携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
「お姉さま。私は・・・」
「フラン。部屋でじっとしてなさいって言ったわよね?どうしてここにいるのかしら?」
レミリアはフランをにらみつけていた。その眼光にフランは思わずひるむ。そのせいで思わず迷いが生じ始める
ふと後ろを向いた。そこには腕を組んで今の現状をじっとみている真聡がいた。
そして道中で言われたことを思い出す・・・
~数分前~
「・・・不安なのか?フラン」
「へ!?そ、そんなことないよ!」
「無理するなよ。さっきから滅茶苦茶不安そうな表情してるじゃないか」
「・・・・・・うん、やっぱり怖い。またあの部屋に閉じ込められたりとかお姉さまたちに何かあったらと思うと・・」
しばらく沈黙が続く。しばらくして真敏は口を開く
「フラン。さっき自分を直したいときにはどうしないといけないって俺は言った?」
「自分で行動するだったよね?」
「そうだな。だがそれにはあるものに勝たないといけないんだ。そのあるものってなにかわかるか?」
「え?え~と?お姉さま?それとも真聡お兄ちゃん?」
「違う。他人に勝つのは二の次だ。一番はな、自分に勝つことだ」
「え?自分に?自分を攻撃しないとダメなの?」
「強さというのはな、力が強いとか、動きが速いとかだけではないぞ。君はさ、大切な人たちでも壊していく自分を許せるの?その相手がたった一人のお姉ちゃんであっても」
「そ・そんな自分なんていやだ!!私の手でお姉さまたちを壊すことなんて絶対・・」
「・・・ほら、許せないんだろ?そんな自分を」
「あっ」
「じゃあ、まずそれに勝って見せろ。自分は絶対に大事なものを壊さない。そんな自分なんかに負けないんだぞって。」
「!」
「そうすれば君はきっといい方向に向かえる。だから自分が出来ないとすぐに決めつけるな。それが出来ればきっと自分の狂気にだって負けることはないさ」
~紅魔館・最上階~
(さあフラン。言ってごらん)
「・・・私は・・・」
数秒沈黙が続くが
「私はもっと自由にしたい。パチュリーや咲夜、美鈴、小悪魔、正敏お兄ちゃんにそしてお姉さまともっと遊んだりお話したいの!!!」
と本音を思いっきり叫んだ。レミリアも驚いたようだ。しばらく経ち・・・
「その後ろにいる人間にそそのかされたのかしら?姉である私の言うことよりも人間風情の方を聞くというの?」
「違う!!私はお姉さまたちが心配するほど弱くなんかない!!!私はなんでも壊しちゃう自分にだって負けない!!!」
「・・・そう。いいわ!ならお仕置きしてあげる!!」
レミリアは力をためて深紅の巨大な槍を生み出す
でもフランは全く臆さない。そして巨大な炎の剣を生み出し。それを振りかぶってレミリアに挑みかかった
ドーーン!!!
両者の武器がぶつかり合う。威力は互角だ。
レミリアは内心驚いていた。今のフランは凛とした迷いのない紅い瞳で、狂気に全く飲まれていないからだ。その様子は客観的に見ても誇り高い吸血鬼の気迫だった
カーン!!、キキン、バリバリバリ!!
二人は壮絶な空中戦を繰り広げていた。俺はそれをじっと見守る。
(それでいいんだよ。フラン・・・)
そう思いながら姉妹の戦いを見ていると・・・
「・・・ねえ?私がいるってことわかってる?」
「あ・・・(いけね。完全に頭になかった)」
博麗霊夢が俺に話しかけてきたのである。俺はすっかり忘れていた。
「ああ・・・初めましてだな。博麗の巫女殿。俺は木戸真敏。人里の自警団の隊長だ」
「ええ、話は魔理沙とかから聞いているわ。あとその呼び方は好きじゃないから霊夢でいいわ」
「そうか」
魔理沙から話は聞いてはいたけどなんとも不思議な雰囲気を持つ人だなと思った
「いったいどういうつもりなのかしら?あの姉妹の仲をどうにかしようだなんて」
「はは。何となくさ。495年も閉じ込められたってことには絶対何かありそうだし気になっただけ。それにこうした方が後々のことを考えてもいいかなと思ってさ」
「ふーん」
「まあとにかく今は見物と行こうじゃないか。霊夢」
しばらくは互角だったが徐々にレミリアが押してきた。純粋な破壊力が上でも戦闘の経験値はレミリアの方がはるかに上である。そうなるのも仕方ないだろう。でもフランは諦めていなかった。そしてその闘志は今もなお、狂気に飲まれることなく燃え盛っていた
そしてレミリアもどこか楽しそうだった
「はああああああああああああ!!!」
「たああああああああああああ!!!」
両者は己の武器に魔力を限界まで込める。そして・・・
バリバリバリバリ!!!!
メキメキメキメキ!!
ぶつかりあったエネルギーにより、壁と天井ににひびが入り始める
「これは・・」
「ああ。そうだな・・・逃げるぞ!!霊夢!!」
俺たちは急いで館を脱出した。そして・・・
ドッゴーーーン!!!
案の定、紅魔館は爆発と共に天井と壁が破壊された。そして煙が立ち込めた
煙が晴れてくるとそこでは姉妹が宙に浮き向き合っていた。二人の様子を見るとわずかにレミリアの方が後ずさり、そしてわずかだがダメージを負っている様だった。そして
「ふふふ。強くなったわね、フラン。まさか姉である私に押し勝つなんて・・・」
「お姉さま・・・」
「でもね、これだけはわかって欲しいの。私はフランが憎くてこんな目に合わせたんじゃない。あなたのためを思ってなのよ」
「え?」
「フランはまだ生まれたばかりだったけど、私たち吸血鬼はかつてひどい迫害を受けていたの。人間を殺すことなんて造作もないことだけど。数だけは多いからね
フランにはこんな目には合わせたくなかったし、そしてフランは本当は優しいことは知っているわ。だからもし自分で大切なものを壊してしまったら深い心の傷を作りかねない。だから仕方なくそうするしかなかったの・・・」
「・・・・・」
フランは黙って聞いていた
「でもそれは私の独りよがりな考えだった。妹であるフランは自分に立ち向かえたのに、私は逃げてばかりだったわ。・・・情けないお姉さまでごめんなさいね」
「お姉さま・・・」
フランは泣いていた。しかしそれは悲しみではなく喜びの涙だった。そして二人は抱き合った
その姿は人間とも変わらない姉妹愛の姿だった。俺と霊夢はその様子を何もせずに見守っていた
「フラン聞いて、今空に紅い霧が覆っているけどこれは太陽の光を遮断してくれるの。つまりあなたはいつでも外で遊べるってわけ」
「本当なの!?お姉さま!!」
「ええ、本当よ。ただしそれには・・・」
レミリアが振り向くと真敏と霊夢が近づいていた
「よかったなフラン。また仲直りできて。本当はこのまま美しい姉妹愛を見て終わりたいところだが・・・」
「そうよ。この霧は迷惑なのよ!今すぐに消してもらうわよ!!」
「というわけでだフラン。悪いがそれを阻止させてもらう。俺も人里を守るものとして見過ごすわけにはいかないんでな」
するとレミリアが
「ふふ、木戸真聡。お前には感謝はしているわ。でもね、日の光を遮断することはこの地は我が手中に治めたも同然。それを阻止されるわけにはいかないわ。二人とも倒させてもらうわよ!!」
「えへへ。真聡お兄ちゃん。さっきの私のままとは思わないでね。今度は私が絶対に勝つんだから!!!」
「さあこの幻想郷をかけて決戦といきましょう」
二人ともは俺と霊夢をしっかりと見据えて対峙する
「そういうわけだ霊夢。ここは共同戦線といこうか」
「はあ、まったく本当にめんどくさいことばかり続くわね・・・
でも仕方ないわね。博麗の巫女として退治させてもらうわよ!!」
俺はあるポケモンの力を借りて空を飛ぶ。そして
「さあ。勝負だフラン!レミリア!」
こうしてこの異変の最終決戦が始まった