魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい   作:ちあさ

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とある人の魔法の能力がかなり捏造強化されてます。

考えるな、感じるんだ。

ギャグ小説に理論とか論理とかそんなもん最初から無い。

派手なら良いんだよ派手なら。

そんな感じでよろしくです。


正義の魔法少女

「おめでとうぽん!あなたは魔法少女に選ばれたぽん!」

 

流れ星が落ちた夜、私たち5人は魔法少女になった。

 

これでなれるんだ、あの人と同じ正義の魔法少女に。

 

私の胸は期待に満ち溢れていた。

 

 

+++++

 

私は幼い頃から魔法少女の話を聞かされて育ってきた。

 

 

怖い思いをした時には”正義の魔法少女が守ってくれるから大丈夫”と、

悪いことをした時には”そんな子は悪い魔法少女に攫われてしまうよ”と…。

 

 

同じ魔法少女なのに正義の魔法少女と悪い魔法少女がいることが不思議で母にどう違うのか聞いた。

自分のために魔法を使って他人を傷つけるのが悪い魔法少女で、

自分が傷つくのを恐れずに他人のために魔法を使うのが正義の魔法少女だと。

 

 

小雪お姉ちゃんは良く魔法少女のお話をしてくれた。

お気に入りのお話は犬の魔法少女のお話だ。

 

 

それは私が生まれるちょっと前の出来事。

()()()()()()()()()()()()()が生み出した悪の魔法少女クラムベリーと()()()の正義の魔法少女達の戦いのお話。

クラムベリーは自分の欲望の為に破壊の限りを尽くし、多くの魔法少女が彼女の前に敗れていった。

そのクラムベリーがN市へとやってきた。

だけど当時N市には14人の正義の魔法少女たちがいて、力を合わせてクラムベリーに立ち向かった。

しかしクラムベリーは狡猾でとても強かった。

クラムベリーに騙されて正義の魔法少女同士で戦わされた子たちがいた。

卑怯にも寝ている所を家族ごとタンクローリーで押しつぶされて殺された魔法少女もいた。

だけど正義の魔法少女たちはどれだけ傷ついても諦めずに最後まで街の人たちの為に戦った。

そして最後に残った名前を捨てた犬の魔法少女、リーダーの魔法少女ルーラ、水を司る魔法少女スイムスイムの3人がクラムベリーに最後の戦いを挑んだ。

戦いは激しく、何度もやられそうになりながらも、最後にはルーラとスイムスイムの命をかけた魔法でクラムベリーの動きを止め、犬の魔法少女がとどめを刺した。

そして、一人生き残った犬の魔法少女は仲間たちの死を悼み、死んでいった仲間たちが寂しくないように自分の名前をそこに残して名無しになって何処かへと旅立っていった。

魔王リップルと、生み出された多くの悪の魔法少女を倒すための旅へと。

もし彼女達が命を賭けてクラムベリーを倒さなければ、お母さんも小雪お姉ちゃんも死んで、そして私も生まれることはなかった。

だから私も彼女たちのように誰かのために戦える、そんな正義の人になりなさいと小雪お姉ちゃんは言った。

 

 

幼い私はその犬の魔法少女のお話に夢中になって将来は正義の魔法少女になるんだとはしゃいでいた。

 

 

だけど、小学校にあがり、大きくなるにつれ、少しずつ現実というものを理解していった。

魔法少女なんて空想の存在。サンタクロースと同じでそんなものはいないのだと思うようになっていった。

 

 

12の夏、あの事件が起きるまでは。

 

 

その夏はおかしな夏だった。

母や母の友人、そして組員のみんなが毎日何かに恐れ、ピリピリしていた。

変わらないのはいつも笑顔の小雪お姉ちゃんだけ。

いや、いつもよりちょっと顔が火照っていてニコニコというよりニヤニヤしていたので夏風邪を引いていたのかもしれない。

 

 

そして私の小学校生活は大転換期を迎えた。

若頭のマサさんが毎日登下校を送迎するようになったのだ。

それが問題にならないわけがない。

考えて見てほしい、マサさんの格好はパンチパーマにサングラスをかけた強面に黒服姿。

頬には大きな刀傷でどこから見てもヤクザだと全身で主張している。

そんなマサさんが同じ黒服の舎弟さんたちを連れて黒ベンツで校門に待っているのだ。

しかも舎弟さんたちは襲撃を警戒して常に右手をスーツの中、左脇の下へと入れている。

こうなったら誰も校門を通ろうなんて考えない。

みんなの注目を一身に集めるその中に私が歩いて行く。

彼らは一斉に「お勤めご苦労様ですお嬢様」と大声で叫んで頭を下げるのだ。

どこの大親分の出所シーンだろう。

どんなに止めてほしいと言っても

「お嬢様に少しでも失礼があっちゃ、うちらアネさんとつばめ姉さんに血達磨にされてしまいます、あんな死ぬかと思うようなのは二度とゴメンです」と聞いてくれない。

 

 

それまで私は融通がきかないけど真面目で優等生な学級委員長として同級生や先生の信頼を得ていた。

その評判がひっくり返るまで3日もかからなかった。

私を頼りにしていた先生は、ビクビクして目を合わせようとせず敬語で話しかけてくる。もちろん直立不動だ。

口さがない同級生はヒソヒソとヤクザの娘、殺し屋の娘などと有る事無い事言ってくる。

私の家がヤクザと懇意があるのは事実なので何も言えない。

だがそのヤクザ、鉄腕組はヤクザと言っても世間一般的に知られる暴力団ではなく、任侠道を重んじる一家だ。

非道なことはせず、街の御用聞きや私的なボディーガード、最近では人小路の警備部門を外注されたりしている。

どちらかというと何でも屋や民間警備会社みたいなものだが、そんなことを説明しても普通の人は区別なんて付けてくれない。

故に私の今までの努力による評価は地に落ちて、私のストレスは天をも貫きかけていた。

だからだろう、あんな無謀なことをしたのは。

 

 

その日もマサさんたちが校門で待っていた。

しかも何故か今日は更に人数が多く、アネさんこと組長・華菜さんの専属ボディーガードにして鉄腕組の最終決戦兵器とも言われているメルヴィルさんまで来ていて周りにひたすら殺気を放っていた。

これはもう耐えられない。

私はコッソリと裏門から逃げるように学校から離れていった。

そして探しているであろう組員に見つからないように人気のない路地を通っていたら、いきなり誰かに抱え上げられて車に押し込められた。

そして連れてこられたのは西門前町にある廃れたお寺だった。

 

 

古いもう誰も管理していないように思えるお寺。

そこに大勢の色んな格好をした女の人達がいた。

 

 

「このガキが例の?」

「ああ、鉄腕組に出入りしているのを情報屋が確認済みだ。こいつの情報だけで500も取られたよ」

 

 

みんな奇抜な格好で、中には空を飛んでいる人もいた。

お寺の屋根の上、木の上、鐘の下に寝そべっている人もいる。

見えているだけで30人以上いるかもしれない。

そんな中、私は両肩を抑えられて座らされていた。

 

 

「こいつを生贄にして魔法を使えば、その血縁や懇意にしていたやつらに最大級の呪いを撒ける」

 

魔法使いみたいなローブと大きな杖を持った人が不吉なことを言う。

 

「白き災厄は本当に大丈夫なんだよな?」

「ああ、なんでも魔王パムとやりあったらしくて、半死半生なんだとよ。魔法が一切使えなくなったらしいぜ」

「これで夢見た革命がなるかと思うと興奮してくるぜ。あいつの仇、ここで取ってやる」

 

 

この人達は何を言っているんだろう。

 

 

話している意味はよく分からないが、それでも分かったこともある。

母さんたちがあんなに警戒していた理由。

彼女たちがおとぎ話で聞いた悪い魔法少女たちなのだということ。

そして、私はここで彼女たちに殺されるのだということを。

 

 

「さて、お嬢ちゃんには特に恨みはないが、まぁ、生まれる家を間違えたってことで死んでくれや」

「首から下は良いけど、上は呪いで使うんだから傷つけるなよ」

 

 

大きな鎌を持った魔法少女が私の前に立ち、その大鎌を高く振りかぶる。

 

 

もう私は死ぬんだ。

不思議と涙は出なかった。

お母さんの言いつけを守らなかったから、自業自得だ

だけどマサさん達が私のせいでお母さんに血達磨にされるかもしれないと考えると申し訳ない気持ちになった。

私では彼女たちには敵わない。

それでも私を殺そうとする人相手に怯えながら死にたくはない。

その一心で私は必死に恐怖を押し殺しながら大鎌の魔法少女を睨みつけた。

 

「良い目だ、生まれ変わったら来い。部下にしてやるからよ」

 

彼女が嗤いながら大鎌を振り下ろそうとしたところに小さな紙片が数枚飛んできて彼女の体に付いた。

そう見えたときには彼女の上半身と下半身はねじれて穴に吸い込まれるように消えていた。

 

 

その光景に周りの魔法少女たちが誰何の声をあげて辺りを見回す。

 

 

声が聞こえてきた。

 

 

『生者の為に施しを

死者の為に花束を』

 

 

「この文句…まさか…」

そう言った者の首が爆ぜた。

 

 

『正義の為に爪を研ぎ

悪漢共には死の制裁を』

 

 

「い、狗神よ…奴が来たのよ」

その名前を言った者の上半身が消失した。

 

 

『しかして我等聖者の列に加わらん』

 

 

もはや魔法少女達は混乱の極みで、無闇矢鱈と武器らしきものを振り回している人もいる。

「ば・・・化け物・・・」

「探せ!どこかにいるはずだ、探し出せ!」

彼女たちは必死になって声の主を探すが、何処にもその姿は見られない。

だけど着実に一人、また一人と体の各所を消失させて息絶えていく。

そして最後に残った魔法少女たちを包み込むように紙吹雪が舞った。

 

 

『ルーラちゃんとスイムちゃんの名に誓い、全ての不義に鉄槌を』

 

 

そしてその紙吹雪一枚一枚が魔法少女たちを巻き込むように穴を開けて全てを消失させていった。

 

 

たった1分も経たずに悪の魔法少女達は全員死に絶えていた。

 

 

いつの間にか私の前には一人の魔法少女が立っていた。

おとぎ話で聞いた犬の魔法少女が立っていた。

 

 

彼女は魔法少女たちの返り血が私にかからないように、その身で受け止めてくれていた。

その体は全身傷痕だらけで、顔の左半分には焼けただれたような痕があった。

普通ならそんな見た目の人を前にすると悲鳴を上げたりするのだろう。

だけど私にはそれを恐ろしいとは何故か思えなかった。

きっとそれは悪の魔法少女たちとの過酷な戦いの勲章なのだろう。

組員のみんなが傷痕を見せながら、これは誰と戦って付いたとか、これを付けたやつは強かったとかそんな話をしていた。

それを聞いた時は馬鹿じゃないのかなって思っていたけど、今なら分かる。

きっとこの傷こそが彼女の生きてきた道なのだと。

名前を捨てた彼女の人生なのだと。

 

 

「大…丈夫?怪我は…ない?」

彼女は訥々とした口調で聞いてきた。

「大丈夫、です。あの…貴方は…正義の魔法少女さん…ですか」

彼女はその言葉にちょっと驚いた顔をして、

「あたしは…正義の魔法少女なんかじゃないよ………もう正義なんてない」

そして悲しそうに笑った。

 

 

それがなんだか腹立たしく感じて。

「ちがう、あなたは私を助けてくれた!正義の魔法少女だよ!」

そしてその勢いのまま

 

 

「私は…私は貴方みたいな正義の魔法少女になりたかったの!!」

 

 

そう言っていた。

魔法少女なんていないと、つい30分も前にはそう思っていたのに。

 

 

驚いた顔をした彼女はため息を付いて優しく私の頭を撫でてくれた。

「あたしは…あいつらが言っていた狗神なの。復讐に狂った…ただの化け物。あなたはあたしのようにはならないでね」

 

 

その後、家の近くまで送ってくれて、そして彼女は去っていった。

彼女は今もまだ悪の魔法少女と戦っているのだろう。

それがどれだけ過酷で孤独な道なのか私には想像もつかない。

きっと一人で悪の魔法少女を倒すには正義だけでは足りず、狂気へと身を落とさなければならない時もあるのだろう。

だけど、それでも彼女は私にとって真の正義の魔法少女だ。

その日から私の夢は彼女の隣で戦い支えられる、そんな強い正義の魔法少女になることになった。

 

 

ちなみに帰ったらお母さんに血達磨にされたマサさんが土下座姿勢のまま他界しかけていました。

 

 

+++++

 

 

その事件から4年。

高校1年になった私は、未だ魔法少女にはなれていなかった。

どうやってなるのかすら分からない。

物知りの小雪お姉ちゃんに聞いても「なれたら良いね」って笑うだけ。

きっと夢見がちな子だと思われている。

華乃お姉ちゃんやメルヴィルさんは困ったような顔をするだけ。

でも彼女たちは代わりに護身術の訓練をしてくれるようになった。

 

 

そんな夢半ばな高校生活のある日、生徒会選挙立候補の準備をするために遅くまで学校に残っていると、学校裏の林の中に流れ星が落ちてくるのを見た。

いや、本当に流れ星だったら衝撃とかで大惨事になっている。

何かが起きている、そんな予感に誘われて落ちた場所へと向かっていた。

校舎を抜け、林に入り、未だに光を放つその場所へ無我夢中で走った。

 

 

はたしてそこには不思議な光景があった。

一言で言うなら少女アニメに出てくるマスコットキャラクター。

真ん中で黒と白に色分けされた、マスコットキャラクター以外に表現の仕方が分からない謎の生物がそこにいた。

私の他にも同じ学校の生徒が4人駆けつけていた。

何人かは見覚えがある。

彼女たちもその謎の生物を見て戸惑っている。

そしてその謎の生物は私達に話しかけてきた。

 

 

「ファヴだぽん。助けてほしいぽん。実はファヴは悪い魔法少女たちに狙われているぽん」

 

 

悪い魔法少女。

それを聞いて、私はやっとチャンスが来たんだと思った。

 

 

「それって!私、魔法少女になれるの!」

思ったときには口から出ていた。

周りはまだ自体が飲み込めてないようで、私に怪訝な顔を向けている。

 

 

「………そうだぽん。ファヴは魔王に力を封印されて今まで宇宙に飛ばされていたんだけど何とか抜け出せたぽん」

 

 

魔王!きっとおとぎ話にあったあの魔王のこと!

 

 

「その魔王って魔王リップルのことでしょ!やっぱり本当だったんだ」

「魔王って?室田さん一体何言ってるの?」

同級生が貴方頭おかしくなったんじゃないと呆れた声で言ってくる。

 

 

「魔王は魔王よ。昔、この街を襲った悪の魔法少女クラムベリーを生み出した魔王リップルっていうのがいるの。私は正義の魔法少女になって魔王を倒すのが夢なの!」

私は興奮したようにまくし立てた。

いや実際にこれ以上無いほど興奮していた。

 

 

「なんか…どうしてそうなってるのか分からないけど…そうだぽん!その魔王リップルが僕の敵だぽん。そこでこの魔法少女育成キットだぽん。これを使えば魔法少女になれるぽん…なぜか落下した所に落ちてたんだけど、不思議ぽん」

 

 

そしてファヴが取り出した5つのスマホ?が光ったかと思ったら、私たちの姿は一変していた。

 

 

「おめでとうぽん!あなたたちは魔法少女に選ばれたぽん!」

 

 

私を呆れたような目で見ていた彼女はフリフリのロリータファッションの少女になっていた。

他にも全身に目玉が付いている姿の少女、体が炎のようになっている少女、何故か裸に亀甲縛りのように縄を巻きつけている少女。

 

 

そして私の体は犬をモチーフにした魔法少女になっていた。

あの人と同じだ。

私の胸はもう喜びで弾けてしまいそうだった。

 

 

「この魔法少女育成キットは使った後、魔法少女をサポートする魔法端末になるぽん。そこにあなたたちの魔法少女名と魔法が書いてあるぽん。ちゃんと確認するぽん」

 

 

ファヴからスマホみたいな魔法の端末が渡される。

そこに私の名前が書いてあった。

 

『ユスティーツ・フント』

 

ドイツ語で正義の犬。

私はなれるんだ、正義の魔法少女に。あの人と同じ正義の魔法少女になれるんだ。

 

 

この日、私、室田早苗は念願の魔法少女へとなった。

 

 

もう一人の犬が今、走り出した。

 

 

+++++

 

 

その光景を少し離れた木の上で見ている一人の少女がいた。

 

「ふふふ。やっぱり”聞こえて”いたとおり、面白くなってきた」

 




???「喜べ少女。君の願いは、ようやく叶う」


さて誰のセリフでしょう。

なんだかんだ全部アイツのせいです。

続き?それは知らない日本語です。ヤッパリニホンゴムズカシイネー。


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