セラフィムの学園   作:とんこつラーメン

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先日、バーベキューパーティーをして、ちょっと飲み過ぎちゃいました。

明日も休みだからいいんじゃねって思ってたら、朝になって猛烈後悔。

二日酔いで頭が痛かったです……。






第39話 部活を見よう

 ピーノと別れた後、俺達は改めて部活の見学をしに部活棟に向かった。

 まずは、一夏と箒の強いリクエストにより剣道部が活動をしている剣道場へと足を向けることに。

 剣道を嗜んでいるだけあって、やっぱり気になってしまうようだ。

 

「なんかゴメンな。俺達の我儘に付き合わせちまってさ。千夏姉だって見たい部活があるだろうに」

「気にするな。俺としても、武道系の部活は気になるからな」

 

 俺の専用機である『ディナイアル』が格闘技を主体としている為、今後の為にも何か勉強になりそうな部を見てみたいとは思ってたし。

 

「一夏は中学の頃から剣道を再び始めたと聞いたが、千夏もそうなのか?」

「いや。俺は何もしてなかったよ。一夏が部活を始めた以上、俺が代わりに家事をしなくちゃいけなかったからな」

「そうか……それもそうだな」

「と言っても、それは俺のIS適性が発覚するまでの間だったがな」

「簪も言っていたが、その頃から訓練所へと通い始めたのか?」

「あぁ。色んな事があったが、多くの事が学べたと思うよ。良い出会いもあったしな」

 

 悪い出会いもあったがな。

 いや……アレに関しては思い出したくないので、すぐに忘れよう。

 

「ここか」

 

 話している内にいつの間にか俺達は剣道場へと到着していた。

 少しだけ開いている入り口からは、気合の入った声と同時に、竹刀が弾けるような音が響いてくる。

 音だけでも、ここの連中がかなり本気で頑張っている事が窺えた。

 

「「お邪魔します」」

「します」

 

 取り敢えず俺は形だけ。

 一応の挨拶をして扉を開ける事に。

 

「お? 男の子って事は、彼が噂の織斑一夏くん?」

「え? 俺の事を知ってるんですか?」

「知ってるも何も、君はもう既に学園中の有名人だよ?」

 

 部員達に指導をしている部長らしき人がこっちに気が付いてやって来た。

 一夏の顔を見た途端に顔が明るくなった。

 

「そこの二人は君の彼女? 凄いね~。もう女の子を侍らせてるのか~」

「違いますから! 箒はただの幼馴染だし、千夏姉に至っては実の姉ですから!」

「そうです。一夏と付き合うなどあり得ません」

 

 箒は見事にバッサリと切り捨てるし、一夏に至っては顔を真っ赤にしながらの弁解。

 我が弟よ。その顔では全くもって説得力が無いぞ。

 

「な~んだ、残念。って、姉?」

「そうです。だから彼女とかじゃ……」

「この子が一気に有名人になった、委員会代表の織斑千夏ちゃん!?」

「千夏の事もご存じで?」

「いやいやいや! 史上初の委員会代表に就任した美少女って事で、ある意味では織斑君以上に有名になってるよ!」

 

 不本意ではあるが、自分でもその自覚はある。

 前にも言ったかもしれないが、俺が委員会の代表に就任した事を大々的に発表した翌日から、プライベートでは変装をしなくては碌に外も出歩けなくなった。

 今では、伊達メガネと帽子、髪型を変えることが必須事項となっている程に。

 

「分かってたけど、やっぱり千夏姉も有名になってるんだな~」

「ふふん! 当然だ!」

「なんで箒が嬉しそうなんだよ……」

 

 同感。箒が喜ぶ要素は全く無いと思うんだが。

 

「ところで、剣道部に何か御用かな?」

「えっと、実は少し見学をさせて欲しくて……」

「お? って事は入部希望だったり?」

「それはまだ何とも。まずは見てからじゃないと」

「それもそっか。んじゃ、バッチリ見ていってね!」

 

 気合を入れ直してから、部長さんは部員達の元に戻って行った。

 少しだけ集団で固まってから、なにやら事情を説明しているようようだ。

 

「それじゃあ、気合入れて頑張るわよ~!」

「「「「「お~~~!」」」」」

 

 そこからは、さっき以上のキレと動きで部活に勤しむ部員達の姿があった。

 きっと、少しでも一夏にいい姿を見せようとアピールをしているに違いない。

 だが悲しいかな。ウチの弟に色仕掛けの類は通用しないんだよ。

 こいつは超高校生級の鈍感だからな。

 

「やっぱ凄いな~。IS学園の部活は」

「確かにな。これだけの実力がありながら、公式戦に出場出来ないのは非常に惜しい」

 

 そうなのだ。

 IS学園に部活は多々あれど、運動部系の部活は一切、公式戦へ出場が出来ない。

 詳しい事情は知らないが、少なくとも、この学園での部活とは全国の猛者達を武を競い合う為ではなく、己を高める為の自己鍛錬に近い。

 そう言う理由もあって、文化部に所属する生徒がかなり多いらしい。

 

「マジで入ろうかな……剣道部」

「私もそうするか。千夏はどうする?」

「俺は止めておこう。この空気は嫌いじゃないが、どうも……な」

 

 実を言うと、これまで全く剣道をしてこなかった訳じゃなかったりする。

 ISの訓練をするにあたって、俺は芳美さんに格闘技以外の武道も密かに教えて貰っていたから。

 幾ら、俺のディナイアルが格闘技主体の機体とは言え、相手はそうじゃない。

 千冬姉さんのように剣を使ったり、銃を使ったりする者が多々いる。

 それらの使い方や特性をちゃんと学ぶことで、試合の際に相手の動きを少しでも先読みしやすくする。

 だから、さっき箒に言った事は少しだけ誤りだ。

 

「千夏姉はどんな部活に入りたいんだ?」

「そうだな……」

 

 俺の入りたい部活。

 今の俺に合っている部活と言えば……。

 

「空手部とかあったら入りたいな」

「残念。柔道部ならあるけど、空手部は無いのよね」

「そうですか……」

 

 いつの間にか、再び部長さんが近くまで来ていた。

 にしても、空手部は無いのか……。

 別に柔道部でも悪くは無いのだが、自分の理想としては投げ技よりも打撃系の技を少しでも多く学びたかった。

 

「んで、どうだった?」

「はい。凄く気合が入ってて、ここまで皆のやる気が伝わってきました」

「同じくです。ここならば文句はありません」

「よかった~! んじゃ、新入部員二人確保~! ってことでいいのかな?」

「「はい」」

「よし! あ、そうそう。入部届は職員室で担任の先生に貰ってね」

「分かりました」

 

 ふむ。一夏と箒は剣道部に入部確定……と。

 さて。俺は本気でどうするかな。

 

「千夏ちゃんは、何か他に入りたいと思ってる部ってあるの?」

「一応、第二候補はあるんだが……」

「なになに? 聞かせて!」

「……………裁縫部」

「「「え?」」」

 

 女子達が裁縫部がある事を話しているのを少し聞いた事があって、その時から興味をそそられていた。

 だが、今は趣味よりも実益を優先したかったから、敢えて第二候補にしていたんだが。

 

「そっか~。千夏姉にならピッタリかもな。だって、編み物とか裁縫とかすっごい上手だし」

「そうなのか!?」

 

 なんで箒が驚く?

 暫く見ない間に、随分とオーバーリアクションな人間になったな。

 

「箒が知らないのも無理ないか。丁度、箒が転校した次の年ぐらいに学年の女子達の間で編み物が流行ってさ。千夏姉も友達から誘われて始めたんだよ。周りが段々と難しさに挫折したり、飽きていったりする中で、千夏姉だけがずっと続けてさ、今ではすっかり趣味の一つになってるんだ。それに合わせて裁縫にも興味を持ち始めて、服の修復程度なら簡単にやっちまうんだ」

「ち……千夏……いつの間に……」

「因みに、俺や千冬姉も千夏姉に色々と作って貰った事があるんだ」

「なんだと!? それはなんだ!?」

「俺は手編みのマフラーで、千冬姉は手編みのセーターだったっけ。未だに使い続けてさ、冬の寒い時とかすっごい暖かいんだぜ~」

「暫く見ない間に、千夏の女子力が私の想像の遥か上を行ってる……」

「編み物が得意な女子高生……フィクションじゃなかったのね……」

 

 おいこらそこの女子二人。

 何をそこまで戦慄する?

 俺が編み物好きで悪いってか。

 

「一応言っておくが、別に何かを編んであげたのは一夏達だけじゃないぞ」

「そうなのか?」

「簪に頼まれて手袋を編んだし、ピーノにはニット帽を編んだな」

「なん……だと……!」

「他にも、芳美さんにネックウォーマーを編んだり、山本さんにもセーターを編んだし……」

「また知らない名前が出てきた……。山本さんと芳美さんって誰だ……」

「俺が個人的にお世話になってる大人の人達」

 

 山本さんは本当に嬉しそうにしていたけど、芳美さんは微妙な顔をしていたな。

 『セーター自体は嬉しいけど、編み物が全く出来ない自分が情けなくなった』って言ってたような気がする。

 

「そこまで上手なら、そっちに入った方がいいかもね。はぁ~……私も編み物ぐらい出来た方がいいのかな~……。つーか、千夏ちゃんみたいな美人が編み物まで出来るって、もう女子としてほぼ完璧よね。将来、彼氏になる人が羨ましいわ。って言うか、寧ろ私が娶りたい」

 

 告白された。

 それと、編み物なんか出来なくても十分に誰かと付き合えると思いますよ?

 

「えっと……今日の所はこの辺で、お邪魔しました」

「あ、うん。入部届を渡しに来るのは明日でいいからね」

 

 なんだか落ち込んでしまった部長さんを横目に、俺達は剣道場を後にした。

 さて、今から入部届を貰いに行きますか。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 職員室で千冬姉さんから入部届を貰って、そのまま今日は寮に帰る事に。

 途中で一夏達と別れた後、真っ直ぐに部屋まで向かった。

 一応、マナーとして入室前にノックをする事に。

 これが俺一人の部屋だったのなら、こんな事をする必要は無いのだが、今は本音も一緒に暮らしている。

 変な事が起きないように、このようにするのは常識だ。

 ……一夏の奴は普通に忘れそうだがな。

 

「入るぞ」

「なっち~? おかえりなさ~い」

 

 扉を開けて入ると、そこでは既に本音が帰ってきていて、ベッドの上で伸び伸びとしながら雑誌を読んでいた。

 どうやら、ぬいぐるみに関する雑誌のようだ。

 

「もう戻っていたのか」

「うん。まだ入学したてだから、そこまで込み入った用事があるわけじゃないしね~」

 

 それもそうだ。

 新入生を早くもこき使い様な生徒会は、普通にブラックだろう。

 

「ほえ? なっちー、その紙はなに?」

「入部届だ。さっき貰ってきた」

「って事は、どこかに入るの?」

「裁縫部に入ろうと思っている」

「そっか~。なっちー、凄く上手だもんね~」

 

 本音にも少しだけ、過去の俺の作品を見せたが、どれも面白いぐらいに絶賛してくれた。

 その時に『おじょ~さまとは大違いだね~』と言っていたが、お嬢様って誰だ?

 

「それじゃ~、明日の放課後は予定あるってこと?」

「そうなるな」

「そっか~。かいちょーがなっちーに会いたがってたんだけど、次の機会にするように言っておくね~」

「かいちょー……とは、生徒会長の事か?」

「そ~だよ~」

 

 生徒会長が俺に会いたがっている?

 なんで俺なんかに?

 俺が一夏の姉だから?

 それとも、委員会代表だから?

 

「かいちょーはね~、かんちゃんのおね~さんなんだよ~」

「ほぅ……」

 

 簪の姉がここの生徒会長をしているのか。

 その時点でタダ者じゃない事は明白だな。

 日本の代表候補生である簪の姉ならば、間違いなく同じような代表候補生か、もしくは国家代表もあり得るか……?

 

「ん?」

 

 ちょっと待て。

 生徒会長って確か、入学式の時に挨拶をしたり、IS学園のパンフレットに顔写真が記載されていたような気が……。

 でも、あの時は普通に聞き流してたから顔はよく覚えてないし、パンフレットは早くも無限の彼方へ旅立ってしまった。端的に言うと、なくした。

 

(生徒会長と言えば、間違いなく多忙な人だろう。そんな人が俺に会いたがっているのに、こっちの都合で断るのは気が引けるな)

 

 別に入部届は急いで提出する必要は無いし、後でも構わないだろう。

 

「明日、生徒会室に行ってもいいぞ」

「え? いいの?」

「そう言った」

「でも……入部届……」

「生徒会室に行った後でも問題無いだろう?」

「なっち~……」

 

 本音? どうして目をウルウルさせる?

 

「ありがと~!」

「おっと」

 

 いきなりベッドから飛び降りて抱き着いてきた。

 少しよろけそうになったが、日頃から鍛えていたお蔭で倒れずに済んだ。

 

「えへへ~……♡ 明日はなっちーと一緒だ~♡」

「そうだな」

 

 別に生徒会室に行く用事が無くても、俺で良ければ幾らでも一緒にいてやるんだがな。

 

「ところでなっちー。質問があります」

「なんだ?」

「なっちーは編みぐるみは出来る?」

「編みぐるみか……」

 

 やろうと思った事なら何回かあるが、実際にやった事はまだないな。

 何を編もうか悩んでしまって、気が付いた時には時間が過ぎていたことがよくあるから。

 

「実はね、さっき読んでいた雑誌に編みぐるみの作り方が載ってて、なっちーも出来るのかな~って思ったの」

「そうだったのか」

 

 その手があったか。

 雑誌からアイデアを貰えば、少しは指針が固まるかもしれない。

 

「その雑誌、俺にも見せてくれないか?」

「いいよ~。まずはね~……」

 

 その後、夕食の時間までずっと本音と一緒に雑誌を見ながら編みぐるみの事について話していた。

 まずは簡単そうな犬か猫辺りに挑戦してみるか?

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと強引でしたが、生徒会フラグが立ちました。

次回は楯無との初めての出会い?

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