携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
異変は解決して俺は本業の自警団の仕事に戻ることにした
白銀の世界だったのが噓のように雪はすっかり解けてなくなり、色とりどりの花と青々とした緑の大地が広がり始める。そして春と言ったら忘れてはいけないのは桜だ。もうすっかり咲き誇り花見を始めるところも増えてきた。俺も宴会に呼ばれている
しかしその前に俺は行くところがあった。それは・・・
~廃洋館~
「ここだったな」
俺は今プリズムリバーさん三姉妹の住む廃洋館にやってきた
あの時は異変の解決を優先せざるを得ない状況であり、解決したら向かうと書いた手紙を渡して後回しにせざるを得なかった。今日はその謝罪に来たのである
扉の前に来て、俺はノックをした
「木戸真聡です。約束通り、この屋敷に来ました」
と言った。するとひとりでにドアが開き、俺は中に入った
中に進んでいくと広間への扉があった。俺はそれを開くと
「ようこそお越しいただきました!!」
「私たちは」
「幻想郷で演奏を奏でる」
「「「プリズムリバー楽団でーす」」」!!!
「・・・・・・・・・え?」
(あれ?ちょっと待った。俺謝罪に来たんだよな。で俺はもっと険悪な雰囲気を想定してきたつもりだったんだが、これは一体?)
予想外の対応に俺は今混乱している。大けがを負ったと聞くので治療用のキズぐすりなども多めに用意してきたのだが・・・
「あ~えーと、手紙に書いた約束通り、ここにやってきたんだけど」
「いらっしゃーい。やっぱりあんたには私たちが見えるんだね。まあそこに座ってよ」
とりあえず俺は用意されたソファに座った
「そういえば名乗ってなかったわね。私はこの三姉妹の末っ子のリリカ・プリズムリバーよ」
「木戸真聡だ。で、お二人がリリカさんのお姉さま方で間違いないですか?」
「・・・ええそうよ。私は長女のルナサ・プリズムリバー」
「そして私が次女のメルラン・プリズムリバーでーす!!よろしくね!!」
「よ、よろしく」
(長女のルナサはかなりおとなしい人だというのに次女のメルランは対照的にずいぶん明るい人だな)
そう思いながら俺は
「以前の紅霧異変の時にお二人には大けがを負わせてしまったそうで。その節は本当に申し訳ございませんでした」
と俺は頭を下げて謝罪した
「・・・別に気にしてないわよ」
「リリカにいろいろ聞かされたようだけど、私たちはそこまで気にしてないわよ」
どうやら特に怒ってはいないようだ。なんか拍子抜けだがまあ元気そうでよかった
「でもさ私は特に姉さんたちのことについては話してないよ。どうやって知ったの?」
とリリカが聞いてきた。俺はどうやって知ったかを説明した
~少年説明中~
「なるほど。あなたにはそんな能力があるのね」
「過去と未来を見ることが出来るなんてすごい!!新聞でも書いてあったけどあなたって相当凄い人間なのね」
「今回の異変も解決しちゃったし、普通に勝負しても勝てそうもなかったわね」
「でもあなたが私たちを思って復讐に出るとわね。普段はめんどくさがってなかなか自分からはしないくせに」
「それは私も思ったわ・・・」
「///そ・そりゃ姉さんたちを大けがさせてしばらく動けなくなったのは事実だし、姉さんたちがいなくなったら困るし///」
「・・・ふふ。あんたもそういうところがあるのね」
「もう!可愛いところもあるじゃないの~」
「ちょ、ちょっとからかわないでよ///」
なんだかとても仲の良さそうな姉妹だ。性格は違ってもどこか通じ合うところがあるんだろう
「この館はあなた方にとってとても大切なもののようですが、それはどうしてですか?良ければでいいので」
「あ~それはね・・・」
この後この館のことについて話してくれた。かつてはもう一人妹がいたらしく、彼女は自分たちを生み出した人らしい。名前はレイラ・プリズムリバーという人で四姉妹の父親であるプリズムリバー伯爵が偶然手に入れたマジックアイテムのせいで一家が崩壊し、姉妹はそれぞれ別々に生きていたらしい。しかしプリズムリバー家の屋敷に残ったレイラはマジックアイテムの力を借りて三人の姉を模した騒霊を生み出し、それが現在のプリズムリバー三姉妹とのことだ。そのあとは幻想郷に屋敷ごと流れ着き、三人はレイラの困難を何度も助けていき、そしてレイラは天寿を全うしたらしい。しかしレイラ亡き後も何故か消えずに、そのあとは「騒霊らしく騒がしく生きよう」ということで楽器を習得して楽団を結成して今に至るということのようだ
そのあとも俺たちはいろんなことを話した。俺も次第に砕けた言葉遣いになっていった
「そうそう私たち、宴会に呼ばれて演奏するから期待していてね」
「そうか。それは楽しみだな」
「・・・・・・・・」
「ルナサ姉さん。どうしたの?」
「・・・真聡さん。あなたいろんなポケモンとかいう妖獣の力が扱えるのよね?」
「まあな」
「何か音楽が出来るやつとかいる?」
「え!?」
(音楽の能力か・・・まあいるにはいるが)
俺は試しにコロトックの力を宿して、適当にメロディを作って奏でた。全然楽器を弾いたことがなかったがコロトックの能力のおかげで即興でも丁寧に弾けた
「凄いじゃない!これは使えるわ!!」
「ねえ、よければ今度の宴会で一緒に演奏してみない?」
「え~でも演奏とか俺やったことないしな・・」
と俺は断ろうとしたが、するとリリカが
「あなた私たちに謝罪に来たのよね?」
「そうだけど?」
「じゃあその罪滅ぼしということでさ、今回だけでもいいから出てよ。これで済むのならすごく都合がいいことだと思うんだけどな~♪」
(痛いところついてきたな・・・なかなかの策士だ。でもまあこのまま何もしないのもあれだし)
「わかった。協力するよ」
というわけで俺は姉妹と一緒に仕事が終わったら洋館にやってきて練習した
~博麗神社~
今日は快晴で絶好のお花見日和だ。桜が満開で多くの人が博麗神社に多くの人が集まる。俺が誘って人里の人たちもやってきた。普段は全然人が来ない博麗神社に人が急にいっぱい来てお賽銭も入れてくれるので霊夢は非常に上機嫌だ。そして・・・
「皆様こんにちは!今回も呼ばれてきましたプリズムリバー楽団でーす。そして私は次女のメルランでーす!!」
『ワアアアアアアアアア!!!』
プリズムリバーにはファンクラブもあるらしく、熱狂的なファンの人たちもいて会場は盛り上がっている
「リリカでーす!そして今回はゲスト奏者としてこの方にも演奏してもらいまーす!!」
「それでは紹介します。今回のゲスト奏者の・・・」
「木戸真聡です!!経験は浅いですが、精一杯演奏させていただきますのでよろしくお願いします!!」
そして演奏を開始した。俺の役目はルナサとコロトックの弦楽器のように腕を交差させて音を出す能力を利用したデュエットや自在にメロディーを奏でられる鳴き声を利用したメロディーづくりを担当した。会場は盛り上がり大盛況となった
「お疲れ様ーーー!!」
「お疲れ様です。うまくいってましたか?」
「ばっちりだよ」
「それはよかった」
緊張したけど途中からは楽しくなっていき、最後までしっかりと役をこなしたつもりだ
「音楽というのも悪くないかもね」
「またよかったら一緒に演奏してくれるかしら?」
「ああ。時間が空いている時ならいいよ」
こうして俺はたまに協力することになり、仮としてメンバーの一員となった
そのあとは俺も花見を楽しんだ。人々はようやく来た春を心から楽しんでおり、実に楽しい花見だった
やがてお開きになり、俺は自警団でもあるので人々の警護にあたった。それが終わって博麗神社で片づけを手伝っていると
「ちょっといいかしら?」
「あっ、幽々子さん。何かご用ですか?」
「少しお話していいかしら?」
「はい。いいですけど」
俺は霊夢にも許可をもらって幽々子さんの話をすることにした
「今回の異変のことは本当にごめんなさい。危うく幻想郷を滅ぼすところだった。あなたの忠告を無視したばかりにあんなことに」
「まあここが幻想郷といっても、いきなり俺が見た未来を信じろと言われても難しいでしょう。しかし今はこうして花見が出来たんだし、よかったじゃないですか」
「そうね。今日は楽しかったわ。あなたの演奏もとてもよかったわよ」
「ありがとうございます」
風が吹いてきた。満開の桜も次第に散っていく。しばらくすると幽々子さんが口を開いた
「あなたには心から感謝するわ。私を助けてくれたこと、そして私を過去に連れていって真実を見せてくれたことも」
「・・・・助けたのは霊夢と紫さん、魔理沙に咲夜に妖夢、紫さんの部下の二人の協力がないと出来ませんでしたよ。その人たちにもお礼を言ってあげてください」
「ふふ。あなたは本当に優しくて律儀な殿方ね・・・本当にどうもありがとう」
幽々子さんは微笑みながらそう言った。気のせいか、生前の幽々子さんの面影が見えた気がした
こうして長い冬の異変は終わり、そして春もまた次第に桜と共に終わりを迎えようとするのだった
コロトック NO.402 タイプ:むし
シンオウ地法の序盤虫ポケモン。ナイフのような腕を交差させて音を出す。鳴き声は変幻自在でいろんなメロディーを奏でることが出来る。その鳴き声を利用して競い合わせる鳴き比べという遊びを楽しむ村もあるらしい。ポケモンの中でも屈指の音楽要素が強いポケモンと言えるだろう
妖々夢編はこれで終わりです。次回からはしばらく日常系や萃夢想も少し入れようと思います。連載開始から3週間ほど経ちましたが、閲覧数や感想、評価も増えてきてうれしい限りです。これからも頑張っていく所存ですのでどうぞよろしくお願いします