携帯獣の能力を宿す者の幻想伝   作:幕の内

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花映塚編で妖怪の山に言って天狗と知り合いにさせたのはぶっちゃけ今回の話のためです


交渉

~守矢神社~

 

現世での友の早苗とまたこうして巡り合うことが出来た。早苗が抱き着いてきて俺も嬉しくて抱きしめていたが、しばらくするとだんだん恥ずかしくなってきた。俺は離そうとしようとしたが、早苗は抱き着いたまま号泣して離れない

 

(・・・とりあえず泣き止むまでこうしてやるか)

 

としばらく泣き止むまで待った。やがて落ち着いたようで早苗はこう言った

 

「夢みたいです。またあなたと出会えるなんて・・・夢じゃないですよね?」

「ああ、夢じゃない。これは現実だよ」

 

そう言って俺は昔のように頭を撫でていた。早苗はもうそんな年でもないのにな

 

「!?///えへへ///そうみたいですね・・」

 

早苗は少し驚いていたが、撫でられてうれしくも照れ臭いようだった。しばらく見つめ合っていると

 

「・・・あんたたちさ。私もここにいるってことわかってる?」

「「!?///」」

 

霊夢が顔を赤らめながらそう言ってきた。俺たちは霊夢が近くにいたことをすっかり忘れてしまったようだ。俺たち二人とも顔が茹蛸のようにの真っ赤になってしまった。しかし更に追い打ちをかける事態になる

 

「あと、早苗だっけ?あんたの仕えている神の二人も後ろから見てるわよ」

「「!?」」

 

後ろを振り向くと大きなしめ縄を背にしていた赤い装束を着た紫色の髪のショートヘアーの女性と金髪でカエルを模したかのような帽子を被った見た目は幼い少女がいた

 

「おやおや、いきなり抱き着くとはうちの風祝はなかなか大胆だねえ」

「あの時のボウズがここにいるとはねえ。本当に生きていると何が起こるかわからないもんだよ」

「「/////////////」」

 

二人ともニヤニヤしながら見ていた。俺は未だかつてないほど赤面した。早苗も顔が更に赤くなっていた

 

~守矢神社・広間~

 

俺と霊夢は守矢神社の中に招かれた。そして互いに自己紹介を済ませた。紫色の髪をした女性は八坂神奈子さん、カエルのような被り物をした女性は洩矢諏訪子さんというようだ。二人とも外に世界にいた神なのだそうだ

 

「で?お前たちはどうしてここに?」

「俺は霊夢から話を聞いてもしやと思ってきました」

「私はその巫女に神社を譲り渡せと言われたのよ。そもそもあんたたちはどうしてこの山に来たのかしら?」

「それはな、私たちは信仰が欲しかったからだ」

「信仰ですか?」

 

そしてそれから神奈子さんは俺たちに話した。昔の人間たちは困ったことがあると神様を頼っていた。神々はその信仰によって強い力を発揮することが出来るらしい。しかし現代では科学の発達により、人間たちは怪奇現象だと思っていた原因を解き明かし、恐れなくなった。それは神々に対する信仰が減ることを意味していた。信仰がなくなったら神様はいずれ消えてしまう。しかし現代では信仰を集めることは非常に難しい。だからこの幻想郷に引っ越して妖怪たちの信仰を得ようとしているらしい。博麗神社を譲渡させようとしたのは、それを押さえれば幻想郷の人間の信仰も押さえられると考えたからなのだそうだ

 

聞いたところ切実な理由だし、実際俺も現世では特に神を信じていなかった。少し極端かもしれないが、現世では宗教による問題が世界中で起こっている。悪質な新宗教やテロ事件・・・正直現世ではあまりいいように捉えられていない節がある

 

しかし博麗神社は幻想郷において非常に重要な場所だ。譲り渡すわけにはいかないだろう。そうしていると早苗はこう言った

 

「だったら私たちの神社の分社を博麗神社においてはどうでしょうか?そうすればだいぶ信仰心は回復すると思いますし、博麗神社にも人が来るようになるんじゃないでしょうか?」

「なるほど」

「うん。いいかもしれないな。それならどっちかを潰さずに済むし。これならどうだ?霊夢」

「うーん。まあそれくらいなら」

「決まりだね」

「大体霊夢も霊夢だしな。普段からもっとまじめにしていれば・・」

「あーも!わかってるわよ。流石に今回は反省したわ」

 

早苗の提案により、両神社の争いは収束した。しかしもう一つ問題がある

 

「神奈子さん、諏訪子さん。この山はどういう場所かはご存知でしょうか?」

「いやよくは知らない」

「天狗がやたら多いことは気づいているけど。遠くから監視しているようだし」

「ここは妖怪の山と言いまして・・・」

 

俺は二人にここは天魔という天狗の長が治めている場所であることを教えた。しばらくそれに付け加えをしながら教えた後にこう言った

 

「このままでは天狗たちがあなた方を追い出そうとして攻めてくるかもしれません。下手に抵抗したら最悪戦争になって、信仰どころじゃますますなくなります。ですからここは天魔さんたちと会談をして受け入れてもらうようにすることが一番だと思います。俺は天魔さんとは知り合いですから、会談をしてくれるように頼んでみます」

「お前はこの山の天狗の長と知り合いなのか?」

「はい。前に天狗たちと宴会して仲良くなりました」

「じゃあすまないが、天魔に話してくれないか?決まったらすぐに向かう」

「わかりました」

 

そしてその後俺は天魔さんにこのことを伝えに言った。俺が同行することを条件に天魔さんは了承してくれた。そして俺は三人を連れて会談を開くことになった。会談中は俺は席を外した。受け入れてもらえるかどうかは神奈子さんたち次第だ。うまくいくことを願って俺は待った。そして早苗が最初に出てきた

 

「どうだった?」

「・・・・」

「え?」

 

早苗は冴えない表情をしていた。まさかうまくいかなかったのかと俺は不安な思いが募っていたが

 

「うまくいきましたー!」

 

すると「ペカー」という擬音が付きそうなほど笑顔になって俺に言った。どうやら受け入れてもらえたらしい

 

「・・・たく。お前ってやつは」

「ふふふ。心配しすぎですよ」

 

というふうに俺は早苗と話していた。その様子を遅れて出てきた神奈子と諏訪子が見ていた

 

「なあ、諏訪子よ。どう思うかい?」

「・・・いいんじゃない?あの子が幼いころしか見てないけど、昔からいい子だったし今回のことでも私たちに最良の道に導いてくれたしね。性格も良さそうだし」

「それにあの男には途轍もない力を感じる。八百万の神々に肩を並べるかそれ以上の力すら感じるほどのな」

「確かにね。まあでもあいつには大きな借りが出来たね。・・・いいや違うか」

「ああ。あの男は他に人間とは違う早苗を受け入れて、本来の明るさを取り戻してくれた。早苗は私たちにとって家族同然の大切な存在。真聡はもっと前からの私たちの恩人だ」

「・・・あの子久しぶりにあんなに笑ったね」

「・・・そうだな」

 

二人は仲良く話している二人の様子をじっと見つめていた

 

かくして、異変は無事に収束した。ケガ人は妖精と野良妖怪くらいでいずれも死んでいないし、数も少ない。これまでの真聡が関わった異変で一番被害が少なかった

 

そして恒例の宴会が開かれようとするのだった

 


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