魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい 作:ちあさ
もう、―――――なんていらない。
―――――なんていらない。
わたしなんていらない。
んん…
窓から差し込む強い日差しで目が覚める。
なんか夢を見ていた気がする。
内容は思い出せないが何故か悲しい気持ちが溢れて自然と涙が流れてくる。
最悪の目覚めだな。
昨夜の事がそんなに堪えているのだろうか。
昨夜、妖怪水着女を殺ったあと、タンクローリー3台の火力は思いの外高くて水着宅の周辺一帯を火の海に変えてしまった。
流石の僕もちょっとやり過ぎたと反省しおっとりがたなで救助に向かったのだが。
たった300mの所にいた僕が駆けつけるよりも先に白いのがどんどん助けていっているのはある意味ホラーな光景だった。
早い、早すぎるよ。
やっぱり未来予知なのん、ニュータイプ系魔法少女なのん?
それともタイムリープでもしてきたのん?
私の戦場はここじゃない方なのかそれとも鳳凰院的な方なのか。
ニュータイプでも未来星人でもヤバイ魔法を持っているのには変わりないだろう。
折角マッチポンプでキャンディボーナスタイムに突入だとちょっと張り切ってたのに、白いのが中にTASさんでも入っているんじゃないのかっていうぐらいに無駄のない動きで的確に救助者を見つけていくので、結局数人しか助けられず大損だよ。
タンクローリーって高いんだぞ。
しょうがないので消火活動も手伝って少しでもキャンディ稼ぎをしていたら、白いのが何故かキラキラとした目で僕を見つめていた。
何やら盛大な勘違いが彼女の中で生まれている気がする。
百合とかキマシタワーだけでもうお腹いっぱいです。
それに白いのみたいにセーラー服のロリっ娘アバターとか使っているのって絶対中身おっさんに違いない。
ネットゲーで女性キャラオンリーギルドのオフ会とか行ってみ?大抵地獄絵図だから。
とりあえずせっかく会えたのでナイト様の最後の勇姿を収めた僕渾身の編集を施したVHSを渡したら、この箱ってなんですかとか言われた。
冗談かと思ったらマジでVHSを知らないらしい。
普通テレビやビデオはどの家庭でもあると思うのだが…。
断捨離サバイバル系家庭なのかと思ったらテレビはあるらしい。
しょうがないのでTU○YAで再生機器レンタルしてこいってメモを渡しておいた。
昨夜の収穫としてはキャンディ数百個と焼け跡から見つかった傷一つない魔法の槍。
水着と一緒にタンクローリーが直撃していたし、大爆発後の大炎上で回収は無理かなと諦めていたのだが、どうしてなかなかに頑丈じゃないか。
それにしても・・・
どうして女王様の名前が書いてある?
もしかしてあれか、撃墜マークなのか?
やべーよ、水着さんマジやべー。
こりゃ早めに殺っておいてよかった。
ヘタに躊躇っていたらここに僕の名前も書かれることになっていたかもしれない。
しかも撃墜マークが印とかマークとかじゃなく、殺した相手の名前を書いていくスタイルなのが余計怖い。
つまりお前のことを念入りに下調べして殺してやるぞってことでしょ、どんだけ怨念籠めているんだよ。
これ、このまま殺した魔法少女の名前を書き続けていたら、どんどん怨念的な信仰心みたいのが溜まっていって、将来は魔法少女に致命的な威力を誇る概念武装とかになったりするかもしれない。
試しに僕も水着女の名前を書いておいた。
うん、不気味さがちょっと上がった気がする。
よし、この槍をケダモノの槍と命名しよう。
ちょうど僕は黒髪ロングなので持ち主的にピッタリだな。
照り焼きバーガー好きの相棒はいないけど代わりに配下の組員たちはいる。
よしお前ら、練習しておいたキメ台詞を言ってみろ。
さぁ始まるザマスよ、いくでガンス、フンガーと棒読みで返す愉快な組員達。
なんかその色々と諦めたような達観した目が雰囲気あってステキだね。
後はいつアニメ化されても良いようにキレッキレのEDダンスを練習するぞ。
プリティでキュアキュアな魔法少女と三人の厳ついマスコットで覇権を取るのだ。
デイリーだかヤマザキだか忘れたが、そんな惣菜パンみたいな名前のビームだけが取り柄な魔法少女なんてもうオワコンだ。
これからはあなたのハートを愛のタンクローリーで撃ち抜いちゃうぞ的なハードでキャッチな魔法少女の時代ですよ。
これで将来は左団扇な印税生活確定ですわ。
ガハハ、勝ったな。
妖怪水着女を無傷で倒せた僕のテンションはとどまることを知らなかった。
何かから必死に目を背けるように。
ちょっと鬱っぽい回が続いていたのでギャグ回です。
ええ、全くストーリー進んでいませんよ、しかもやっぱり短いし。
でもプロット的には折り返し地点のはず。
挫けずに頑張ります。