかく住人が多いので朝食はとにかく賑やかだ。

別に子沢山というわけではないが、居候の人数が多いのだ。

父と母、俺と美由希に末っ子のなのはの5人。

居候はフィアッセ、蓮飛、晶に”ハナ”と”マナ”。

 

 

ハナとマナの2人は3ヶ月前からうちに住むようになった。

雅次さんが初めてうちに来た時、一緒に山に修練に行ったら森の中で彼女たち2人が倒れているのを発見した。

彼女たちは名前とお互いが姉妹だということしか覚えていないそうで、記憶を取り戻すまでうちで預かることにした。

可哀想ではあるが、流石に門外漢の俺ではどうしようもない。

せめてここにいる間だけは辛いことがないようにしてあげたい。

他のみんなも同じ気持ちのようで3ヶ月経った今では女の子同士ではしゃぎあう仲になっている。

 

 

「恭也くーーん、学校に行こー」

玄関から同級生の姫河が呼ぶ声がする。

姫河小雪、俺と同じ私立風芽丘学園2年生で2年連続同じクラスの同級生だ。

無愛想な俺の何処が良いのか分からないが、よく話しかけてきたり、こうやって朝迎えに来たりするんだ。

こいつはいつも笑顔で優しく、クラスでも密かに人気もあり、結構やっかみを受けたりもする。

だが、俺も悪い気はしないので止めさせたりはしないのだが。

 

 

学校に行く俺と美由希を見送りに来たハナとマナに姫河が挨拶する。

 

 

「ハナさんもマナさんもおはようございます。

今日もお元気そうですね。

ふふふ、感謝してくださいね」

「はい、おはようございます。小雪さん」

「感謝ってなんのことだか分からないけど、おはよう小雪」

 

 

姫河は彼女たちとも仲が良い。

女の子同士、仲がいいのは良いことだ、眼福だしな。

姫河が今日も変わらずニコニコと笑っている。

それを見て俺もなんだか嬉しい気持ちになってくる。

 

 

さて、今日も良い一日になりそうだ。

 




白いの「遠距離通学を支えているアッシー君に感謝の納豆をあげましょう」


高町恭也が2年生、なのはが1年生。
つまり来年と再来年だ。
何がかは分かるよな。


ちなみに次回もいつになるかは…。

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