携帯獣の能力を宿す者の幻想伝   作:幕の内

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今回は今までで一番長いです


現世の別れと幻想の地での再会

~守矢神社~

 

俺は再び探索を続ける。誰かがいるかなと思いながら。しかし俺のことを知っている者が見れば俺は今おかしくなったと思うだろう。何故なら俺には波導がある。それを使えば人の居場所なんてもっと簡単にわかるはずだからだ。しかし俺は今はそれすら頭になかった。今は何となく自分の素の力で見つけたい。そう思っていたのかもしれない。尤も今となってはそれも素の力なのだが

 

しばらく進んでいると窓があった。そこを少し覗くと見覚えのあるロボットのおもちゃがあった。それを見た時俺は確信に近い物を感じた

早苗はここにいるのだと・・・

 

 

~回想~

 

早苗と仲良くなってから一年が過ぎた。今日は友達と遊ぶ約束で神社に来ていたのだが、まだだれも来ていなかった。そうしていると

 

「あ、真聡お兄ちゃんいらっしゃい」

「やあ早苗。最近どうだい?」

「友達もいっぱいできたし、毎日楽しいよ!!」

 

と笑顔で言ってきた。おれは「そうか」と答えた。一年前は少し暗かったが、最近は本来の明るい性格が戻ってきたようである。最近じゃなんとラブレターまで来たらしい。最近の小学生はませてるなと思った。・・・自分も小学生なんだが

 

「そのロボットまた持っているね。お気に入りなんだな」

「うん。私ロボットとか好きなの!!でもやっぱり女の子が持ってちゃおかしいかな?」

「そんなことないよ。早苗がロボットが好きなおかげで男子の友達だって出来たんだし、女子の友達もいるんだろ?男子女子両方とも仲良くできるって結構凄いことだと思うよ」

「えへへ。そうかな?」

 

この子は少し変わった女の子だった。性格は女の子らしいのだが、興味があるものは年頃の女子が夢中になるものより、ロボットや戦隊ものとかの男子が好きそうなものの方が好きな子だった。前にそれを彼女から聞いた後に「男子にはその話をしてみたら?」とアドバイスをした。するとそれが功を奏したようで男子たちとも仲良くすることが出来た。女子の友達も出来たみたいだ。俺の役目もここまでかなと思っていたのだが、この子は今でも「真聡お兄ちゃん」と呼んで慕ってくれている。まあ俺には兄弟がいないから悪い気分ではないのだが、遠くから大声で俺に声をかけてくる時があり、周りのやつらから茶化されるのはちょっと困った。俺も年頃の男子だしな。まあそれでも突き放したりするようなことはしなかったけどね。俺にとっても早苗は大切な友達の一人なのだから

 

「それとさ?ポケモンの最新作が出るって知ってる?」

「知ってるよ!!私もお父さんとお母さんいお願いするんだ」

「そうか。俺も小遣いはたいて買うつもりだ。そしたら一緒にやろうぜ」

「うん!!」

 

早苗はポケモンも好きだった。たまに対戦や交換とかをして遊んだ。早苗もアニメを見ていた

 

こうした毎日が楽しかった。このままずっと続けばなと思った。でも学年は違うけど、早苗とは仲良くやっていきたいと思っていた。しかし、現実は非情なものだった・・・

 

俺が中学生になって間もないころに帰りに早苗とばったり会った

 

「よっ!早苗」

「あっ!真聡お兄ちゃん!」

「その呼び方そろそろやめにしないか?この年だし」

「うーんそうですね。じゃあ真聡さん?」

「ん~まあそんなとこかな」

「って、あれ?顔色が悪いですよ。体調悪いんですか?」

「まあちょっとな。そんなに気にすることじゃな・・・!?」

 

すると急に目眩がしだした。そして同時に吐き気と高熱にさらされる。体が全く言うことを聞かずにそのまま倒れてしまった

 

「お兄ちゃん!!真聡お兄ちゃん!!誰か!救急車を!!真聡お兄ちゃんを助けて!!」

 

早苗が泣きそうな声になりながら叫ぶ様子を聞きがら俺は意識を失った

 

後日、医者から俺は原因不明の病に侵されていることを告げられた。今までに例がない病気なため、正しい治療方法がわからないようだ。わかるのは相当危険な病気であり、余命は一年と宣告されたときは目の前が真っ暗になった

 

病室にいたとき、母さんが別の部屋で泣いていることに気づいた。しかし俺は涙が全くでなかった。人間度が過ぎたショックに立ち会うと涙が出なくなるものなのかもしれない。俺はただただ絶望した。もう何もする気が起きない。あるのは悲しみと絶望と死への恐怖、そして何よりも度を越えたショックによって引き起こされた虚無感だった

 

俺は病室で無気力に過ごすことが一カ月続いた。しかしある時ドアをノックする音が聞こえた。俺は入る許可を出すとそこには

 

「・・早苗」

「久しぶりだね。真聡お兄ちゃん・・・」

 

早苗が俺の病室に訪ねてきたのだ。しかし入ったはいいが、まるで話が続かない。つい最近まではあんなにペラペラ喋っていたというのに。すると俺に初めて涙があふれてきた

 

悔しかった。どうして俺はこんな目に合わないといけないんだと思った。俺は中学になっても同級生の友達はもちろん早苗とも仲良くしていたかった。なのにどうして!!すると早苗は俺の手を握っていった

 

「私信じてますからね!!真聡お兄ちゃんは病気になんか負けないって思ってるし、そんなことにはさせませんから!」

 

泣きながら俺にそう語りかけてきた。俺は一カ月間たまっていた涙が全て溢れ出していた気がした。お互いワンワン泣いていた。そして俺は絶対に治って見せると誓った

 

それからは病室にいながらも俺は精一杯生きようと努力した。日記を付けたりもしていた。何をしたらいいかはわからない。でも気分が暗いままでは駄目だというのは何となくわかっていた

他の友達も見舞いに来てくれた。みんな俺のことを心配していたようだ。こいつらともまた楽しく過ごすために俺は希望は捨てなかった。すると宣告されていた1年をたやすくすぎることが出来た。気力はまだあった。俺は希望を持ちながら過ごしていた。次に語ることはそんなある日のことだ

 

「なあ。お前が持っているファイルに描かれたキャラってなんだ?」

「これか?これはな。「東方project」ていうシューティングゲームに出てくるキャラなんだ。名前は博麗霊夢だ。このゲームの主人公なんだぜ」

「へえ、シューティングかあ」

「これには結構シリーズが出てるんだぜ。俺が一番びっくりしたのはこれなんだ」

「なんだ?」

「このキャラ見てみろよ」

 

するとスマホの画像で見せてくれた。そこには

 

「このキャラ早苗にそっくりだな」

「そっくりも何もなんと同姓同名なんだぜ」

「マジで!?じゃあこのキャラは東風谷早苗っていうのか?」

「ああ。しかも巫女さんで神社も守矢神社っていうんだ」

「その作者がパクったんじゃないか?」

「いや、そうではないらしい。早苗ちゃんのことがで知られたときはネット上で大騒ぎになったんだよ。でも原作者のZUN氏も知らなかったと言ってひどく困惑していたらしい。それにこれは本人の前には言いにくいことだけど、あの神社って相当古くてボロイだろ?地元に住んでいる俺たちも早苗ちゃんが教えてくれなきゃ気づかなかったくらいの場所だからな。名前も早苗ちゃんから言われないとわからなかったし、これが発覚したのってこのキャラが初登場した年から数年経ってわかったことだしな。俺もこのゲームにハマったのは最近だし」

「世の中って不思議なことがあるもんだな」

「もしかしたら本当に幻想郷に言って巫女さんになるかもな。早苗ちゃんも興味を持って最近やり出してるし」

「へえ~」

 

とまあこんなふうに話していた。本当に幻想郷に行くとか、そこで巫女になるとかは冗談で喋っていた。まあ正直に言うとあまり覚えてはいない。俺は普段の何気ない会話の一つだと思っていたからだ

 

そして三年後俺は容体が急変して、しゃべることすらままならなくなってしまった。どんどん痩せこけて死へと向かっているのがわかる。両親は毎日来ていたけど、なんと早苗まで来てくれた。もうなんて言っているのかもよくわからない。ただ手をずっと握って見つめていた。わかっていたのはそれだけだった

 

そしてそれから間もなくして俺は現世を去り、幻想郷に旅立つのであった

 

 

~現在~

 

俺は一通り思い出して思った。あの時はただの偶然と思って気に留めなかったけど、やっぱりあれは出来すぎていた。こんなことがあり得るのかはわからない。現世で生きていた人間がゲームのキャラクターになるということだなんて。そうしてひどく困惑していると

 

ドッカーン!!

 

霊夢が言った方向に爆発音がした。おそらく誰かと接触して戦っているんだろう。俺はすぐに向かった。そこにはかつての現世の友人がいるのかもしれないのだから。俺は夢中で走った。鼓動が早まるのを感じる。なんだか時間がえらく長く感じた。そしてやがて現場に辿り着く。そこには

 

「くっ。流石は東方の主人公ですね。やっぱり強いです!!」

「あんたこそ初めてだってのにどうして私の弾幕の法則を全て見切ってるのよ!!いったい何者なの?」

 

案の定、霊夢は弾幕ごっこで戦っていた。そしてその相手は紛れもなく東風谷早苗だった

 

「はは。世の中って本当に不思議だよ。「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものだ」

 

俺は茫然としていた。普通ではありえないことが目の前に起こっているのだから。しばらく見守っていたが、弾幕のパターンを知っているくらいで勝てるほど霊夢は甘い相手ではない。まだまだ戦闘には不慣れな感じだ。そしてしばらくして早苗は被弾して勝負はついた。それを見届けると俺はそっと近寄って声をかけた

 

「どうだい?お前が知っているゲームの主人公、博麗霊夢は強いだろ?・・・・・早苗」

「え?あんたこの女知ってるの?」

「・・・・・・え?嘘!?そんな!!こ、こん・・な・ことって・・・」

 

その時俺は思い出した。あの時〇〇から早苗は「奇跡」を操ることが出来ると教えてもらったことを。現世で生きていた人間がゲームのキャラに本当になる。普通じゃありえない。しかしそれは今ここで確かに現実になった。これはもしかするとあいつの「奇跡」の力が引き起こしたことなのだろうか?そして俺が幻想郷に来たこともまたそれなのだろうか。でも今はそんなことはどうでもよかった。何故なら今は

 

「久しぶりだな。俺を覚えているか?」

「は・・・はい。・・忘れる、わ・け・・ないです!!だっであなたは、わたじの・・大切な恩人の・・ぐず!!」

 

また会うことが出来たのだから・・・

 

「そうか・・・。はは。俺はまた会えてうれしいよ!早苗!!」

「はい!!私もです!!・・真聡お兄ちゃぁぁぁぁぁん!!」

 

すると早苗はなんと俺に抱き着いてきた。俺は戸惑うが、おそらく霊夢が今一番困惑しているだろう

だけどしばらくすると喜びの方が強くなった

 

そして俺もいつの間にか早苗を抱きしめ返していた

 




二次創作では早苗さんが現世で主人公と知り合いだったり、ゲームのキャラを知っているという設定が多いですが、今作の早苗さんはなんと東方のことも知っています

果たして自分にうまく扱えるのか非常に不安ですが、頑張っていこうと思います

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