セラフィムの学園   作:とんこつラーメン

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い…いつの間にか…評価9が二つに7が一つっ!?

マジで我が目を疑いました…。






第4話 二回目の小学校

 俺が転生? をして、謎の交通事故によって入院し、そして退院した後で織斑家に迎え入れられてから早くも2年が経過した。

 

 この体での生活にはそれなりに苦労はしたが、流石に年単位で過ごしていけば嫌でも慣れる。

 

 特に苦労するのが食事だ。

 俺は味を感じない。

 だが、俺がそんな素振りを見せれば即座に千冬さん(なんか面倒くさくなったので、こう呼ぶことにした)が悲しそうな顔になるので、なんとか頑張って平気そうにする。

 それでもまた別の意味で済まなそうにするんだけど。

 

 幸いなのは、俺の弟(仮)の一夏君がその事に全く気が付かない事。

 なんか色々と鈍感な所があるのだが、食事の時は本当に助かる。

 

 そうそう、この家は大人がいない。

 だから、必然的に俺達が家事をしなくてはならない。

 最年長者である千冬さんは家事の腕前が壊滅的で、仕方が無いので俺と一夏君が分担して家事をしている。

 話によると、これまでもそうだったらしい。

 この歳にして家事が出来るとか、一夏君もそうだが、マジで凄いな千夏ちゃん。

 

 あと、束さんと箒ちゃんの家でやっている剣道教室にも連れて行ってもらった。

 

 かなり本格的な道場があって、そこで色んな人間が防具を纏って竹刀を打ち合っていた。

 

 束さんの姿は無かったが、その代わりに箒ちゃんがいた。

 千冬さんと一夏君も一緒にやっているらしく、俺も千冬さんと道場主をしている柳韻さんに勧められた。

 剣道とか全くやった事ないんですけどね。

 高校の時の選択授業も柔道だったし。

 

 案の定、ぜ~んぜんダメダメでした。

 大体、病み上がりの子供に剣道は厳しいでしょう。

 

 ま、リハビリと思えば頑張れるけどね。

 

 因みに、その時に束さんに一台のパソコンを貰った。

 『なっちゃんの退院祝いだよ!』って言ってたけど。

 まさか、これもお手製とか言わないよな……?

 

 そんな感じで三人で力を合わせながら暮らしていった。

 

 前は一人で暮らしていたから、誰かと一緒の生活と言うのが実に懐かしく感じた。

 

 そして、あっという間に時は過ぎ、俺は一夏君や箒ちゃんと一緒に小学生になった。

 入学費とかの出所は聞けなかったけど。

 

 

 

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・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 小学校の昼休み。

 この微妙な解放感は実に久し振りだ。

 

 窓の外では児童達がグラウンドで所狭しと遊びまわっている。

 

 なんつーか……駄目だと分かっていても、どうしてもアイツ等を下に見てしまう。

 そうだ、これを言っておかなきゃな。

 

 俺は一応、女子として入学した。

 他の人達は俺の体の事なんて何にも知らないし、何も言わなければ何も問題は無い。

 だから、学校側にも何も言っていないらしい。

 

 まぁ、この体で『実は僕ぅ~男の子なんですぅ~(笑)』なんて、誰も信じないだろうし。

 俺自身が最初は信じられなかったんだ。

 この体にもすっかり慣れたし、問題は無いんだけど。

 

「千夏姉」

「ん?」

 

 机に体を預けながら窓の外を眺めていると、我が弟(仮)と箒ちゃんが傍に来ていた。

 

「どうした? 外にはいかないのか?」

「千夏姉が行くなら行く」

「わ……私もだ!」

「えぇ~……」

 

 あの中に混じって遊ぶのはちょっとな…。

 流石に抵抗感がありまくるというか……。

 今の自分が無邪気に遊ぶ姿が想像出来ないと言いますか……。

 

「……俺はいいよ。二人で遊んできな」

「嫌だ! 千夏姉も一緒だ!」

「うむ!」

 

 強情な奴め……。

 あと、箒ちゃん。

 女の子が『うむ!』とかって言っちゃいけません。

 もうちょっと女の子らしい言葉遣いを心掛けなさい。

 

「千夏、何故自分の事を『俺』と言うんだ?」

「え?」

 

 今更そこをつくのか?

 

「昔は自分の事を『私』と言っていたぞ!」

「それは……」

 

 なんて言おうか。

 適当でいいや。

 

「馬鹿な男子に馬鹿にされない為」

「男子に?」

「うん。男ってバカだから、少しでも弱さを見せたらすぐにイジメてくる。だから、少しでも自分の事を強く見せようと思った。オッケー?」

「男は馬鹿……」

「なんで俺を見るんだ? 箒」

 

 それぐらい察せよ…。

 少なくとも、俺から見たらお前は正真正銘の馬鹿だよ。

 

 そんな事を話していたら、あっという間に昼休みの時間は終わった。

 なんだ、思ったよりも過ごせてるじゃん。

 

 

 

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 少し前から千冬さんが忙しそうにしている。

 

 夜遅く帰る事があったと思えば、軽く食事をした後にシャワーを浴びて自室に直行。

 そして、泥のように爆睡。

 

 それが数日間程続いたある日、『ソレ』はいきなり起きた。

 後の世に歴史的大事件として語り継がれる『白騎士事件』である。

 概要はこうだ。

 

 いきなり日本に向かって無数のミサイルが襲来!!

 僕達私達大ピンチ!

 一体どうするどうなる!?

 その時だった!

 何処からともなく宙に浮く白い鎧を纏った謎の女性が出現し、全てのミサイルを迎撃した!

 その後にやって来た軍の連中も人的被害を一切出さずに追い払った!

 かくして、謎の戦士『白騎士』によって日本の危機は去り、平和は無事に守られたのであった!

 めでたし、めでたし。

 パチパチパチ~。

 

 ……という訳だ。

 

 色々と大事な所を端折りまくったけど、そこは大人の事情という事で勘弁してほしい。

 しかも、この白騎士の開発者はあの束さんで、それを世間に大々的に発表してしまった。

 

 あの白騎士は『インフィニット・ストラトス』通称『IS』と呼ばれる物で、基本的には女性にしか動かせないらしい。

 そして、そのコアとなる物質『ISコア』は彼女にしか創造出来ないらしく、ブラックボックスの塊なんだとか。

 

 これによって世界は大混乱&大賑わい。

 世界はISによって女尊男卑に向かって、緩やかに、しかし確実に向かって行った。

 

 この世界で、俺はどうなるのだろうか。

 姿は女で、生物学上は男。

 

 もしかしたら、織斑千夏という存在は、この世界において唯一のイレギュラーなのではないだろうか。

 

 仮に俺が織斑千夏にならなくても、世界は回っていく。

 もしも、そうなった場合……どんな風に織斑千夏は生きていくのか、それはもう誰にも分からない事だった。

 

 少なくとも、分かっていることは一つ。

 織斑千夏にはISは動かせない。

 染色体が全てを否定するから。

 

 

 

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・・

 

 

 

 

 世界が劇的に変わっても、俺の生活が劇的に変わるわけではない。

 

 変わったと言えば、束さんが今まで以上にコミュ症になって、その上引きこもりになってしまったぐらいか。

 

 ま、別に会えなくても俺が死ぬわけじゃないから、気にはしないがな。

 

 俺達が二年生に進級して、ほんの少しだけ周囲の子供達が自分の事を大人になったと思って粋がっている。

 

 そんな中でも俺の心は冷めきっている。

 今更、一年二年歳を取っても何の感情も抱かない。

 

 これは、転生者云々以前の問題だろう。

 俺は身体以上に精神が人間として破綻している。

 

 それを実感できる事件が、二年生の時に起こった。

 

 

 

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・・

 

 

 

 

 その日、俺は放課後に担任教師によって職員室に呼び出された。

 言っておくが、別に悪いことをしたわけじゃないからな?。

 私的な用事だっただけだからな。

 

 用事が終わって教室にランドセルを取りに行くと、教室から複数の声が聞こえた。

 

「やーい! やーい! 男女~!」

 

 ……俺の事を言っているのか?

 

「女の分際で男のような話し方をしやがって!」

「ムカつくんだよ!」

 

 これも俺に該当するな。

 って言うか、今時の小学生って『分際』って言葉を知ってるんだな。

 いや、きっと親が使っているのを聞いて真似しただけか、それともテレビとかで聞いたとかのどっちかだな。

 

 半ば呆れながら教室に入っていくと、三人の男子に囲まれて箒ちゃんが絵に描いたように虐められていた。

 

「………なにやってんだ、そこ」

「げ!」

「お……織斑!」

「男女2号が来た!」

「2号?」

 

 なんじゃそりゃ。

 

「こいつが1号でお前が2号だ!」

 

 あぁ……そゆこと。

 

「ち……千夏……」

 

 すっかり脅えちゃって。

 普段は男勝りでも、やっぱり女の子って事か。

 少しだけ見る目が変わるわ。

 

 でも、一人間として、これを見過ごす事はしちゃいけないよな。

 よし、ここは俺流のやり方で片付けようか。

 

「もうやめろ。彼女、完全に脅えてるだろ」

「うるせぇ!」

「お前も生意気なんだよ!」

「そうだ! そうだ!」

 

 いやはや……実に子供らしい語力の低い言葉だ事。

 

「はぁ……」

 

 溜息交じりに馬鹿共に近づいて行く。

 

「く……来るな!」

「殴るぞ!!」

「どうぞ?」

 

 別に痛くはないし。

 

「俺なら幾らでも殴っていいから、箒ちゃんを離してやれ」

「うるさいって……言ってるだろ!!」

 

 激昂した男子の一人が俺に向かってくる。

 この後の事はなんとなく予想出来る。

 

「このっ!!」

 

 ほら、やっぱり俺を殴った。

 幾ら痛くなくても力の流れはある為、俺はそのままの状態でたたらを踏んだ。

 

「……もう終わりか?」

「え?」

「生意気なんだろ? ムカつくんだろ? だったらもっと殴れよ」

「お……お前!!」

 

 俺の言葉が癪に障ったのか、今度は反対側の頬をもう一回殴られた。

 

「千夏!!」

 

 あれ? なんで箒ちゃんが泣きそうなんだ?

 別に君は殴られてはいないだろうに。

 

「お……おい……」

「もうやめた方が……」

「お前等もうるさい! こいつが悪いんだ! 女の癖に男みたいな話し方をしやがって!」

「またそれかい」

 

 なんで、そんな事に拘るかな?

 マジで訳が分からん。

 

 男子がもう一回、拳を振り上げた瞬間……。

 

「何やってんだ! てめぇ!!」

「「げっ!?」」

「お……織斑一夏……!」

 

 一夏君が滅茶苦茶怒った顔で教室に入ってきた。

 確か、彼も他の先生に呼ばれていた筈だけど……。

 

「よくも千夏姉を殴ったな……!」

「に……逃げるぞ!!」

「「うん!」」

 

 いじめっ子三人は揃って逃げ出す。

 それを一夏君が追いかけようとするが、俺が静止させた。

 

「待てよ!!」

「やめろ」

「「はぁっ!?」」

 

 何で驚く?

 

「ここで追いかけても意味無いだろ」

「何言ってんだよ! あいつ等、千夏姉の事を殴ったんだぞ!」

 

 いや、正確には殴ったのは一人だけだけどな。

 

「そ……それよりも、千夏! 大丈夫か!?」

「あぁ……だいじょぶ。全然痛くないし」

「そんなわけあるか! 我慢するのはやめろ!」

「そうだぜ千夏姉! 早く保健室に行こう!」

 

 別に我慢をしてる訳じゃなんだけどな。

 そんな事を考えつつ、二人は俺の事を保健室に連行した。

 

 保健室の先生は俺の顔を見て驚いていた。

 鏡で見てみたら、思った以上に頬が腫れていた。

 急いで氷水で冷やして、その後に細かく切った湿布を張った。

 

 その後に帰宅したが、帰って早々に千冬さんに驚かれた。

 この顔は俺が想像している以上にインパクトが大きい様だ。

 

 今回の事は、箒ちゃんの口から束さんにも伝わったようで、その日の夜に電話してきて、受話器越しに凄く憤慨していた。

 

 何かやらかさないか千冬さんが心配していたが、俺としてはアイツ等がどうなろうともどうでもよかったので、敢えて何も言わなかった。

 

 次の日、あの三人組は絡んでくることは無くなり、数日後に何処かへと転校していった。

 

 

 

 

 

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・・

 

 

 

 

 それから約一年後。

 束さんがいきなり姿を消した。

 

 家族にも何も言わずに行ったらしいが、何故か俺と千冬さんにだけは会いに来てくれた。

 その時は一夏君は自分の部屋で寝ていて気が付かなかったけど。

 

 なんでも、政府の連中が五月蠅くなってきて、彼女にISコアの製作を強制させようとしてきたとの事。

 それにブチ切れた束さんは、一定数のみ造って譲渡し、後は知らないと言わんばかりに雲隠れをするつもりらしい。

 

 なんで一定数は渡すのか聞いたら、少しぐらいはこっちからも何かしないと、妹の箒 ちゃんとかにちょっかいを出す可能性が出てくるから…らしい。

 

 コミュ症の癖に、家族愛だけはいっちょ前だな。

 ま、それすらない俺には何も言う資格は無いけど。

 

 簡単な会話だけを済ませて、彼女はどこかへと去って行った。

 呼べば簡単に来そうな気がするけどな。

 

 

 

・・・・・

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・・・

・・

 

 

 

 四年生になり、突如として篠ノ之一家が引っ越す事になった。

 

 確か、政府の重要保護プログラム……だったか?が理由らしい。

 

 引っ越しの日に我等が姉弟は彼女達を見送ることになった。

 結構お世話になってたし、これぐらいは当然か。

 

「ち……なつぅぅぅ……一夏ぁぁぁ……」

「ひくっ……ひくっ……」

 

 二人共、派手に泣いてやがる。

 

「いい加減に泣き止め。別に今生の別れって訳じゃないんだし」

「こ……根性?」

「『根性』じゃなくて『今生』な。もう二度と会えない訳じゃないって言ったんだよ」

「でも……でも……」

 

 いつもは無駄に男らしさを発揮する癖に、こんな時だけはヘタレ君だな。

 

 仕方があるまい。

 ここは俺がなんとかして、この空気を緩和しますか。

 

「箒ちゃん」

「な……なんだ? 千夏……」

「はいこれ」 

 

 俺はポケットから取り出した赤いリボンを彼女に渡した。

 

「これは……?」

「リボン。最初は何か手作りで小物でも渡そうかとも思ったんだけど、予想以上に難しくて、結局断念してしまった。で、妥協案としてこれを買ってきた」

「貰ってやってくれ。これを選ぶのに2時間も考えたんだ」

「それを言うの?」

「別にいいだろう?」

「まぁ……」

 

 俺は気にしないけど。

 

「なんとなく、君には赤が似合うと思ったんだけど、どうだ?」

「ち……ちな……」

 

 ん? どうした?

 

「千夏ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

「うお?」

 

 いきなり抱き着かれた。

 その拍子に、彼女の涙で服が濡れてしまった。

 

「あり……あり……ありがとう~~~~~(泣)」

「あ~……はいはい」

 

 取り敢えず頭でも撫でておく。

 

 暫くして彼女は離れてくれた。

 

「んじゃ、向こうに行っても元気で」

「ああ! 千夏もな! 後ついでに一夏も」

「俺はついでかよ!?」

「はははははは……」

 

 俺以外の皆が笑っている。

 こうして彼女の笑顔を見る日がまたやって来るのだろうか?

 その時には俺もちゃんと笑えるようになっているのだろうか?

 

 ……いや、それは無いな。

 

 また逢える可能性はあるかもしれないが、俺が笑えるようになる可能性は皆無だろう。

 つーか、その光景が想像出来ない。

 

「三人共、今まで束や箒と一緒に遊んでくれて、本当にありがとう」

「皆……元気でね」

「そちらこそ、お元気で」

 

 そろそろか?

 そう思った時、千冬さんが車に乗っている夫妻に寄っていった。

 

「あ……あの! どうか束の事を恨まないでやってください! あいつは唯、自分の夢に向かって頑張ろうとしているだけなんです!」

「恨むだなんて、とんでもない」

「そうよ。親が子供を恨むなんて、そんな事をするわけがないじゃない」

「そう……ですか……」

 

 それを聞いて安心したのか、千冬さんは俺達の所に戻ってきた。

 

「箒、そろそろ……」

「はい……」

 

 柳韻さんに促されて、箒ちゃんが車に乗る。

 

「元気でな」

「そっちこそな!」

「また会えるよな!?」

「勿論だ!」

「稽古は忘れるなよ?」

「それはお互い様です!」

 

 そうか、彼女達がいなくなったら、剣道も続けられないのか?

 別に強い思い入れとかは無かったけど。

 

 車が発進する。

 

 その姿が段々と小さくなっていった。

 

 やがて、道の向こうへと消えていった。

 こうして、俺は転生して初めての別れを経験するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




結構、飛ばしちゃいました。

でも、これぐらいしないと原作まで辿り着くのが遅くなりそうなんです。

だから、これからも飛ばせるシーンは飛ばしていこうと思います。

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