魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい 作:ちあさ
夜空を赤く染め上げる燃えあがる炎。
そこに突き立つタンクローリーはさながら絡みたいさんの墓標のよう。
それを見つめていると戦いの興奮が冷めてきて、今回も無事に切り抜けれたという安堵感と共に、呵責じみた思いも湧いてくる。
たしかに彼女は唾棄するほど不快な存在だった。
だがそれはどこか同族嫌悪のような感情があったのではないか。
初めて会った時に感じた感覚。
かけられた彼女の声は、どこか人生に対して興味を失ったような投げやりな響きがあった。
確かに彼女は義父のような暴虐性を感じたが、それと同時にその声から感じた彼女の在り方はありえたかもしれないもう一人の自分の姿のようにも思えて堪らなく嫌になった。
その思いは後で彼女について調べるにつれてどんどんと募っていった。
それと同時に僕もまた、彼女と同じく家族を苦しめ、そして捨ててきた存在なのではないかという想いも。
だが僕のそれを認めたくない想いが、彼女への苛烈なまでの攻撃衝動となって現れたのではないか。
しょせんは仮初めの人格であり、魔法少女になるまでの記憶すらも曖昧な僕にはそれを否定することはできない。
しかしだからこそ、彼女とは決着を付けなければ失った過去を取り戻すことはできないとも感じていた。
結局、僕は彼女と何も変わらないのではないのだろうか。
これではタダの八つ当たりだな。
未だ燃え続ける炎の前で佇むそんな僕の元にトップなんとかさんが戻ってきて、警察が来る前に連れ出してくれた。
そういえば、ここ最近は魔法少女関連の戦いの余波で街中大荒れだな。
市長と警察と保険会社の胃に穴が開く前に終われば良いのだが。
僕達が飛び立つのと入れ違いに警察と消防が駆けつけたらしく、今日もTVのニュースは大騒ぎです。
現場には絡みたいさんが使っていた銃火器や僕の刃物類が散乱しているだろうし、彼女や双子の死体なども放置したままだから話題性抜群だろう。
そういえば魔法少女って指紋とかどうなっているのだろう。
僕の衣装は手袋しているから良いけど、素手の魔法少女とかの場合、指紋採取とかされちゃうのかな。
それはそうと、今回の撃墜マーク書いておかないとな。
えっとまずは双子の片割れーって、あれ?そういえばあいつって名前どっちだっけ。
まぁもう片方も僕がはめ殺したようなものだから二人の名前書いておけばいいか。
あとは絡みたいさんの名前を書き加えて。
合計5人分の名前がケダモノの槍に書かれていることになった。
ゲーム風に言うならこうかな。
名前:ケダモノの槍+5
説明:魔法少女の恨みを募らせた呪いの槍。
魔法少女を殺して名前を書き込む毎に殺した相手の怨念が宿り、
他の魔法少女を道連れにしようという呪いにより、攻撃力が強化される。
ただし魔法は尻から出る。
っていうか尻ってなんだよ。
でも今回の魔法少女全員倒せば強化値+15とかになって、ネットゲームとかだと超強そうだな。
やっぱりなんだか不気味さが上がったようだし、だんだんと魔槍化している気がする。
ちなみにトップなんとかさん、そんなに可哀想な子を見るような目で見ないでよ。
これは水着さんがやり始めたことだし、彼女の意思を勝手に受け継いだ気になっている僕としてはやり遂げないといけないことなんだよ、たぶん。
そういえば四次元袋回収し忘れたけど、流石に燃えているのではなかろうか。
残っていたとしても焼け跡から証拠品として警察が押収しているだろう。
能力的に残念だが諦めよう。
さて、今日はもう疲れたし休もうかな。
だが僕は大事なことを忘れていた。
今回のような騒ぎの中、トラブルを見たら30匹は出てきそうな白いのが現れなかった訳を。
トップなんとかさんも帰って、一人で魔法少女物のアニメを視聴していたとき、いきなり兎の足が現れ、僕の中へと思考が流れ込んできた。
“誰かたすけて!このままだとあの娘が死んじゃう”
そして脳裏に浮かんだ光景は、ボロボロになった白いのと、彼女の前で森の妖精さんに立ち向かう血塗れの黒髪の少女の姿とそばに転がる血に濡れた兎のぬいぐるみ―――
それを見た僕はもう何も考えられなくなり絶叫をあげて窓から飛び出し、路駐してあった車の上に飛び乗り、脳裏に浮かんだ場所へと魔法を発動していた。
前半部分は前回のラストにつけるべきなのかもしれなかったんですが、
鬱々としたラストよりスカッとしたところで終わらせたほうがいいかなって思って別けました。
あと兎の足の効果が現れるところってこんなんでもいいですよね?
もし違っても捏造設定ということで勘弁。
あとラストは桃○白先生に敬意を示しました。