携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
~慧音宅~
(「東方project」か。あれは確かシューティングゲームだったっけ。だからあの少女は弾幕で攻撃してきたのか。直接攻撃もあったけど)
俺は思考にふけっていた。この世界のことやこれからどうしていくのかを。慧音さんはあの後朝食を作ってくれて、そのあと部屋に運んできてきてくれた。献立はご飯とみそ汁、そして焼き魚と漬物という実に日本的な朝食だ。味に関しては文句なしでとてもおいしかった。思えば自分は現世ではずっと病院で入院生活をしており、末期には食欲がまるでなく、ろくに食べ物を食べていなかった。だから今は少し怪我をしているものの基本的には健康な状態でまともな食事をするのは久しぶりだった。何というか久しぶりに人間らしい食事をさせてもらい、もちろんそれも慧音にきちんと伝えお礼も言った。そして慧音さんは優しく微笑んでくれた。人ともろくに会話ができていなかったからこういった何気ないことがとてもありがたく思えた。本当に慧音さんと介抱してくれた人達には感謝の念でいっぱいだ
(でもいつまでもここでお世話になるわけにもいかないしな。流石に若い女性一人の家に男が住むというのもあれだし・・・。一応住む場所なら用意できる可能性はある。できるだけ人里の近くにあの技が使えそうな場所があるといいんだけど・・・。でももう一つ問題がある)
それは今自分の手持ちにお金がないのだ。流石に借りるわけにもいかないし、どちらにせよ自分でお金を用意しないと生活できない。働き口を探すのはもちろんだが、その前に出来れば物を売って自分にある程度の資金を作っておきたい。売るものなら木の実など一応ある。ただこれはすべて異世界の物でありそんなものを買ってくれる店があるのかということである。
そうこうしていると慧音さんがやってきてこれからどうするのかと聞いてきた。俺はこれからのことについての考えを慧音さんに話した
「~というわけでして、まずそういった異世界の物でも買ってくれる店ってどこかにありますか?」
「それなら香霖堂がいいと思うぞ」
「香霖堂?」
「あそこは幻想郷で唯一外から来たものの売買をやっている店だ。あそこは人里の外だが距離はそこまで遠くなくて比較的安全だし、おそらく買ってくれると思う」
(そんな店もあるのか。何にせよこれでひとまずお金は何とかなりそうだ)
「しかし住む場所は用意できるというのはどういうことなんだ?」
まあ確かにお金はないのに住む場所は用意できるというのは少しおかしいのかもしれない
「俺の能力で住むスペースを作れる技があるんです。まあこれは実際に見た方が早いかと」
「ほう。ここまでたどり着いて、しかも宵闇の人食い妖怪を倒したという話からただ者ではないとは思っていたが真聡君にも何か能力があるんだな。どういった能力なんだ?」
「俺はポケモンの能力を宿すことが出来る能力を持っているんです」
「ポケモン?」
「『ポケットモンスター』と言って外の世界で絶大な人気があるゲームがありまして、それに出てくるポケモンというモンスターの能力を使うことが出来るんです。まだ未熟でぜんぜん使いこなせていませんが」
「ゲーム?というのは」
「まあ小説とかの類のものというか、その中で出てくる妖獣?のようなものの能力が使えるんです」
「ふーむ。完全には理解できないが、なかなか興味深いな」
とりあえずある程度は伝わったようだ。俺はもう一つ気になることがあったので訪ねてみた
「一つお聞きしたいのですが、俺に襲ってきた妖怪は内部だと光も通さない特殊な闇を作り出してきたのですが、ほかにもそういった能力を持つ存在もいるんですか?」
「妖怪や妖精などにはそれぞれ特殊な能力を持っているものが多い。人間にも能力を持っている者もいる。それは生まれつきかそれともあることがきっかけで能力を手に入れたなど様々だがな。ちなみに私は歴史を喰う程度の能力だ」
「歴史を喰う?」
「まあ簡単に言うと歴史で語られていることをなかったことにすることが出来るんだ。なかったことにするだけであって、過去の出来事を消滅させるというわけではないけどな」
「そんな凄そうな能力なのになぜ程度の能力なんですか?」
「『程度の能力』というとそれしかできないように捉えられることが多いが、そうではなく性質は様々ではあるけどそういったことが出来るという解釈のことが多い。まあこれは本人の自己申告によるものなのだがな」
どうやら俺が住んでいた世界での程度という言葉とのニュアンスが違うようだ。少なくとも能力名のことだけしか出来ないということではなさそうだ
そうこうしていると、起きる時間が遅めだったのもあってもう日が沈みそうになっていた。慧音さんに遅いから泊って行けと薦められそれに甘えることにした。夕食も用意してくれて味はもちろんおいしかった
~香霖堂への道中~
次の日、慧音さんは道がわからないだろうし今日は休日だからということで香霖堂まで案内してくれた。行く途中人里の住人にも会い、挨拶とそして俺を介抱してくれた人にはお礼も言った。先生と言って慧音さんに挨拶してくる子供たちもいた。おそらく寺子屋の生徒なのだろう。慧音さんは周りからも慕われているらしい。
(本当にこの人はとてもいい人だし面倒見もいい。いつかちゃんと恩返しをしないといけないな・・・)
そう思いながら慧音さんの案内についていくと瓦屋根で入り口はドアの一軒屋が見えてきた。「香霖堂」と書かれた看板もある。そのまま案内に従って店に入っていった
「いらっしゃい」
と中には店主と思われる眼鏡をかけた白髪の男性が声をかけてきた。その端に黒い三角帽子をかぶった魔女風の格好をした金髪の少女もいた
一応書き終わった後に誤字がないかチェックをしていますが見逃してしまうところがありますね。気を付けないと