こんな篠ノ之箒ちゃんはいかがですか?   作:妖精絶対許さんマン

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仕事してる時に思い付いた突発的作品です。


篠ノ之箒、娘一人がいる既婚者です。

「ねえ、ママ」

 

GW初日。今年で小学三年生になった娘が漫画を読みながら、洗濯物を畳んでいた私に声をかけてきた。

 

「なに、唯?」

 

「ママってどうしてパパと結婚したの?」

 

思わず綺麗に畳んでいた洗濯物に顔からダイブしそうになった。夫曰く、「唯の性格は箒に似てしっかりしてるよね」と言われたが私もそう思う。なのにいきなり年相応のことを聞いてきて思わず動揺してしまった。

 

「ど、どうしてそんなことを聞くの・・・・・・?」

 

「んー、特に理由はないけど気になったから」

 

『特に理由はない』は学生時代からの夫の口癖だ。いつの間に夫の口癖は唯に移ったのだろうか?

 

「その・・・・・・パパには内緒ね。ママが弄られるから」

 

「はーい」

 

唯は漫画を閉じて、私の方に体を向けた。

 

「なら・・・・・・ママがパパと初めて会ったときから話してあげる」

 

私は洗濯物を畳みながら昔話を娘に話す。夫との出会いと、今に至る過程と奇跡を。

 

 

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今の夫と出会ったのは私が中学生の頃だった。当時の私は実姉の『篠ノ之束』が『ある物』を開発したせいで長く転校生活が続いていた。長くて半年、短い時は一ヶ月で転校したこともある。そんな生活が続いたからか、私は回りに壁を作っていた。

 

「えー、今日から転校してきた篠原箒だ。皆、仲良くしろよ」

 

「・・・・・・篠原箒です。よろしくお願いします」

 

当時の私の名字、『篠ノ之』は目立ちすぎるため転校する度に名字が変わっていた。『笹原』、『蒼崎』、『近衛』、転校する度に名字が変わるから途中で数えるのを止めた。ただ、偽名を使う度に『篠ノ之箒』という存在が否定されているようで辛かった。

 

「篠原の席は三神の隣だな。三神、お前が篠原の面倒を見ろ」

 

三神と呼ばれた男子生徒は垂れ目に癖毛、中肉中背の優男といった男子生徒だった。

 

「よろしく、篠原さん」

 

「ああ・・・・・・よろしく頼む」

 

今思い出しても当時の私はなんて無愛想だったんだろう。転校してきたばかりの私に気を使ってくれた三神ーーーーーー後の夫は無愛想な私に気分を害した様子もなく、今と変わらない優しい笑顔を浮かべていた。

 

「分からないことがあったら何でも聞いてね」

 

私は夫の言葉を無視して席に座った。正直に言うと煩わしかった。当時の私は転校しても挨拶だけで、喋りかけられても無視していた。そうしていれば他のクラスの人間は私に近づかないからだ。当時の私は夫もその一人だと思っていた。

 

 

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「へー、ママって無愛想だったんだ」

 

「・・・・・・うん、今思い出しても無愛想だったね」

 

そう思うと私は大分変わった気がする。昔は常に不貞腐れたような顔をして、頑固で融通が利かなくて料理も下手で嫉妬深かった。夫ともよく結婚できたと思う。告白したのは私からだったが。

 

「でも、ママが無愛想だったって信じられないなー。友達の間だと優しくて落ち着いた人って言われてるよ?」

 

「・・・・・・昔の私は自暴自棄なところがあったから。私が中学生の頃が一番荒れてたかもね」

 

畳んだ洗濯物を直しながら自分の一番の黒歴史を思い出す。夫と当時の話をする時はいつも弄られる。

 

「パパと会えたのが私が一番変われた理由かな?」

 

 

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「篠原さん。次は移動授業だけど何を選んだの」

 

「・・・・・・書道だ」

 

幼い頃から剣道をしていた私はその流れで書道もしていた。図工や家庭科などが他にあったが、やりなれている事もあって書道を選んでいた。

 

「そうなんだ!俺も書道なんだ。教室まで案内するよ」

 

「・・・・・・頼む」

 

今思い返すと転校生活をしていた私が多く会話したのは夫が初めてかもしれない。どうしてなのかは今の私にも分からない。ただ、疲れていたのかもしれない。

 

「書道室はこの校舎の二階にあるんだ。他にも図工室に音楽室、被服室と調理室も二階だね」

 

夫が通っていて、私が転校した学校は校舎が三つある。一つは夫と私が在籍していた二年の教室がある旧校舎。旧校舎には書道室に音楽室、被服室、調理室がある。二つ目は一年と三年、職員室がある新校舎。三つ目は図書室と資料庫がある別館。

 

「あ、昼休みは屋上も開放されてるから行ってみるのも面白いよ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

私が転校した中学は珍しいことに屋上が開放されていた。屋上には花壇が設置されていて、園芸部が手入れをしていた。春にはチューリップ、夏には向日葵、秋にはコスモス、冬は次の春に向けて土の整備をしていた。

 

「あ、はは・・・・・・」

 

夫は頬を掻きながら苦笑いを浮かべていた。自分が振る話の悉くを無視する私に当時の夫はどう思ったんだろうか?今夜、唯が寝たあとに晩酌のつまみに聞いてみるのもありかも知れない。

 

「あ、ここが書道室だよ。席も決まってるんじゃないかな?」

 

「・・・・・・そうだといいな」

 

席が決まっていたとしても、すぐに転校するのだから無意味だと思っていた。私のそんな胸の内を知らない夫は書道室の扉を開けた。




・箒ちゃん

既婚者。一夏ではなく中学生時代の同級生と結婚した。料理本を出したら大当たりした。口調も侍のような口調から落ち着いた女性らしい口調になった。

・唯ちゃん

箒ちゃんと旦那さんの間に産まれた一人娘。容姿は箒ちゃんに似ている。

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