携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
~月面~
戦える敵は残りは依姫のみになった。俺は頭上で見下ろす
(くっ・・・地上の者にこれほどの力を持つものがいるとは。姉上まで)
依姫は内心相当焦っていた。それもそうだろう。自分たちが見下していた存在にここまで無双されたのだから。しかしだからこそ目の前にいる存在を心底許せなかった。剣を天へと掲げ
「建御雷神よ!!」
すると空が光り始める。すると雷雲がないにもかかわらず巨大な雷が落ちてきた。しかし真聡は空間を操作して依姫に向かって落とさせた。しかし
「はあああああああ!!」
「!?ちっ」
ヒュン・・・
その雷は囮だった。依姫の狙いは雷で俺の注意をひいてその隙に俺を空間ごと切り裂くつもりだったのだ。しかも建御雷神の稲妻が宿った剣で更に威力を上げてきたのだ。俺は空間を操作して「テレポート」で避けた
これは妖夢から聞いた話だが、剣士は30年修行すれば雨を、50年なら空気を、そして200年なら時を斬ることが出来るようになると妖夢の師であり、祖父の妖忌という人が言っていたという。それが本当だとすれば依姫は時を斬れるようになるまで修行したのだろう。それなら空間を斬って見せたことにも納得は行く。「あくうせつだん」とは比較にならないが、それでも厄介なのは変わらない。今のままだと少し分が悪いかもしれない
「雷ならこちらはこいつで対抗するか」
俺はレシラムの力を宿して「クロスフレイム」を発射した。巨大な火球が依姫に迫る
「落ちよ!!」
バリバリバリ!!!
水神の力でも一瞬で水が蒸発すると悟り、雷で相殺した。しかし建御雷神の雷でも相殺どまりということには驚いていた
「愛宕様の火よ!!」
すると依姫は刀に炎をともした。さしずめ志〇雄〇の「終の秘剣
「はあああああ!!!」
「あおいほのお!!!」
依姫が刀を振り下ろすと前方を一面を空まで覆うほどの超巨大な火柱になった。そして同様に俺の放った炎は同じくらいの大きさの青き火柱になった。日本神話に中でもっとも有名な神を殺した炎と世界そのものを焼き尽くすことが出来る伝説のドラゴンの炎がぶつかり合った。威力は完全に互角だった。やがて青い炎と真っ赤な炎が混ざり合った炎が天高く昇っていった
火柱が収まった後も月中が炎上していた。しかしそれは突然の豪雨に消されてしまう。
シュウ・・・ザアアアアアアアアアアア!!
「何だ!?」
突然の豪雨。火が消えたことで蒸気が出て視界が白くなる。しかし次の瞬間青い光が輝きだした。そして次の瞬間
ドオオオオオオオオオオオオオ!!!
豪雨はさらに激しくなった。しかし最早豪雨の域ではなく滝、いや海がそのまま天から落ちてくるような途轍もない水量の雨が降り始めた。周りはあっという間に水がたまり海のようになった。そしてやがて大津波や渦潮、竜巻がいくつも発生した。その豪雨の向こうに真聡はいた。サファイアのような紺碧の光に黄色く光り輝いていた。俺はひとたび暴れれば大陸を海に沈め、世界を始まりに還す海を司る伝説のポケモンの本来の力を取り戻した姿、ゲンシカイオーガの力を宿した
「まるで太古の海そのものと対峙しているようですね・・・」
依姫は結界を張って対峙していた。結界を張らないとこのまま雨だけで溺死しかねないからだ。そして真聡から極太の高水圧の水流を発射した。水タイプの中でも最強ともいえる存在の「ハイドロポンプ」の威力は絶大だ。しかもそれにこの雨が加わって途轍もない威力になった。
ザッバア――――!!
海を底ごと割ってしまった。回避には成功するがその威力には冷や汗を掻いていた。反撃に出ようするが真聡の姿は見えなかった。すると
「上か!!」
「アクアテール!!」
ドッゴオオ!!
俺は空から一気に水の力を纏ったしっぽの形をしたエネルギー体を振り下ろした。依姫は剣で受け止めるが、海そのものが迫ってきたような衝撃に耐えきれなかった
「くっ」
依姫は何とかそれを捌いて受け流した。そして俺は再び空を飛ぶ。映画では普通に飛んでいたけど、どうやらカイオーガは雨などの大気の水分を泳いでいるらしい。そこから「れいとうビーム」や「かみなり」、「なみのり」や「うずしお」で攻めたてた。凄まじい猛攻を掻い潜っていくが、時々被弾していった
(海である以上雷は有効なはず)
「建御雷神よ。其の雷で焼き払い給え!!」
ピカッ・・・ズッドーン!!
依姫から神の雷が真聡を捉えて落ちた。一瞬で海が蒸発するほどの凄まじい威力だ。しかし
ドオオオオオオオ!!
豪雨は一向に止まず、また海となった。すると海中が光り出した。一つは水で生み出した青いベールのようなもの、もう一つは
(ううう・・流石にきつかったかな)
それは能力上昇の光だった。俺はあらかじめ「めいそう」を発動しておいたのだ。幸いにもとくしゅ技扱いのようでゲンシカイオーガの極めて高いとくぼうも手伝って割と余裕で耐えることができたのだ。そのあと「アクアリング」で回復を図っていた。依姫は再び反撃しようとするが、それより先に俺は「ハイドロポンプ」を発射した
ズッドオオオオオオオオオオオオオオオ!!
「!?」
「めいそう」にはとくこうも上昇する力がある。高まった特殊攻撃の力から放たれた「ハイドロポンプ」は更に恐るべき威力となった。速度も範囲も威力も上昇していた。依姫は切ろうとしたが、勢いが強すぎて防ぎきれないと判断して躱した。そして俺は大技を出そうとしていた
「!?これは!!」
周りに大量の水球が発生した。それは海、雨粒、波などから所かまわず大量に現れた
「くらえ!!「こんげんのはどう」!!」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
すると水球の一つ一つが青く輝く水の光線となって襲い掛かってきた。依姫は八方から来る膨大な数の水のレーザーに飲み込まれた。水の力はすごいものであり、圧縮して高出力で出せば金属を容易く両断することが出来る。実際「ウォータージェット」という水を圧縮して噴き出して金属を切断する機械が現実でも使用されている。それをビームの如き速度でしかもそれをあらゆるところから放たれれば依姫といえどもひとたまりもなかった。しかしそれでも耐え凌いで見せた。切ることも避けることも出来ないと悟った彼女は
「はあああああああああああ!!」
バリバリバリバリ!!
「!?」
依姫は自分の体そのものを建御雷神の雷と化して瞬時に蒸発させて防いだ。ダメージは負ったが何とか耐え凌いだ。そして再び雷を落とそうとした。しかもそれと同時に自分自身で切りかかろうとしたのだ
(これはまずいな)
そう思うと同時に雷の刃が振り落とされた
ゴロゴロゴロゴロドッカ――――――ン!!
稲光が灯り、電気が周り一面に放電した。しかし
「・・・・・」
「何!!」
俺はそれを受け止めた。俺は今度はあるポケモンに変えたのだ
あらゆる水分を一瞬で蒸発させたかと思いきや、今度は灼熱のマグマと太陽光が地上を支配し、灼熱の終焉の大地へと変えた。今度はカイオーガと対を成す大地を司る伝説のポケモン
ゲンシグラードンをその身に宿すのだった
カイオーガ NO.382 タイプ:みず
ホウエン地方に伝わる超古代ポケモン。大波と大雨を生み出す能力で海を生みだしたと言われている。干ばつで苦しむ人々を救ったという話もある。長年にわたり自然エネルギーを巡ってグラードンと死闘を繰り広げた末に海底で眠りについた。アクア団は海を広げるために利用しようと企んでいた。ORASでは世界をあるべき姿へと戻し、ポケモンたちにとっての理想郷を作ろうとした。しかしカイオーガはあまりにも強い力を持っており、理想郷を生み出すどころか世界そのものを滅ぼしかける力を持つためアクア団でも制御不能になってしまう
ORASで新たにゲンシカイキにより本来の力を取り戻した姿、ゲンシカイオーガが登場した。専用特性の「はじまりのうみ」はほのおタイプの使用が出来なくなり、普通の天候変化技では変えることが出来ない。あふれるエネルギーは海水となって出てきて一泳ぎするだけで海を広げることができるらしい。世界中の大陸を海に沈め、始まりに還すという