携帯獣の能力を宿す者の幻想伝 作:幕の内
~聖輦船~
「・・・・・・・」
「・・・そんなにそわそわしなくても多分大丈夫よ。あいつのことだもの。どうせまたびっくり進化して帰ってくるわよ」
「それもあるんですけど・・・」
「何かあるの?」
「あの黒い闇の力を纏っていたことですか?」
「「!?」」
早苗が真聡を心配していると聖が今早苗が言おうとしていることを述べた
「気づいてたんですか?」
「あれほどの力です。一目で危険な力だとわかります。しかもあの霧の力だけではなく全く別の力が混ざっていました。あくまで私の推測ですが、あの霧が真聡さんの内に秘めていたその全く違う力を呼び覚ましたような感じがしました」
聖の推測はおそらく正解だと早苗は思った。彼の宿すポケモンは「ポケットモンスター」というゲームのシリーズに出てくるモンスターのことだ。本編はRPG式なのだが、時折それの外伝とでもいうような作品が生み出される。ポケモンを捕まえるのではなく一時的に力を借りる「ポケモンレンジャー」、ダンジョンを攻略する「ポケモン不思議のダンジョン」等がそうである。そしてその中の一つで「ポケモンコロシアム」というものがある。それは基本操作は本編と同じだが、ある違いがある。それは相手のポケモンをモンスターボールで奪うことが出来るというものだ。これはどのシリーズにも存在しない独自のシステムである。しかし盗むのは普通のポケモンではなく、心を閉ざして戦闘マシーンと化してしまったポケモン限定である。そしてそのポケモンたちはダーク技と呼ばれる特殊な属性の技を扱うのである。主人公はそれを相手から奪って回収し、そして心を開かせて元に戻すリバイブと呼ばれることをするのだ。聖の言うその秘められていた力とは間違いなくそれだろうと早苗は思った。外伝であってもポケモンはポケモンであり、そのシリーズの一つであることは変わらないし、それもまたポケモンの力ではある。だからそれが使えたということはあり得ない話ではない
しかしあれは相当危険な力である。しかも真聡の物は普通の物よりさらに強力だと早苗は直感でそう思った。あれほどの物を持つとしたらそれは3種類ある。一つはもはやリバイブ不可能とまで言われるほど邪悪なダークポケモンとなった「ダークルギア」、ポケモン不思議のダンジョンで登場した「闇のディアルガ」、そしてポッ拳で登場した「ダークミュウツー」、あれほどの力を持つのはこの三体のどれかだろう。いずれにしろあの力を宿しては普通では正気を保つのは相当難しいはずだ。例えあの夢子に勝てても元に戻るのだろうかと早苗は非常に気がかりだった。そう思っていると
「・・!?おい!あれ見ろよ!!!」
「どうしたの?ぬえ・・ってあれは!!」
『!?』
すると空に小さな黒い渦が発生する。全員警戒体勢をしていた。しかししばらくするとその渦から何かが出てきた。それは人間の形をしていた。その正体は
「!!真聡さん!!」
『本当!?』
そこから真聡が降って船に落ちてきた。早苗たちは大慌てで向かい受け止めた。真聡はボロボロの状態で気を失っていた。まだ息はあるが危険な状態だ。早苗たちは治癒の術などで応急処置をしながら永遠亭へと向かうのだった
~魔界~
「はあ・・・」
魔界にどこからかため息が聞こえてきた。銀髪にサイドテールをしており赤いローブのような服を着用している女性が宙に浮いていた。悪魔のような6枚の翼も特徴的だ。ため息の主はこの女性だった
「やれやれ。まさかここまで派手にやっちゃうなんてね・・・修復が大変だわ」
先程の真聡と夢子の最大の大技の激突により周囲に張っていた結界は完全に破壊されて、そのままあらゆるものが広範囲にわたって消滅してしまったのだ。魔界は非常に広大な世界だ。無限大ともいわれるほどで少なくとも幻想郷はおろか地球よりもずっと広い世界であるらしい。しかしいくら広いとはいえここまで広範囲に破壊されればたまったものではなかった。被害は地球の半分以上が跡形もなく消滅したくらいの規模らしい。そんな無限大の世界を生みだしたこの魔界の神、神綺とはいえ流石に今回は困っていた
「まあ夢子ちゃんの成長も見れたしよかったかしらね。私の力をあそこまで扱えるとは大したものだわ」
夢子はあの衝撃に飲まれたところを間一髪で救い出したのだ。あのままでは消滅してしまっただろう。夢子は神綺によって生み出された存在だが、大切な部下だった。だから神綺としても失うわけにはいかなかった。今は神綺の住む城で治療を受けている
「あの人間は直前でワープして
神綺は消滅した世界を戻すための作業を始めようとした。ちなみに消滅した地域にいた魔物たちはこうなることはある程度予想していたのですべて回収して避難させていた。あの短時間で行えるのは流石は魔界を創造した存在というところだろうか
「○□から聞いてはいたけど本当にデタラメな力を持つほどまで成長したわね。いつかあれを授けるために呼び寄せると言っていたけどどうなるのかしらね・・・」
そう思いながら神綺は修復を作業を始めるのだった
~永遠亭~
「うう・・・・」
俺は目を覚ました。そこは何かの部屋だった。体は動かそうにもまだうまくは動けない
(何とか生きてかえってこれたな。多分ここは永遠亭だろう)
するとふと隣を見ると早苗がいた。どうやら俺を心配して付きっ切りで俺のそばにいてくれたようだ。今は隣のベンチで寝ている
(また心配かけちゃったな・・・後で詫びを言わないと)
すると俺はある異変に気付く。それは手の甲に黒い紋章のようなものが出ていたのだ。俺はそれを見て自分はダークポケモンの力も扱えるようになったのだと悟った
(これもまた修行が必要か・・・)
俺は禁断の力を手にしてしまったのかもしれない。最後まで自我は保つことは出来たが力のコントロールはまだうまくできていなかったし、気を抜けばいつ正気を失ってもおかしくなかった正直なところ後悔の念も少しあった。
でも今更帰ることは出来ない。自分が選んだ道だ。ならば受け入れ、それに立ち向かい己の力にするしかない。どんなものでも正の部分である光と悪の部分である闇の部分はある。正義とは立場を変えればいくらでも変わる。普通のポケモンでも命を奪うことは十分に可能だ。それが本来は正しい力であったとしてもだ
そしてしばらくすると早苗は俺が目覚めたことに気づいて喜んでいた。涙も混じっていた
今はただ休んでいよう。闇の部分であってもそれもまた一つのポケモン。俺はそれすら光に変え、己の力とすることを決意するのだった
途中で忙しくなり投稿が途切れてしまったこともありましたが、星蓮船編は終了です。まだまだ未熟な点がいっぱいありますが最後まで書ききってやろうと思います
読んでくださる皆様には本当に感謝です。感想等もいつでも待っています