こんな篠ノ之箒ちゃんはいかがですか? 作:妖精絶対許さんマン
「・・・・・・・・・・」
私は夫から貸してもらった(押し付けられたとも言う)教科書を前に固まっている。
(借り受けた物なのだから返すのは当然だ・・・・・・だが、何て言って返せば良いんだ?普通に「ありがとう」って言えば良いのだろうか?)
夫は教科書を私に貸したまま何処かに行ってしまった。何も言わないで机に置いておくのは礼儀に欠ける。
(やはり本人が戻ってから返すのが筋か・・・・・・)
私は教科書を机の中にしまい、下足室前にある自動販売機に向かう。とは言っても自動販売機にはたいしたものは置いていない。お茶と水、スポーツドリンクに申し訳程度のジュースだけだ。
「・・・・・・・・・」
私はお茶と水で悩んだが結局はお茶にした。買ったお茶は緑茶で少し苦い。だが、昔から私は緑茶が好きだったから苦にはならなかった。
「あれ、篠原さん・・・・・・だったよね?」
財布をブレザーの内ポケットにしまい、ペットボトルの蓋を開けようとしていたら後ろから名前を呼ばれた。静寐が財布を片手に立っていた。立花が喧嘩できる女友達なら、静寐は相談事が出来る女友達だ。
「この学校、自販機置いてくれるのはいいんだけど種類が少ないんだよねー」
静寐は愚痴のようなことを言いながら自販機に小銭を入れ、数少ない炭酸飲料を買った。
「それにしても意外だなー」
「・・・・・・・・・・何がだ」
「篠原さんって自販機で飲み物とか買うイメージがしないから」
「私とて喉が渇けば自販機で飲み物ぐらい買う」
確かに自販機のお茶より家で淹れたお茶の方が好きだが、自販機のお茶も味は悪くないので嫌いではない。
「あはは、確かにそうだよね」
静寐は笑いながらペットボトルのキャップを開ける。
「んー、苦い!でも、癖になる味なんだよねー」
静寐は苦い苦いと言いながらもジュースを飲んでいる。
「・・・・・・一つ教えてほしいことがある」
「何を教えてほしいの?あ、私のスリーサイズは秘密だからね」
静寐は出会った当初から冗談をよく口にしていた。
「・・・・・・そんなものには興味は無い。私が聞きたいのは、なぜアイツが私に構うのかだ」
「アイツって・・・・・・佑樹君のこと?」
私は頷く。
「佑樹君かー。私は佑樹君とは中学に上がってから一緒に行動するようになったからよく知らないけど、佑樹君は世話好きなところがあるから。あ、もしかしたら一目惚れだったりして?」
このときは内心で冗談だと思っていたが、結婚してから夫に聞いてみたらあながち間違いではなかった。
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「んっ・・・・・・あ、れ?」
少し視界がぼやけている中、私はベッドの脇に置いてある机の上の時計を見る。時刻は深夜一時半。隣を見ると夫の背中があった。
「むっ・・・・・・」
私は一度ベッドから出て、夫が向いている方に回り込む。掛け布団を捲ると一人分のスペースが空いていたので寝転ぶ。
「・・・・・・・・・・」
夫の顔を至近距離で見つめながら頬に触れる。今でも私が見ている
「佑樹・・・・・・愛してる」
私は寝ている夫の頭を胸に抱え込み、抱き締めながら目を閉じる。夫の体温、夫の呼吸、夫の鼓動、夫の匂い、全てを感じながら眠ることで私はちゃんと
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「篠原さん・・・・・・ちょっといい?」
放課後。夫は複雑そうな顔をして声をかけてきた。
「ここじゃなんだから・・・・・・ついてきて」
夫は辺りを一度見回して、鞄を持って教室から出ていった。本意ではないが、仕方なく夫のあとについて行く。夫を見失わないようにしながらついていくと屋上に出た。
「・・・・・・いったい何の用だ?」
私も夫に用事があるのに、冷たい口調になってしまう。
「これ・・・・・・篠原さんの教科書だよね?」
夫は鞄からぼろぼろの教科書を取り出して渡してきた。私は教科書を受け取り、裏表紙を見る。名前を記入する欄に私の今の偽名が書いてあった。
「・・・・・・校舎裏のゴミ捨て場に捨ててあったんだ。篠原さんが捨てた・・・・・・わけじゃないよね?」
夫も薄々はわかっていたんだろう。私に苛めの矛先が向き始めていることに。私としてはまた転校することになるのだから、苛めの矛先が向こうが気にしていなかった。
「・・・・・・教科書を見つけてくれたのには感謝する。だが、これ以上私に関わるな」
私は夫に教科書を押し付けて、私は屋上をあとにする。この時の私は余りにも人の悪意に敏感になりすぎていて、他人と関わるのが怖くて、本当は寂しいのに人を遠ざけ続けていた。
・箒ちゃん2
中学生時代の箒ちゃんは気丈に見えて内心は脆い。友達が欲しいけど、作れない。誰かと食事を一緒にしたいけどできない。現在は旦那さんにデレデレ。基本的に寝るときは同じベッド、お風呂も旦那さんが入っていると稀に入ってくる。