魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい   作:ちあさ

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超蛇足なアフター番外編です。

捏造たっぷりだし、最終回の余韻も吹っ飛ぶギャグ展開もあります。

なので感動や世界観を壊したくない方はブラウザバックでよろしくです。

ちなみにまだ原作はrestartまでしか読んでません。

一応続きは買ってきたんだけど時間が…。

内容的には感想で読みたいって言われたトップなんとかさんの赤ちゃんの話と、
あとは今まで動向が不明だったメルヴィルさんとの対決です。

ちなみにメルヴィルさんの訛りは再現できませんでしたのであしからず。

ではどうぞ


アフター番外編
白いの様がみてる


───神様が誰も救ってはくれないのなら、

 

 

私が神様に代わって魔法少女を殲滅する───

 

 

 

 

“見つけた…トップスピード…やっと見つけた…”

 

その日、外套で身を隠しながら街を徘徊していたたまは偶然赤ん坊を抱いたトップスピードが空から降りてくるのを見かけた。

先日殺した二人と比べて彼女はいつも箒で移動しているので居場所が掴めない。

なのでこのチャンスを逃すわけにはいかない。

夢中で追いかけるとトップスピードが魔法少女姿のまま喫茶店に入店するのが見えた。

たまは気づかれないように変身を解除して一般人のふりをして喫茶店へと入り、何食わぬ顔で近くの席に座る。

トップスピードは見知らぬお姉さんと同席して歓談していた。

 

“ルーラちゃん達が死んだっていうのに、なんであんなに楽しそうに話せるの”

 

“ルーラちゃんもスイムちゃんも貴方達がいなければ死なないで今でも笑っていられたのに”

 

トップスピードは自分の娘だと、赤ん坊をお姉さんに見せている。

まるで世界には幸福しかないかのようなそんな輝くような笑顔だった。

 

“ルーラちゃん、スイムちゃん、あとミ…ミナ…ユ…エ…エ…えっと………………三つ子ちゃんの恨み、みんなの恨みを今こそ晴らさないと”

 

でも同席しているのは誰だろう?

そんな疑問が浮かんだ。

 

生き残っている魔法少女であんなに年上のお姉さんとか居なかったはず。

シスターとウインタープリズンはもう殺したし…。

だとしたら一般人なのかな?

もしかしたら知らない魔法少女かもしれないけど…。

でも私はあんな街をめちゃくちゃにして一般人を殺してきたあいつらと違う。

私の標的はあくまで魔法少女。

一般人を巻き込むなんてことは絶対しない。

私は自分の幸せのために魔法を使って他者を顧みない、そんなあいつらみたいな非道な魔法少女を根絶やしにするんだ。

だからお姉さん、早くどっかに行ってよ。

 

たまは殺意を押し殺しながらトップスピードが一人になるのを待ち続けていた。

 

そして彼女達の会話を聞いていたら。

 

「結構悩んでいたみたいだけど、その子の名前決まったのか?」

「ああ、早苗って名前にしたんだ」

 

その言葉によってたまの中でルーラとのとある記憶が呼び起こされた。

 

『早苗…さんですか?』

『どうせ私には似合わないって言うんでしょ。分かっているわよそんなこと』

 

それはルーラちゃんの名前。

連絡ってどうする?って話になった時にルーラちゃんが条件反射で差し出してしまった携帯を私も反射的に出してしまって、お互いの本名が交換されてしまったときの会話。

マジカルフォンでお互い連絡できるのにルーラちゃんって時々抜けてるから。

確か私はあの時こう答えたんだ。

 

『ううん、優しい響きでルーラちゃんらしいって感じがします』

そう言ったら

『優しさなんてリーダーたる私には不必要なものよ!』

そんな風に怒っていたけど、でもその時のルーラちゃんの口はちょっとだけ嬉しそうに笑んでいたのを覚えている。

 

そんなルーラちゃんの名前…。

 

「小雪がこの名前が良いんじゃないかって教えてくれてさ。あんなことがあったから、この子には散っていった子たちの想いを受け継いで大地に根ざしてほしいって。私だったら学がないからこんな良い名前思いつかなかったよ」

 

“ルーラちゃんやスイムちゃんや…えっと…他の人たちの想いを…”

 

それを聞いて私のやろうとしていることは間違っているんじゃないかって。

一瞬そんなことが頭を過ぎったけど。

すでに賽は投げられている。

もう後には引けないんだ。

でも…

 

たまは静かに席を立ち、店を出て行く。

振り返ると喫茶店の窓から赤ん坊を抱くトップスピードの優しい顔が見えた。

 

“トップスピードさん、あなたはまだ見逃してあげます。その子が巣立つまでは…”

 

たまはそっとその場を後にした。

 

 

+++++

 

喫茶店の向かいのビル屋上で去っていくたまを見送るスノーホワイト。

 

「私もあなたをまだ見逃してあげます。だからもっともっと楽しい”声”で満たされる世界にしてくださいね」

 

陶然とした笑みを浮かべて呟き、そしてリップル達が待つ喫茶店へと入っていった。

 

+++++

 

約束の時間を30分も遅れて白いのが喫茶店へと入ってきた。

 

「小雪ぃ遅刻だぞ」

 

トップなんとかさんは早速白いのに絡みだした。

 

「ごめんね、ちょっと野暮用を片付けてて。えっと、その子が?」

「ああ、小雪が考えてくれた早苗にしたんだ」

それを聞いて白いのが何か面白そうに笑う。

「ふふ、感謝してくださいね、トップスピードさん」

「ん?ああ、良い名前だからな。感謝してるぜ」

 

確かに中は真っ黒の白いのが考えた割にはまっとうな由来の名前だ、だが…

 

「僕も名前考えてやったのにな、ともえとかマミとかクラッシャー伊東とか」

「いやそれはないっす姉さん。なんだかそれボッチだったり早死しそうな感じがするし、そもそもクラッシャーって何?伊東って?」

 

良い名前じゃないか、クラッシャーって強そうじゃね?

 

「リップルさんに名前を考えてもらうこと自体が間違ってますよねー」

「姉さん、センス無いからなぁ」

 

失敬な。僕のハイセンスを理解できないなんて、なんて残念な奴らなんだ。

 

トップなんとかさんは僕が年上だと分かってから姉さんと呼ぶようになった。

組員みたいにアネさんと呼ばないだけマシだが、それでも男性人格の僕からすれば不本意である。

 

「それにしても、やっぱりこの格好は落ち着かないよ、変身解除なんて何ヶ月ぶりだっけ」

「姉さんのその姿ってレアだよな」

 

そう、今僕は変身を解除している。

娘と和解した後、恐る恐る解除したのだが狂ったりせずに戻ることができた。

だが年頃の娘の姿ならなんとか慣れていたが、それがいきなりおばさんとかハードル高すぎる。

それになんか組員の目が怪しいんだよな、やたらとジロジロ見るし。

きっと何このババア、キモイんだよとか思っているのだろう、泣きたい。

 

「いやさ、白いのがどうしてもこの姿で来てくれって。じゃないと夕飯抜きとかいうんだぜ。まったく、こんなおばさんと喫茶店とか誰得だよ」

「いやいや姉さん、何言ってるですか?めちゃくちゃキレーじゃないですか。これで18の娘がいるとか詐欺ですよ」

「それに確かまだ34歳ですよね、おばさんなんて年齢じゃないと思いますけど」

そう、確かに15の時にレイプされて華乃を産んだから、まだそんなに歳は行ってないんだっけ、そこら辺はあんまり思い出せないんだよな。

でも美人とかはないだろ、お肌ケアとか化粧とかそんなのやったことねーぞ、少なくとも僕になってからは。

 

「リップルさん、そんなに嫌なら、もう”聞こえなく”なったから変身していいですよ、感謝してくださいね」

「いや意味分からないから」

 

白いのがまたニヤニヤしてる。

こいつがニヤついてるときは大抵何かあるんだよな、くわばらくわばら。

 

「話は変わるけどさ、華乃達はやっぱりこれなかったんだな」

「ああ、車椅子からの依頼で青い子と黒いのの3人で、えっと、み・・・みたき・・見滝なんとかってところに調査に行ってる。なんでも魔法の国製じゃない野生の魔法少女が集まっているらしくてな」

 

魔法の国ができる前から存在している自然発生した魔法少女がいるらしい。

魔法の国のシステムで補助されてないから大した力は無いって聞いてはいるけど、魔法の国を作ったのは野生の魔法少女だって眉唾の伝承もあるぐらいだし、正直どんなのか想像付かない。

それに今回のそいつらは結構手練らしく、魔法の国が送り込んだ魔法少女一個小隊が未帰還になっているとか。

車椅子女はそいつらをなんとか取り込んで独立勢力を作るって息巻いていた。

 

本当は行かせたくなかったんだが、最近華乃に対して過保護すぎるって周りから言われて泣く泣く見守ることにした。

 

確かにあの子はちょっと直情的なところがあって危なっかしいんだけど、何かあれば青い子と黒いのが首に縄つけてでも引っ張って帰ってくるって言ってくれたし信じてるぞ。

でも何かあってみろ、タンクローリー1000台飛ばしてやる。火の海で戦争だ。

 

「大丈夫ですよ、今も到着早々に楽しそうな”声”が聞こえてますし、それに”本当”に危ない時は私が”調整”しますから」

そう言って口を吊り上げる白いの。

 

いやマジで怖いよお前。

絶対被害が大きくなるまで放置する気だろう?

こいつなら一人で行ってもすぐに解決できるんだろうけどなぁ。

 

「それに…このまま行けば…あぁ”聞こ”える!いっぱい、いっぱい”聞こ”えてくるよ!…ハァハァ………んんっ…ちょっとトイレに行ってきますね」

 

そう言ってのぼせた顔に蕩けるような笑みを浮かべた白いのは、下腹部を抑えながら本来魔法少女には必要のないトイレへと小走りに向かっていった。

 

駄目だこいつ、早くなんとかしないと。

 

僕とトップなんとかさんの心はその時確かに一つになっていた。

 

 

 

 

++++++++++++++++++++

 

おまけ。

【メルヴィル様もみてる】

 

 

“今回の候補者はちょっと手強い”

“一人異常なやつがいる。もしかしたら手を借りるかもしれない”

 

 

それがクラムベリーからの最後の連絡になった。

 

 

その後、クラムベリーは管理者権限を凍結され連絡が取れなくなってしまい、N市へと駆けつけたときには全てが終わっていた。

 

 

“世界が堕ちてきた日”

 

 

その日はそう呼ばれている。

突然飛んでいる物は落とされ、または吹き飛ばされたり跳ね上げられたりと、そんな現象が世界同時に起こった。

 

 

それを起こしたのがクラムベリーが言っていた”異常な魔法少女”らしい。

 

 

らしいとした理由は、その日、その災害で宇宙ステーションが重力に引かれて落下、魔法の国日本支部データセンターに直撃して消滅させたことに起因する。

その結果、当時見習いだった魔法少女のデータや試験のデータベースが一切消失してしまったのだ。

折しも魔法の国へのデータバックアップがある前日の事だったらしい。

 

 

その影響は多岐にわたり、また災害で見習いたちを導いていた管理者権限の魔法少女も何人も亡くなってしまい、何処にどんな見習い魔法少女がいたのかすら分からなくなったため、一旦全員を正規魔法少女へと繰り上げとした。

そして自己申告で魔法の国へ固有魔法の詳細登録をするように通達したが、未だに申告しない未登録魔法少女も多い。

そして申告はするが、実演の際にわざと力を抑えて能力を過少報告するものなどが多数出てくることになった。

 

 

なのでクラムベリーの試験の結果や魔法少女のデータは参加した魔法少女達の自己申告と当時音楽家討伐に派遣されていた魔法少女部隊の唯一の生き残りであるラピス・ラズリーヌの証言だけであった。

 

 

生き残った魔法少女はリップル、鉄腕少女、スノーホワイト、トップスピード、ハードゴア・アリス、キマシタワーの6人。

いや、キマシタワーは確か2人で1人の魔法少女だから7人か。

クラムベリーはその中のリップルが最後に放った大規模魔法によって倒された。

そして大規模魔法の余波で地球が揺れ、あらゆる航空機が墜落し、人工衛星や宇宙ステーションが地上へと降り注ぎ、世界中で数千万人もの被害者を出す大惨事へと繋がった。

 

 

そのリップルの魔法は”包丁を狙った所に当てる”という平凡な魔法だが、彼女には封印された人格が存在し、クラムベリーとの戦いでその封印が解け、その人格の固有魔法が放たれたのだとか。

今はその人格は再封印が施されて眠りに付いていると報告されている。

だが封印されたその人格の力は凄まじく、今でも本体に害が及ぼうとすると一部力が漏れ出して、実際に彼女を危険視して殺そうと襲いかかった魔法少女たちをその力で宇宙の果てまで弾き飛ばしている。

今や彼女は庇護者であるプフレの働きもあって、魔法の国ではアンタッチャブルな存在になっている。

だが…。

 

 

おれはクラムベリーを超える。

だから奴が本当にクラムベリーより強いのならそれを打ち倒すのみ。

 

 

リップルが住処としている鉄腕組のビルへ、そして魔法で体を透明にして開いている窓から組事務所へと入り込んだ。

 

 

メルヴィルの魔法は触れたものの色を自在に変えられる魔法だ。

これによって自分の体を見えないように偽装することも可能である。

そしてその隠蔽能力と持ち前の戦闘能力でクラムベリーからも認められる力を誇っている。

その能力によって誰にも気づかれることなく組事務所に入ることができた。

 

 

リップルがいた。

窓から入った場所はちょうどリップルが座る席の後ろだった。

聞いていたとおりの軍服姿。

だが彼女はだらしなく机にもたれかかりながら座って何かを弄っている。

その姿はスキだらけで到底クラムベリーを倒した猛者には見えなかった。

周りには組員もいるが、所詮は一般人。物の数には入らない。

 

 

見た目で実力がわからないなら。

ならば一当てして見るのみ。

それで死ぬならばその程度の存在だったってことだ。

 

 

そっと背後から近寄ろうとしたときだった。

 

 

「貴様っ見ているな!!!!」

 

 

リップルがいきなり立ち上がり、首をこちらへ向けそう叫んだ。

事前に気付いた素振りも、気付かれるようなヘマもしていない。

なのに何故?

そんな疑問で一瞬体が凍りついた。

 

 

「ふふふ・・・ふははははは!!貴様のようなエルフ風情が、この我を出し抜こうなんぞ100年早いわうつけ者が!」

 

 

そしてリップルはまっすぐと私の顔を指差してきて恫喝してきた。

 

 

更に彼女は左目を抑え、地の底から聞こえてくるようなおぞましい声で語りかけてきた。

 

 

「ぐふう…まだだ、まだお前が出てくるような”刻”ではない。静まれぇい、我が半身よ…。貴様も命が惜しければ封印されし魔人が開放される前に疾く去るが良い。貴様ごとき虫けらを殺しても何の誉れにもなりはしないわ、未熟者が」

 

 

その言葉におれは恥ずかしさに顔が真っ赤になり一目散に逃げ去った。

 

 

おれは馬鹿だ。おれは強くなったと勘違いして、ただただ魔法の力だけに頼っていた大馬鹿者だ。

しかも奴はそんな薄っぺらい魔法なんて簡単に見透かしていた。

驕っていたのはおれの方だった。

 

 

完敗だ。

あの方とおれは器そのものが違う。

こうなったら修練のやり直しだ。

一から鍛えなおして、恥ずかしくないおれになって、そしてあの方に仕えよう。

山ごもりだ。

 

 

そしてメルヴィルは山の奥深くへと帰っていった。

 

 

+++++

 

 

「アネさん、なんすかいきなり?」

 

 

怪訝な顔をした組員が問いかけてきた。

全力でやりきった僕は今更ながら恥ずかしくなった。

 

 

「いやさ、白いのがいきなり今すぐ『DI○様のモノマネとその後にファンタジー系中二病な魔王さまの即興劇』をやってくれってメールが来てだな」

 

 

それで考える限りの全力をつくしてみたんだが、今更考えると何を馬鹿なことをやってるんだろう。

 

 

「そもそも、小雪様って見滝なんとかってところへ人命救助に行ってるのに見れるわけないじゃないっすか」

 

 

まぁそうなんだけどね…一体何だったんだ?

 

 

“貴方のハートにピロリンパ~”

 

 

おっと早速白いのからメールだ、なになに?

 

 

『お疲れ様です。もう聞こえないんで大丈夫ですよ。感謝してくださいね』

 

 

何が!?

今日もそんな何事もなく平穏な一日でした。

 




白いのさんは本当にいい仕事します。

もし何か思いついたらまた書きますね。

ではでは。

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