携帯獣の能力を宿す者の幻想伝   作:幕の内

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核を上回る力

~地霊殿~

 

「あの人間はどうなってるんだろうねえ。いくらなんでもあれを止められるのかい?」

「あのお兄ちゃんならきっと大丈夫だよ。私が前に見た時よりもきっともっともっと強くなっているよ」

「でも相手は神の炎、核を操るやつでしょ?」

「・・・神なんてあの人にはたくさんいますよ」

「え!?それってどういう?」

「少なくとも世界を滅ぼしかねない力を持つ存在も宿せるんですよ。大丈夫です。あの人ならきっとすべてを救って帰ってきます」

 

全く心配していないというと嘘になるが、それよりも真聡を信じる気持ちの方が強かった。ただそれだけである

 

 

~灼熱地獄跡~

 

「ナゼ・・・ダ?ドウシ・・・テ・・・?」

「・・・・」

 

今、灼熱地獄跡は得体のしれない黒い物質に包まれていた。見るだけで吸い込まれて闇、いやそれ以上かもしれない気持ち悪い黒い物質が覆っていた。お空の生み出していた恒星はすべて消えていた。さらにお空はボロボロになっていた。話はほんの数分遡る

 

~数分前~

 

「アハハハ!!スベテキエテシマエ!!」

 

太陽そのものとなったお空に周りを飛び交う恒星と核の弾幕。力は完全に暴走していた。正に絶体絶命のピンチ・・・なのだが、真聡は冷静だった

 

「お前は究極の力と言ったな?核融合を自在で操る。大したものだ」

「ナラサッサトモエテシマエ!!」

 

お空はさらに力を強めて恒星を一斉に俺に向けてきた。お空は完全に勝ったと確信していて有頂天になっていた。もはや自分はだれにも止められないと

 

「・・・闇のディアルガになったときの俺を見ているようだよ。これ以上君を暴れさせるわけにはいかない・・・だから全力でいかせてもらう。そしてこの世にはさらに上のエネルギーがあることを教えてやるよ」

 

すると俺から突然黒い物質が全身からあふれ出した。それはあっという間に灼熱地獄を覆い尽くした。そして俺はサッカーボールくらいの大きさの黒い球体を投げつけた。お空の放つ特大の核の弾幕と比べれば遥かに小さい。お空は悪あがきだと思って気にせず攻撃した。数多の核の弾幕が俺に近づいてきた。しかし次の瞬間

 

ピカ!!

「エ・・・・」

 

目の前が白い光に包まれた・・・

 

~現在~

 

お空は訳がわからず混乱していた。なぜなら自分の自慢の核の弾幕に向かって小さな黒い球を投げつけてきたと思った次の瞬間大爆発して自分はそれに飲み込まれたのだから。そしていつの間にか自分は足場の前に横たわっているのだ。しかも自身が纏っていた太陽も消えてボロボロになっていた

 

「オマエ・・・イッタ・・イナニ・・ヲ・・シタ」

 

目の前には無傷の真聡。ただし黒い塊を纏っていた

 

「反物質って知ってるかい?」

「!?」

 

反物質とはある物質の質量と角運動量は同じだが、電荷などの性質が真逆の物質である。宇宙の始まりにも深く関わっている物質だ。そしてそれを物質とくっつけるとそれの衝突によって消滅する現象を対消滅という

対消滅の力は凄まじく一円玉くらいの大きさの物を対消滅させるだけで広島の原爆の3倍くらいの威力を発揮する。核融合は得られるエネルギーは物質の質量の1000分の1しか出せないが、反物質はほぼ100%そのまま利用できる。しかもこれは環境にもやさしく放射能の類は一切出ない。正に核融合をも超える夢のエネルギーと言える

 

しかし現実での運用は極めて難しい。まず物質に触れただけで対消滅するという性質上、あらゆる物質に触れないようにするために全く物質が混じってない超真空に強力な磁場を発生して浮かばせ続けるということをしないといけない。燃料の確保も制御も極めて難しいうえに1グラム生みだすのに数兆円もの莫大な費用が必要だ。そして1キロ作っても史上最大の水爆は超えられない。はっきり言って今の人間の科学力で扱えるような代物ではないのだ

 

しかしそれを自由自在に生み出すことが出来る反物質を司る神がポケモンにはいる。それはギラティナである

かつてはディアルガとパルキアと共に生まれその二匹と互角の力を持っていた。ディアルガは時間を、パルキアは空間を生みだし、アルセウスの宇宙創造に手助けしていた。ではギラティナの役目は何だろうか?それは一言で言うと表世界との調和を図る存在である。世界が誕生した頃はまだ時空が不安定で時空の歪みが生じていたらしい。それを裏側から修復する役目を担っていたと言われている。しかし暴れ者であり、アルセウスたちの怒りを買ってこの世の裏側の世界である「破れた世界」に追放されてしまったのだ。推測だが、おそらくその反物質の力によってあらゆるものを消滅させてしまったのが原因ではないかと俺は考えている

 

何にせよこれだけは言える。俺は今その反物質を好き勝手生成できる力を持っているのだ。だからあらかじめ反物質で作ったシールドを張っておいたのだ。さもなければ今頃地底、いや幻想郷そのものが吹っ飛んでしまっていることだろう。それにしても普通に張っても対消滅が発生しないのは不思議だが、それが出来るのが伝説のポケモンなのかもしれない

 

お空は投げた反物質に触れていなかった核の弾幕と自身の太陽のおかげで助かったが、もう戦える状態ではなかった。しかしまだ抵抗しようと必死だった。無敵と思い込んだ自分がここまであっけなくにやられたのが信じられないのだろう

 

「・・・仕方がない」

「エ?」

ドゴ!!

「・・・かげうち」

ドサ・・・

 

最後は影からの軽い一撃で気を失わせた。そして俺はお空を背負ってゆっくりと上昇して戻っていった。そしてこれは数あるポケモンの中でも最高レベルの禁忌と言える力だと思った。というより禁止伝説は基本的にほとんどが普段の使用を制限せざるを得ない力だ。これらは大抵世界を滅ぼしかねないし、滅ぼさなくても摂理を変えてしまいかねないのだ。俺は改めて伝説の恐ろしさが身に染みたのであった

 




ギラティナ  NO.487  タイプ:ゴースト・ドラゴン

シンオウ地方に伝わる神と呼ばれし伝説のポケモン。アルセウスにより、ディアルガとパルキアと共に誕生した。二体と拮抗する強大な力を持つ。しかし暴れ者故に敗れた世界に追放されてしまった。現在はそこから静かに世界を見守っているという
歴史から消された黒歴史的な存在で文献がほとんど残っていなかった。わずかに残っているものによると世界が誕生した頃まだ時空が安定しておらず、歪みが発生していたようで、ギラティナはそれを裏側から修復する役割を担っていたらしい。また反物質を司る存在であることがHGSSで判明した
二つのフォルムを持っており、一つ目はアナザーフォルム、もう一つははっきんだまを持たせることによって使用出来るオリジンフォルムの二種類である。破れた世界は時間が存在せず、空間も重力も不安定で常識が通用しない世界である。またギラティナは破れた世界そのもののような存在でギラティナの感情によって敗れた世界と現実世界に歪みが広がってしまう。表の世界とは表裏一体であり、ギラティナが暴れて破れた世界にあるものが破壊されるとバランスが崩壊して現実世界にも影響が出てしまう

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