携帯獣の能力を宿す者の幻想伝   作:幕の内

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花映塚編です


第五章:花映塚編
咲き誇る花々。そして旅立ち


永夜異変から半年ほどの月日が流れて幻想郷にまた春が訪れた。今年は去年会った春雪異変のように春が来ないなんてことはなく、桜が鮮やかに咲き誇っていた・・・

 

しかしそれは桜だけではなかった。ヒマワリ、菊、桔梗と言った春には咲かないはずの季節外れの花が一斉に咲き誇っていたのだ。きれいな光景だが、これは本当に大丈夫なのだろうかと疑問に持つものも少なからずいた。そして木戸真聡もその一人だった

 

「・・・・原因はこいつらか」

 

俺は手に何かを持っていた。それは魂だけとなった存在、霊であった。俺はヨノワールの力を宿してとりあえず捕まえておいた。どうやらこいつらが花に取り憑いているのが原因らしい

 

「とりあえずちょっと幽々子さんのところに行って聞いてみるか」

 

俺はヨノワールの力で冥界に直接向かった

 

 

~白玉楼~

 

「・・・というわけでここに連れて来たんですけど、もしかして冥界に異変が起こっているのではないかと思ってきたわけなんですが」

「いいえ。冥界には特に異変は起こってないわよ」

「そうですか」

 

効いたところ、どうやら冥界には特に異変は起こっていないようだ

 

「となると、どうして霊が花に取り憑いているんだろう?」

 

と何気なく言った。すると

 

「それはおそらく地獄からだと思うわ」

「地獄に?」

「ええ。ここを除いたらあとはあそこくらいでしょうし」

「なるほど」

「それにこれは60年に一度には起こる異変なのよ」

「そうなんですか!?」

「ええ。それは・・・

 

幽々子さんの話によると60年に一度、外界の幽霊が大量発生して死神の仕事の許容範囲を超えることがあるらしい。そして霊たちは花に憑依して花が咲き乱れる現象を起こすそうだ。それに乗じて自然の化身である妖精たちもお祭り騒ぎになって活発化するようだ。でもいずれは死神たちがすべて処理をして放置していても解決するらしい。特に大きな異変でなくてよかったと思った

 

「それを聞いて安心しましたよ。じゃあ俺はこれで」

 

と言って立ち去ろうとしたが

 

「・・・一つ聞いていいかしら?」

「何でしょうか?」

「あなたどうしてそんなにつらそうな顔をしているのかしら?あの時の異変以来ずっとよ?」

「・・・・きっと疲れがたまっているんですよ。御心配には及びません」

「・・・・・そう」

「ではこれで」

 

そして俺は今度こそ立ち去った

 

「・・・あのときどうして泣いていたのかしらね・・・」

 

~とある広場~

 

俺は今、日課の修行を行ってきた。今日は普段より短めにしようとしたつもりだったが、一向に気持ちが落ち着かず、結局長くやってしまう

 

(・・・俺はこれからどうしていくべきなんだろうか)

 

俺には今、迷いがあった。永夜異変では危うく幻想郷を消滅させる事態に陥ったことがあれからも頭から離れなかった。元通りの日常には戻ったが、それは本当に運が良かっただけだったことに過ぎない。慧音さん、魔理沙、レミリア、幽々子さんの呼びかけがないともう俺はあのまま滅ぼし、この世界は存在しなかっただろう

 

(このまま俺は消えるべきなのか・・・)

 

俺は空に浮かぶ月をしばらく眺めていた

 

(違う。そんなことをしても結局周りを悲しませて迷惑をかけるだけだ。自意識過剰な思考なのかもしれないけど、いずれにしろ根本的な解決には多分ならない)

 

しばらく考え込んだ末に俺は・・・

 

~自警団本部~

 

「え?数日でいいから休ませてほしいだと!?」

「はい」

 

翌日、俺は所長にしばらくの数日間でいいので休ませてくれないかと頼んでいる

 

「それは一体どうしてかね?今まで君は異変の時以外では一度も休んではおらんというのに」

「・・・実は少し思うところがありまして、数日間だけ考える時間が欲しいんです。わがままは重々承知ですが、しかしこのままでは一向に改善しそうにないのです」

「・・・・・」

「どうか、お願いします」

 

俺は深々と頭を下げて懇願した。所長はしばらく黙っていたが

 

「ちゃんと幻想郷にはいるのかね?」

「は、はい。そうですが」

「・・・・・・」

 

すると所長はこう言った

 

「君は我が自警団が始まって以来極めて優秀な存在だ。我々としても君が万全でないと少々不安だ」

「・・・・」

「だから最大で一週間だけ休みを与えよう」

「え?いいんですか?」

「構わん。部下たちもここ最近の君の様子を心配していたし、私もそうだった。君がそう思うのならしばらくの間、君の自由にしてみるといい」

「所長・・・」

「ただし、もし人里に大いなる危機が襲ってきたらすぐに駆け付けてくれ。それだけは守ってくれないか?」

「も・もちろんです!!」

 

そして俺はまた頭を下げて

 

「ありがとうございます」

 

と精一杯の感謝の気持ちを込めてお礼を言った

 

 

~自宅~

 

ガチャ

「これで良し」

 

翌日俺は旅の準備をして、扉の鍵を閉めた。準備は万端である

 

(一週間では足りないかもしれないし、こんなことをしても意味がないのかもしれないけど・・・)

 

そう思いはしたが、俺は歩みを進める。

 

何が待っているのかはわからないけど、今の自分の迷いを断ち切れる何かが見つけられることを信じて彼は旅に出るのだった

 




花映塚をベースにしていますが、基本的に主人公の心の旅に近い感じです
幽々子は長く生きていて冥界の管理者なので、この異変の真相を知っていたということにしました


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