携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
今チルノは1000を軽く超える数の妖精に対してたった一人で戦っていた。傍から見ればチルノの方が圧倒的に不利だろう。数に差がありすぎる。しかし今は妖精の大群の方が狼狽していた。今ので300人ほどの妖精が一撃で倒されてしまったのだから
「嘘でしょ!?」
「たった数カ月にあれほど強くなったっていうの?」
狼狽するリーダーの光の三妖精を気にもせず、チルノは妖精の大群に果敢に立ち向かう。氷塊をマシンガンのように連続で放って蹴散らしていた
~霧の湖の外れ~
「なかなかやるようになったな」
「・・・凄い」
大妖精は今の光景を見て驚いていた。自分の親友があれほどまで強く、そして勇ましい姿に茫然としていた
チルノが戦場に向かう前に真聡に頼んだことは大妖精の救出だった。自分の力で大妖精を巻き込んでしまっては元も子もないからということだ。俺はそれを了承し、フーパの力で大妖精を救出した。俺は今遠くからチルノの戦いぶりを眺めていた。ちなみに現在は霧の湖周辺の空間を操作して外から侵入できないようにした。理由は二つある。一つ目は被害を外に出さないようにするため。もう一つはチルノの戦いを誰にも邪魔させないようにするためだ。湖が凍り付いたら異変だと思って霊夢あたりが駆けつけてくる可能性が高い。だから入れないようにしたのだ。この空間には紫でも入れないくらい強力な力で作ったのでまず侵入できる者はいないだろう。ちなみに霧の湖の近くにある紅魔館の連中と廃洋館に住むプリズムリバー三姉妹にこのことは伝えておいて了承済みだ
「さて弟子の成長ぶりを見守るとするか」
俺は今回は傍観に徹し、その様子を見守るのだった
~霧の湖~
氷符「アイシクルマシンガン」
ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
氷塊をマシンガンのように連射する。速度は本物のマシンガン並かそれ以上で躱すのは困難だった。妖精たちはそれに被弾して次々に数を減らしていく
妖精達は負けじと普通の弾幕では駄目と悟り、レーザーや炎弾で攻撃してくるがすべて躱されるか、凍らされて無効化した。冷気も強力になっているが、基礎身体能力も高くなっていた。巧みな体捌きで躱してどんどん前進してくる。しかしそこで終わるほど妖精たちも弱くはなかった
「今よ!!」
「!?」
するといきなり横や真上から妖精の大群が押し寄せてきた。今まで周りの自然と同化して姿を消していたのだ。更にサニーミルクの光を屈折させる能力で妖精たちの姿が見えないようにし、更にルナチャイルドの消音能力で更に気づかれにくくしたのだ。そして炎弾を一斉に発射する。チルノは氷のバリアーを生み出して防御した。氷は分厚くなかなか破壊できない。しかしチルノを防戦一方にすることに出来て勝機到来と三妖精は思っていた。しかし
ドッパーン!!シュウウウウウウ~~
すると氷はいきなり水に変化し、炎に触れたため蒸気が発生して辺りが白い煙に包まれて視界が悪くなってチルノの姿を見失う。チルノはもともと能力の扱いがなかなか器用であり、魚を凍らせつつも内部には水を残すと言ったことも出来る。それを真聡との修行により更に洗練させて氷をコントロールして水に戻すことも出来る様になったのだ
「どこに行った!?」
サニーミルクが慌てだすが、次の瞬間スターサファイアが叫ぶ
「まずいよ。あいつ大群の中に紛れ込んでる!!」
「「!?」」
彼女の探知能力で居場所を探知したが、既に遅かった
吹氷「アイストルネード!!」
ビュゴオオオオオオオオオオオオ!!!
すると妖精の大群から巨大な氷の竜巻が発生して妖精たちはそれに巻き込まれる。三妖精は慌てて離れるが
「きゃあああ!!助けて!いやあああああああああ」
その中の一人であるスターサファイアが逃げ遅れて竜巻に飲み込まれた。そしてそれが止むとサファイアは他の妖精と同じように氷漬けになっていた
「スター!!」
「くう・・スターがやられちゃった」
主力の一人を失い、指揮力が低下する。そして竜巻から逃れた妖精たちもチルノに恐れをなしてみんな逃げ出してしまった。もともと力で従わせた関係。いくら妖精が頭が悪いと言われても三妖精よりも強い力を持つことくらいはわかる。その力を目の当たりにすれば我が身可愛さで一目散に逃げていった。ちなみにいうと異空間の内部からなら出られるようにはしてある
「あっ!!ちょっと!!」
「どこへいくのよー!!」
あれだけいた妖精たちは今は氷漬けになっている妖精を除いて、彼女二人だけになってしまった
「さあお前たちもここまでだ。痛い目にあいたくなければ、降参しろ!!」
「うう・・・」
「どうするのよ。これ本当にまずいって。スターもやられちゃったし・・・」
しばらくサニーは考えていたが
「怯むんじゃないの!!むしろ数が減って思う存分に戦えるようになったわ。あんたなんかに負けてたまるもんですか!!どんな手を使ったとしても勝てば官軍よ!!」
「負ければ賊軍。私たちは負けるわけにはいかない!!・・・だけど」
しかしルナチャイルドの戦意はほとんどなく、サニーももはや空元気だった
「スリー(一人いないけど)フェアリーズ!!」
二人はやけくそと言っていい感じで二人で弾幕を同時に放った。しかし本来の物と違って一人かけているうえにルナチャイルドは既に戦意を喪失しかけている。しかし彼女たちも最後のあがきとして自身の能力で虚像を見せて化かし、弾幕の音も消した。しかしチルノは避ける様子もなく腕を組んだままだった
「残念だったね。お前らとあたいでは・・・」
するとチルノは膨大な冷気を溜める。そして
「格が違うんだよ!!」
凍符「パーフェクトフリーズ!!」
するとカラフルな弾幕が大量に放たれた後に強力な冷気を発射した。それは弾幕ごと二人を凍り付かせた。そして凍った弾幕が時間差で動き出し凍って動けない二人に襲い掛かった
ドッカーン!!パキパキパキパキ!!!
すると空間内はあっという間に氷が覆って氷の大地になった。そこには無数の巨大な氷柱がそびえ立っていた。そして湖の中心にある一際大きな氷柱の上に立ち
「あたいは自分よりも弱い人里の人間たちを滅ぼすような真似はしない。だけどこれだけは覚えておけ!!」
チルノは大きく息を吸った
「あたいは幻想郷で最強の妖精、チルノだーーーーーー!!!!」
と高らかに宣言するのだった。その様子を見て調子に乗りすぎるなよとは思いつつもまあこれくらいはいいかと思って見守っていた
こうして妖精たちの戦争はチルノの圧勝で幕を下ろす・・・筈だった
「へえ、なかなかやるようになったじゃないか」
「!あんたは!!」
「よう!!」
一方異空間の外で俺も驚いていた。何と魔理沙がいきなり現れたからだ
「なんで魔理沙がここに?」
「いや暇だったから何となくこの湖に来たんだけどさ、そしたら大量の妖精がいたからちょっと様子を見ていたんだぜ。そしたらお前が現れてその一騎当千ぷりを眺めてたんだ」
どうやら俺が異空間を張る前に魔理沙はその内部にいたらしい。そして森から様子を見ていたようである
「いや最後の技は焦ったぜ。慌てて魔法結界で防御して無事だったけどな」
「それで何の用なの?」
「なーに、見てたらお前がまさかここまで強くなっていることに興味がわいてさ。ちょっと久しぶりに私と勝負してみないか?その様子じゃ物足りないようだし・・・どうだ?」
魔理沙はチルノに勝負をしないかと誘ってきた。それを聞いてチルノは
「ふふふ・・・いいよ!!魔理沙の言う通り簡単に終わりすぎて物足りなかったんだ。今までとは違うってことを思い知らせてやる!!」
魔理沙がチルノに興味を示し、勝負をしかけてくるという意外な展開となった
さっきまでの戦いはほんの序章であり、まるでこれからが本当の戦いであるというように・・・