携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
もう桜の桃色も深い緑色へと染まり始めていた。しかし異常な事態が起こっていた。それは
「ふう~お疲れ様!!」
「最近よく呼ばれることが多いよねー」
「仕事が増えて収入が増えるのはいいけど、こうも宴会ばかりだとさすがに疲れるわ」
「お疲れ様。疲れたときに良い甘めのポフィンでも食うか?」
「「ありがとう!!」」
「いただくわね」
今プリズムリバー楽団は大忙しである。ここ最近お花見という名の宴会が頻繁に行われているのだ。しかしいくらなんでも続きすぎる。幻想郷に来て数年経つがこんなに頻繁に行われたことはないし、ある年限定に起こるとかいう話も聞いたことがない。しかも何故か妖気が高まっている
「まさかこれは・・・」
~博麗神社~
「おかしいわね」
「何がだ?」
博麗神社の境内に霊夢と魔理沙がいた。霊夢は持ち前の勘で今起きている現状に違和感を感じていた
「最近宴会が頻繁にありすぎるし、それにやるたびに妖気がどんどん強くなっているわ。これはもしかして・・」
「異変なのか?」
「ええ。・・・私の勘ではこの霧が怪しいと思うのよね」
「その通りだ霊夢。勘だけでここまで見抜くとはさすがは博麗の巫女といったところだな」
「!?」
「真聡!?」
俺は空からやってきた。そして俺はゆっくりと着地する
「その通りだって・・・まさか犯人はあんたなの!?」
「違う。そうじゃなくてこの異変の原因はこの霧自体だということだ」
「どういうことなんだ?」
俺はテッカニンの力を宿して二人にこう告げた
「正確に言うと犯人が霧を発生させて異変を起こしているのではない。この霧が犯人そのものなんだ」
「「!?」」
ヒュン・・・
俺の姿は一瞬で消えた。テレポートなどの瞬間移動の類ではない。これは純粋な速さによるものだ
「きりばらい」
すると俺は目に映らぬほどの超スピードで幻想郷中を飛び回り、「きりばらい」で霧を払っていく。特性により更に速度が上がり、ほんの数秒で幻想郷を取り巻く霧を博麗神社を除いて払った
そして俺は境内に戻り、別のポケモンの力を宿す
宿したポケモンの名はルカリオ。そのあと俺はこう叫んだ
「お前の正体はもう「みやぶ(る)」っている。姿を表してもらうぞ!」
俺は腕に青く輝く波導を集める。そして
「はどうだん!!」
波導のエネルギーの塊を霧の中心部に向かって発射する。すると何かに命中した
「!?」
「な、なんだ!?」
「この異変の犯人さ」
爆煙とともに霧も晴れ始める。するとその中から人影が現れた
「くう・・。まさかこんなにあっさりバレるだなんて。噂以上にでたらめな能力を持つ人間だねぇ」
「「!?」」
すると薄茶色のロングヘアーに紅い瞳。そして頭に長い二本の角が特徴的な少女が出てきた。見た目はかなり幼い
「何だこいつは!?」
「なるほど。確かに犯人は霧そのものだったわね」
「お前がこの異変の元凶で間違いないな?いったい何を企んでいるんだ?俺のことを知っているようだが」
しばらくすると
「あんたはもう幻想郷中に名が轟いているよ、木戸真敏。私の古い友人は多分あんたと戦いたがっているだろうねぇ」
「そうか。で、お前の目的はなんだ?」
「まず名乗っておこうか。私の名前は伊吹萃香、昔は妖怪の山に住んでいた鬼さ」
(鬼か。だから角が生えているわけか)
そして萃香は話を続ける
「今年はあの異変のせいで春が極端に短くなったでしょ?あたしは宴会が好きでねぇ、あの異変で花見の回数が減ったことに不満があったのよ。それと私たち鬼は酒が大好きだからねぇ、派手に宴会でもすれば外にいるかつての仲間らも戻ってくるかもしれないと思ってやったの。ま、失敗だったけどね。まさか博麗の巫女の力が障害になると思わなかったわ」
「それはどういうことなのよ。私はそんな能力を使った覚えはないわ」
「あんたの自覚がないだけ。まさか私の「人攫い」の力が幻想郷の住人に通用しないとわね。まっ別に恨んだりはしないけどね。心配しないでいいよ。私たち鬼は嘘をつくのは嫌いだからね」
彼女の目的はわかった。あとはこのままで済めばいいのだが
「ではもうこの異変を起こすのを止めてくれないか?これ以上やらないのなら何もしない」
「・・・いいよ。バレてしまったんなら仕方ないしね。宴会はそれなりに楽しんだし」
「そうか」
これで済むのならそれが一番と安堵していたのだが
「ただし条件が二つある」
「・・・なんだ?」
「まずどうしてこの異変の犯人は霧そのものだと思ったのかを説明してもらおうか」
「私も気になるぜ」
「教えてくれるかしら?」
「いいだろう」
俺は少し間を置いた後に説明を始める
「俺自身も持っているが、今宿しているルカリオというポケモンには波導という力を扱える」
「波導?」
「波導とはすべての物質が持つ固有の振動のことだ。気やオーラのようなものと言えばわかりやすいだろう。波導が扱えれば視覚の有無に関係なく物の存在を感知することが出来る。そして一つ一つそれは微妙に異なる。木には木の、岩には岩の、霊夢には霊夢の、そして俺には俺の波導があってそれぞれ違う。俺は霧が出ているところを徹底的に周って波導を調べたんだ。そして気づいたのさ。どの霧にも同じ波導があるということにな」
「・・・・」
「波導はそれぞれ異なるもの。何日かかけて調べたがすべて同じだった。そうなると答えは一つだ。犯人は自分自身が霧になることが出来る能力を持つだろうとな」
「「「・・・・・・」」」
俺の話を三人とも黙って聞いていた。そして更に続ける
「波導には強弱がある。そして今日の霧の中で一番強かったのはこの神社だ。おそらくお前の目や脳にあたるところがそこにいたんだろう。今日はこの神社で宴会だったからな。そして俺はテッカニンの超スピードを利用して「きりばらい」で博麗神社を除いた霧を一瞬ですべて払った。自分の体を霧にしたのなら相手に一か所を除いて霧を払われてしまえば、残った一か所に自分の体を集めざるを得なくなる。その後俺は相手の正体を見破ることで本来実体のない幽霊にも物理的なダメージを当てられる技、「みやぶる」を発動した。そしてお前の波導が特に集まったところに向けて攻撃した。以上だ」
「いやー参った!おみそれしたよ」
「・・・お前本当に何なんだよ」
「紅霧異変の時に一瞬だけ見たけど、フランの分身の中にある本体を見破っていたけど、もしかしてその力だったの?」
「その通りだ」
三者三様の感想が述べられる
「さて一つ目は果たしたぞ。二つ目は何だ?」
「・・・もうわかってるんじゃないの?」
「・・・俺と戦うことか?」
「その通り!!私ら鬼は酒と同じくらい勝負が大好きなのさ。私もずっと前から戦ってみたかったんだよねぇ。でもあんたは人里で働いているから、妖怪である私だとなかなか行きにくかったのよ」
萃香はひょうたんに入っている酒をグイッと飲む。そして
「だからこの勝負受けてもらうよ。もちろん弾幕ごっこじゃない実戦でね」
「・・・・場所を変えてもいいか?ここでやるわけにはいかないだろう」
「ああいいよ。要求を呑んでくれるのならね」
「あんた相手は鬼よ。実戦で大丈夫なの?」
「俺は弾幕ごっこよりも実戦の経験の方がずっと多いし、その方が得意だ」
「・・・本当に大丈夫なのか?」
「お前が心配するとは珍しいな」
「///うるせえ!たまにはあるんだよ!!」
「・・・ありがとうな。だが心配は無用だ。お前はここでゆっくりしてな」
と魔理沙を見て言った
「さて行くとしようか」
「わかった。さっさと連れててもらおうか」
「よし。「テレポート」」
俺と萃香は一瞬で姿を消した
~とある平原~
「ここならいいだろう」
そこは妖怪があまりいない平原だった。ここなら暴れても大丈夫だろう
「さあて。ここ最近幻想郷を騒がせる人間の力をとくと味わわせてもらおうか」
人間と鬼との決闘の幕が今開こうとしていた
テッカニン NO.291 タイプ:むし・ひこう
あらゆるポケモンの中でもスピードフォルムのデオキシスを除いてすばやさが最も高いポケモン。更に1ターンごとにすばやさが一段階上昇するとくせい「かそく」を持っているため、実質一番すばやさが高いポケモンと言えるだろう。そのスピードは速すぎて姿が見えないほどであり、鳴き声しかしないので、長い間透明なポケモンと言われていた。虫らしく樹液が好物。上手に育てないということを聞かずに大声で泣き続けるのでトレーナーの腕が試されるポケモンらしい
ルカリオ NO.448 タイプ:かくとう・はがね
映画「波導の勇者ルカリオ」で一般ポケモンにして初めて映画の主役を飾ったポケモン。アニメやゲームでも出番は多く、知名度は高い。あらゆる物質に存在する波導という力を操ることが出来るポケモン。それを利用して見えない相手の姿を見たり、一キロ先にいる相手の考えや種類を読み取ることができる。進化前のリオルの頃でも波導を扱えるが、ルカリオと違って読み取ることしかできない
大乱闘スマッシュブラザーズでも登場している。ダメージを受けるほど波導の力が強くなり、攻撃力が上がるという固有の特徴を持つ。ちなみに映画とスマブラでは「