改めて色々と調べた結果、ちょっと説明しなくてはいけない事が増えたので。
以前、俺は触覚を失ったと言ったが、後でちゃんと調べた結果、どうやらそれ以上のものを失ってしまっていたようだ。
触覚とは、肌に触れる事によって物体の形状などを認識する能力の事を指す。
実際、俺は肌に何かが触れても何も感じない。
だが、俺は痛みや温度等も感じなくなっている。
これらはまた別の器官で、それすらも俺は失っているようなのだ。
触覚以外にあるのは『痛覚』と『温度覚』。
痛覚は知っている人も多いだろう。
痛みを司る感覚で、これによって人間は人体の危険や限界を知り、自分の力で身体が壊れないようにしているのだ。
一方の温度感とは、文字通り、温度を感じることが出来る感覚だ。
これによって人間は熱さや冷たさを感じられる。
『触覚』と『痛覚』と『温度覚』。
これらを総称して『体性感覚』と言う。
体性感覚とは、触覚や痛覚や温度覚など、主に皮膚に存在する受容細胞によって受容されて、体表面に生起すると知覚される感覚の事である。
少々難しいかもしれないが、つまりはこういう事だ。
言っている俺自身も実はよく分かっていない。
だって、前世での大学で専攻していたのは機械工学だったし。
それもかなりの頻度でサボっていたし。
つまり、俺は触覚をピンポイントで失った訳ではなくて、体性感覚全体を失ってしまったのだ。
だから、俺は痛みを感じないし、温度も感じない。
あと、これに付随してちょっと気になったことがあったので調べたことがある。
それは『不感症』である。
俺は肌で感じる器官が全て駄目になっている為、感じる感じない以前の問題なような気がするが。
一言に不感症と言っても、大まかには二種類ある。
一つは性的な意味の不感症。
これは大抵の連中が知っているだろう。
なんでも、これは正式な病名じゃなくて、一般の人達が言い出した造語らしい。
それをお医者さんが逆輸入したわけだ。
性的な不感症は、精神的な問題と、神経生理学的な問題とに分けられる。
両者が密接に関係して起こる場合もある。
これは恒久的な物じゃなくて一時的なものらしく、その時の精神状態や相手との相性などが原因の場合もあるらしい。
俺の場合はどう考えても後者。
だって、神経そのものが駄目になってるんだし。
もう一つは社会学的な不感症。
正式名称は『不感症気質』と呼称する。
これは、分かりやすく言えば『KY』の事を指している。
他人の言う事に共感出来なかったり、その場の空気が読めなかったりすることだ。
これを見て、もしかしたら一夏もある種の不感症気質なんじゃ?と思ってしまった。
アイツってちょっとKYな所があるからな。
そして、俺が『自分が不感症である』と実感する大きな事件が起きるのだが、それは俺を始めとした織斑家全員にとって忘れられない出来事になった。
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突然ですがクイズです。
今、俺達がいる場所は何処でしょうか?
正解は……。
「すげぇぇぇぇぇぇっ!! 流石は千冬姉だぜ! 千夏姉もそう思うよな!?」
「そうだな」
ドイツにある第二回モンドグロッソの試合会場です。
俺達の目の前では、千冬姉さんが純白のISを纏って相手の選手を圧倒的な技量で倒した。
なんでこうなったのか。
それは今から一週間ほど前に遡る。
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その日の夜。
夕食を食べ終えた直後に、千冬姉さんが神妙な表情で俺達二人に二枚のモンドグロッソの観戦チケットを取り出して、自分がISの国家代表の選手であることをゆっくりと説明してくれた。
最初に聞かされた時、一夏はかなり動揺していたが、俺と姉さんの言葉で何とか落ち着いた。
俺の方はそこまで驚きが無かった。
最初から表情筋が仕事をしていない事もあったが、それ以上に事前に知っていたから。
俺が雑誌を見て知った事を話すと、『しまった』と言いながら頭を抱えていたっけ。
一夏は年頃の男子と同じように、純粋にカッコいいからと言う理由で行くことを決めた。
一方の俺は、乗れないと分かっていても、一度ぐらいはこの目で見てもいいかもしれないと思って、同行を申し出た。
丁度、開催日は学校が連休で休みの日だった為、余裕を持って行くことが出来る。
そして、俺達は千冬姉さんが予め呼んでいてくれたマネージャーさんと一緒にドイツまで赴くことになったのだ。
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試合が終了して、一部の観客達が移動を始める。
この会場には複数の試合会場(アリーナと言うらしい)があるようで、見たい試合を観戦するために移動しようとしているのだ。
「次の千冬姉の試合っていつだっけ?」
「一時間後ぐらい……だったと思う」
流石のパンフレットにも、細かい試合時間までは書かれていないからな。
「じゃあさ……その……」
「ん?」
どうした?いきなり股間を押さえてモジモジしだして。
ぶっちゃけキモいぞ。
「トイレか?」
「あぁ。何処にあったっけ?」
「はぁ……」
それぐらいは覚えておけよ。
「こっちだ。ついて来い」
「おう……」
仕方が無いので、俺が案内してやる事にした。
え? 俺?
俺はちゃんと会場の見取りぐらいは把握してるぞ。
会場に入る際に壁に設置してあった大型の見取り図を見て、念の為にスマホで撮影をしておいたからな。
少しして、試合会場から離れた場所にあるトイレに辿り着いた。
「まさか、ここに来るまでのトイレが全部埋まっていたとはな」
「こんだけ人間がいれば仕方ないけど、こんな時には迷惑極まりないな」
「それは、この会場に来ている全ての観客が思っていることだろうさ」
今は別に尿意も便意もないが、もしもあった時にトイレの行列に遭遇でもしたら、間違いなく怒りの感情が復活するだろう。
「アリーナから離れているせいか、人通りは疎らだ。とっとと行って来い」
「わかった。ちゃんと待っててくれよ?」
「ガキか、お前は」
もう中学生だろうに。
一夏が男子トイレに入って、俺は入り口付近で待っている。
なんとなくスマホを手に取って時間でも見ようと思ったら、突然……。
「はぁ……」
俺の周りに黒ずくめの男達が現れて、俺の事を取り囲んだ。
多分、物陰に隠れていたんだろう。
人気の少ない廊下とは言え、隠れる場所は結構あるからな。
「……さっきからずっと俺達の後ろからついて来ていた連中はお前等か」
「気が付いていたのか」
「訳あって、そう言った気配には敏感になってるんだよ」
色々と失った結果、他の部分が鋭敏になっているんだろう。
しかし、流暢な日本語だな。
見た感じは完全に外人なのに、ここまで日本語を話せるという事は……。
(間違いなく、ヤバい連中だろうな)
どうしようか考えていると、黒ずくめの一人が話しかけてきた。
「お前が織斑千夏か?」
「だとしたら?」
「一緒に来てもらう」
「そう言われて、素直についていく奴がいると思うのか?」
「それもそうだ。ならば……」
黒ずくめの一人が他の奴に目で命令を出す。
命令された奴が頷いて、トイレの中の方を向いた。
「おい!」
この展開……まさか……。
「ち……千夏姉……」
一夏が黒ずくめに米神に銃を突き付けられた状態でトイレの中から出てきた。
「いつの間に……」
「俺達はプロだぜ?これぐらいは楽勝だっつーの」
「こいつの命が惜しかったら……分かるな?」
「へいへい……」
俺はその場にスマホを落として、両手を上げた。
「こいつが織斑一夏か?」
「だろうな。情報とも一致している」
情報ね。
一体どこの連中なのやら。
「俺達をどうする気だ?」
「さぁ……な!」
「ぐぁっ……!?」
一夏が銃を持っていた奴に殴られて、床に倒れて気絶してしまった。
「い……一k「お前も寝てな!」……え?」
倒れた一夏の方を向こうとしたら、目の前にいた男に何かを拭きつけられた。
「こ……れ…は……」
「猛獣も一発で爆睡する特注性の催眠スプレーだ。効くだろう?」
急激に強烈な眠気が俺を襲う。
いくら体性感覚が無くなっていても、眠気だけは防げない。
(まさか……俺の体の事を知って……?)
最後にそんな事を考えて、俺の意識は闇に落ちた。
・・・・・
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・・・
・・
・
「う……ん……?」
唐突に目が覚める。
本来ならば、こういった場合は床が冷たかったり、後頭部に感じる違和感などで目が覚めるものだが、生憎と俺にはそんな感覚は存在しない。
だから、理由も無く唐突に目が覚めた。
「ここは……?」
少し首を動かすと、そこはコンクリートで覆われた仄暗い空間だった。
周囲には鉄パイプやコンテナが散乱していて、ここが廃棄された工場的な場所だと思わせる。
「どうやら、お姫様がお目覚めのようだぞ」
「やっとか。流石は要人誘拐に過去何回も使用されたスプレーだ。効果はお墨付きって訳か」
よく回りを見てみると、さっきの誘拐犯の連中が俺の周囲に立ったり座っていたりしていた。
そのいずれもが、俺を見てニヤニヤしている。
「お前等……」
思わず体を動かそうとすると、体のどこも反応しなかった。
「え……?」
どう言う事だ?
感覚が無いだけならまだしも、動かなくなるとは。
首だけを何として動かして、後ろを見ようと試みる。
すると、俺の視界には後ろ手で鎖で柱に縛られた自分の両手が見えた。
「自分の身体が動かない事に驚いているようだな」
いや、驚きじゃなくて、純粋な疑問なんだけど。
「ま、お前からは見えないだろうから、特別に見せてやるよ」
連中の一人が自分のスマホで俺の事を撮って、俺に見せた。
そこに映っている俺の首には、黒く光っている機械染みたチョーカーが装着されていた。
「こいつはな、脳の電気信号を首の所でシャットアウトして、一種の金縛り状態にする道具なんだよ」
そんな代物があるのか。
金縛りすらも科学で再現出来るとはな。
凄い時代になったもんだ。
「効果は装着している間だけだけどな、充分過ぎる効果は期待出来る。お嬢ちゃんが実証してくれたし」
「そうかよ」
にしても、体が動かないのは厄介だな。
どうしようか。
「おい」
「なんだ?」
「一夏はどうした?無事なのか?」
首は動かせるから、周囲の状況はちゃんと把握できる。
見た感じ、一夏の姿は見えない。
「あのガキなら別の部屋にいる。大事な人質だしな。そこら辺は安心しろ」
「人質……ね」
こいつらの言葉がそれだけ信用出来るのやら。
「なんで俺達を誘拐した?」
「織斑千冬を優勝させないためだ」
「はい?」
なんだって?
「お前等姉弟を誘拐する。すると、織斑千冬がお前等を助けようと動き、試合を辞退する。不戦勝で別の選手が勝利して、織斑千冬は優勝を逃すって手筈になっている」
「そんな簡単に上手くいくと? 大体、どうやって千冬姉さんが俺達が誘拐されたって知るんだ?」
「それなら大丈夫だ。既に奴さんの近辺にまで俺等の仲間は潜んでいるからな。そいつに知らせてもらうさ」
「スパイってわけか」
用意周到だこと。
「ところで、なんで姉さんの優勝を邪魔しようとする?そんな事をしてお前等にどんなメリットがある?」
「さぁな? 俺達はただ、ビジネスとしてやっているだけだからな」
「それでいいのか」
「それが大人ってヤツなんだよ。お嬢ちゃん」
お嬢ちゃんって言われると、なんか複雑。
だって、俺は正確には『お嬢ちゃん』じゃないから。
「おいおい。そんなにもペラペラと話してもいいのか?」
「構いやしねぇよ。肝心な事さえ話さなければな」
「しっかし、この状況でアホみたいに冷静なガキだな…」
「恐怖でおかしくなってるんじゃないか?」
アホって言うな。
アホって言った奴がアホなんだよ。
そういや、組織名とか、こいつらの正体とかは聞けてないな。
ま、聞いても素直に話すとは思えないけど。
「なぁ、いつまでこうしてればいいんだよ?」
「織斑千冬がやって来るまでだ」
「はぁ……」
溜息を吐きたいのはこっちなんだけどな。
「じゃぁよ……少しぐらい暇つぶしをしてもいいよなぁ~?」
男達の中でも一番若く見える奴が、俺の方にやって来た。
「お前、ロリコンかよ?まだ13だぞ」
「あぁ? 歳とか関係ねぇし。そこに女がいて、突っ込める穴があれば充分だろ?」
あ~……なんとなく、こいつがやろうとしていることが分かった。
「それによ、コイツってかなりの美少女だぜ?こんな女を犯せる機会なんてもう二度とないぞ?」
「まぁ……確かに、可愛いと言えば可愛いけどな」
ロリコンが他にもいたよ。
どうやら、俺は今から、こいつらに強姦されるようだ。
「俺もするわ。ここのところ、仕事続きでかなり溜まってたしな」
「じゃあ俺も」
次々と犯る気になった馬鹿共がやって来る。
もしも、まともな神経をしていたら、絶対に悲鳴とか挙げるんだろうな。
「んじゃ、よろしく頼む……ぜ!」
さっきの若い奴が、俺の服に手をかけてビリビリに破る。
「これでも悲鳴を挙げねぇとか、頭おかしいんじゃねぇか?」
「まぁまぁ、いいじゃんか。お?思ったよりもスタイル良いじゃん」
ジロジロ見んな。
これでも、そういった視線には敏感なんだよ。
服を破られたから、俺はブラとパンツの下着になってしまった。
成長期になってから、俺の胸は一気に成長し始めた。
そのせいで、鈴のセクハラが毎日のように行われるけど。
「さて。今から、お嬢ちゃんを天国に連れて行ってやるよ」
「精々、そうやって気張ってな」
「なら、犯りますか。なぁ? 千夏ちゃん?」
ブラが目の前で外されて、自分の胸が晒される。
それと同時に、手に巻かれた鎖が外された。
動けないから、取れても大して意味無いけど。
あれ? じゃあ、なんで鎖なんて巻かれてたんだ?
男達の一人に押し倒されて、覆い被さられる。
本能的に自分の『処女』が奪われると悟った俺は、その時点で考える事をやめた。
それから、俺は男達に集団でレイプされた。
どれだけの間、犯されたかはよく覚えていない。
処女喪失。
気が向けば、この時のシーンをR-18の方で書くかもしれません。