携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
とはいえ今回は回想が中心でそこまで進展はしませんが、次回からはバトル回になっていきます。
~夢殿大祀廟・跡地~
焼き尽くされた大地、あるいは強力な熱でガラス化してしていた。しかしその光景の中には強力な水圧によって抉られた跡がある湿った大地があるという凡そ不釣り合いな状態の個所もあった。
その奥に三人の人影とそれに相対する三つの影。人影の方は既に全身傷や火傷等の傷だらけの様相、対する三つの影の者達は傷を覆うどころか息切れすらしていない。
そして相対する人影、そしてそれを遠くから見ている霊夢たちにも凄まじい「プレッシャー」を放っていた。
「また・・・またあちらの世界の存在が私たちを脅かそうというのですか?」
早苗はその者たちを知っていた。以前天空より落ちてきた星から現れ、襲撃した訪問者と同じ世界に住む存在であることを
それは・・・
~回想~
「ふう・・・いっぱい来ますな、太子様」
「そうですね」
惨状になる数十分前、夢殿大祀廟には膨大な数の神霊が聖人を訪ねるために漂っていた。それらが空を覆う光景はまるで夜空に輝く満点の星空のようである。神霊たちの目的はとある聖人に願いを叶えてもらう為である。
「まだ太子様が復活なさってからまだ間もないないというのにずいぶん集まってきたわね」
「これも太子様の持つ徳の高さ故であろう」
その名は「豊聴耳神子」
かつてこの世に生を受けていた時、人はなぜ死ぬ運命にあることに疑問を持っていた。後に彼女を訪ねて来た邪仙霍青蛾から不老不死になることが可能であるという道教のことを知る。一度は退けたが、青蛾の提案により再び手を出し不老死の研究を進めた。最終的に彼女に深い中世を持っていた物部布都を仙一度死ぬことで不老不死となって甦る秘術「尸解仙」を行い成功、それに安心して自らも秘術を施し眠りについた。
彼女は表向きには仏教を広めており道教はそれの裏側の存在、彼女にとっては仏教は道教を隠すための存在に過ぎなかった。彼女は仏教はいずれ廃れると思っていたが、その思惑は外れ仏教は日本中に拡大。そして仏教の同士たちは彼女の思惑を見抜き封印。それから約1400年ものの歳月が流れるのであった。
そして彼女の存在は忘れ去られ、いつの間にか幻想郷に流れついたのであった。だがその真上に建った妖怪寺、命蓮寺の住職の聖白蓮は危険視して抑え込んでいた。しかし彼女の力をもってしても抑えきれず、ついに長い時を経て復活したのである。夢殿大祠廟に集まってきた神霊たちは復活した彼女の高い特に惹かれてやってきたのであり、彼女たちが作為的に行ったわけではないのである。
まだ目覚めて間もないが、彼女は「十人の話を同時に聞くことが出来る程度の能力」を使い、彼らの願いを聞いていた。まだ少し寝ぼけてはいるものの彼女は完全に復活を遂げることが出来た。彼女使える物部布都と蘇我屠自古も上機嫌だった。
しかしそれはすぐに一変する
屠自古が空を見上げると
「!?」
「どうした屠自子?何をそんなにぼうっと・・・!?」
上を見ると空がどんどん黒くなり始めていた。神子も二人のそばに駈け寄り天井を見上げる。その時には上空は完全に黒い闇が空を覆い尽くしていた。雨雲でもなく、黒い瘴気のような何かだった。一目見ただけで誰が見ても不吉なことが起こると思うに違いない。そしてそれが起こるのは一瞬だった。
「神霊たちの様子がおかしい」
「神霊たちが黒い闇に染まり出しているのか?」
神霊たちはこの謎の黒い闇の影響で次々と黒い魂になっていった。突然のことに戸惑う三人。この異常事態を起こした元凶を探そうとする。しかしその直後
バリバリド―――ン!!
ゴオオオオオオオオオ!!
『うわああああああ!!』
すると突然夢殿大祠廟に巨大な雷が落ちる。そして炎上した。しかもその時に発生した炎は意思があるかのように猛々しく燃え盛る。三人は早急に脱出した。だが次の瞬間
ザアアアアアアアアアア!!
すると空から強烈な雨が暴風と共に降り注ぐ。それは炎上していた夢殿大祠廟を見る見るうちに消火していった。一瞬で状況が一変し、三人は唖然としていた。だがそうしていたのはほんの一瞬のことだった。
三人の前方に三つの獣のような影が現れた。
一つは荒々しい雷を、一つは燃え盛る業火を、一つは凄まじい勢いの水流を纏っていた。それら次の瞬間には一つの膨大なエネルギーとなり解き放たれようとしていた。
「太子様!!」
「っ!!」
三人は急いで結界を張った。それも全力でである。そして・・・
ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!
三つの力は解き放たれた。
「うう・・」
「だ・・大丈夫ですか?太子様」
「一体・・・何なのよ・・・」
三人は傷つきながらもなんとか耐え忍んだ。だが目の前はついさっきまでの光景と激変していた。
夢殿大祠廟は完全に消滅し、仙界は黒い闇に覆われ、大地は無残な状態になっていた。そしてそれを引き起こした三匹は目の前に立っている。
一匹は虎のような姿をしており、紫色の雨雲のような体毛を持っていた
その隣は獅子のような堂々とした風貌で火山の噴煙のような体毛を纏っている
そして最後の一匹は三匹とは打って変わり、すらっとした豹を思わせる細身の体格で紫色のたてがみと白い二本の尾をたなびかせていた
三匹はいづれもすさまじい「プレッシャー」を放っていた。そのオーラに三人は気圧されかけていた。だが三匹とも様子がおかしいことに神子は気づく
「・・・三匹の欲が全く見えない」
その三匹には思考が全く見えなかった。神子はあらゆるものの欲望を読むことが出来るが、三匹にはそれがまるでない。まるで黒い闇が心を覆い隠しているかのような感覚を感じたのだ。
しかし神子が感じたのはそれだけではなかった。
「更に五個別の欲が」
『え?』
振り向くとそこには彼女たちがよく知る人物が、そして見知らぬ四人の人物がこちらに向かっていた。
そして今・・・
「早苗。あんたあいつらのことを知っているの?」
「ええ。あの三匹は・・・」
それは以前真聡が激闘を繰り広げたデオキシスと同じ世界に住む伝説。
ライコウ、エンテイ、スイクンと呼ばれるポケモン達だった。
彼女たちの壮絶な戦いの火蓋は間もなく切って落とされることだろう。
そしてその様子を深い闇の中から何かが見下ろしていることにはまだ誰も気づいていない。
正体は三犬ことエンテイ、スイクン、ライコウでした。
ライコウはいいとして他の二体はどういう要素からなのかというと、エンテイは火山の噴火と大地から出るマグマです。これは図鑑にある「吠えるとどこかの火山が噴火する」というところからです。一応描写に前回に雄たけびからマグマが噴出だす描写にしたのはそのためだったからです。まあわかりにくいとは思いますが。
一番悩んだのはスイクンでしたが、ポケモンレンジャーで「嵐を巻き起こして水浸しにしてしまえ」とラスボスが言っていたことを思い出してそれを採用して嵐を起こさせてみました。それと三犬が生まれたときの話で火事になった塔を消した雨の力を授かったというところからも来ています。