こんな篠ノ之箒ちゃんはいかがですか?   作:妖精絶対許さんマン

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遅くなってすいません。進撃の巨人とこのすば!にはまってました。


篠ノ之箒、昔夫を怒鳴りました。

夫を怒鳴った次の日。前日と同じように学校に通い、教室に入った。夫はまだ登校していなかった。

 

「・・・・・・・・・・」

 

席に座り、窓の外を見る。別に空が好きだからとかではない。クラスの生徒と関わりたくないだけだ。

 

「あ、おはよう、篠原さん」

 

「・・・・・・・・・・ああ」

 

一応は返事をした。昔から母に挨拶は大事だと言われてきた。いくら不満がある相手とはいえ、挨拶は疎かにできない。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・?」

 

昨日までの夫なら朝の時点で話しかけてきた。なのに今日は話しかけてこない。何となく気になった私は夫の席の方を横目で見てみた。

 

「えっと・・・・・・この問題がこの方程式だから・・・・・・」

 

夫は机にプリントと数学の教科書を広げて問題を解いていた。プリントは三日前に教師から配られた物だ。

 

「・・・・・・あれ?この方程式じゃない?」

 

確かに違う。夫が開けているページより二ページ後ろのページに方程式が載っている。

 

「・・・・・・・・・・貸してみろ」

 

私は夫から教科書をひったくりページを捲り、夫に返す。夫は驚いたような顔をしていた。

 

「・・・・・・・・・・何だ、その顔は」

 

「いや、篠原さんの方から話しかけてくれたのって初めてだなって思って・・・・・・」

 

・・・・・・何故か負けた気がした。別に競いあってた訳ではないが、何故か負けた気がした。

 

「その、また分からないところがあったら教えてもらっていい?」

 

「・・・・・・・・・・気が向いたらな」

 

半ば軟禁状態だった私が出来たことなど勉強と『彼』との唯一の繋がりだった竹刀の素振りぐらいだった。自ずと勉強が出来るようになっていた。

 

「ありがとう、篠原さん」

 

夫はそういってプリントに向き合った。どうやら分からなかったのは私が開いたページだけだったようだ。そのあとは順調に進んだのか、HRが始まる前に終わっていた。

 

「篠原さん」

 

一時間目が終わり、夫が話しかけてきた。昨日怒鳴ってしまった手前、反応しずらい。

 

「・・・・・・なんだ?」

 

「これ。勉強教えてもらったお礼」

 

夫は机に缶コーヒーを置いた。

 

「また、勉強教えてね」

 

夫はそういって教室から出ていった。教室の外には五人の男女がいた。夫は五人の輪に入ると楽しそうに話していた。

 

(・・・・・・・・・・)

 

私は楽しそうに話している夫を見て、羨ましく感じた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「五人って静寐ちゃん達のこと?」

 

「こーら。静寐ちゃんじゃなくて静寐さんでしょ?」

 

「えー、静寐ちゃんが良いって言ったんだよ?」

 

静寐ちゃん。中学、高校と同じだった同級生、鷹月静寐のことだ。今でも親交がある私の数少ない友人の一人だ。唯は静寐にとてもなついている。静寐も静寐で唯のことを可愛がってくれている。静寐も結婚して子持ちだ。

 

「ママ。明日だよね、静寐ちゃん達と遊ぶのって?」

 

「ええ。明日は早めに家を出るから今日は早めに寝ないとね」

 

「うん。静君元気かなー」

 

静君とは静寐が産んだ子供だ。静君は唯の一つ下で唯は静君のことを弟みたいに可愛がっている。・・・・・・唯も大きくなったし、そろそろもう一人産んでも良いかも。出来れば男の子。夫が帰ってきたら相談しよう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「佑樹ー!帰ろうぜー!」

 

その日の授業が全て終わり、HRも終わると教室の扉が勢いよく開いて学ランを着崩した男子が入ってきた。朝に夫と話していた五人の内の一人だ。男子の後ろから残りの四人も入ってきた。

 

「恭介。声が大きい」

 

「別に良いだろ?授業はとっくに終わってんだ!放課後は俺たち子供の時間だぜ!」

 

恭介と呼ばれた男子を茶髪の女子が注意した。今思えばこの二人が結婚したのも納得できる。何だかんだで学生時代から仲が良かった。

 

「お!そいつが前に転校してきたって奴か!」

 

男子生徒は私の存在に気がつくと近寄ってきた。

 

「そうだよ。篠原さん、こいつは三笠恭介。隣の二組の生徒で俺の幼馴染みなんだ」

 

「よろしくな!」

 

三笠恭介。私が夫と和解というか、打ち解けてから一緒に行動していたグループのリーダー的存在だった。恭介が遊びの予定や内容を決めていた。私と夫を合わせた七人で海水浴や山登りによく行っていた。

 

「で、恭介に注意してたのが小鳥遊立花。立花も俺と恭介の幼馴染みなんだ」

 

「よろしく」

 

小鳥遊立花。夫や恭介とは幼馴染みで、私に出来た初めての喧嘩できる女友達だ。常に冷静で飾らない性格で、恭介のツッコミ役だった。私が夫への恋愛感情に気がついてからは一番警戒していた相手でもある。・・・・・・私の思い過ごしだったが。

 

「後ろの三人が鷹月静寐、斎藤当麻、斎藤和樹。三人は去年からの付き合いなんだ」

 

「ねえ、私たちの紹介だけ適当じゃなかった?」

 

「・・・・・・佑樹だし」

 

「佑樹だもんな」

 

静寐は言わずもながら、当麻と和樹は双子で見分けるには死んだ魚のような目をしているのが当麻、目付きが鋭いのが和樹だ。

 

「よし!篠原だったな!お前も一緒に帰らないか!?」

 

「結構だ。私は一人で帰る」

 

「えぇー!何でだよ!?お前、佑樹の友達だろ!?」

 

当時の私は恭介の言葉に腹を立てた覚えがある。

 

「私はそいつと友人などではない!!勝手に決めるな!!」

 

夫には本当に悪いことをしたと思っている。当時の私に会えるなら本気で怒鳴りたい。

 

「・・・・・・あっそ。なら、好きにすれば?行きましょう」

 

今も立花のあの顔は忘れられない。人間があんなに冷たい表情を出来るということをその時初めて知った。

 

「あっ!待てよ、立花!じゃあな、篠原!」

 

恭介は先に教室を出ていった立花を追いかけていった。静寐達三人も苦笑しながら恭介の後を追っていった。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・えっと」

 

残された夫と私の間に重たい沈黙が流れる。

 

「・・・・・・それじゃあ、篠原さん。また、明日」

 

今も憶えている。ーーーーーーあの時の夫の顔は、とても寂しそうな顔をしていた。




・三神佑樹

三話目にしてようやく名前が出た。恭介と立花以外にもう一人幼馴染みがいる。

・三笠恭介

旦那さんの幼馴染み。イメージ的にはリトバスの棗恭介。自由奔放、楽しいことが大好き。旦那さんと立花以外にもう一人幼馴染みがいる。

・小鳥遊立花

旦那さんの幼馴染み。常にクールで裏では『氷の女王』なんて呼ばれている。隠れファンが多い。恭介の奥さん。旦那さんと恭介以外にもう一人幼馴染みがいる。

・中学時代の箒ちゃん

抜き身の刃物。旦那さんへの好感度はマイナスよりの0。今はカンスト。ツンデレのデレしか残っていない。

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