セラフィムの学園   作:とんこつラーメン

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前回の話、なんか読者の方々には相当にインパクトがあったようで、色んなご意見がありました。
そりゃ、そうですよね。
普通無いですよ、主人公が集団レイプされる全年齢版の小説とか。

皆さんには不快な思いをさせてしまったようで、本当にすいませんでした。

少なくとも、これから先は、あれ以上に性的に胸糞な展開は無い予定です…多分。

あと、それに伴ってタグを追加しておきました。






第8話 消えない傷跡

 もうすぐ決勝が始まろうとした時、私のマネージャーから衝撃の情報を聞いた。

 

 私の家族……即ち、千夏と一夏が何者かによって誘拐されたと言うのだ。

 

 密かに二人の事を警備していた人間が根こそぎ倒されていて、誘拐現場とされるトイレの前には千夏のスマホが落ちていたらしい。

 

 私に動揺を与えないようにマネージャーに知らせたらしいが、彼女が私の事を思って真っ先に教えてくれた。

 それには素直に感謝したい。

 

 マネージャーはすぐに会場の警備を担当していたドイツ軍に連絡をして、私もすぐに救出に向かった。

 決勝? そんなもの、勿論辞退だ!

 大会の優勝などよりも家族の方が大事に決まっている!

 

 その場はマネージャーに任せて、私は会場を出て軍の連中と合流した。

 彼等に対して何も思わないと言えば嘘になるが、文句を言っている場合じゃない!

 今は一刻を争うんだ!

 

 軍のIS操縦者の一人と一緒に、私は自分の専用機である『暮桜』を飛ばして、密かに千夏と一夏に持たせている発信機の反応がある場所へと先行した。

 

「千夏……一夏……!」

 

 焦りだけが私を支配する。

 特に千夏は身体に障害を抱えている。

 今の私には、二人の身が無事であることを祈ることしか出来ない。

 

「見えました! お二人の反応はあそこからです!」

「あれは……」

 

 反応があったのは、町外れにあった廃工場だった。

 あそこに二人が!

 

「急ぐぞ!!」

「お……織斑さん!?」

 

 私は暮桜の速度を上げた。

 隣にいる操縦者が置いてけぼりになっているが、そんな事に構ってはいられない!

 今は兎に角、二人の事が最優先だ!!

 

「待っていろ……今行くからな!!」

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 廃工場に到着した私は、すぐに付近の壁を破壊して内部に侵入した。

 

「ま……待ってください! お気持ちは分かりますが、少し落ち着いてください!」

「落ち着いてなどいられるか!!」

 

 こうしている間にも、千夏達が傷つけられているかもしれないんだぞ!

 

 後ろから必死について来た軍の操縦者が慌てて私を押さえようとするが、それを振り切って先を急いだ。

 

「どこだ……何処にいる……!?」

 

 私は『暮桜』のハイパーセンサーなどを駆使して、二人の居場所を探した。

 焦燥する心が私から冷静な判断力を奪っている。

 だが、それも隣の彼女によって払拭された。

 

「……っ!? あの部屋から反応が!」

「なんだと!?」

 

 少し離れた場所にある金属製の扉によって閉まっている部屋に、確かに生体反応があった。

 

「ここかっ!?」

 

 急いで扉を無理矢理こじ開けて、中に入る。

 そこには……。

 

「ん~!! んん~!!」

 

 椅子に座った状態で、両腕を後ろ手に鎖で拘束された一夏がいた。

 口には布が巻かれており、声を出せないようになっている。

 

「一夏!!!」

 

 すぐに一夏の口布を外して、腕を拘束している鎖を破壊した。

 

「ぷはっ……千冬姉!!」

「一夏……!」

 

 思わず一夏の事を抱きしめた。

 勿論、ISを纏っているから、力は込めていないが。

 

「大丈夫だったか!?」

「あ……あぁ……。気絶させられた後にここに連れ込まれたみたいで……気が付いたら、こうなってた」

「そうか……。とにかく、無事そうで良かった…」

 

 良かった……本当に良かった…!

 

「それで、千夏はどうした? 一緒じゃないのか?」

「分からない……。ここには俺一人だったし……」

「もしかしたら、別の部屋かもしれません」

「そうだな……」

 

 だとしたら、ここで一安心をしている場合じゃない。

 本当に安心できるのは、千夏も救出できてからだ!

 

「織斑さん。彼は私が……」

「分かった。一夏、私は今から千夏を探しに行く、お前は彼女と一緒に先に出ていろ」

「俺も一緒に行く……って言いたいけど、俺が行っても足手纏いだよな……」

「一夏……」

 

 誘拐されたショックか、考え方がネガティブになっているのか?

 

「千冬姉。頼むから、千夏姉を助けてやってくれ! 俺が間抜けだったから千夏姉は……!」

「分かっている。アイツの事は任せろ」

「あぁ……」

 

流れる涙を拭いながら、一夏は頷いた。

 

それから、一夏の事を彼女に任せて、私は千夏の捜索を急いだ。

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 それからすぐにもう一つの反応が出た。

 もうこの工場には犯人がいなければ、私の他にはもう一人しかいない筈。

 ならば、これは必然的に答えは一つ。

 

「千夏か!?」

 

 眼前に迫る壁を全て破壊して、最短距離で千夏の元に急いだ。

 壁を破壊した先に見た光景は……。

 

「あ……」

 

 服を全て破られて……。

 

「あぁ……」

 

 裸の状態で冷たい床に横たわって……。

 

「あぁぁ……」

 

 全身を汚らしい白濁液に塗れた……。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 凌辱された後の『妹』の姿だった。

 

「千夏―――――――――――!!!!!」

 

 我武者羅に千夏の元に駆け寄り、機体が汚れる事も構わずに抱き上げた。

 

「千夏っ!! しっかりしろ!!! 千夏ッ!!!」

 

 溢れる涙を押さえられずに、私は千夏を刺激しない程度に静かに体を揺らした。

 

「あ……?」

「……っ!? 気が付いたのか!?」

 

 うっすらと目を開けて、その瞳が私の方を向く。

 

「ね……さ…ん……?」

「そうだ! 私だ!!」

「ご……め………」

「何故謝る!? お前は何も悪くない!!」

 

 最後に少しだけ頷いてから、千夏の頭から力が抜けてガクンとなった。

 

「あ…あああ……あああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 工場内に、私の慟哭だけが空しく響いた。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「う……ん……?」

 

 目に光を感じて、俺は目が覚めた。

 

「………また病院か?」

 

 無駄に綺麗で真っ白な天井は、高確率で病院だろう。

 

「ち…千夏!? 目が覚めたのか!?」

「え……?」

 

 隣には、悲壮感に顔が染まった千冬姉さんが椅子に座ってこっちを見ていた。

 

「あれ? なんでここに? って言うか、なんで俺は病院? にいるんだ?」

「覚えていないのか……?」

「え~っと……」

 

 確か……俺は……。

 

「あ」

 

 そうだ。

 俺ってば一夏と一緒に誘拐されて、そして犯人達に……。

 

「そうか……そうだった……」

 

 何故か冷静になっている頭で、あの時の事を思い出そうとすると……。

 

「千夏!!」

「おふ?」

 

 いきなり姉さんに抱き着かれました。

 

「無理をして思い出さなくてもいいんだ!!」

「あ……うん」

 

 まぁ……具体的な言葉を口に出すのは、流石の俺も憚れるしな。

 

「ところで、一夏はどうした?」

「アイツなら無事だ。頭にたんこぶがある程度で、他には外傷は無い」

「そうか……」

 

 大きな怪我が無いようでなによりだ。

 

「だが、問題はお前の方だ…」

「俺? なんで?」

「それは……」

 

 姉さんが言い淀んでいると、病室のドアが開かれて、軍服を着た黒い眼帯をした女性が入ってきた。

 同時に姉さんが離れた。

 抱き着いている姿を見られたくなかったのか?

 

「貴女の体にこれと言った外傷はありませんでしたが、心の方に大きな傷が出来た可能性が非常に高いからです」

「貴女は……?」

「失礼。私はドイツ軍特殊部隊所属の『クラリッサ・ハルフォーフ』と申します」

 

 ドイツ軍の人かよ。

 随分と若く見えるけど、そこには深くツッコんだらいけないんだろうな。

 向こうには向こうの事情があるんだから。

 

「犯人はどうなった?」

「すいません……。我々が廃工場に到着した時には既に撤退した後だったようで、誰も見つかっていません。悔しさを覚えるレベルで、痕跡すらも残していませんでした」

「なんだと……? ふざけるな!!!」

 

 いきなり叫ばないでよ。

 耳がキーンってなっちゃうじゃん。

 

「一夏を誘拐し、千夏を滅茶苦茶にした連中だぞ!! 絶対に見つけ出せ!!!」

「分かっています……! 今回の事は完全に我々の落ち度……ドイツ軍の誇りに掛けても……必ず……!」

 

 クラリッサとか言う人も、冷静そうに見えて、相当にブチ切れているようで、その拳が強く握りしめられている。

 

「千夏姉!!」

 

 今度は一夏かよ。

 いきなりドアを開けて入ってくるな。

 ちゃんとノックぐらいしろ。

 

「あぁ……良かった……無事で……」

 

 処女は失ったけどね。

 でも、性別的に『男』である俺が処女喪失ってなんか変だな。

 

 一夏はふらつきながらこっちに近づいてきて、ベットの前に膝をついた。

 

「ゴメン……! 俺が弱かったから……千夏姉は……!」

「いや、別にお前は悪くないだろ。アイツ等も言っていたけど、連中はその手のプロだったらしいし、素人で子供の俺達が何も出来ないのは当然だって」

「でも……」

「『でも』じゃない。寧ろ、こうして生きて会えたことに喜んだ方が建設的だ」

「うぅぅ……ゴメン……ゴメン……」

 

 あれ? 一応、俺なりに慰めたつもりなんだけど、どうして泣く?

 俺、なにか悪い事を言った?

 

「あ……あの! 千夏さん! 先程……なんと……?」

「え? 『子供の俺達が何も出来ないのは当然』?」

「その前です!」

「その前……? ああ。『連中はその手のプロだったらしいし』……ですか?」

「そう! そこです! 犯人はそう言っていたんですか!?」

「えぇ。全身が黒ずくめで、パッと見た感じは欧州系や北欧系の人間達だったような気がしますけど。少なくとも、アジア系は一人もいませんでしたね。あと、妙に日本語が流暢でした」

「「「…………」」」

 

 あ……あれ?

 なんで皆して鳩が豆鉄砲を食ったような目でこっちを見るんだ?

 

「お……覚えているのか?」

「まぁ……一応。アイツ等とは少し会話をしたし」

「どうして誘拐されて、そんなにも冷静なんですか…」

「さぁ?」

 

 心がぶっ壊れてるからじゃないか?

 

「犯人は全員が男で、中には結構若い奴もいたな」

「どれぐらいでしたか?」

「多分、姉さんと同い年ぐらい……だと思う」

「つまり、20代ぐらいだと……?」

「恐らく」

 

 多分、連中の中では一番の若手だったんだろうな。

 

「具体的な人数は不明。でも、最低でも8人以上はいたと思います」

「たったそれだけで……?」

「いえ、多分他にもいるでしょう。その連中が実行部隊なだけで」

 

 普通はそうだよな。

 

「千夏姉……スゲェな……」

「それほどでも」

 

 普通の生娘なら、こうはいかなかっただろうな。

 

「そして……いきなり大きな破壊音がして、連中が急いでどこかに去って行きました」

「そう……ですか……」

 

 あ、また沈んじゃった。

 俺……マズイ事でも言った?

 

「さっきも言ったが、今は無理をするな。いいな?」

「う……うん……」

 

 姉さんに頭を撫でられた。

 体性感覚があったら、気持ちよさぐらいは感じたんだろうな。

 

 室内の空気が微妙になった時、ドアがノックされた。

 

「あ……あの~……先生がお呼びです……」

「分かった」

「分かりました」

 

 看護婦さんがやって来て、姉さんとクラリッサさんを連れて行った。

 って言うか、看護婦さんも日本語上手いな…。

 医療関係に携わる人間は、言語学も優れているのか?

 

 残されたのは、俺と一夏だけ。

 

「「…………」」

 

 急に会話が途切れる。

 

 そう言えば……アイツ等に姦された時、全然感じなかったな……。

 俺は不感症にもなっているのか。

 

「あ……あれ?」

 

 手が……震えてる?

 

「あれ……? あれ……?」

 

 今度は全身が震えてる?

 な……なんで?

 

「ち……千夏姉? どうしたんだ?」

「う……うん……」

 

 ヤバい……なんか分かんないけど、体の震えが止まらない……。

 

「一夏……ちょっとこっちに来て……」

「どうした?」

 

近づいてきた一夏の胸に、俺は抱き着いた。

 

「え……ちょ……」

「ゴメン……少しだけ……このままでいさせて……」

「千夏姉……」

 

 一夏は静かに俺の事を抱きしめてくれた。

 その時、自分でも分からないが、いきなり涙が流れた。

 

 転生してから、初めて流した涙だった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 病院側と姉さん達とで話し合った結果、俺は今日一晩だけ入院する事になった。

 

 二人はホテルに泊まるらしく、去り際に大会の事を聞いたら、案の定、辞退してきたと言っていた。

 連中の思惑通りになってしまったという事か。

 

 夜になって、外は雨が降っていた。

 

「雨……か」

 

 雨はあまり好きじゃない。

 だって、髪が痛むし、洗濯物は乾かないし。

 

「はぁ……」

 

 思わず溜息を吐くと、いきなり病室のドアが開いた。

 

「え?」

 

 こんな夜に誰だ?

 もしかして、巡回の看護婦さんかな?

 

「はぁ……はぁ……」

「た……束さん……?」

 

 そこには、まるでどこぞの絵本に登場してそうな格好をした束さんが、全身をびしょ濡れにした状態で立っていた。

 

「なんでここに……?」

 

束さんは俺の事を見て、ドアを閉めた後にゆっくりと近づいてきた。

そして……

 

「ゴメンね……なっちゃん……」

「はい?」

 

 抱き着かれて、謝罪された。

 って言うか、こっちの病院服が濡れたんですけど。

 

「私がISを造らなければ……なっちゃんがこんな酷い目に遭う事も無かったのに……」

「束さん……?」

 

 泣いているのか?

 

「どうしてここにいるのか? とか、なんで事件の事を知っているのか? とか、色々と聞きたい事はあるけど、これだけは言っておく」

「何……?」

「束さんは何も悪くない。悪いのは、間違いなく誘拐犯だ。貴女が罪の意識を感じるのは間違ってる」

「なっちゃん……」

「それに、姉さんが言っていた。ISは束さんの『夢』なんだろう?だったら、『造らなければ』なんて間違っても言ってはいけない」

「ひくっ……ひくっ……なっちゃぁぁぁぁん……」

 

 流石の束さんも、夜の病院では静かにしようと思っているようだな。

 

「どうして……そんなにもいい子なの……?」

「さぁ?」

 

 俺は別にいい子である自覚は無いけど、ここは黙っていよう。

 

「あの……取り敢えずいいか?」

「何かな…?」

「服……濡れてる」

「あっ!?」

 

 別に俺自身には濡れてる感触は無いから大丈夫だけど、もしも誰かに見つかったら、絶対に怪しまれる。

 もしもそうなった場合、上手い言い訳が出来る自信が無い。

 

「ご……ゴメンね! すぐに乾かすから!」

「どうやって?」

「こうやって!」

 

 束さんがポケットから何やら、小さなドライヤーの様な物を取り出した。

 

「束さん特製のドライヤーで、どんなに濡れていても、すぐに乾くよ」

「すげー」

 

 ドライヤーをこっちに向けると、すぐに服が渇いていった。

 温風は全く感じなかったけど。

 

「それじゃあ、もう行くね。また会おうね! なっちゃん!」

「はぁ……」

 

 それだけ言って、束さんは扉を開けて去って行った。

 

「良くバレずにここまで来れたな…」

 

 一応、束さんと会ったことは千冬姉さんには黙っていよう…。

 また話がややこしくなりそうだし。

 

 寝る前に束さんに会えたお陰か、その日の夜はよく眠れた。

 少なくとも、悪夢を見る事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もうそろそろ、千夏がISに関わってきます。

また性的なイベントがあるかもしれませんが、少なくとも、今回よりは絶対に酷くはない……と思います。

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