携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
~霧の湖~
朝、俺は目を覚まし、朝食をとった後に俺は外に出た。今日はどこに行こうかと考えていると
「おや?」
途中で人影を見つけた。その正体は・・
「おーい!リリカ!」
「ん?あっ、真聡!おはよう」
丁度リリカが空を飛んで移動していたのを見かけた
「おはよう。いったい一人でどこに行くんだい?」
「えーと。ちょっと音のネタ探しに」
「ネタ探し?」
「うん。最近花々が咲き誇っているでしょ?だからいい音のネタがないかなと思っているの。私のソロライブ用のね」
「ソロライブか」
「姉さんたちには内緒で行ってるの。まだ見つかってないはず」
「あ~残念だけどそうはいかないようだよ。ほら後ろに」
「え?」
リリカの後ろにはすでに二人の姉が来ていた
「こっそりついていってみれば」
「そういうことだったのね」
「あちゃーバレてたかー」
どうやらすぐに気づいてつけていたみたいだ
「でも確かに今ならいろいろなネタを見つけられそうな気もするわね。姉さん」
「そうね。私も探してみようかしら」
「ねえ。真聡も私たちのメンバーよね?」
「まあ一応な」
「じゃあみんなでネタを探して夕方になったら未完成でいいから、自分が作った演奏を披露するってどう?」
「うーん・・・」
(まあ暇だし)
「いいよ」
「決まりね」
というわけで今日はメンバー個人の新曲づくりに参加することになった。俺たち四人は一旦ばらけた
~とある森~
「一杯花が咲いてるな」
この異変のせいで大量の花が咲いていた。見たこともない花もあった
「やっぱせっかくだから花を題材にしたいな」
と考え、俺は一旦紅魔館に向かい、パチュリーさんに花の図鑑を借りていった。俺は花には詳しくないのでこれを使うことにした。とりあえずいろいろ探してみる。ついでに霊を回収ながら。するときれいなピンク色の花が咲いた木を見つけた
「これは椿・・・いや、サザンカだな」
どうやらサザンカの花が咲く木のようだ。本来は冬に咲く花だが、今回の異変で咲いたようだ。ここにも霊たちがいた。しかし一つだけ様子がおかしい霊がいた
「いったいどうしたんです?」
「!?私に話しかけてるんですか?」
ゴーストタイプのポケモンの力を宿したおかげで話すことが出来た。話してみると、他の霊たちは死んだことすら自覚していないのに、この霊は自分が死んでいることに自覚していた。こんなこともあるんだなと思った
「で、あなたは他の霊たちの真似をしてこのサザンカの木に憑依したと」
「はい。私はてっきりこのまま死神に連れていかれると思っていましたが、見たことのない場所に出て、他の霊たちの真似をしてみたら咲いたんです」
「なるほど」
声からしてどうやら女性らしい。その霊は俺に話す
「私この花好きなんです」
「どうしてです?」
「華そのものも好きなんですが、花言葉が好きなんですよ。ご存知ないですか?」
「いいえ。存じ上げません。花には詳しくないものでして」
「花言葉は「ひたむき」と「困難に打ち勝つ」というものなんですよ」
「困難に打ち勝つ・・・」
その言葉に俺の心に響いた
「過酷な冬の中でも美しく咲くということからだそうです」
「・・・いい花言葉ですね」
それから俺は霊としゃべった。生前この人は結婚していて、腹の中には子供がいたらしい。しかし子供のころから病弱な人だったらしい。それが原因で容体が急変して、出産はかなり危険だったらしい。でもせっかくの新たな命をつぶしたくないという想いから懸命に頑張って出産に臨んだらしい。子供は無事に生まれたけど、この人はそのまま亡くなってしまったらしい
「私は小さいころから体が弱かったのでいろいろと困難が続きました。でも私は病弱だからと言ってそれを理由に自分を弱い人間であろうとはしたくはなかったんです。だから私なりですが、精一杯努力して言ったつもりです。就職して、愛する夫に出会って、そして子供が出来た。子供が出来たときは本当にうれしかったんです」
「・・・・・・」
俺はそれを黙って聞いていた。その霊は続ける
「でも今度は私たちの子供の命に関わる事態になりました。でも私はどうしても我が子を見殺しには出来ませんでした。ですからこの命が尽きても必ず産んで見せようと決めたんです」
「・・・そうだったんですか」
「でもそれは我儘なだけだったのかもしれません。夫の〇〇さんを置いてしまったし、私の子も母親の顔も愛情も知らずに生まれてしまったことには心を痛ませています・・・」
魂だけで顔もわからないが、悲しそうな表情をしているんだろうなというのは容易に想像できた
「ですから、せめて私の子はこのサザンカの花言葉のように困難に打ち勝つ強い子に育つことを祈るばかりです」
「そうですか」
しばらくお互い黙ったままだった。しばらくして
「お話を聞いてくださってありがとうございます。最後にこうして人と話が出来て嬉しかったです」
「こちらこそ。話を聞かせていただいてうれしい限りです」
そして俺はこの霊に言った
「あなたのお子さんと旦那さんはきっとたくましく生きていきますよ。子供はあなたの顔を知らなくても旦那さんはあなたの奮闘と想いの強さをしかと見ていたはずです。お子さんにもきっといつか大きくなったら伝えてくれますよ。私も陰ながらあなたのご家族の幸せを願っています」
「・・・ありがとうございます」
こうしてこの霊も袋にしまった
そして俺はすぐに作曲を始めた
~夕方~
「それじゃそれぞれの曲を演奏させてもらうわよ」
「「「おーーー!!」」」
まずはリリカが披露した。彼女は鍵盤楽器で無邪気で楽しそうな感じの音楽を作った。どことなくお調子者の彼女らしい面が出ていた気がした
続いてメルラン。得意の管楽器を使ったメロディーだ。明るい彼女にピッタリな感じのメロディーが流れる。演奏している彼女も楽しそうだった
そして今度はルナサだ。他の二人とは違ってバイオリンを使ったシックで落ち着いたメロディーだ。流石は長女にしてリーダーだけあって完成度は高いと感じだった
そしていよいよ俺の出番だ。俺はサザンカの「困難に打ち勝つ」と「ひたむきさ」をテーマにしてメロディーを作った。そして今日であった霊のイメージものせた。演奏が終わると三人とも拍手で讃えてくれた。せっかくなので今日出会った霊にも聞いてもらった。その霊は嬉しそうに聞いてくれていた気がした
「いやー、四人ともなかなかの力作が出来たわね」
「ソロとか久しぶりだったけど、楽しかったわ」
「そうね。今日はなかなかいい一日だったわ。真聡の曲もとてもよかったわよ」
「ありがとう。今度もっと精度を上げて演奏してみようかな」
「じゃあ今度呼ばれたら、それぞれソロで演奏を披露してみようか」
そのあと俺は事情を伝えて、パチュリーさんに借りた本を返した後、今日は洋館に泊めてもらった
ベッドで寝転がって俺は「今日もいい一日だったな」と心から思った
今回の話を作るにあたって、あらかじめ色々な花を調べた末に私が今の主人公にはこれがいいかもと思ってサザンカを選びました