魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい   作:ちあさ

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魔法少女は実感しました

投げるというのは結果ではなく行為であり、能動的な意思の発露である。

そして僕の魔法は投げる物が標的へと正確に向かっていくと言うもので、

結果として飛んだ物に魔法の効果が発揮されるわけではなく、投げるという意思によって初めて魔法の効果が発揮される。

 

 

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モバイルノートに映し出された彼女の寝顔は本当に汚れを知らないただの小学生だ。

後生大事に槍を抱いて眠っているので多少物騒ではあるが。

 

 

本来なら彼女のような子供がこんな争いに巻き込まれるのは間違っていると思う。

だが彼女は殺しを覚えてしまった。

もうどうしようもないぐらいに道を踏み外してしまったのだ。

 

 

大人になってから人を殺すのと何も知らない子供が人を殺すのではその意味は全く異なってくる。

八方手を尽くし他には何処にも道を見いだせなくなり苦悩の末に人を殺す人間は将来に渡ってその罪の重さを背負っていく。

だが殺しという意味も理解していない無垢な子供が、本来持ち得ない力を持ってしまい人を容易く殺せてしまうようになると、

邪魔な人は殺して排除するという手段がその子供の中の当たり前になってしまう。

本来なら成長するにつれ他者と衝突し、自分の力の無さにより痛みを味わい、どのようにすれば上手く付き合っていけるのかを身に着けていく。

その過程をふっ飛ばして人を容易にねじ伏せれる力を手に入れ、殺すと行為に疑問を持たず誰にもそれを止められない彼女の行き着く先は化け物と呼ばれるそれだ。

絡みたいさんなんて鼻で笑えるぐらいどうしようもない無垢なる化け物。

そんな彼女が一番美しい今、どうしようもない化け物に落ちきる前に殺してやるのが大人の勤めと言うものだろう。

彼女の母親には子殺しなどという物をさせるのは忍びない。

僕のような人でなしこそがその役に相応しいだろう。

 

 

ここから彼女の家まで300メートルほど。

万が一直前で気づかれた場合を考え3台のタンクローリーを用意した。

魔法で1台目の直撃を免れたとしても2台目、3台目と着弾して大爆発を引き起こす。

もし爆風をも透過させられたとしてもその後には急激な酸欠が襲いかかることになる。

そして今まで彼女が透明になったことがないことから推測するなら光や熱などの波長は透過できないはずだ。

爆風に熱と酸欠で二重三重とチェックメイトだよ。

 

 

最後に僕は死に行く彼女にしばし黙祷を捧げ、タンクローリーへと手を添える。

手で触れることで投げることができるので、これもまた僕の魔法の制約なのかな。

 

 

彼女の顔を視て、彼女の存在する場所を認知し、タンクローリーを押し出しながら自分はこれをそこに投げるのだと強く思う。

そして魔法はその意思を感じ取り、一ミリも動かせなかったその車体を空へと、そして彼女へと向かって飛ばしていく。

2台目、3台目と飛ばしていく。

その間、片時も彼女から目を逸らさず、モニターへ映る彼女が無残にも車体に押しつぶされる様を見て、そして遠くから大爆発の音を聞き、僕は彼女を殺したのだと実感した。

これでもう戻れない。

こんな手ではもう  を抱いてやることはできない。

ふいに頭に浮かんだ言葉を振り払う。

何を考えているんだ、もうも何も僕には最初から何もないじゃないか。

僕はとっくにいらない人間なんだから。

 

 

ただやっぱり気持ちいいものではないな。

今度はもっとスッキリするやつを殺したいものだ。

 




あぁまた短い。

そしてさようなら水着。

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