携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
~人里~
俺は幻想世界から人里まで空間をつなげて脱出に成功した。思ったよりは体力を消耗することはなかったし、ダメージはゼロと言ってよかった。幽香は回復はしてあげたけどあくまで外的なダメージだけ。精神力などの内的なダメージまでは回復できない。あれでヘタレになったり、反省したりするとは思わないが、少なくとも俺に挑むことは当分ないだろう。俺は人里の人たちに脅威は去ったことを伝えた。そして更地になった山を戻した後、俺は営業を再会した定食屋で夕食を食べて自宅に戻っていった。俺はゆっくりと「ねむる」で体力を回復するのだった
~その夜~
何故か俺は途中で目を覚ました。もう一度寝ようと思ったが、寝付けない。仕方なく俺は外に出た。今日は満月で月が光輝いていた。俺はせっかくだから月見を楽しむことにした。俺はしばらくボーッと見ていた。体力は完全に回復していた。これもポケモンとマサラ人の力の恩恵なのだろうか?
「修行するかな」
暇なので俺は修行部屋で修行することにした。しかしその行き先は・・・
「・・・海?」
~静かの海~
ザザア・・・
俺はいつの間にか海に来ていた。それはとても静かで綺麗な海だった。しかしこの海には生物の波導をまるで感じなかった。綺麗ではあるが、どこか異質な海だ
「幻想郷には海はないはずだけど・・・」
そう思いながら俺はしばらくその海の上を飛んで移動した。そしてその時に気が付いた。星があまりにも近すぎること、そして地球が見えたことだ
「まさか・・・ここは月なのか?」
俺はあることを思い出す。あれはデオキシスと戦った時のことだ。戦いの最中に月で海を見つけたのだ。地球がすぐ近くにあるし、確定であろう。俺は急いで脱出しようとしたが、どういうわけかそれをしなかった。何かに引き寄せられるようだった。そして俺は直感した。この海の先に何かがあると
俺は操られたかのように進むのだった。どこまでも静かな海。しかしまるで生命を感じない。良く言えばとてつもなく清涼な海。悪く言えば生命を生むことも持つこともないただの塩水のたまり場である。やがて俺は海を抜けて月の大地に辿り着いた。するとやがて巨大な透明な物体を見つける
「これは・・・クリスタル?」
そこには大きなクリスタルがあった。それはとても美しく輝いていた。俺はその美しさにすっかり魅了された。そしていつの間にか手を伸ばしていた。まるでこのクリスタルに呼ばれていたかのように。そして触れた瞬間
ピカアアアアアア!!!
「!?これは!!」
するとクリスタルの光が強くなった。七色・・・いやそれ以上の数の色の光が輝き始める。そしていつの間にか「Z」の文字が浮かび上がっていた。そして俺は悟った。このクリスタルの正体は
「Zクリスタル・・・!!」
そうこれは巨大なZクリスタルの塊だった。炎、水、草・・・様々な属性の力を宿した光が差した
「もしかしてこれが俺を呼んだのか?」
と俺はつぶやいた。しかし次の瞬間俺は取り囲まれた。見ると全員ウサ耳を付けて、武器を構えている。おそらく鈴仙と同じ種族。更にそれと別の男性の兵士も遅れてやってきた。どうやら俺がここに来たことが気づかれたらしい。俺はとりあえず両手を上げた
「貴様!!何者だ!!」
「どこから侵入を。それにクリスタルが!!」
玉兎達が騒ぎ出す。とりあえず俺は弁明する
「勝手に入ったことは申し訳ない。しかし俺は何者かに突然ここに連れられたんだ」
「嘘をつくな!!この汚らしい地上人め!!」
「地上人が汚いだと!?」
そう言えば早苗に教えてもらったことがある。月に住む者たちは戯れを極端に嫌う種族であると。それは自分たちが生命であることを否定する考え方だ。俺には理解できないし、したくもない。こいつらもまた生命を持つものだというのに滑稽な話である。そうは思いながらも俺は抵抗はせずに大人しくしていた
「思い出したぞ!!貴様はあの時の!!」
デオキシスとの戦いのことだろう。するとやがて二人の人影が現れた。一人は扇子を持ち長い金髪にリボンが付いた帽子を被っている。もう一人は刀を装備して長い紫の髪を黄色いリボンでポニーテールにした二人の女性だった。姿も雰囲気も違うが、どこか似ている部分も感じる。そして相当な力を持つことも分かった。特に紫髪の方は怖ろしく強い。それとどこか自分と似た力を感じた
「また来たのですか。地上に住む不浄なる者が来ることが許される場所ではありませんよ」
「二度もこの絶対の聖地に来るとはな。龍神の力を操る不浄の者よ」
明らかな高圧的な態度に内心虫唾が走ったがぐっとこらえた
「まさかあなたが触れたせいでこのクリスタルが不浄な戯れの力を宿すようになるとは思いませんでしたわ」
「全くです」
「・・・Zクリスタルのことですか?」
「お前に答える義理はない!!」
「まあまあ依姫。たまには答えるのも一興ではないかしら?いいでしょうたまには地上の者に教えて差し上げましょう。これはね。あなたがここで戦った直後に突然現れたものなの。美しく輝くこの物体は私も気に入りましてね。そのまま取っておくことにしましたの。でも残念ながらこれは破棄しないといけませんわ。あなたのせいで汚らしい戯れであふれてしまいましたもの」
「ならばそれを私に下さいませんか?私もその不浄な地に住むものです。私のせいでもありますし、一緒にいなくなって一石二鳥かと。もともと私はすぐに去るつもりです」
「・・・・・」
すると扇子を持った方がしばらく考え事をし始める
「残念ですがあなたに差し上げるものは何もありませんわ。この戯れで満ちたクリスタルでもね」
「それは何故でしょうか?あなたはそれを破棄するのでしょう?戯れにまみれたものは戯れにあふれた大地にあるのが摂理かと。それに本来はここの物ではない筈ですが」
「口答えをするな不浄な者よ!!ここは絶対の聖地。貴様のような汚れたものが来る場所ではない。発言権などこれ以上あると思うな!!」
不浄、汚れた。さっきからそればかりだ。流石に腹が立ってきた
「どうしてそこまで生命を否定できるのですか?あなた方もまた一つの生きとし生ける命を持つものでありましょう」
「我々を同じにするな!!」
「ではなぜ怒るのですか?本当にあなた方が生命を持たない者としたらそんな感情は存在しない筈ですが!!命亡き者には感情というものはないと思いますがね」
「だ・・黙れ!!」
この程度で怒るとはたかが知れている。まだ扇子を持っている方がそれらしい。尤も彼女も静かに怒りの感情を持っているようだが
「愚かな人。我々を侮辱したからには覚悟することね」
すると扇子を俺に向けた。しかし
「!?これは!!」
豊姫の持っていた扇子はと綺麗な花柄のものに変わっていた
「どうですか?人里の立派なブランドなんですよ」
「こんなものはいりませんわ」
とバキッと折った
「では私も」
ゴオオオオオオオオオオ!!
「!?」
俺は豊姫の持っていた扇子を奪い取っていた。否、正確にはすり替えていた。「トリック」で俺の持っているものとすり替えたのである。バレないように豊姫が俺に向ける瞬間を狙って発動したのである。そして俺はそれを燃やした
「あなたは私の贈り物を壊した。ならば私が壊しても文句はありませんよね?」
「・・・・・」
「己・・・不浄の民のくせにどこまでも我々を侮辱するか!!」
「・・・常に生命を侮辱し続けているあなた方には言われたくはありませんよ」
もはや交渉は役に立たない。はっきり言ってこいつらの態度はトサカにきた。Zクリスタルをこいつらの手で破壊されるわけにもいかない
(ならばやってやろうじゃないか!!そしてこいつらに生命あるものの力を思い知らせてやろう!!)
こうして今までの中で最強の相手との戦いが始まったのだった