携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
~博麗神社・境内~
(八雲紫・・・。「幻想郷縁起」であったけど、確かこの幻想郷を創設した賢者とも呼ばれる最古参の妖怪だったな・・・)
「・・・何の御用でしょうか?」
しばらく沈黙が続く。そしてこの妖怪の得体のしれなさに俺は内心緊張していた
「私が聞きたいことは一つだけよ。あなたは一体何者なの?」
と聞いてきた。そして続けて
「私はこの幻想郷を覆う結界の管理をしているわ。そしてたまに外界から外来人が来ることがあることも知っているし、来たこともわかるわ。・・・しかしあなたは私が気づかぬ間にこの地に現れた。しかも大抵の外来人は人里にたどり着く前に妖怪に食い殺されるけど、あなたはこの地に現れたときから特別な力を持ち、妖怪から逃れるどころか倒してしまった。しかも素の身体能力も普通の人間を遥かに凌駕する。そして今回の異変で吸血鬼を倒し、更に地形の修復までやってのけた。こんな人間は前例がないわ。もう一度聞くけどあなたは本当に何者なの?」
どうやら俺のことについて聞いてきたようだ。しかしどう答えたらよいものか。俺はなんでポケモンの能力を手に入れて、そしてこの幻想郷に来たのかも分からないし、だれがやったかもわからない。ただ言えることは
「俺はかつては外の世界で住んでいました。そして俺は病で死んだ。わかるのはそれだけです。この力をくれた者も、幻想郷に来た理由も俺には何一つわかりません」
そう答えるしかなかったし、これが俺の正直な答えだ。それ以上もそれ以下でもない
そしてまたしばらくの間沈黙が続いた。この時は異様に時の流れが遅く感じた
ヒュウ~、ザザザザァ・・・
夜風とそれにたなびく森の音だけが聞こえた
「・・・もう一つだけ聞いておくわ。あなたが魔理沙たちに言ったあの言葉に偽りはないのかしら?」
少し黙っていたが、俺はそのあと改めて八雲紫の目を見据え
「もちろんです。あれには嘘偽りは一つもありません。何ならこの幻想郷には閻魔がいると聞きますので、今からその閻魔に尋問してもらっても構いません」
としっかり答えた
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
お互いしばらく黙り込むが・・・
「・・・わかったわ。今は貴方を善人と認め何もしない。ただしこれだけは覚えておいて。私は誰よりもこの幻想郷を愛している者だと自負しているわ。だからもしあなたが幻想郷に仇なすものと分かればその時は容赦しない。それだけはよく覚えておきなさい」
そう言うといきなり空間から切れ目が出来た。中には目玉がたくさん見えた。おそらくあれが本に書かれていた「スキマ」というものだろう。そして八雲紫はその中に入り消えていった
「ふぅ・・・」
と思わずため息をついた。なんとも得体のしれない相手だった
「すっかり酔いが覚めたな・・・」
そうつぶやき、俺は今度こそ「テレポート」で自宅に戻っていった
今回の異変で木戸真敏の名は幻想郷中に轟き名を知られるようになった。
そして彼は「幻想郷録起」にこのように記された
名前: 木戸真聡
種族 : 人間(外界基準)
二つ名 : 妖獣の力を宿す人里の守り人
能力 : ポケモンの力を宿す程度の能力
(ポケモンとは妖獣のようなもの)
危険度 : 低
人間友好度 : 高
主な活動場所: 人里 (自警団隊長)
そして彼の幻想郷での生活はこれからも続いていく・・・
何とか紅魔郷編は無事に書き終えました。
次は日常回も少し挟んでから、妖々夢編も書いていこうと思います
執筆から二週間ほど経ちましたが、思ったよりも閲覧数やお気に入り数が増えてきてうれしい限りです。感想は大歓迎ですのでいつでもどうぞ
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